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*124*
No28 悲劇の再来
「……花京院さん、これでもう殲滅者100体目だぜ?もういる気配ないし、少し休もう」
「さんせー。俺も疲れた……」
「ふざけたこといってんじゃねーよ。まだいるにきまってるんだろうが。……ったく、どいつもこいつも……」
茹だるように瓦礫に座り込む聖。
聖に続くように櫟も座り込んだ。
そして、口では悪烈なことを言いながらも100体の殲滅者をぶった切りにしてさすがの花京院も疲れているのだろう。
彼もどっかり地面に座った。
2人は現地指揮である雁渡の命令で市街地から北東の場所へ来ていた。
そこにはうじゃうじゃ羽虫のように蠢く殲滅者がいた。
聖と櫟と花京院で難なく駆逐したのだが体力はやはり減る。
(……ったく、俺も竜堂サイドへ行きたかったぜ。そうすりゃあガキのお守りみてーなことや別の奴に命令されることなんて……)
ハアッと花京院は思わずため息をつく。
そして同時に自分を認めてくれた少女の顔が脳裏に浮かんで少し心配になってくる。
そんな思いを断ち切るかのようにシャキッと立ち上がる。
「……お前ら、もう十分休んだろ。とっとと別の場所行くぞ。そこにも殲滅者がいるはずだからな」
「え〜。もうですか〜?」
「俺は回復したぜ櫟!」
「足ガクガクだけど」
櫟の軽口に「何をー!?」と飛び掛かりそうだった聖の足が止まった。
そして顔の血の気をさっと引かせたかと思えば、目の前を指差す。
「……花京院さん、櫟、あれ………」
「あ?」
鬱陶しそうに聖の指差す方向を振り返る花京院。
そこには軍隊のように規律正しくガサガサとこちらへ一気にやってくる殲滅者。
数はきっと100なんて超えているだろう。
あまりの数に櫟の喉奥からひゅっと息が漏れ出す。
「……まさか……!」
花京院は思わず声に出す。
驚いたのは殲滅者の数ではない。
その一番前にいる殲滅者の頭に乗っている女の姿に驚いていた。
「……?どうしたんですか?花京院さ〜ん」
「……下がれ」
花京院は歯を食いしばりながら心配そうに顔をのぞかせた櫟に唸るように呟いた。
訳が分からずその場を離れない彼にもう一度叫ぼうとした瞬間、だった。
「雷の祝杯“ボルト・ティーンパーティー”」
「――――――っ!!!!」
バリバリバリ!と、突如の雷撃が櫟を襲う。
致命傷ではなかったものの、初めての攻撃だったため、カクンと膝をついてしまう。
聖は慌てて櫟に駆け寄る。
「おい、しっかりしろ!」
「―――私のこと、覚えてる?空悟?」
「……やっぱりテメェかよ、リム……!」
気が付けば3人と殲滅者の隊群との間は5メートルほどになっていた。
女性の声に凄む様に花京院は顔を上げる。
殲滅者の頭からトン、と音なく着地するリムは無表情で花京院に告げる。
「クローディア様の命により、ここでストライド量の多い人間を攫い及び、邪魔ものは抹殺せよとのご命令よ」
「……リム、テメェ………っ!」
―――空悟、ずっと一緒よね?
―――……お前がそう望むならな。
―――当たり前じゃない……。
――――――……あの記憶が、砕けていくように思えた。