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*96*
No18 猫かぶり似非淑女
「……弱きは切り捨てる。そのスタンスは変わらないようですねクローディアは」
「……たかが贄が、あのお方を呼び捨てにしないでっ!」
ダン!と物凄い衝撃とともに身動きの取れない上空にいるかぐやの元へ思い切りジャンプするくじら。
怒り任せに言い放ったテットとともにイリヤの氷の礫が飛ぶ。
くじらはそのすべてを殴り、蹴り、すべてを破壊してかぐやの元へ向かっていく。
そしてバキャ!とかぐやに纏わりついていた氷を殴りつぶす。
(……すごい!これがトップエデン……。資格なしの氷の礫を全部大破しちゃうなんて)
「……油断しないでください。すぐに攻撃態勢を」
くじらの圧倒的戦闘力に感心するかぐや。
そんな彼女に喝を飛ばすようにすぐにくじらは注意を促した。
それと同時に今度はイリヤが作ったと思われる氷の弓がこちらを狙う。
「少し痛いと思うけど我慢してね」
「痛い思いをさせないよ。……とくにアイツにはな」
「!!」
――――ジャゴゴゴゴ!!
と、背後から郡司の瞬間瞬殺広範囲攻撃ソウルブレイブ――蒼龍がイリヤに襲い掛かる。
イリヤは蒼龍の5つの刃のうち、2発は攻撃を受け、切り傷を作った。
だがそのおかげでかぐやとくじらに向けられていた弓矢の攻撃は焦点を逸れたが―――だが、それでも避けなければ攻撃は食らってしまう。
「わたしが斧で弾くわ!だからくじらはわたしの後ろに……」
「大丈夫です。吹き飛ばします」
「え」
かぐやは呆気にとられた。
吹き飛ばすだなんて、一体どうやって。
そう思った瞬間、くじらは思い切り息を吸い込み―――咆哮のような声を上げた。
「キャ、キャアアアアアアアアッ!なーによこれぇ〜!しっかりしなさいよイリヤァ!」
「……うるさいなぁ…!少し黙ってなよ、今消すから」
ドシュシュシュシュシュシュ!
と、オウム返しのようにイリヤが打ちはなった氷の弓矢が彼らのもとへ勢いよく戻ってくる。
たくさんの擦り傷を作りながらテットはイリヤに文句をつける。
同じ状態のイリヤはイライラしながらも慌てて弓矢を消した。
「……氷を出現させんのも消すのも使い手しだいってとこか。そこんとこは前任の奴とは違うパターンだな」
「……これでわかってくれたかな?」
(……この状態、トップエデンを加えての騎士と姫君をまともに相手してたら勝ち目がない。早く、早くしなよまともに攻撃できないバカ女)
冷静に分析する郡司。
そんな彼に微小の焦りを感じさせないように笑みを浮かべるイリヤ。
そして忌々しげにテットを見る。
彼女は「服がズタボロー」と呟いていた。余計それがイリヤを苛つかせる。
「もうやめたほうがいいぞ。くじらは世界最強だからな。いくらソウルブレイブ使い2人でも相性が悪いぞ」
「え〜。そうかしらぁ♪」
先ほどまで服の心配をしていたテット。
だが今は妖しい笑みを浮かべて郡司を見下ろしていた。
そんな彼女の意図が読めたのかイリヤはフン、と鼻を鳴らす。
(やっとか糞女。俺がこんなちまちました攻撃しかしなかったんだから、それ相応の仕事ちゃんとしてよね)
「何言ってるの?どう見ても不利なのはアンタたちよ。くじらの攻撃でたくさんの傷を負ったじゃない」
「いーえ、姫君。いくらあたしたちが傷を負ったとて、それは関係ないんですぅ……。ただ……」
――――パキ……。
かぐやは腕に違和感を感じた。
斧を握っている右腕にだ。
「凍ってる……!?」
ゆっくり。
だが確実に氷はかぐやの顔面目掛けて凍っていた。
かぐやは驚きを隠せないまま氷を砕こうとするがビクともしない。
「何で……!?さっきくじらが壊したはずなのに……!」
「俺の持続する氷河【デルパリス・フォール】は一度破壊した氷の力を増大させて対象を確実に凍らせる。全身を包んだら……死しかない」
「くそっ」
郡司が如月で凍ってるかぐやの右腕に斬りかかる。
だが、そこからもうつるように如月からピキピキと郡司も確実に凍りついていた。
郡司は急いで如月を捨てるが時すでに遅し。
彼の体にも氷が蝕んでいた。
「俺をアトラスのように侮っていたのが敗因だよ。騎士と姫君」
「そして〜。贄のドラゴンさん♪このお二人を救ってほしいならすぐにこの黒き穴に入ってください。そうすればすぐにイリヤが氷を解きます。約束しますから〜」
ブウンッと2人の中央にテットは無邪気な笑顔で大きな黒い穴を作る。
おそらく神光国家とをつなぐゲートだろう。
その様子を見てギロッとくじらは2人を睨みつけた。