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恋桜 [Cherry Love]  ――完結――
作者: 華憐  (総ページ数: 176ページ)
関連タグ: 恋愛 三角関係 高校生 美少女 天然 
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*61*

日曜日、飛んで月曜日…。

「おっはよー!」
「っわ!誰!?」

私は背中を思いっきり叩かれ振り向くと、そこには美樹が居た。

「美樹!…おはよ」
「ん?何か元気ないね」
「…そうかな?」

実は私、人に背中を叩かれるのが2番目に大嫌いなのだ。

「あ!分かった!背中を叩かれたのが嫌だったんでしょ!?」
「ど、どうしてそれを!?」
「あたしの情報力を嘗めないでよね!えーっと、確か…」

そう言いながら、スマホを取り出す美樹。
そして、自分でアプリを組んだのか”INFORMATION”というアプリを起動させ、私にその中身を見せてきた。
そこには、名簿順に名前が配列されており、自分が選択した人の名前を開くとその人の情報が取り出せるというシステムになっているのだ。
勿論、ロックは5重式だが。

「ほら、ココ見て!」

そう言って、私の名前の”中”にある1つの項目を指差しながら、私に見せた。
私はそこへ顔を近づけて読み上げる。

「背中を…叩かれることが大嫌い」
「っね?間違ってないでしょ?」
「…どうしてこれを知ってるの!?」

私は目を見開きながら後ずさった。

だって、これを知ってるのはたった1人の人物しかいないはずなのに…!

「真奈ー、顔に書かれてるわよ?まさかあの凜が情報を渡したのか?ってね」
「え!?嘘!?」
「本当よー。まぁ、情報提供者の名前は職務上口には出せないけどねー」

職務って、もうあなたはキャリアウーマンなんですか、と突っ込みたくなるようなセリフだ。

「もう最悪ー!」
「そう言わないでよー。これはあたしの本性なんだから。でもね」
「何?」
「真奈にとってデメリットばかりがあるわけじゃないのよ?」
「美樹がいることによって、デメリット以外に私にとってのメリットは何?」
「やっぱ、さっきのこと根に持ってるのね。まぁ、いいわ。質問に答えるわ。…それはね、逢坂の情報を無料で手に入れられるってことよ」
「…無料で?」
「えぇ、そうよ」
「…無料で?」
「どうして同じセリフを二度も言うの。そうよ」
「…信じられない!」

私は美樹の言葉を聞いて興奮するのを覚えた。

いつでも美樹に聞けば、逢坂くんのことを知れるんだ!
なんて幸せなの!

そんなことを考えて、思い切り頬が緩んでると、美樹が真顔で警告してきた。

「でも、情報は知りすぎると扱い切れなくなるの。ほどほどにしてよね」
「…うん、分かった」

私は美樹のあまりにも真剣な目に、首を縦に振ることしかできなかった。

「取り敢えず、歩き出そうよ」

その掛け声とともに歩き出した私達。
いつも私達は早めに登校しているので、少し立ち話をした所で支障はない。

「美樹!そ、それじゃあね…」
「あ、早速逢坂の情報を提供してほしいって?」
「うん」
「何か聞きたいこと、ある?」
「そうだなぁ。無難に兄弟がいるかどうか、かなぁ?」
「えーっと、いるね。高3の兄が1人。逢坂亮さん。こちらもそれはそれはイケメンという噂だよー」
「イケメン…」
「何イケメンに反応してるのよ」
「別に〜?ちょっとどんな人かなーって思っただけで…」
「言い訳にしか聞こえませーん」
「言い訳じゃないもん!」

私はそう言ってそっぽを向いた。
しかし、美樹がまた逢坂くんについての口を開き始めたので、仕方なく前に向き直った。

「ちなみにそのお兄ちゃん、超頭もいいみたいだねー。この学校より上の高校行ってるみたいだよ?」
「ここより上って、あそこしかないんじゃ…?」
「そう、まさに”あそこ”よ。日本でもトップ3には入る…泉燈高校」
「す、凄いね…」
「しかも運動神経も抜群ならしいし、モテモテならしいよ?」
「へぇ」
「でも残念なことに…」
「うん」
「彼女さんがいらっしゃるんだってー!」
「あらら」
「しかもその彼女さんの名前がなんと!」
「うん」
「藤井愛菜(ふじいまな)って言うんだって!」
「ま、まな…」
「真奈と同じよ!愛菜って!」
「そ、そうだね」
「凄いよねー!一回会ってみたいよねー!」
「うん、そうだね」

私はこの時、逢坂くんのお兄ちゃん、というだけの興味しか持っていなかった。
先に何が待っているのか、もっと早く気付くべきだったんだ。

「今度、逢坂に会わせてもらおっか!」
「え!?どうやって?」

全く、美樹はどうしてそんな突拍子もないことを言うのだろうか…。

「簡単よー。もう一回勉強会しよ!って言って、今度は逢坂の家でやらせてもらうの!そしたら、会えるでしょ?」
「なるほど…」

私は素直に感心してしまった。

その発想を勉強にでも活かせたらいいのだが…。

「そうと決まれば学校へダッシュよ!」
「ど、どうして!?」
「逢坂とかが来る前に計画を立てなきゃ!」
「立ててどうするの?」
「押し付けるの!逢坂に!そしたら断れなくなるでしょ!」
「なるほど!」
「ほらほら、早く!」

こうして私達はまだ肌寒い風を切って、学校へと走って行った。

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