完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~

*80*

 しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 蘭万屋録 CASE 10 蘭の正体、○○○。

 枝垂港──第11コンテナ──
「成功しましたねぇ」
 覆面を被った小太りの男性が浅井に言う、すると浅井は笑いながらその場から立ち上がる。
「まさか……成功するとは思いませんでした、これで蘭さんの正体に少し近づきますよね……?」
 浅井がそう言うと覆面を被った小太りの男性は覆面を剥ぐ、すると覆面を被った小太りの男性の正体は稲田だった。
「確かに……蘭はあまり自分の正体を明かさないからなぁ──明かしたら明かしたで相当大変なんだよなぁ──でも知る事が出来て良かった、という考えも出来るな」
 稲田がそう言うと浅井は驚いていた、えっ? 蘭の正体を知っている? そう思うと浅井は稲田に詰め寄る。
「えぇ!? 稲田さん、蘭さんの正体を知っているんですか!? じゃあ何で誘拐ネタを作ったんですか!? 可笑しいでしょう!?」
「えぇ……? だって自分の口では言いたくないし、これは本人に聞いた方が良いかなって……」
 稲田の言葉を聞いて少ししょんぼりする浅井、すると外から変な音が聞こえる、もう蘭と翌檜って人が来たのかな? と思い、浅井は縄に縛られる、梨花は何時の間にか寝ていたので、寝かせていた。
 そして稲田は覆面を被りなおし、蘭に対し、準備をする。

「ていうか11って何だよ?」
 蘭がそう言うと翌檜が答える。
「多分コンテナとかじゃね? よくあるじゃん? 取引はコンテナとか」
「あぁ、確かにな……だけどコンテナって11迄あったかなぁ? って思ってさ」
 蘭の言葉を聞いて翌檜は溜息を吐く。
「お前はバカかよ、いいや、正真正銘のバカだったな」
「てめぇ、後で覚えていろ、色々な意味で襲ってやる」
 蘭がそう言うと片手で頬を添える翌檜。
「そうかぁ……夜が激しくなりそうだなぁ」
「なりません」
「ちぇっ」
 翌檜の言葉を聞いて、ツッコミを入れる蘭、もうすぐコンテナに着きそうだ──

 コンテナに着いて翌檜はコンテナを蹴る、そして扉を蹴破って中に侵入する。
「はぁい、すいませぇん、此方に二人が誘拐された、と聞いて来ましたぁ……私の名前は翌檜、枝垂って奴ぁ、何処のどいつだぁ?」
 翌檜がそう言うと覆面を被った稲田が言う。
「えぇっ!?本人来てねぇ!」
「本人は後ろだよ」
 蘭はそう言って翌檜の後ろから現れる、目の前に見えるのは三人、一人は小太り、もう一人は浅井さん、最後に背が高く細い女性の三人、そして梨花ちゃんの気配は少しだけ感じるので、四人居る事は理解出来た、さて、どうやって救うか? そう思っていると覆面を被った稲田が言う。
「おい、早く正体を現せ、蘭!」
「…………」
 自分は無言のまま溜息を吐く、面倒だが話すしかない様だなぁ、そう思い、自分は言葉を発す。
「自分の正体は『神様』だよ、簡単に言えば──さて、もう茶番は終了していいか? 稲田ぁ?」
「……やっぱりバレてた?」
 稲田がそう言って覆面を脱ぐ、二人の会話に対し、浅井さんだけが不思議がる。
「えっ? か、『神様』? というと何の神様ですか? 例えば音楽の神、とか商売の神、とか……」
「んー? 自分はこの街の『土地神』だよ、だから『他人の心の声が聞けたり出来る』んだよ、だから浅井さんが自分の正体を探るのは知っていた、だけどあまり話したくは無いんだよなぁ、だって『神』ってだけで畏怖されるしさぁ……あぁ、後翌檜も『土地神』だったりする」
「いえーい、私は土地神でぇす☆」
 翌檜がピースをする、それに対し、少し不思議な事を考える浅井さん。
「えぅ? 可笑しくないですか? だって土地神なんだからその場所に留まっている筈です、なのに何で翌檜さんは留まっておらず、他の土地に移動出来るんですか?」
「んぁ? そんなの簡単じゃねぇか、『土地の範囲が違う』んだよ、蘭はこの『都道府県の一つが範囲』なんだよ、一県丸ごとが土地神の範囲、まぁ、市町村ごとに分かれているんだけど──つまり蘭は相当ランクが高い土地神って事だ──さて本題だ、私はどんなランクの土地神か分かるか?」
「えっ? ……この街の土地神、蘭さんより格下の?」
 浅井さんがそう言うと翌檜は笑っている、流石に自分でも笑いそうになった。
「アハハハハハッ! ちげぇよ、私は『日本の土地神』だよ、だから『日本全体移動出来る』んだよ」
 翌檜がそう言うと浅井さんは驚いている、そんな浅井さんを放って置いて自分は浅井さんの縄を解く、すると自分は背が高く細い女性の正体を考える。
「えぇと……アンタは誰なんだ? 心も読めない様だし……正体は何なんだ?」
「フフフ、私か? 私は!」
 そう言って背が高く細い女性は覆面を剥いだ──その正体はアマテラスだった、自分と翌檜は急いでその場で土下座した。
「貴女様とは知らず、生意気な口調で喋ってすんません!!」
「アマテラス様が絡んでいるとは思いもしませんでした!!」
「お前等なぁ……驚き」
 アマテラスがそう言って溜息を吐く、浅井さんだけがその空気に馴染めていない。
「いやぁ、アマテラスさんに話をしたら『面白そうだから私も参加するよ!』と言って来てなぁ、だから参加させたんだよ」
 稲田がそう言うと自分は稲田の襟首を掴む。
「てめぇ! 何気に日本の最高神と友達感覚で関わっているのかよ!?」
「そうみたいだなぁ」
 そう言って自分は溜息を吐いてその場で項垂れる、自分の正体は知られるわ、土下座するわ……今日は不運だぁ! 自分はそう思いながらその場で座り込む──

 まぁ、正体がバレたのはたった一人だけで済んだから今はどうでも良いか、そう思いながら自分の事務所に戻る。
 さて、今日も今日とて仕事を開始するか、そう呟いて自分は欠伸をする、すると浅井さんが自分にコーヒーを渡す。
「あぁ有難う、浅井さん」
「メイドなので」
 そう言って浅井さんは掃除を開始した、この街は色々な人が現れる、人間、妖怪、幽霊、亡霊、神、土地神、色々な存在も現れる、一人の土地神、一人のメイド、そして一人の幼女──
 そんな街にある蘭万屋、皆さんも来てみてはどうだろうか? 蘭が貴方の依頼を受けるかもしれないですよ……?

 NEXT しりとりシリーズ 『もやもや』の『その後』

79 < 80 > 81