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*101*
「―――よくやった。テット。そしてイリヤ」
「やった〜!褒められちゃった♪」
「口を慎みなよテット。クローディア様の前だよ」
玉座にて、満面の笑みを浮かべるクローディアにテットは嬉しそうに飛び上がった。
そんな彼女を見て、イリヤは心底うざそうに眉をひそめた。
そこへ近寄るプラチナブランドの髪に緑色の瞳を持つ幼気な少年――レオン・ミックが恭しく現れた。
「この2人がいるということは贄、つまりドラゴンが手に入ったということですね」
「ああ。これで目的に一歩近づいた」
ザッと息を吸うかのように自然にレオンはクローディアに膝間着く。
彼は優しげな笑みを浮かべてレオンに告げる。
レオンは少し顔を上げるとちょっぴり残念そうな顔をしていた。
「失礼ながらも――僕、ドラゴンというものをまだ見ていないのです。ここで見られたならぁ、と思っていたのですが」
「あたしが収穫したんだからアンタはでしゃばらなくていいの!つまり、アンタは見る必要なんてなーいのっ」
「相変わらずですね、その気持ち悪いぶりっ子口調」
先ほどのクローディアへの毅然とした態度から一変、テットの言葉を聞いたレオンは嫌味くさい表情を浮かべる。
イリヤは苦笑しながら、ポンとレオンの肩に手を置く。
「まぁ、仕方ないさ。テットのこのうざい様子は変わらないんだから」
「あーらっ。攻撃しかできないテメーらなんかに劣るとでも思っていますのん?あたしのブレイブは絶対クローディア様のお役に……」
「いい加減にしろ貴様ら。クローディア様の御前だぞ」
そう荘厳な声を響かせるのはセミロングの金髪に鷹の様に鋭い緑の三白眼の大柄な男――ゴットフリート・フォン・エルリックスハウゼン。
彼の姿を見るなりギョッとした様子で今まで言い争っていた3人は一気にそっぽを向いた。
「我の姿を見るなり、遠方を向くとはいい度胸だ」
「いいいい痛いってばぁっ。やめてよーゴットフリートっ!」
「事の根源は貴様だろう」
キュウッとテットはゴットフリートに鼻を抓まれる。
あまりの痛さにじたばたするが体格の差は残酷だ。
どうすることもできない彼女を見て笑うイリヤとレオン。
バッとゴットフリートが見ると、再び真顔に戻る。
同じ目に逢いたくないのだろう。
すると、玉座から笑い声が聞こえた。
「フッ……。放してやれ、ゴットフリート」
「ですが、主」
「こいつらの件かを見るのも少し日課に近くなっているからな。こいつらにも悪意があるわけじゃない」
「そういうことなら仕方あるまい」
クローディアの言葉を聞いてゴットフリートはパッとテットの鼻から手を放した。
すっかり鼻が赤くなっているテットは痛そうに鼻を抑える。
すると、イリヤは当たりを見渡した。
「……あれ、そういえばリムがいない……」
「失礼します」
淡々とした声が玉座から入ってくる。
眼鏡をかけ、コートを着ている白い髪型にロングヘアーの女――リム・アミラスは荷台をガラガラと引きずってきていた。
「ようやく来たか」
「後れを取らせて申し訳ありません」
クローディアの言葉に間髪入れずリムは謝罪する。
「いい」と手で合図した彼を見てリムはレオン同様膝間着く。
「…これは……!」
リムが荷台で持ってきたのは美しい結晶で体を覆われていたくじらだった。
だが、そんなくじらの意識はない。
そんな彼女を見てレオンは思わず息をのんだ。
「――この奥は神殿」
そう言い、立ち上がるとシャット玉座の後ろにあった分厚い赤いカーテンが開いた。
そこには壮大な柱が立っていた。その柱には古文書のような字と歴史がかった絵が描かれており――その端には何かを調節するような機械と管があった。
そしてクローディアは結晶を恍惚とした笑みで触れる。
「……そろそろお前たちにも話さないといけない。この神話を。そして我ら神光国家の使命を――――……」
No19 神話