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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『レトロ』の『その後』 十六夜満月堂活動記

「うぅっ……酷い、酷いのじゃぁ! 昨日はアレだけ激しいとは思わなかったのじゃあ!」
 猫又の琥音虎(こねこ)がお尻を摩りながら畳の上でゴロゴロする、そんな様子を見て『十六夜満月堂』の主人である百乃目(もものめ)は新聞を読みながら傍目で琥音虎を見ながら呟く。
「だから昨日はやり過ぎたって何回も言っているじゃないですか……そりゃ溜まったもんは仕方無いですよ……」
 メガネをクイッと上げて言う百乃目に対し、琥音虎は腹が立つ、何であんなに激しくしたのじゃ!? 肉体は九歳、と言っておろう! と思いながら溜息を吐く、コイツに何を思っても無駄だ、どうせ『見透かされる』だけだ、琥音虎はそう思い、二度目の溜息を吐く。
「そんなに溜息ばっか吐いていると、老けますよ」
「老ける訳無いじゃろ!?」
 百乃目がそう言うと琥音虎は怒鳴って言い返す。
「お前はいっつもそうじゃ! 儂を苦しめて苦しめて……まるで『さでずむ』じゃな!」
「はっ? 『さでずむ』? 一体何なんですかそれ?」
 百乃目が琥音虎の聞きなれない言葉の意味を問う、琥音虎は仕方なく解説する事にした。
「『さでずむ』とは、『人を虐めるのが好きな人間』の事じゃ、つまりお前の事じゃ」
「わぉ、何て酷い……ってそんな事を言うのなら、酒飲んでツケをこっちに持ってきて欲しくは無いんだけどなぁ?」
 百乃目がそう言うと、どきり! と顔を強張らせる琥音虎、全くの図星か、と百乃目はそう思いながら溜息を吐く。
「もういいです、貴女には給料を払わなきゃ良いだけなので」
 百乃目が溜息を吐いてそう言うと、琥音虎は土下座して百乃目に言う。
「す、すいませんでしたぁ! 流石に無料で働くのだけは勘弁して欲しいのじゃぁ!」
「厭ですよ、最終決定事項ですよ」
「ゴメンなさいゴメンなさい! 何でもしますからぁ!」
 琥音虎は百乃目の足に縋り付いて泣き喚く、泣き喚く琥音虎の言葉を聞いて、百乃目は何度も聞き返す。
「えっ? 今何でもしますからぁ、と言ったよね? 言ったよなぁ? おいこら?」
「う、はい、言いました……」
 琥音虎が素直に言うと、ニヤニヤ笑って百乃目が言う。
「それじゃあこの服を着て、街を歩いて下さい」

「うぅっ! 流石にこれは恥ずかしいのじゃ……!」
 琥音虎はそう言いながら、『十六夜満月堂にお越し下さい! 色々な物を取り揃えています!』と書かれたプラカードを持って、街中を歩いていた、琥音虎が着た服、それは『バニーガール』の服装だった、流石にこの格好は恥ずかしいぞ! と思いながら琥音虎は歩く、早く十六夜満月堂に戻りたい、そう思いながら少し前の事を思い出す──

「この服は『バニーガール』という服でしてね、琥音虎さんには似合うのでは無いでしょうか? 後、この服を着て、街を歩いてもらうのですが、これも一緒に持ち歩いて下さい」
「何じゃそれは?」
 百乃目が取り出したモノを見て、琥音虎が不思議がってこれの正体を聞く。
「これは『ぷらかーど』と言って、この板に自分のお店の名前とかを書いて宣伝する物です、これを持ち歩いて下さい、宜しく御願いしますね?」
「流石にこの格好は恥ずかしいのじゃ! 無理じゃ無理じゃ!」
 琥音虎が服装について難をつけると、百乃目は静かに言う。
「何でもしますから、と言ったのは何処のどいつでしょうねぇ? もしも人が来て商売繁盛したら給料も上がるのになぁ?」
「そ、そうか! そうなるよな! それじゃあ着替えて行ってきます!」
 琥音虎はそう言って、トイレに移動する、その光景を見て、百乃目は呆れる。
「その行動力、尊敬に値するんですけどね……」

 と、こんな出来事があったな、と琥音虎はそう思いながら溜息を吐く、すると目の前に『十六夜満月堂』を見つける、おお、もうすぐ十六夜満月堂に帰れる! と考えて、走って店内へと入る。
「ただいま戻ってきたぞ!」
「へぇ、戻ってきてしまわれたのか、このお店は暗黒期になりそうだ」
「冗談半分でもそんな事を言うでない、ほら、何とか宣伝してきたぞぉ」
 琥音虎は百乃目の言葉にツッコミを入れて、その場に座る。
「ご苦労様、それでは緑茶を用意しますね」
 百乃目はそう言って、冷蔵庫から、冷たい緑茶を取り出し、琥音虎に渡す、うん、美味しいな、琥音虎はそう思いながら溜息を吐く。
「これで少しは売り上げがアップしたら良いんじゃが……」
 琥音虎がそう言うと百乃目は苦笑して琥音虎に言う。
「確かに売り上げが上がれば良いですけどね」
 百乃目がそう言うと琥音虎が笑う、それに釣られて百乃目もまた笑い出す、そして百乃目は動き出す。
「それじゃあ店を閉めて、夕ご飯にしますか」
 百乃目がそう言うと琥音虎が『おぉっ!』と喜んだ声を出して、居間へと向かう、百乃目は店を閉じる為に店の出入り口へと向かう、すると出入り口に坊主の男性が立っていた、百乃目は不思議そうに見ていると坊主の男性が急に喋り出した。
「すまないが、店はまだ経営しているかな? もしくはもう閉めるのか? 閉めるのなら明日出直すが……」
「いえ、大丈夫ですよ? 何か用でも?」
 百乃目がそう言うと、坊主の男性は静かに言う。
「ここじゃあなんだ、中に入らせて話をしても良いかい?」
 そう言われて、『成程』、と琥音虎と百乃目は思う、そして坊主の男性を『十六夜満月堂』の敷地内に入れて、百乃目は坊主の男性の話を聞く事にした──

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