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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『太刀』の『その後』 風凪光輝の殺人記録 5 骨折入院の光輝君

 やらかした……ッ! まぁ、大丈夫だろうと思って、他の小学生が見ている中、3mの所から飛び降りたら、簡単に着地失敗で足首挫いて、そのまま家に帰ったら、凄く挫いた所が腫れていたから、病院へ行ったら、『骨折してますね、酷い状態なので、入院して下さい』とか言われるし! 全く、年上で見栄を張ったらダメだ、って事が良く分かった。
 まぁ、結構酷い状態の骨折なので、入院する期間は長いと思われる、その間が暇だなぁ、そう思いながら僕は布の筒に自分の左足を入れて、ゴロゴロする、ていうか、久し振りに骨折したから少し懐かしい、だがやる事が無いので、意味が無いのだが──すると僕の病室のドアをノックする音がする、僕は『入って良いですよ』と言うと、扉が横にスライドされた、そこに現れたのは、学校の先生だった、若い女性の先生で、少しおっとりしている優しいメガネの先生だ、おっとりしている先生といえば巨乳が多いが、この先生は貧乳である、絶賛婚活中である。
 そしてその先生の手に持っている物を見る、その手に持っているのは綺麗な籠に入ったフルーツバスケットだった、林檎、蜜柑、バナナ等、多種多様な物が入っている、そういえば最近は果物自体食べて無いなぁ、少しはこのフルーツバスケットの果物を食べよう、そう思いながら僕は声を出した。
「あっ、先生、今日は、今日はお見舞い有難う御座います、フルーツバスケットはそこら辺に置いて頂いても構いません」
「えっ? 良いの? だったら椅子の上にでも置かせて頂きます……キャッ!?」
 先生は椅子に置こうとして、一番端の椅子に移動した、だが移動している途中で他の椅子の脚に自分の足を引っ掛けてすっ転んでしまう、するとメガネを落としてしまい、『メガネは何処何処〜?』と言って、何処かのギャグ漫画を見ている様だった。
「……大丈夫ですか、先生?」
「うーん、大丈夫だとは思うんだけどねぇ……って、パンスト伝染してる!? うーわ、これ最後の一枚なのに……買いに行かないとね」
「大変ですねぇ、女性って」
「まぁね、どうやって男を落とすかとかねぇ、まぁ、女って大変なんです、それじゃあ、光輝君、足をお大事に」
「はい、急いで先生の授業に戻りたいです」
 僕はそう言って、頭を下げる、先生も頭を下げながら手を横に振って病室を出た、さて、早く足を治さないとな──

「さて、先生が来て三時間、面会時間ももう無いだろう、早く寝るか……」
 そう思いながら僕は布団をお腹に掛けて、寝ようとした、すると僕の病室をノックする音が聞こえる、誰だろう? そう思いながら僕はベッドのボタンを押して、起き上がる、『入って良いですよ』と言うと、入ってきたのはアリスと黒のマントのボスだった。
「やぁ、光輝、大変だね……」
「光輝!? 大丈夫なの!? 全く、足を骨折するなんて殺し屋として間抜けよ! 本当に心配させないでよ!」
「あはは……そうだね、普通に油断していたよ」
「全く──『今日から三日間は殺し屋の仕事がアリスのみになってしまう』ではないか──」
 はっ? いやいや、ボスよ、何を言っているんだ? 僕の骨折は結構重傷で、治るのに最低でも二ヶ月は掛かる、と言うのにこの人は何を言っているのだろう? いや、まず、ボスの言葉を頭の中で復唱してみよう、『全く──『今日から三日間は殺し屋の仕事がアリスのみになってしまう』ではないか──』だ、そしてその中の言葉、『『今日から三日間は殺し屋の仕事がアリスのみになってしまう』』に注目してみる、『今日から三日間は殺し屋の仕事がアリスのみになってしまう』、つまり、ボスの言い方だと、『今日から三日間は殺し屋の仕事はアリスになる』と言っている、では『四日目以降は誰が殺し屋家業をする』のだ? ボスは昔、有名な殺し屋であったが、『人を殺すのに飽きた』と言ってその後は僕やアリスを育てている、だから四日目以降はボスが出る訳が無い……というと、まさか『僕が出る』、という事か? いや、流石にそんな酷い事はしないだろう……
「あぁそうだ、今日はお前に会わせたい女医が居るんだが──こっちだ」
 そう言いながら病室の扉を開けるボス、するとカッコいいポーズのレオタードの魔女みたいな格好の女性が立っていた、そして右手にはアタッシュケースを持っていた、そしてレオタードの魔女みたいな格好の女性は口を開けた。
「やぁ少年、いや光輝君、だったかな? 私は医者のローンバス、これは裏の名前だ、そしてこの黒ずくめのアホに呼ばれて来た、足を見せろ」
 そう言って、僕の左足のギブスを外す、そして触診をする、僕が痛がると、その部分を的確に痛い場所と痛くない場所を見極める、そしてローンバスは言う。
「何だ、ただの骨折と罅(ひび)がいっただけじゃないか、見た目は酷いが、私の開発した『超速回復薬』を服用すれば一日で罅は治る」
「その前に危険な匂いがするんだが?」
「大丈夫だ光輝、この人の薬は相当使える、だから安心しろ」
 そう言ってボスは褒める、そしてローンバスはコップの中に入った『超速回復薬』を僕に飲ませようとする、入れ物に書かれているのは、『爆発注意!』だった、絶対危険だろ! 僕は飲みたくないぞ!
「いや、あのね? 僕は飲みたくないんですけど……? えっ? ちょっ? マジで? 止めて! 止めて下さい! 本当に! 止め……おごぉぉ……」
 結局飲まされた、とても苦かった、そしてその後、睡眠薬を投与されて、寝かされた──

 翌日──
「嘘でしょ……? 完全に足の痛みが無い、更に骨折した部分が九割完治している──」
 僕はそう言って、見舞いに来たローンバスは笑う。
「だろう? だから私を信じて欲しかったのに……」
 そう言って、お茶を飲むローンバス、本当に凄いぞこの医者は──
「さて、今日の夜、昨日飲んだ薬をもう一回飲めばもう完治するだろう、夜にまた来るよ」
「有難う御座います……」
 またあの昨日飲んだ苦い薬を飲むのか──そう思うと吐き気がする、まぁ、治るだけまだマシか──そう思いながら僕は病室で欠伸をした、さぁ、早く左足を治さないとな……

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