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*102*
―――昔々、もっと昔。
かつての神光国家は今よりもっと栄えていました。
溢れる資源、賑わう人間、そしてなにより栄えていたその象徴は6つのソウルブレイブでした。これらは代々力が適合した人間が使うことになっています。
そして、それらを継承させるものが3人。
国の唯一の姫とそれを守る騎士、そして2人に良くしていたドラゴン。
なぜならこの3人は【神】を復活させるための鍵だったからです。
―――神。
それは昔も今も神話となりつつある幻。
ですが神は一度だけこの神光国家に降臨しました。
それは、人々が気がや戦争で苦しんでいた時代に【3人】があることをしたためでした。
降臨した神は生命の寿命を延ばし、病気を打消し、争いを止め、その国の平和を守る圧倒的な力がありました。
ですがその絶大なる力には代償がありました。
それは、贄であるドラゴンの血肉を捧げ、姫の心臓を抜き取り、神の憑代となる騎士の肉体を捧げることでした。
ですが、今までそれが当たり前に行われようとしていました。
しかし、それを良しとしない騎士はドラゴンを他国に解放し、姫も他国に亡命させようとしました。
もちろんそれは許されません。
いくらドラゴンと姫と騎士がどんなに厚い縁で結ばれていようと、民と比べればちっぽけなものだということはわかっています。
それを良しとしない国王はソウルブレイブ使い6人に3人の捕縛を指示しました。
それは呆気なくできました。
戦えるのは騎士だけだったのです。と言っても騎士は圧倒的な剣技で5人のソウルブレイブ使いを殺してしまったのです。
愛する姫と信頼していたドラゴンを守るために。
ですが、そのことを知った民は怒り狂いました。
民までも姫とドラゴンを捕えてしまいました。
国民総出でドラゴンの血を抜き取りそれを国王に献上しました。
国王は満足げに笑い、そしてまた言うのです。
「次は姫の心臓を抜き取れ」
ドラゴンの死に意気消沈していた2人。
ですが、落ち込む余裕はありませんでした。姫が狙われているからです。
あるとき、騎士はあることを思いつきました。
「そうだ。この神殿を破壊して神自体を消してしまえばいい。そうすればクローラも死ぬことはないし、ドラゴンも死ぬことなんてなかった」
クローラというのは姫の名前です。騎士はジークリアと言います。
その案を姫に伝えました。ですが、姫は首を横に振ります。
ひどく驚いた騎士に、姫はこういうのです。
「ごめんなさい。ジークリア。もう……私の生きたいという、あなたと一緒にいたいという我儘が貫けません。――民が……民が苦しみ嘆き死んでいくのをもう見ていられないのです。どうか、ごめんなさい」
姫は、神殿を庇うように騎士に立ち塞がりました。
そして騎士は姫の言葉にハッと息をのみます。
持っていた剣を落としてしまうほどに。
ですが、背後から国王が剣を持って姫に駆け寄る姿が騎士の視界に入りました。
「クローラ!!!!」
「――――……ジーク……リア」
叫んだ時には美しい姫の肢体には剣が貫かれていました。
国王は歓喜し、血塗れになりながら姫の心臓をあさっていました。
ついに、騎士の心は限界を迎えました。
即座に国王の首を飛ばし、国王の懐に入っていたドラゴンの血のカプセルを握ると冷たい目で城を囲う様に騒ぐ民衆に呟きました。
「……この、ゴミ虫が」
そのあとの騎士の行動については深く描かれていません。
騎士は神光国家を抜け、違う国へ向かったそうです。姫の亡骸も平和なその地へ埋葬しました。
騎士もそのあとドラゴンと姫の後を追うように亡くなりました。
騎士たちが去った後の神光国家は時間が流れるとともに穏やかさを取り戻していきました。
ただ、その王族や軍人の子孫であるソウルブレイブ使いは騎士が行った所業をよく知っています。
彼らは二度とこういうことがないように誓いました。
「再び神を復活させる」
と。
それは、500年たった今でも続いています。
違う世界にいる姫と騎士とドラゴンを捕え、神を復活させてこの国を真の平和へと導くのです。
【古文書〜マターニャ・クリスタの書から抜粋。】
No20. 悲しき記録