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しりとりシリーズ 『レトロ』の『その後』 十六夜満月堂活動記 3 猫争奪戦
海辺──海坊主湾──その近くに大きな赤いコンテナがあった、その中で、猫の鳴き声と、体の厳つい男性の声がする、その中には坊主の男性が言っていた猫──ラグドールだ──が鳴いている、その猫を見つめながら一人の小さな少年が言う。
「兄貴ぃ? 本当にこの猫、高く売れるんですかい?」
少年がそう言うと長髪で黒髪の男性は静かに言う。
「あぁ、その猫はとても高価な猫でな、とても高く売れる、と言う──」
「そうなんッスか!」
少年が男性の話を聞いて頷く、そして少年は猫に餌をやる──
「それじゃあ向かいますか」
「おう」
百乃目が大きな赤いコンテナの前で言うと、琥音虎が反応する、だがそんな二人に対し、坊主の男性はツッコミを入れる。
「ちょい待ちちょい待ち! いやいやいやいや! その前にそんな装備で大丈夫なんですか!? 防弾チョッキも着てなさそうですし……!」
「大丈夫だよ、どうせ猫を取り返すだけなんだろ? 相手が拳銃とか持っている可能性は低いよ、だって『妖友組』は妖怪が入っている組なんだ、誘拐する相手も妖怪じゃなきゃあ割に合わんだろ? だって普通の人間より妖怪の方がタフで強いんだし──だから力仕事には持って来いって言われるんだろうが──という事で猫を回収した後、倒すのはアンタに任せる、更に中にいるのはたった二人だけ、たかが二人ならアンタでも倒せるだろ? もしもの場合は手伝ってやるからさぁ? なぁ、いいだろう? 『手伝ってやるから護衛をしろ』という簡単なミッションは?」
「……分かった」
「それに猫を誘拐されたとかバレたら親分にどう言われるか?」
百乃目がそう言うと、坊主の男性はうぐぅっ! と心臓を押さえる、ど、どうしてそれを?
「ん? そんなの簡単だよ、『写真を見た時にもう判断していた』さ、『あっ、誘拐されたんだな』って」
「な、成程、アンタの力、『百目』は恐ろしいなぁ」
「生憎、敵に回されたくない、とよく言われますね」
ふふっ、と百乃目は笑い、目の前のコンテナに目を据える、そして琥音虎に合図をして、二人で突入する。
「ん!?」
少年がコンテナのドアの変な音に気付く、長髪の男性も静かに反応し、ドアを見る、すると、百乃目と琥音虎が入ってくる。
「!? 侵入者か!?」
少年がそう判断した時、猫は琥音虎の指笛で琥音虎の胸の中に入って、丸まる、その様子を見た百乃目は坊主の男性を呼び、後方に逃げる。
「生憎、奪われた落とし前はつけないとなぁ?」
坊主の男性がそう言うと手に持った拳銃で弾を放つ、だがその弾は二人の真ん中を貫き、少年は笑う。
「ぷくくっ! アイツ何処撃ってんスかねぇ!」
少年がそう言うと、少年の背後から拳銃の弾が背中に刺さり、心臓を貫く。
「……はぇっ?」
少年がそう言ってその場に倒れ、出血多量になる、長髪の男性は静かに坊主の男性の能力を考える、そして、『関係ない所に撃って、背中に当たる』、と言う事を考え、坊主の男性を避けていく。
すると坊主の男性は自分の力の正体をバラす。
「あぁ、そうだ、死ぬ前に教えてやるよ、私の力を──私の力は『天邪鬼』だ、更に『天邪鬼』の子孫だったりする、んで、私の力は『逆らう力』だ、つまり『違う所に弾が当たったら、弾が相手に当たる迄他の所に当たるのを逆らう』んだ、だから私が他の所に弾を撃ったら、お前等二人に当たる迄──」
坊主の男性はそう言って、拳銃を懐に戻して、コンテナを離れる。
「『他の所に当たるのを逆らい続けて、その後お前等二人に当たる』!!」
長髪の男性は後頭部に拳銃の弾を受けて、そのまま絶命する、少年も血を出し続けて、失血死し、コンテナの中の二人は絶命した──
「あいよぉ、お疲れさん」
百乃目がそう言って坊主の男性の肩を叩く、琥音虎の胸の中にはゲージに入った猫が存在していた。
「今度は誘拐されない様にゲージん中に入れて、外に連れ出せよ?」
「ははっ、お坊ちゃまにも言っておきます……」
「それにしても今日は結構簡単な事件じゃったなぁ、あまり危なくもない」
「えっ?」
琥音虎の言葉を聞いて、坊主の男性は驚く、これよりも危ない事件や依頼があったのか!?
「あぁ、それと、依頼の報酬、言っていなかったなぁ」
突然坊主の男性の意識を現実に戻す言葉を吐く百乃目、百乃目は紙に依頼の金額を記し、坊主の男性に渡す。
「あっ、すいません……ってぇ!?」
坊主の男性は依頼の金額を見て、更に驚いた、それもその筈、『とても安かった』からだ、これならポケットマネーでも支払えそうだった。
「あ、有難う御座います! このご恩は何れ返させていただきます!」
「いんやぁ? いいよ良いよ、困った時はお互い様なんだから? 逆に自分達が困ったら少しは自分達を助けてくれると嬉しいね?」
百乃目がそう言うと坊主の男性は強く頷いて百乃目に言う。
「はい! 分かりました! 自分、百乃目さんが困ったら手を貸します! ……あぁ、名前を言っていなかったですね、私の名前は『天鬼邪祭(あまきじゃ まつり)』と言います、以後お見知りおきを」
「自分の名前は百乃目です」
「私は琥音虎じゃ、以後宜しゅう」
坊主の男性──基、天鬼邪祭──が名を名乗ると、百乃目、琥音虎も自分の名を名乗る、そして百乃目、琥音虎は祭のポケットマネーで依頼の報酬を受け取って、祭と別れた──そして二人は帰っている途中で、話し合う。
「本当にあれで良かったのか? あんな少ないお金で?」
「いいんだよ、慈善事業みたいなもんだ、だからあんまり気にすんなよ? 最終的にはアイツ等から金を巻き上げる事だって可能だからね」
百乃目が琥音虎の話に返答すると琥音虎は百乃目に聞かれない様な小声で呟いた。
「……こ、コイツ……やっぱり悪魔じゃ……!!」
「んー? 何か言ったぁ?」
「い、いや、何でもないのじゃ!」
「ふぅん、そう……それじゃあ今日は吐く迄夜はお預けにしよう、ひもじいひもじい言って、餓死しちゃえ!」
「さ、流石にそれだけは勘弁じゃあ!!」
琥音虎はそう言って百乃目の腕に抱きつく、次はどんな依頼が来るのだろう? 百乃目はそう思いながら夜空を見上げる──
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