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恋桜 [Cherry Love]  ――完結――
作者: 華憐  (総ページ数: 176ページ)
関連タグ: 恋愛 三角関係 高校生 美少女 天然 
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*86*

「こ、こんばんは。奇遇だね」

私は思いもよらぬ先客に動揺しながらも、平然を装って、自動販売機の前に立った。
そして、財布から小銭を取り出して、適当に飲み物を選んだ。

「あー、最悪。”さんぴん茶〜超甘甘テイスティ〜”とか有り得ないよ…」

出てきた商品に対し、柄にもなくぼやく私。
そんな私に逢坂くんはいつものさわやかな笑顔を向けてくれた。

「ははは。さっき、何かあったの?」
「そ、そんな大したことじゃないの」
「そう?だったらいいけど…」

そう言って、少し頬を赤らめた逢坂くんは目を伏せた。
そしてそのまま

「あんまり無理せずにね」

と言って、その場を去って行った。
私は突然の逢坂くんの対応の変わりように、少し驚きながらも私もその場を後にした。

――翌日、私達はガマへやってきていた。

「私は、もううんざりです!米軍基地問題は戦後から何も変わっていません!基地経済効果、とか言って政府は逃げていますが、そんな効果、今では5%にも満ちません!今でも…」

そう私達に熱く語る比嘉さん。
この方は、戦争時や戦後の話を詳しく話して下さる”風の友の会”という会の中の会員のおばさんだ。
その、あまりにも熱烈な話方、そして、悲惨な過去に男女問わず涙する者も多かった。
そして、その人の話が終えた後は、バスに乗って別のガマ前へ。
そこのガマでは、実際に入ることを許可されているため、皆で懐中電灯を持って中へ進んでいった。
そして、立ち入り禁止ぎりぎりのラインまで来た私達はインストラクターさんの指示に従って、一斉にライトを消した。
すると、先程まですぐ隣で笑っていた美樹の姿さえも分からないほどの漆黒の闇が襲ってきた。
その想像を絶するくらいの暗さに思わず、すぐにライトをつけてしまう者もいた。

「…はぁ。暗かったね」

珍しく美樹がげんなりした様子で言う。

「美樹は暗いところ、苦手なの?」
「ま、まあね。ちょっとぐらい暗くても全然大丈夫なんだけど、前も後ろも見えなくなるようなさっきみたいな暗さはちょっとね…。発狂しそうだった」
「そっか。でも、今日の平和学習はこれで終わりだよ?あとは、ホテルに帰るだけだしね」

私はそうやって美樹を元気づけた。
そして、バスに乗り込もうとしたとき、私は聞いてしまった。

「なぁ?聞いたか?逢坂が綾川さんを狙ってるって話」
「嘘だろ!?俺も狙ってたのに!」
「お前は120%無理だ」
「あ、てめぇ!」
「おい、痛てぇって!」

逢坂くんが私のことを、好き?

そんなこと頭では有り得ない、って分かっているのにどうしても期待してしまう自分がいる。

ただ逢坂くんが初めて話した女子が私だったから、今でもよく一緒にいてくれてるだけできっとそんなんじゃ…。
本当にそう?
それにしては、他の女子に比べてよく特別扱いをされてなかった?
そ、そんなことはない、はず…。

一人自問自答を繰り返す私。
そんな私の様子が変だと気付いた美樹は、すぐにバスの階段で止まっている私を引っ張り上げて無理やりバスに乗車させた。

「またあのこと〜?」

美樹が暢気に語調を伸ばしながら私に尋ねる。

「う、ううん。別のこと」
「あ!もしや、もう真奈の耳に入ったの?」
「え?美樹も知ってるの?」
「そりゃあ、まあ。あたしが思ってるので間違いなければ」
「ちょっと耳打ちして」

そう言って私は美樹の口元に耳を寄せる。
すると、美樹が聞き取れるか聞き取れないかの声で

「逢坂」

と呟いた。
私はその言葉に顔を真っ赤にしながら、首を縦に激しく振った。

「やっぱりね〜」
「い、いつから知ってたの?」
「昨日の夜。メールでの報告があった」
「さ、さすが情報屋」
「まぁ、普通に信憑性高いし、今のところのあたしの判断では、あなたたち2人は両想いですね」

最後の部分は隣の凜や逢坂くんに聞こえないように、呟くように言った美樹。
その言葉を言ったあとの美樹は、本当に意地悪そうな笑みを浮かべていた。

「むー、からかわないでよー」
「からかってないわよ。協力する!」

そう言って、大きな目でウィンクを決める美樹。
そんな美樹を見て、顔を真っ赤にしながら私は車窓へと目を向けた。

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