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*94*
「修学旅行3日目、お疲れ様でした!平和学習を通して、たくさんの沖縄を知ることが出来たと思います。そして、今日のことを忘れないでください。…いただきます!」
「いただきまーす」
学級委員の掛け声と共に、始まった夕食。
皆楽しそうに夕食を楽しんでいる。
私もその一人だった。
「あ!あたしがこれ入れるからみんなお皿頂戴」
「ありがと〜」
「ほい」
「そういえば聞いた?なんか西中がさ…」
そんな声が私の耳に聞こえてくる。
でも、私の視線はある人に釘づけだった。
そう、そのある人といのは――逢坂くんだった。
彼とは自動販売機前で会って以来全く話す機会が無った。
それにデマだとは分かっていても”あの話”を期待してしまう自分が居て、逢坂くんに話しかけることによって何かが変わってしまうのではないか?という恐怖心に囚われている所為もあり、自ら話しかけることが出来なくなっていた。
また、逢坂くんも私と同じような状況なのか、全く私に話しかけてこなくなった。
ん?
私と同じような状況って…まさか、ね?
「おーい、真奈?はい、これ」
「え?」
目の前にいきなりおかずが盛られた皿が現れて間抜けな声が出てしまった。
「ごめん〜。さっきからずっとぼーっとしてたからさ」
そう言って、優那が私の前にお皿を置く。
「ご、ごめんね。私も手伝うよ」
「いいのいいの〜。座ってて。それに私もさ」
「ん?」
私は私の左隣にいる優那を見上げる。
すると、彼女の赤く染まった頬が見えた。
「緊張解したいんだよね」
一瞬何を言っているのかと思ったがすぐに理解した。
この後開催されるリクリエーション。
これが終われば、彼女は石島くんに告白をするのだ。
「頑張れ!」
「うん!」
笑顔で頷く彼女に私も笑顔になる。
こうして、私達は夕食を存分に楽しんだのだった。
―レクリエーション開幕
「さーて、今日は皆さんが待ちに待った…トキメカNIGHT開催です!」
現在司会を務めている学級委員の南杏奈ちゃんのその言葉と共に一斉に歓声が上がる。
「イェーイ!」
「待ってましたー!」
「さてさてー、この輝かしき舞台を最初に飾ってくれるのは〜!!なんとこの3人です!どうぞ!」
こうして始まったレクリエーションは2時間を経て終幕へと向かった。
「…えー、この楽しかった時間も先程の出し物を最後としまして、閉幕とさせていただきます!ありがとうございました!」
「イェーイ!!」
「フォー!!」
口笛やらなんやら、あれこれと歓声が飛び交う。
そして、十分に盛り上がった後、一気に現実へと引き戻される。
「はい、皆さん。盛り上がってるところ失礼しますね。今後の予定なのですが、部屋に帰った後は、お風呂に入って22時30には就寝とします」
「え〜?」
「もうちょっと長くしてほしい〜!」
「駄目です。そういうわけですから、扉に近い人から順々に退場していってくださ〜い」
皆不平不満をこぼしながらも、素直に先生の指示に従う。
ここが頭の良い人たちの行動だ、と思い知らされる。
「そ、それじゃあ私、い、行ってくれね!」
最後の最後まで噛んだ、緊張した様子の優那が私たちの元を去って、石島くんの方へと向かっていく。
「いよいよだ、ね」
涼香までもその緊張が伝染したのか若干言葉に詰まっている。
「そうだね」
私の声も思わず緊張の色を帯びてしまう。
だが、美樹だけは冷静に
「明日の国際通り、2人で回るーとか言われたらいいよね」
と冗談めかして言っている。
情報というのは、ここまで人を落ち着かさせるものなのだ、ということを初めて感じさせられた瞬間でもあった。