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*57*
「頼む……、俺をもう1人にしないでくれ!アンタしかいねぇんだ、俺が唯一信頼できる人間は……」
「悪ぃな……空悟……。俺はもう……無理そうだ」
そう言ったあの人は嗤っていた。
血が。あの人の腹部から染み出すように出てくる血が止まらない。
素人から見てもわかる。
死。この言葉が頭をよぎる。だけど俺はそんなこと認めたくなかった。
「うるせぇ!いいか、もうしゃべるな!すぐに医務室で手当てすればすぐにこんな傷、治るんだよ!」
「もう……いい……。自分の命の終わりぐらいわかるからよ……」
「うるせえ!!今度そんなこと話したらぶっ飛ばすからな!アンタは……!」
「……妹を、頼む……」
「は……」
今とは関係ない言葉。面食らった俺はあの人の顔を覗き込む。
あの人は力強く笑って首に下げていた首飾りを握りしめる。
「……まだよ……9歳なんだ……。ここで俺が死んじまったらアイツは……きっと自分を責めちまうだろうな……」
「そう思うんだったら生きろよ!なぁ、―――――帝さん!!!!」
「最後の頼みだ。空悟。―――――――――――――――……」
そう言ってあの人の体は力が無くなった。
ザァァァァァ……。と雨が降る。
泣いている?違う。違う……。
「…………!」
ドサッとあの人を下してしまう。
見下ろすと、あの人の荘厳たる雰囲気が。覇気が。
消えていた。
これが、死か。
――――泣いていたのは……!
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
この後の記憶はない。
おぼろげに、俺が担架に乗せられたことしか記憶にはない。
No9 白と黒の世界
「っ!」
思いっきり。体が仰け反るぐらいの勢いで体を起こした花京院。
そこは、普段バスターの泊まり込み時によく使っている休憩室の一室のソファー。
ここはあまり人が通らないので安心して眠れるのだ。
「クソが……。最近クソみたいな夢しか見ねぇ」
「魘されてたわよ」
「!!」
女性特有の高い声に驚いた花京院はザッと後ろに回り込み、臨戦態勢に入る。
彼を脅かした張本人――かぐやは腰に手を当てながら言う。
「わたしは戦いに来たんじゃないわ!話をしに来たのよ!」
「……そうかよ。俺には話すことはねぇ」
「にいさ……じゃなくて、竜堂帝のこと。教えてくれる?資料室のページ見たら破かれた形跡があって続きが読めないの。昨日の様子からアンタなら知ってるって思って」
「……そんなやつのことなんざ、知らねえ。他人と関わらない俺が何で知ってんだよ」
「昨日、“竜堂”に動揺してた」
コップにコーヒーを注ぎいれる花京院の手がピタッと止まった。
その表情は覗うことはできない。
だが、表情の代理と言わんばかりに手は震えていた。禁忌のような。タブーのような。
「……なんのことだかざっぱりだな。もう帰れ。テメェの面見てるとイライラする」
――――やめろ。これ以上、俺に入ってくるな……!
どうせ、どいつもこいつも俺をバカにして1人にするんだろ!?
だったら最初から近づいてくるな邪魔うっとうしい消えろ、消えろ……!
「ウソ!アンタは少なくとも兄さんのことを知ってるわ!だって、兄さんに反応したときのアンタの目、優しかったもの!」
「……テメエに、何がわかるってんだ」
その刹那、かぐやの頸動脈に如月が飛ぶ。
そして、バスター本基地の一部が大きな轟音を開け、破壊された。