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*5*
「殲滅者だ――――っ!!」
1人の掛け声によって周りの民衆たちは逃げ惑う。
町に、20メートル級のモグラのような形態をした殲滅者――ヴォルングが現れていた。
ヴォルングとはストライド量の多い人間をさらう捕獲用の殲滅者で攻撃力がない分装甲が厚いという結構厄介なものであった。
攻撃力がないといっても一般人に如何こう出来る相手ではなく。
人々はバスターが来るのを信じて逃げるしかないのだ。
「くそ、何でまだバスターは来ないんだよ!!」
「きっとここは本基地からかなり離れているのよ、きっとそれで……!」
「だからって遅く来ていい理由にはならないだろ!」
焦りといら立ちが募る民衆。
すると、悲痛な叫びが聞こえる。
「誰か!うちの子を……」
瓦礫に埋もれた我が子を助けようと必死な母親が民衆たちの目に入る。
しかし瓦礫が大きすぎて助けられそうにはなかった。
このまま時間が過ぎればここにもヴォルングが来る。
「どうすれば……」
「殲滅者が!」
子供を助けようか迷っている途中、ついにヴォルングが来てしまった。
ストライドを狙ってやってくる。
その巨大さに人々は命を諦めかけていた。
「も、もうお仕舞だ……」
ガクッと膝をつく老人。
その時だった。
背後からビュッと風のように一筋の影が過ぎ去った。
「え……。今の……」
「あ!あそこ……」
民衆がボーっとしている中、1人の女性が少し前を指差した。
そこには宙に浮かびながらヴォルングと対峙する斧を持った可憐な少女が存在した。
少女は勝気な笑みを浮かべる。
「さぁ、覚悟はできてるんでしょうね!?」
少女の姿を黙認するが否や、ヴォルングは鋭い爪で少女に襲い掛かった。
だが少女はその攻撃をよけヴォルングの体に乗り移る。
――――斬!!
と、斧で横一線に切り裂いた。
「い、一撃で……」
呆然と民衆はその光景を眺めていた。
一撃必殺。
その言葉が似合う光景だった。
仕留められたヴォルングの瞳にはもう生命としての光が失われていた。
少女は、スタッと着地すると民衆のほうを振り向いた。
そして明るい笑顔を向ける。
「もう大丈夫だから」
その笑顔は8年前の“あの子”を彷彿させるものだった。
「あんたはもしかして……」
「じゃっ、わたしもう行かないとだから。……ほかのバスターにばれると危ないし……」
「……え…?」
最後の声が小さくなった少女に民衆は首をかしげた。
去ろうとした少女の背後に飄々とした雰囲気の好青年が何食わぬ顔で立っていた。
「まーた派手にやったなぁ、かぐや」
「bhjklohfgy6bhそ;fd!?」
突然の不意打ちにかぐやは声にならない声を上げた。
突然の声にギョッとしたかぐやだったが、すぐに我に返った。
この声は、腐れ縁で幼馴染で。
ずっと傍にいたはずだった、家族同然の存在。
「郡司……!!」
「よっ。かぐや、8年ぶりだな。……そんでまぁ綺麗になったもんだ」
―――現在Sランクバスター、飛来郡司(ひらいぐんじ)はビッと指を額に当てる。
そんな彼を竜堂かぐや(りんどうかぐや)は目を丸くしながら見上げていた。