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*161*
「真〜奈〜!!」
「ん?」
「お疲れちゃん!」
そう言って、美樹は私の頬にペットボトルをあてた。
「冷たっ!」
私はあてられたペットボトルを美樹の手から捥ぎ取って、何を持ってきたのかを見た。
「ふふ〜ん、このあたしったら気が利くわよね〜。スポーツドリンクよ!スポーツドリンク!」
「くれるの?」
「もちろ〜ん!青組優勝に貢献したわけだしね!」
「何でそんな上から目線なんですか……」
「え?元からよ?やだなあ、真奈ったら〜」
美樹はなぜか照れながら私の背中をバシバシと叩く。やたらとテンションが高い。体育祭だからだろうか。
「それより、真奈!早くお弁当食べようよ!みんな移動し始めてるし」
美樹に言われて、視線を応援席の方へと移すと、皆昇降口へと歩き始めているのが見えた。
「本当だね。私達も行こうか」
私はそう言いながら、ペットボトルの蓋を開けて飲みながら歩く。
「こら、真奈。行儀が悪いわよ」
「だって喉か渇いて死にそうなんだもん」
「それでも駄目〜」
美樹はそう言うと、私の手の中からペットボトルと蓋を奪い去って、蓋を閉めた。そして、それを私に投げて寄越した。
「わっと……。美樹危ないじゃんか」
「行儀悪いことした方が悪いのよ」
そう言われて、確かに美樹の方が正論だと思った私は何も言えなくて、少しムスッとしていると、通り過ぎようとした準備室の中から声が聞こえてきた。
「来ないでくれ……だろ」
「だって僕……にあ……たいから」
「やっぱりに……さん、あ……さんが……と思っ……るの?」
所々声が途切れていてよく聞き取れない。
「ねえ、美樹」
「ん?何?」
「何か準備室から声、聞こえない?」
「え?何々!?幽霊!?」
「じゃなくて、人の声」
「なーんだ。んー、そう言われると聞こえるかも。でもどうして?」
「いや、何でわざわざ準備室とかで話すのかなーと」
「告白じゃない?」
「こ、告白!?でも、聞こえてきた2つの声は男の子の声だったし……」
「だったら、BLなのよ」
「BL!?」
「そうそう。ほら、解決。行くよ。あたしだって短距離走出てお腹空いてるんだからね〜?」
私はそう美樹に強く言われればそんな気がしてきて、その時はただ美樹に引きずられて校舎へ向かうことしかできなかった。
――教室にて
「ねえ、今思ってみればあれ、逢坂くんの声だったかもしれない」
私は仲の良い優那、涼香、そして美樹と共に昼食をとりながら先程のことについて話す。
「それ、真奈が好きすぎて幻聴聞こえてきたんじゃないの?」
涼香が口角を上げながら冷やかすように言う。
「そ、そんなことないよ!」
「焦った」
「焦ったよね」
「真奈、焦った……」
そう言って、3人は私をジトーーと見た。
「だから違うって!!」
「分かってるよ、真奈〜!安心してって!」
「涼香の安心してが一番不安」
「真奈ちゃん?」
「いや、なんでもないです」
「そう」
無理矢理言わされた――!!と心の中で叫んでいると、ズボンの中のスマホが震えた。私はスマホを取り出して、メールを確認する。すると、なんと亮さんからだった。
”体育祭、僕も見たよ。真奈ちゃん凄いね!あんなに速いなんてびっくりしたよ。
あ、それでね。今日、体育祭終わったあと、少し時間空いてる?ちょっと話したいことがあって……。もしOKなら20時に桜並木の所に来てくれるかな?”
「急に、どうしたんだろ……」
「何々、真奈ー?逢坂くんからのダンスパーティーのお誘い!?」
美樹があまりにも大きな声で言うから、クラス全員がこちらを振り返った。私は恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしながら、それを否定した。すると、皆はなぜか安堵のため息を吐きながらそれぞれの談笑へと戻った。
「もう、美樹!」
「ごめんごめん。ねえねえ、それより、何のメール!?」
「あたしも知りたい!」
「私も〜」
3人に詰め寄られ見せるしかなくなった私は恐る恐る画面を3人の方向へと向けた。すると、皆眉を訝しげにしながら同時に尋ねた。
「「「逢坂亮って誰?」」」
私はあまりにも凄いシンクロ具合に笑いながらも答えた。でも、美樹は気付いているようだった。それに、私に亮さんの存在を教えてくれたのは美樹なわけだし。
「逢坂くんのお兄さんだよ。今、確か高校3年生って言ってたっけなあ?」
私はこの間会った日のことを思い出しながら言う。
「うっそ!?超イケメンって噂じゃん!」
涼香がすかさず喰いつく。
「うん。すっごく格好よかったよ?逢坂くんの目を少し垂れ目にして、背がもう少しだけ高くなったみたいな感じ」
「え〜、私も会ってみたい!」
「あたしも会いたい〜」
「あたしもあたしも!」
皆の目が途端にキラキラし始めた。涼香や優那に置いては立派な彼氏がいるというのに。
「2人は彼氏いるじゃん」
「「それとこれとは別なのです」」
「そ、そうですか」
んー、それでも亮さんにいきなり友達ですって紹介しても反応に困るだけだよね。うん、そうだよ。だからもうちょっと仲良くなってからにしよう。そう決意して私は口を開く。
「うーん、でもやっぱり、私もまだまだ亮さんと知り合ったばかりだから、いきなり私の友達ですっとか言って紹介するのも反応困るんじゃないかなって思うんだよ。だからもうちょっと親睦を深めてからでもいいかな?」
「まあ、急いでるわけじゃないしね。あたしはいつでもOKだよ」
「うん、私も大丈夫。無理言ってごめんね」
「あたしはいつだって真奈に合わせるよ」
「皆……ありがとう!!」
私はそう言いながら3人を一気に抱き締めた。3人は一瞬驚いたようだったが、すぐに笑って私の腰に手を回してくれた。
「あたしたちはいつだって真奈の味方だよ。それはよーく真奈が知ってるでしょ?」
美樹は優しく微笑みながら言う。私はそれに大きく頷くと、ドッと笑いの波が押し寄せた。こうして、私達は楽しく昼食を取った後、グラウンドへと戻り、午後の部の開始を待った。