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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『レトロ』の『その後』 十六夜満月堂活動記 10 相討ち、そして共倒れ

 一体誰が望んだろうか? 『一体誰がこんな結末を望んだ』ろうか? 『一体誰が』、そんなものは決まっている、『神の気まぐれ』である──

 何処かの崖、崖から覗く海は大荒れである、そんな崖に二人の男性が存在していた、一人は拳銃を地に伏せている男性の頭蓋に当てている、もう一人は地に伏せている男性だ、地に伏せている男性は額から汗が一滴二滴流れる、地に伏せている男性はこんな状況に対し、口の端を歪ませて笑っている。
 その状況に対し、拳銃を持つ男性のトリガーは緩まない、逆にずれて動かない様、強く、強く握り締められていく、そして地に伏せている男性は言う。
「なぁ、アンタ、こんな状況どう思っているんだ?」
 地に伏せている男性の不意の発言に拳銃を持つ男性は暫し悩んで、呟く。
「そうだな……別にどうって事はない、『私の計画』に横槍を入れられた気分ってだけかな? そんな事を聞くんだ、お前もこの状況に対する返答も考えているんだろうな?」
 地に伏せている人はその言葉を聞き、『あぁ、あるさ』と呟いて、ゆっくり言い始める。
「そうだなぁ、この状況……『滅茶苦茶楽しい』に決まってんだろぉ!」
「あっそ」
 そう言って冷たい目で地に伏せている男性を見ながら拳銃のトリガーを引く、『パァンッ!』と大きな音が崖の周りを包んだ──これは百乃目と辻斬りの容疑者、阿覚との戦いである──

 しりとりシリーズ 『レトロ』の『その後』 十六夜満月堂活動記 10

「はぁ、何なんですか? こんな夜中に呼び出して?」
 阿覚はそう言って、海が見える崖に立ち、百乃目を見つめる、百乃目は静かに言い始める。
「やぁ、『辻斬り事件の犯人』さん? もう分かってんだよ、あんたが辻斬りをしていたなんて……」
 百乃目がそう言うと、首を傾げる阿覚、そんな阿覚に対し、睨みながら怒鳴る百乃目。
「てめぇ、もう言い逃れは出来ねぇぞ! アンタは昨日一昨日、いや今日かもしれないけれど、鼻緒が切れたから靴屋に行ったな!?」
「あぁ、行ったさ、それがどうかしたかな?」
「『どうかしたかな』ぁ? 巫山戯んじゃねぇぞ! 鼻緒が切れた理由、それは『辻斬りに襲われたのが鎌居六五』だからだ、『鎌居六五は鎌鼬の妖怪、『風で辻斬りの鼻緒を切った』』! これがどういう意味か分かるだろ?」
 百乃目の発言を聞いていた阿覚は静かに青褪めていく、そして阿覚が言う。
「ま、まさか……!」
「そう! そのまさか! 昨日今日一昨日の三日間の内、『鼻緒を直した人物が辻斬りの犯人なんだ』よ! そしてアンタは鼻緒を直した、つまり……アンタが辻斬りの犯人だったんだ、阿覚桂馬ぁぁぁ!!」
 百乃目が指を指しながら阿覚に言う、すると阿覚は頭を抱えながら唸る。
「ぐぅぅぅぅぅぅ……! こんな存在に私の犯行がバレるなんて……まぁ、予想していたがな」
 阿覚はそう言って、ケロっと何時もの喋りに戻る。
「別に犯行はバレても良いんだよ、逆に私がすべき事は一つ、『犯行を知った人物を始末する』だけだ」
 阿覚は懐から拳銃を出し、百乃目を撃つ、だが百乃目は横に転がって避け、何とか銃弾を回避する。
「そうかいそうかい、アンタは自分を殺める為に最善を尽くすのか……!」
「あぁ、そうさ、潔く死んでくれ」
 百乃目の発言を聞いて、阿覚は静かに反論、そしてまたも拳銃を発砲する、すると銃弾は百乃目の足に刺さる、あまりの痛みに百乃目はその場で足を押さえながら座り込む。
「大丈夫だ、気持ちよく逝かせてやる、あのクソ猫も見つけ出して逝かせないとな、二人揃って御陀仏だ」
「……ん? 今お前、何つった? 今さっき、自分の耳に入ってきたのは『クソ猫』、『御陀仏』、って……?」
 百乃目が阿覚の発言を少し繰り返すと、阿覚は高笑いしながら言い返す。
「アッハハハハハハ!! そうだよ、あのクソ猫! 私が入店した時にお茶を渡したあのクソ猫さ! お前と何時も付き添っていたから、勿論『私が犯人』だって事も知っているだろうから、二人揃って御陀仏にさせるんだよ!」
「……せよ、消せよ……取り消せよ……」
「? んん? 『取り消せ』? 一体何をだ?」
「取り消せって言ってんだよ! 『クソ猫』って部分を! 琥音虎は……琥音虎は自分を拾って育ててくれた存在だ! 母親代わりなんだよ! 幾らアンタでも自分は母親を貶されてキレない訳が無い!」
 百乃目はどう怒鳴って、阿覚に向かって走る、だが阿覚は手を頭の上に置いて高笑う。
「アッハッハッ! 『取り消せ』ってそれかよ! 傑作だぁ……大丈夫だって、百乃目、君が逝けばそんな反論は意味ないから」
 阿覚はそう言って、拳銃を乱発する、だが、怒りに包まれた百乃目はそんな銃弾、軽々と避けて、阿覚に近付いていく、足の痛みなんて怒りで忘れていた。
 そして阿覚の襟首を掴んで百乃目は言う。
「さぁ……これで終わりだぁ!もしも自分が押し倒せばお前は海の藻屑となる、だが今、警察に言って、自首すれば藻屑にはならない、さぁ、一体どうする?」
 百乃目の発言を聞いて、阿覚は静かに考える、そして、拳銃の重さを考えて、阿覚は言う。
「フッ……お前は少々詰が甘かった様だなぁ!」
 阿覚は拳銃の弾倉を百乃目の頭にぶつけて、百乃目を足払いし、地に伏せさせる、こんな一瞬で地に伏せさせるなんて、流石警察だ、と百乃目は思う。
「フッ、もう終わりだぜ、百乃目さん?」
 そう言って阿覚は百乃目の頭蓋に拳銃を突きつける、もう、自分は死ぬのか……と思いながら静かに笑う。
「なぁ、アンタ、こんな状況どう思っているんだ?」
 地に伏せている百乃目の不意の発言に拳銃を持つ男性は暫し悩んで、呟く。
「そうだな……別にどうって事はない、『私の計画』に横槍を入れられた気分ってだけかな? そんな事を聞くんだ、お前もこの状況に対する返答も考えているんだろうな?」
 百乃目はその言葉を聞き、『あぁ、あるさ』と呟いて、ゆっくり言い始める。
「そうだなぁ、この状況……『滅茶苦茶楽しい』に決まってんだろぉ!」
「あっそ」
 そう言って冷たい目で百乃目を見ながら拳銃のトリガーを引く、『パァンッ!』と大きな音が崖の周りを包んだ──…………あれ? 死んでいない、百乃目はそう思いながら目を開けて周りを確認する、すると『目の前に阿覚が居ないのだ、地面ごと』だ、まさか撃たれる前に『地面に悔しさの鉄槌打ちをした』からか!? それなら逆に凄いぞ!? そう考えて、下を見る、下は海で、阿覚は海に落ちた衝撃で気を失っている。
「後少しで終わるな」
 百乃目はそう言って、海に飛び込み、阿覚の懐から手錠を奪い、阿覚の手にかける、その瞬間だった、巨大な波が百乃目と阿覚を飲み込んだ──百乃目は波の勢いで息が出来ずにもがく事しか出来なかった──

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