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*87*
そんなこんなで2日目は終わりを迎えた。
「ねぇー、見てー。さっき、大谷が真希ちゃんに告白したんだって!」
涼香ちゃんが携帯の画面を私達に見せびらかしながら言う。
「け、結果は?」
優那が意気込んだように尋ねると、涼香ちゃんは満面の笑みで
「見事玉砕!」
と言った。
その言葉に肩を落とした優那。
優那は優しいから、大谷くんのことを思ってそうしたのと、あともう1つ、そうしたのには理由がある。
「だーいじょうぶだって!優那が玉砕なんてするはずないでしょー?」
涼香ちゃんは溌剌とした笑みで、優那の沈んだ顔を笑い飛ばす。
そう、優那は3日目に開催されるレクリエーション終了後、石島くんに告白する、と先程宣言したところなのだ。
「そ、そんなわけないよ。やっぱりやめようかな…」
「だ、駄目よ!」
美樹が力強く遮った。
「あ、その…詳しくは言えないんだけど、優那は大丈夫」
そう言って優しく微笑んだ美樹。
その笑顔を見て安心したのか、優那は「うん」と頷いて、そのままベッドへ潜りこんだ。
「それじゃあ、あたし達も寝よっか!もう1時だし…」
「あはは。凄い夜更かししたね」
涼香ちゃんが眠いのか力なさげに笑う。
「そうだね。それじゃあ、おやすみなさい」
私がそう言うや否や2人の寝息が聞こえてきた。
――翌日
「いやー、今日は選択種目の体験日だっけ?超楽しみだぁ――!」
涼香ちゃんがトランクから今日着る服を引っ張りながら、楽しそうに笑っている。
「皆は何選んだの?」
「あたしはシーカヤック!」
涼香ちゃんが手を挙げながら元気いっぱいに答える。
どこぞの小学生ですか、と突っ込みたくなるのは抑えた。
「私もそれ!」
優那も嬉しそうに言う。
「あ、じゃあ、もしかしてこの部屋全員…シーカヤックってこと?」
美樹が少し驚いたような表情で言う。
「そういうことだね〜。私も美樹もシーカヤックだし」
私が美樹の問いに笑顔で答えると、美樹の顔にも笑顔が広がった。
「やったね!向こうでも会えるじゃん!」
「だね!」
美樹と涼香ちゃんが手を取って笑い合う。
「こんだけ、修学旅行楽しんだの初めてかもしれない!あ、そーだ!まだ真奈ってさ、あたしのこと涼香ちゃんって呼んでるじゃん?」
「え?うん」
突然どうしたんだろう?と首を傾げる。
「あたしも呼び捨てにしてよ!涼香って」
「…うん!」
私は力一杯、そして今見せられる最上級の笑顔で頷いた。
「や、やばい…。女のあたしでも今のは惚れそうだった」
「私も」
涼香と優那が顔を伏せながら言う。
私は何がヤバいのか分からないので、美樹に助けを目で求めるが…
「自分で考えなさい」
と言われてしまった。
「って、こんなことしてる場合じゃないじゃん!」
美樹が部屋に備え付けの時計を見て、慌てる。
「もう、朝食始まる10分前だよ?早くいかなきゃ不味いよ!」
「本当だ!」
皆は急いでスリッパから運動靴へと履き替える。
ホテル内でスリッパでの移動は禁止されているからだ。
「よし、行くよ!」
美樹の掛け声と共に扉を開け放って駆け出した私達。
そしてなんとか無事に朝食までに間に合った私達は、適当に近くにあったテーブルに席に着いた。
「間に合ったー」
美樹が心底よかった、なんて顔をしながら言うと、他の部屋のメンバーの子がくすくす笑う。
「美樹ちゃんって可愛いよねー」
「ど、どこが」
あまり言われなれないのか、非常に動揺している美樹。
こんな美樹、滅多に見られないよ!
「んー、ルックスも含めて全部、かなー?ね?」
「うんうん」
「る、ルックス!?」
美樹はもう頭から湯気が出そうなくらいに顔が真っ赤になっている。
「その、お、お世辞は要らないから…」
そう言うと、朝食を口にかき込み始めた美樹。
本当に微笑ましい光景だ。
きっと、今美樹の頭の中ではそんなことを凜に言われたい、と言うような感じだろう。
まさに恋する乙女だ。
「ごちそうさまでした!」
美樹は足早に席を立って、一人でエレベーターの所へ向かおうとしたので、私は慌てて美樹の後を追うために席を立った。
すると、涼香は
「あたしらまだ食べれてないし、もう少ししたらいくねー」
と言って、席に座ったままだった。
「わかった!」
私はそれだけ言うと、美樹を追いかけた。