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*122*
「……この、氷の主で編み出した俺の結構お気に入りの技を看破されんのは初めてだよ……っ」
「へえ、だったらさっさと降参……」
勝気な笑みを浮かべた仁が言いかけたその時だった。
バシィィィン!と大きな音を立てて仁の頬に何かが直撃した。
そして仁は後方へふっとばされてしまった。
「仁ちゃん!」
「何とか……大丈夫だ」
慌てて美也子が仁に駆け寄る。
幸い、仁は吹き飛ばされただけで済んだ。
目を薄くしながら秀也はイリヤを見る。
彼の手には氷の鞭が握られていた。
彼の顔は不機嫌一色だった。
「あーあ。確かに俺は古文書とか神には興味ないけどさー。このままじゃあクローディア様んとこ合流できないじゃん!!」
「ぐっ!」
パシン!と放たれた鞭を如月で受け止める。
しかし、鞭が生きているかのように如月に絡みつく。
そしてその鞭は秀也のもとへと向かった。
「どうなっている!?」
このままでは危ない、と判断した秀也は如月を手放す。
その瞬間、如月は一瞬にて凍りつき、パキン、と破裂していった。
その様子を楽しげに見てイリヤは言った。
「凍解の鞭“アブソリュート・グレイシア”。この鞭に絡み疲れたら氷と化してみんな消えるのさ!」
「避けろ!!」
――――ビュビュビュビュ!
右方左方に滅茶苦茶に鞭を振り回すイリヤ。
秀也は2人に叫ぶ。
「うっ」
「きゃあっ」
紙一重でその攻撃をよける。
イリヤは高笑いしながら鞭を振るうのを辞めない。
「ははははははっ!これでみんな死ね!!」
そう叫んだ瞬間だった。
グサッと体をえぐられる感触がした。
そして、次の瞬間は弾丸のような痛みが体に走る。
生理的に口から出る血を抑えながらイリヤは膝から思い切り崩れ落ちた。
「何で……何でだよ……今までお前ら俺等の攻撃よけてたじゃんかよ……。なんでこうして俺を刺して……」
「わからないのか?氷と水と光の乱反射だ」
「乱反射……?いつ……から」
倒れるイリヤの上に秀也が現れる。
背後から仁がイリヤの心臓を貫き、秀也と美也子は銃弾で急所を狙撃していた。
そこで陽気な笑みを浮かべる仁が槍を肩に掛ける。
「秀也が氷のドームぶっ壊した時からだよ」
「秀ちゃんと私はあれからずっと氷を細かく破壊して少しでも水が出るように銃弾を撃ち込んだの〜」
「この通路の天井は開いていて太陽が出ている。そして、通路を支える柱にはすべて鏡が設置されている。だから水と光の乱反射、つまりお前でいうところの氷人形みたいなことをさせてもらった」
一回の説明を聞いて酷く押しつぶされたように唇を噛み締めるイリヤ。
そして血をふきながら至極悔しそうに目をギュッとつむった。
「……そんな子供騙しに俺は……っ」
「悪いな。ほんとならサシでやりたかったけどそれどころじゃなかったからな」
仁は苦笑しながらイリヤを見る。
イリヤは震える右手を見た。
視界も晴れない。そろそろ死期が近いのだろう。
だがここで屈するわけにはいかない。
あえて、イリヤは嗤った。
「……俺を倒したところでクローディア様は絶対に倒せない!それに、テットが今頃日本にゴットフリートとリムを送り込んでるだろうしね!」
「!?どういうこと〜……?」
美也子は驚いたように半歩下がる。
その行動を待っていたばかりにイリヤはさらに笑う。
「……ストライドの多い人間を……少しでも攫ってこの国の兵力にするのさ!あーあ、かぐやって子を……」
見てみたかった。
そう言い終える前にイリヤの目に光が失われた。
イリヤの死骸を見て秀也はギュッと拳を握った。
「……軽々しくその名を呼ぶな」
No27 襲撃者
「それじゃあ〜転送するからぁっ。速く行きなさいよねこのクローディア様の下僕奴隷共っ」
そう言ってテットはひときわ大きい黒い穴をゴットフリートとリムの前に現れさせる。
リムはテットの物言いが気に入らないのか彼女をすごく睨みつけた。
だがそんな彼女を諌めるようにゴットフリートはリムの頭をなでる。
そしてクローディアはそんな2人を見て誇らしげに言った。
「頼んだぞ、2人とも」
「主の言うことは必ず遂行する」
それだけ言うと2人は、黒い穴の中に入っていった。