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*34*
「見ればわかるわ。Cランク隊員の制服着てるもの。……えーっと、私は……」
「バスターのエース、竜堂かぐやさんですよねー。色々噂になってますよ。まぁ、情報源は来栖先輩ですけど」
「何広めてるのよ仁!」
櫟の言葉にかぐやは思わず憤慨した。
情報を回すのが速すぎる仁に。
道理で妙に視線を感じると思った。
まあ、かぐやが他の隊員の視線に気が付いたのはつい先ほどだが。
「でも、8年間幻だったんですよね?……俺からすればただの逃げ出した臆病者にしか見えないけど」
「……!」
どこか毒を吐くような櫟の物言いにかぐやの眉が少し動いた。
「今更戻って何がしたいんですか?上層部に何か言われたから?飛来さんに諭されたから?……それとも………例の殲滅者フルボッコ事件の犯人だってばれたく無かったからの口封じですか?」
「え……あの事件の……?」
「かぐやさんが……?」
「つか、幻初めて見たー……」
わざと大きな声を上げる櫟。
そば耳を立てていた隊員がいるいないに関わらず、周りがざわつき始めた。
櫟はわざとらしく「あ、すみません。つい言っちゃいました」と小さく舌を出した。
かぐやは眉をピクピクさせながらまだ冷静さを取り戻していた。
「……アンタ………郡司並みに性格悪いわね……!」
「いやぁ〜飛来さんほどじゃないですよ!でも並みにって言われるなら秀也さんのほうがよかったなぁ!あ、俺、正隊員になったら秀也さんの隊に入りたいんですよ」
「へー……」
聖がいたら確実に彼に飛びかかっているこの場面。
どうしようかとかぐやが思考を練っていると、櫟が訓練室を指差した。
「―――そうだ。どうせ暇なら1回勝負してくれませんか?元エースの実力知っておきたいんですよ」
「上等よ。返り討ちにしてあげるわ」
かぐやは櫟の誘いに即答した。
そして周りの人間は思った。
―――元エースに啖呵売るなんて……っ!
と。
※
「おうわっ」
「どうした!?郡司」
パンッ!と何かがはじけ飛ぶような音がする。
その音の根源は郡司が持っていたかぐやの首飾りだ。
慌てて梶原が駆け寄る。
「さっきストライドを込めたら……拒絶されました」
「拒絶!?なぜストライドを込めたんだ?」
「もしかしたらですけど……帝さん、ソウルブレイブになったんじゃないかって思って」
「ソウルブレイブに!?」
―――ソウルブレイブ。
ブレイブの使い手が全ストライドと精神の組み込むことで作られる最高峰のブレイブ。
その力は通常のブレイブの何倍も力を発揮するが、その代償として製作者は命を失う。
「……もしそうだとしたらなぜかぐやはそれを使わない?」
「使わないんじゃなくて使えないんじゃないんですかね。もしかしたらこれがソウルブレイブだってことも知らないかもしれない――というかこれもソウルブレイブじゃないかもしれないですしね。何とも言えませんよ」
「そうか……。こちらも分析してみたんだが……。その中身が凄い密度のストライドだった。その首飾りは【何かを開ける鍵】だと解析された」
梶原の言葉に郡司は静かに首飾りを机に置いた。
「……見た目通りに……ですか」
「まだ何とも言えないが。そろそろ、かぐやに返してあげよう。今日だけだと、この結果しかでない」
「そうですね。じゃあ届けてきますね」
郡司は指に首飾りを巻き付けると軽やかに長官室から出て行った。