完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

デッドバスター 
作者: KING ◆zZtIjrSPi.  (総ページ数: 151ページ)
関連タグ: 友情 バトル 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~ 110~ 120~ 130~ 140~ 150~

*31*

――――飛来郡司。
 アイツは、オレの大事なものを簡単に見つけ出して手に入れる。
 かぐやの件だってそうだ。
 オレが欲しかったものをいとも簡単に手中に収める。
 かぐやを見つけたのもアイツだ。
 オレのほうが。
 オレのほうがあの子を想ってきたのに――――……。









「勇魚さんからはもう1つ選択肢があるらしくて、今ここで投降したら今までの幻“しょぎょう”を見逃してくれるって〜……。だから……」
「……投降はしないわ」

 美也子の言葉にぴしゃりとかぐやは反論する。
 そして静かに秀也の方へ視線を向ける。
 彼は何も語ろうとはせず、ただ如月とガンスタイルを構えていた。

「どちらにしろ、いいことはなさそうだしね」
「……ご名答!」

 ズギャ!と仁はかぐやの背後から現れ、彼女の鳩尾に一撃を入れようとした。
 だがかぐやは彼の槍を掴み、高く宙返りをすることでその一撃を避けた。
 が、空中で避けることに専念した、つまり隙だらけの彼女に美也子は輪廻をすかさず打ち込む。

「―――輪廻は錯乱型。いくらかぐやちゃんでも避けられないよ」

 ドドドドドドド!!
 美也子の銃が火花を拭きながらかぐやに襲い掛かる。
 かぐやは目を見開くと背後に隠し持っていた斧を一振りする。

「舐めないでよね!これぐらいちゃんと対処できるわ」

 カンカンッ!とかぐやは斧で自らの脅威になる銃弾を弾き飛ばした。
 だが、その背後には如月を振りかざした秀也がいた。

「私はあくまで囮。秀ちゃんの気配に気づかれないようにするための。まぁ、一撃ぐらいは当たってほしかったんだけどね〜……」

 美也子は誰にも聞こえない声で呟いた。
 かぐやを攻撃しようとする秀也を悲しそうに見つめた。

(……秀也。それでいいのかよ。せっかく会えたのに、こんなん不憫じゃねーかよ……)

 表情を変えずに仁は上を見上げていたが、拳は強く握りすぎていて白くなっていた。
 今の秀也の顔は何にも比喩できない、淡々としたものであり――どこか怒りと寂しさを混ぜたようなものでもあった。

「―――リザルテ!!」

 バッとかぐやは秀也に手を向ける。
 ドドドドドド!と光球が秀也に襲い掛かる。
 まさかリザルテによる銃無し攻撃“ノーガンアタック”が来るとは思っていなかった秀也は、まともにその攻撃を喰らってしまった。
 だが、振りかざされた斬撃を避けきれなかったかぐや。

「ぐ……っ」
「うっ……!」

 ズザザッとお互い膝をつく。

「秀也!」

 仁が秀也のもとへ駆け寄る。
 するとすぐ目の前にいるかぐやを見て、好戦的に笑う。

「任務に私情は挟むべきじゃねーかもだけど。オレさ、お前と一度戦ってみたかったんだよな。一対一“サシ”で」
「望む……ところよ!」

 ダッと2人が一歩踏み出した。
 すると、そんな2人の間にドッとアダプター専用の武器、天羽が突き刺された。
 天羽は攻撃力こそ乏しいが頑丈で素早く攻撃できることに定評があるブレイブだった。

「そこまでだ」

 タン……。と静かに2人の間に入り、天羽を抜くのは髪は色素の薄い金髪の青年――草薙迅(くさなぎじん)だった。彼はAランクのオールラウンダーという実力者である。
 来たのは彼だけではない。槍を構えている仁の背後からは細身だが筋肉のある体つきに精悍で整った顔立ちの大人びた男が歩み寄っていた。

「草薙さん……瀬良さん、なんでここに!?」

 かぐやはひどく驚いたように2人を見上げる。
 瀬良、と呼ばれた男は三城隊に向かって大きく声を上げた。

「梶原長官殿の命令により、只今参上した!」

 彼は、瀬良怜音(せられおん)。
 瀬良隊の隊長を務めるAランクのガンナーだ。
 そしてそんな彼の背後から……。

「か、梶原さんの命令は竜堂さんに加勢してこの戦いを止めること。そして彼女を本部へ連れてくるようにとの命令です」

 ホストの様な眉目秀麗の容姿を持つ青年―――薔薇園麗(ばらぞのれい)がおずおずと現れた。
 彼も草薙と同じく瀬良隊の一員であるBランクのアダプターだが、かなりの実力者である。
 ただ唯一の弱点は……。

「―――おい」
「ふぎゃっ!」

 ドガッと草薙に思いきり尻を蹴られる。
 その痛さに思わず涙目になる麗だったが草薙は呆れたように溜息をついた。

「女が2人いるからって物怖じするな。鬱陶しい」
「ご、ごめん……!でも俺やっぱり…」

 麗は何か言いかけたが草薙による無言のプレッシャーで言うのをやめた。
 はあ、と悲しそうに瀬良はため息をついた。

「締まらねえ……。いっつも締まらねえ……」

 麗は大の女性苦手なのである。

30 < 31 > 32