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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『太刀』の『その後』 風凪光輝の殺人記録 6 風凪光輝の密室殺人

 さぁ、面倒な事になったぞ……、そう思いながら僕こと風凪光輝(かぜなぎこうき)は一人、頭を掻きながら社長室の扉を開く、やはり、事実は変わらないのだろうか? そう思いながら溜息を吐いた、そう、何故なら僕が殺し屋としての業務を果たそうと社長室に向かうと、その社長室に居る社長が死んでいたのだ、一応、扉は頑丈なロックを施していたので、態々ぶち壊して中に入ったのだが──そして社長が死んでいる、扉もロックされている、この事からこの社長室は『密室だった』と言う事だ。
 さて、密室と、なった訳だが、では誰が社長を殺したのだろうか? それだけが不可解、何故なら今、社長室には社長、僕の二人しか居ないし、従業員や正社員の方々はそもそも労働時間外だし……だから殺される可能性は自殺、か僕以外の殺し屋の仕業、特に密室が得意な殺し屋のみ!
 だが、聞いた事があるか? いや、普通は無いだろう、何故なら、『密室が得意な殺し屋』なんて、そもそも聞いた事が無いだろう、逆に存在しても漫画だったら、一話限りの使い捨てキャラになるだろう、だが、これは漫画か? いや、違う、これは現実だ、現実ならまだしも二次元で出てきそうなキャラを出されても僕はスルーしてしまうだろう。
 まぁ、社長が殺されている事位仕方無いのだが、密室で殺されているのが嫌いなのだ、何故なら『犯人が分からない』からだ、普通の殺人事件は殺した道具があるが、密室は見た所では分からない物もある、殺人事件は人の持ち物を探せば見付かる事もあるが、これは密室で、道具が無いかもしれないし、更に今は僕と社長以外この場所には誰も居ない──そしてこの敷地内にも誰も居ないのだ──そう、今警察が来れば僕が殺した、としかならないのだ! だから何としても報酬が欲しいのに手に入れられないこのもどかしさ、どうにかして晴らさないとな──

 さて、まずはこの部屋──社長室だ──を調べないとね、さて、社長の机の周りを探さないとな、すると零れたコーヒーを見つける、ふむ、まさかこの中に毒が入っているかもしれない、なので触らず、匂わない、そして机の引き出しに手をかける、そして引く、中には重要そうな書類が一杯ある、そしてその中で一枚、面白いモノを見つける、『世界統一作戦』という名目だった、まぁ、結局は無理そうな書類で、『廃案』という文字の判子で押されている、うーん、自分的には面白そうな内容だったが、いまいち実現性は低い内容だった、そして他の引き出しに手をやる、他の引き出しにはお菓子や飴が入っており、小さな子用にあげる物だろう、そう解釈しながらお菓子に手をやる、お菓子の食べかすがバレ無い様に少しは静かに食べないとね──そして少し胃が膨れた所で机から離れてみる、他の書類に何か書いているかもしれない、少しは調べないとね、と自分の中で都合よく言い訳しながらロックしていた鍵を壊して、中の書類に手をやる、そして特に重要そうな書類を見つける、これは見ても良いだろうか? いや、自分の良心が許さない、流石にこの重そうな書類は止めておこう。
 そう思いながら僕は一回部屋に出る事にする、もう少し考えなければ、そう考えた時、逆の発想が出来た、そうだ、『何で出入り口の扉がロックされていた』んだよ! 逆に殺した後、此処の鍵を使ってロックする事は可能じゃないか! 何故、今の今迄気付かなかったんだ!? 全く、僕は馬鹿だぜ──そう思いながらもう一個思いつく、だったら『労働時間の中で殺せる』んじゃないか? だが、社長室の鍵だぞ? 普通の一般社員では手に入れられない筈だ、だからこの線は薄いかもしれない、では、『一体誰が社長を殺した』のだろうか? それは探偵を目指した事の無い僕ではこの謎を解く事さえ出来ない、ていうか、ただの殺し屋の末端であるこの僕がこの密室トリックなんて解ける筈も無いし、解けた所で犯人探しをすれば良いのか? いや、違うだろ、そもそも『殺し屋だから密室の謎を解く理由が無い』のである、その前に僕はただの殺し屋、逆に言ってみれば、自分はこの社長に依頼を受けた身なのである、たったそれだけなのである、そう考えると、報酬も『貰えなかった』とか、適当に誤魔化せば良いだろう、あーぁ、必死に考えてアホらしく感じてきた、もう帰るか──

「昨日夜過ぎに倉井倉庫の社長、倉井倉誤(くらいそうご)社長が毒死されているのを会社の副社長が発見しました、その社長室は少しだけ荒らされており……」
 昨日、自分が入った社長室の話をテレビがしていた、自分はトーストにイチゴジャムを付けながらトーストの耳を食す、するとボスが言った。
「そういえば昨日入ったけれど、何もしなかったなぁ、こういう事件があったのか、まさか、光輝、お前、密室殺人事件かと思ったのか?」
 ドキィッ! 結構的確に当てられて僕は驚く。
「そ、そ、そ、そんな訳無いじゃないか! 僕だって毒殺とは知らなかったよ」
 そう言いながらのんびりとコーヒー(無糖ブラックである)を飲む、アリスも同じくコーヒー(無糖ブラックである)を飲む、普通小学三年生位の身長の人間が無糖ブラックのコーヒーを飲むなんて、誰もが驚くだろう、だが僕とアリスは『中身の年齢』が小学生では無いので、無糖ブラックのコーヒーなんて慣れっこなのだ、ただ、肉体年齢は小学三年生だが──
 今はそんな事はどうでもいいのだ、その前にこの密室事件みたいだった毒殺事件の犯人が見付かれば良いと思った。
 今思うのはそれだけだった、そして僕は欠伸をしながら壁掛け時計を見る、するともう登校時間だった、急がないとなぁ、そう思いながら僕はランドセルを背負う、小学生の殺し屋、僕の正体が何時バレるか、それは誰にも分からなくて、自分でも分からない──

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