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*45*
「お!ここが会場だね!あたし達、どこに並べばいいんだろう?」
真奈の腕を引っ張りながら歩くあたし。
そう、あたしたちは入学式の会場である講堂の前にやってきたのだ。
「1-B、1-B、1-Bは…あった!あそこだ!真奈、行こっ!」
「う、うん」
あたしは少し、本当に少しだけ強引に、あたしが指差した”1-B”と書かれた紙が貼られている壁の前へと向かった。
すると、そこには私たちより後に教室を出たはずの逢坂くんと浅井がいた。
「逢坂くん!それに凜!」
「それに、ってなんだよ」
真奈の声のかけ方に不満を漏らす浅井。
可愛いな、と思いつつもやっぱり真奈のことが好きなんだな、と思い知らされているような痛みを伴った。
「あはは、可哀想に。凜くん」
「他人事みたいに思ってんじゃねーよ、この色男!」
「俺は色男なんかじゃないよ?ただなぜか女の子に好かれるだけで…」
「お前、今の発言で全国の男子を敵に回したぞ?」
「え?そうなの!?それは不味いな。皆とは仲良くしたいんだけどなぁ。ただ一人を除いて」
「あ?それは俺のことか?俺のことなのか?」
「さぁ、どうだろうね」
「ちょ、ちょっと、二人ともやめようよ!」
真奈が状況が悪化しそうな気配を察知したのか、喧嘩の止めに入った。
すると、先程までの険悪のムードがまるで嘘だったかのように逢坂くんは屈託のない笑顔を真奈に向けた。
浅井はというと、拗ねたようにそっぽを向いている。
「やぁ、綾川さん。会いたかったよ」
「会いたかった、ってさっきも話してた気がするんだけど…」
「それでも会いたかったのさ」
真奈は顔を真っ赤にしながら俯いた。
そりゃあ、イケメンにそんなこと言われちゃ、どんな美少女でも照れるわよ。
「ん?どうかしたの?無言になっちゃって。顔、赤いよ?」
「え!?」
真奈は驚きながら、自分の頬をぺたぺたと触った。
どうやら、自分の顔が真っ赤になっている自覚がなかったらしい。
「嘘!?私…!?」
「どうしたんだ?熱でもあんのか?」
真奈が両頬を両手で押さえながらあたふたしていると、浅井が真奈の顔を覗き込んだ。
真奈はその距離驚いて、慌てて顔を逸らす。
そんな様子にむしゃくしゃしてしまうあたし。
なんてあたしは醜いの…?
「う、ううん。なんでもないの」
「…そうか」
そう言って、浅井は列に戻っていった。
その様子をぼーっと真奈が見ていた。
どうやら、どうすればいいのか分からなかったらしい。
そんな真奈を見かねて、あたしが真奈の脇腹を肘で突いた。
真奈は何事か、と思ったのかあたしの方に体を傾けた。
あたしはそれを見て、真奈に耳打ちした。
「今のはさすがの浅井も傷つくって!」
「え?何か不味かった?」
「だって、逢坂くんとは普通に話してたのに、浅井に話しかけられた途端、真奈ってば顔を逸らしちゃうんだよ?そりゃあ、嫌われちゃったのかな?って思うわよ」
「そ、そういうものなの?」
「そういうもの!だから浅井ん所行って、誤解、解いてきたら?」
「…そうだね。凜とはずっと友達でいたいもの!」
真奈はそう言って、浅井のところへと向かった。
その時、あたしは寂しげな視線を送っていた、かもしれない。