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しりとりシリーズ 『レトロ』の『その後』 十六夜満月堂活動記 2 探し物は誘拐犯
「いやぁ、すいません、こんな夜分遅くに話を聞いてもらうなんて……」
坊主の男性が椅子に座ってそう言うと、琥音虎は静かに緑茶を作り、坊主の男性に渡す。
「あぁ、すいません……お美しい娘さんですねぇ」
「娘では無いんですよ、彼女は猫又という妖怪の存在なんです、何時も若い女性に化けていたりします」
百乃目が坊主の男性にそう言うと、琥音虎は『これっ! そんな簡単に儂の正体をバラすでない!』と一喝する、だが坊主の男性も頭を摩り、笑いながら言う。
「ほう、それはそれは……私は天邪鬼の妖怪の子孫でして……」
坊主の男性の妖怪の子孫宣言を聞いて、百乃目は見る目を変える、一体天邪鬼がこの店に何の用だ? と思いながら話を聞く事にした。
「えーと……とりあえず、用件は何なのでしょう? と、いうより、その格好で大体は分かるんですけどね──」
百乃目がそう言って、溜息を吐く、坊主の男性の格好は黒い背広に灰色の袴、という昔の格好であった、そして背中には菱形の中に『妖』の一文字がある、このマークは『妖友組(ようゆうぐみ)』という、『妖怪も人間も一緒に暮らそう』という信念の組である、勿論、『妖怪も人間も一緒に暮らそう』等と言う巫山戯た幻想をぶち壊す輩もいる。
「あはは、そうですか、いや、それもそうですよね、こんな格好……」
坊主の男性はそう言って頭を摩る、それもその筈、今のこの時代は八割が妖怪を貶し、二割が妖怪と共存する選択をしているのだ、そりゃ坊主の男性は結構苦労している妖怪だ、と百乃目はそう判断する。
「実は百乃目さんに『探して欲しいモノ』があるんですよ──これです」
すると、坊主の男性はそう言って一枚の写真を百乃目に見せる、その写真には猫が一体と、一人の少年が写っていた。
「これは……?」
「この写真のお子さんは我が妖友組の親分の息子なんです、その息子の写真に写っている猫、この猫を探して欲しいんです」
百乃目はその話を聞いて、少し考える、成程なぁ、息子を探せ、ではなく、猫を探せ、か……少し難しそうだな、と考える。
「何で猫を探してほしいんじゃ?」
琥音虎がそう言うと、坊主の男性は静かに言う。
「写真の猫はとても高い種類の猫なんです、その種類は『ラグドール』という種類でしてね……少しでも早く探してほしいんですよ……!」
坊主の男性の話を聞いて、成程、と琥音虎は思う。
「そうなんですか……んで、何で貴方は納得しているんですか?」
琥音虎を見ながら百乃目が言う、すると琥音虎は百乃目に言う。
「お前、お金を落としたらどう思う?」
「落としたらってそりゃぁ……『悲しむ』に決まっているでしょう?」
「そうじゃ、その少年も猫がいなくなって『悲しんでいる』じゃろう? そしてこの猫は高い、なのでもう一匹買うとか難しいのじゃ、だから急いで探さないといけないんじゃ」
琥音虎がそう言うと百乃目は少しだけ納得する、そして坊主の男性は本題に切り出した。
「同じ妖怪として、御願いします! この猫を一緒に探してください! お題は好きな分上げますので!」
坊主の男性は立ち上がってそう言い、頭を下げる、百乃目は静かに溜息を吐いて、写真を見る。
「そうですか……私の力は『百目』ですが、写真迄通用するかどうか……?」
その言葉を聞いて、坊主の男性は涙を流しながら百乃目の手を握る。
「あっ、有難う御座います!」
「いえいえ、困っている人を見かけたら、助けるのが常識でしょう?」
百乃目はそう言って、目を閉じて、深い深呼吸をする、すると百乃目の周りに何個ものの眼球が現れ、写真を睨みつける、だが、琥音虎、坊主の男性には百乃目の周りの眼球は見えない。
猫の姿を見た眼球達は四方八方へと移動し、色々な視界が百乃目の脳内に走る、何処だ? この猫の所在は何処にいる!? 百乃目はそう思いながら必死に写真の猫の所在を確認する、何処だ何処だ? そう思いながら探していると、一つの大きな場所に着眼点を置く、そして、一つの眼球をその場所に潜入し、中身を確認する。
「はぁっ!!」
大きく呼吸をしながら頭を抱える百乃目、一気に視界を脳味噌に叩きつけながら見ているのだ、一気に体力を使ってしまったのだろう、百乃目はそう考えて、椅子に凭れながら坊主の男性に言う。
「あーえっと、猫の所在が分かりました、今からその場所に向かいましょう」
「えっ!? 今から向かうんですか!? 移動とかしているんじゃ……」
坊主の男性がそう言うと百乃目は少し笑いながら言う。
「いや、それは違いますね、だって、猫は『誘拐』されたんですから」
百乃目の話を聞いて坊主の男性は驚いていた、何故なら『誘拐された』と感付かれたからだ、坊主の男性はそう思いながら動く百乃目を見続ける事しか出来なかった──その後、何とか体力を回復させた百乃目と琥音虎は猫が誘拐された場所へと向かう、その後ろでは坊主の男性が百乃目と琥音虎を走って追いかけていた──
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