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*82*
「……兄さんの嘘吐き。特訓の時ちゃんと褒めてくれてたのに」
ギュッと斧を握りしめながらかぐやは呟く。
その表情は儚げで、悲しそうだった。
そんな彼女を見て秀也は少し眉を寄せる。
すると、勇魚はかぐやの前に立つと大きく言い放つ。
「バインドを解いてもらおう梶原長官!これは司令官としての命令だ。……もう、殺し合いはさせない」
「だからと言って戦わせるわけには……!」
「……いいわ」
梶原が身を乗り出して叫んだ。
だが、その声を制止するようにかぐやは言い放った。
誓いを立てるように、斧を梶原に向ける。
「わたしなら大丈夫よ。今度こそ……ちゃんと秀也と戦うわ!……いいわよね?」
「当たり前だ。今まで抵抗すらしなくて鬱陶しく思っていたところだ」
毅然としたかぐやの態度に眉を寄せる秀也。
何か躊躇うように口を動かした梶原だったが、諦めたようにピッとボタンを押す。
するとブゥンと彼女らを縛り付けていたバインドが消えた。
「さあ、戦闘再開よ!」
ジャコッとかぐやは斧を持つ。
―――ズザザザッと秀也に素早く向かうと、横一線に斬りつける。
だが、秀也はその攻撃を読んでいたのかガンスタイルの外装部分で受け止める。
「いいの?このままじゃ壊れるわよ!そのブレイブ」
「お前に言われるまでもない!裏切り者が!!」
「がっ!」
挑発するように言ったかぐやの一言が仇となったのか、かっとなった秀也の蹴りによって彼女は後退する。
フーッと唸る秀也は何かが入り混じったような雰囲気を出していた。
「秀也。アンタはわたしに勝ったらこの首飾りを取るって言ったけど、もしわたしが勝ったら……ちゃんと話しよう。昔みたいに」
「……!」
穏やかな表情を浮かべながら立ち上がるかぐやに秀也は驚いたような表情を浮かべた。
そして、今までには見せなかった凛とした表情だった。
鬱屈にこちらを見る視線ではなかった。
「いいだろう……!但し、ちゃんと俺に勝てたらな!」
「いくわよ!!」
2人は清々しい表情を浮かべ。
再び秀也は如月を取り出し、かぐやの斧と交戦する。
ギンキンギンと甲高い金属音が鳴り響く。
例えるなら卓球のラリーのように。
いつまでも、続いていた。
「……いいのか飛来。その日記、続きがあったんじゃねぇのかよ」
「あるよ。でもこれはあとで言うことだと思ったんだ」
「……そうかよ」
会議室に降りてきた郡司に向かって花京院は横目で彼を見ながらそう呟いた。
郡司は日記に目を向けながら穏やかに呟いた。
花京院もどこか察したのか、車いすの手摺を使って頬杖をした。
――――優しくて真っ直ぐなまま育ってほしい。
きっと誤解されて悲しいこと、苦しいことたくさんあると思う。
けど、お前には郡司や秀也、聖――たくさんの人が支えてくれるだろうから心配するな。
お前を嫌うやつもいるだろう。でも、それを分かり切ったうえでお前を本当に分かってくれる友達ができますように。
それを、俺は願ってる。ずっと、ずっと……。
「……大丈夫だよ、帝さん。アイツ“かぐや”はちゃんと真っ直ぐ育ってる」
そう郡司はつぶやくと、凛々しく戦うかぐやを見た。
郡司は優しく、誇らしげに微笑んだ。