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*81*
(兄さんの日記……!)
ドクン、とかぐやの心臓が鳴り響く。
ギュッとベランダの杭を握ってゆっくり立ち上がる。
秀也は郡司を射殺すような視線を送っていたが、邪魔はしないらしい。
ガンスタイルを下していた。
すると、スッと雁渡が手を上げて会議室の出口へ向かっていく。
「悪いが私はここで下がらせてもらおう。……私はいてはいけないようだから」
そういうと、コツコツとヒールの音を響かせながら会議室から出て行った。
それを見送る郡司は日記のページをめくると少し微笑んだ。
「いろいろ書いてるよ。かぐやのこと。斧の使い方上手になったとか、弟みたいなやつが出来たとか、友達出来たってこと、よく書いてる」
「……それを見ようとしたら帝さんに怒られたな」
キィ、と車いすを引きながら花京院は会議室に入っている。
ブースにいる梶原の声が聞こえるが彼はあえて無視し、かぐやの顔を見た。
かぐやは不思議そうに彼の顔を見る。
「空悟!アンタ、医務室にいたんじゃないの?どうやってここに来たのよ」
「俺の甘っちょろい監視役が運んでくれたぜ」
※
「……おや、霊奈。君もここを通ったのかい?」
「………はい」
「何か不満げな顔だね」
会議室を出た雁渡は花京院によって無理やりここへ運ばされた西園寺に声をかけた。
彼女は花京院の行動が気に入らなかったらしく、目つきを鋭くさせていた。
おおよそのことを雰囲気で理解した雁渡は腰に手を当てて、西園寺とともに帰路に入る。
「―――後で梶原長官に叱られてしまいます………」
「今回のことは仕方ないさ。梶原さんなら許してくれるだろう。――……それに……」
「……それに?」
何か言いかけた雁渡に西園寺は彼女の顔を見上げ、首をかしげた。
フッと彼女は微笑を浮かべる。
「今回の件であれば花京院は最高戦力“トップエデン”が止めても止められなかったと思うよ」
No15 帝の日記
――――――この日記を読んでいるということはきっと、俺は死んでかぐやを生涯孤独にさせているということになる。それをまず謝ろうと思う。
そして日記なんてマメなものをあまりつけられない俺が書いたのもちゃんと理由がある。
明日起こる大規模な侵略があるからだ。
まずはそれを止めたい。
「兄さん……?8年前の侵略を分かっていたの!?」
「……我々上層部は知っていたんだ。すまない、かぐや」
梶原がすまなそうに口を挟んだ。
かぐやは気にしてない、と言いたげに首を横に振った。
「じゃあ続きを読むな」
―――かぐや。俺がこの侵略を知っていたのは、俺等の血筋に関係ある。
実は俺たちは元は神光国家【ノータス】王家の子孫だ。何百年という時を超えて、その地は俺たちにめぐってきた。
お前が持っている古文書と首飾りのような王の鍵がその証拠だ。
だがいくら王家の子孫と言っても世界を開ける王の鍵を使えるほどの強い血を持っていなければ意味がない。
強い血を持っていなかったせいで俺たちの両親はそれを狙った殲滅者に殺された。
それを知った時、俺は殲滅者と血を恨んだ。
けど、無邪気に笑ってるお前を見てそんな気持ちどこかへ消えたんだ。むしろ、お前を幸せにしよう。これだけを生きがいにしてきた。
「……字面でもかわんねーな、帝さん」
ボソッと花京院が呟く。
―――だけど、両親と違って俺等は鍵と適合できるだけの血の強さがあった。
だがら日々殲滅者に狙われる日々。
俺は元から戦えたから大した脅威ではなかった。けど。お前は。かぐやは。
女の子、俺の妹に武器なんて持たせたくなかったけど。
殲滅者にやるぐらいだったら、と思って武器を持たせてしまった。今思えば俺がずっとそばにいて守ってやるって思えばよかったのに。
そして、かぐやが4歳ぐらいから特訓を始めさせて、アイツはもちろん怪我して泣いた。
そんなかぐやを見て俺も泣きたくなった。武器なんて持たせたくなかった。普通の女の子でいてほしかった。こんな血なんてなくなってしまえばってずっと思った。
でも毎日特訓して斧の使い方を覚え始めたかぐやは笑っていた。
次第には「兄さんに勝つ!」だなんて言い始める始末。驚いた。
てっきり毎日恨めしいような顔を見せて泣いてしまうかと思ったのに。
アイツは強いんだ、と思った。
そんでアイツの一番の強さは打ち合いになった時の火力だ!どんな堅い防御や、避けられてしまうスピードや知略でもそれを撃ちぬけるぐらいの力だある。
教育方針上、あまり褒めることができなかったが、お前は将軍級の器だ!
もっと、もっと誇れ―――――……。
そしてごめんな。1人にして。