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しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 蘭万屋録 CASE 9 蘭、君は何者?
数日後、自分こと蘭は少し溜息を吐きながら資料を確認していた、梨花ちゃんは今はお昼寝なので事務所には居ない、だけどその事務所の中で一人だけメイド服の女性──名前は浅井さんという──が掃除をしている、そして自分は浅井さんの名前を読んで用件を言う。
「あぁ、浅井さん、すまないんだけど梨花ちゃんを起こしてくれるかい? 今から息抜きに公園に行こうと考えていてねぇ」
「分かりました」
浅井さんはそう言って梨花ちゃんを起こしに行く、全く、彼女の考えている事は怖いな、そう思いながら資料を鍵付きの引き出しに入れる、何とか『自分の正体』を隠さないとこの世界では生きていけないのだ、人間界とはとても大変だな、と思う、すると目を擦って目覚める梨花ちゃんを発見する。
「んんー? もうお昼ぅ?」
「あぁ、自分と一緒に公園に行こう」
自分がそう言うと梨花ちゃんは喜んでいた、小学生はこんなんで喜ぶのか、心の中でメモを取ろうとした時だ、急に蘭万屋の扉が開く、扉の奥には覆面を被った一人の小太りの男性が立っていた、まさか依頼者か? と声を出そうとした瞬間、覆面を被った小太りの男性の後ろから背が高く細い女性が現れ、梨花ちゃんの腰を掴んで梨花ちゃんを担ぎながらそのまま事務所から消えて走り去って行く、その次に浅井さんを覆面を被った小太りの男性が浅井さんを背負って走り去って行く、これってまさか──
「誘拐!?」
自分がそう言った時にはもう遅かった、自分は机を踏んで一気に前にジャンプし、移動する、そして事務所から出る、すると梨花ちゃん、背が高く細い女性、覆面を被った小太りの男性、浅井さんが確認出来た、その四人は少しでかい車に乗ってごそごそしていた。
「あっ、蘭さん!!」
「必ず助ける!」
車のドアが開いている状態で頑張って叫ぶ浅井さん、そんな浅井さんの叫びに返答する自分、だが車は走ってしまい、追いかける事は出来ない、自分の走力は現代の車より遅いのだ、だから追いかける事は出来ない……くそっ、こういう時の為に車は買っておくべきだった! だけど自分が買ってしまうとガソリンを入れたまま放ってしまいそうだ! と心の中でセルフツッコミを入れて、その場で呆然と立ち尽くししかなかった──
「あぁ、面倒だなぁ、人助け」
そう言って頭を叩かれる自分、靴紐を結んでいる自分の後ろには赤色のロングヘアーの女性が存在し、手首の手錠を弄っていた。
「お前はバカか、何でそんな事を言える? 私達は人間を救う為に人間界に居るんだろう? 妖怪、幽霊、亡霊、人間全ての話を聞いて最前の手を探るのが私達だろう? なのにお前は何でそんなに人間や幽霊を助けたくないんだ……?」
赤色のロングヘアーの女性はそう言って溜息を吐く、こっちが溜息を吐きたいのに……そう思いながら靴紐を結び終え、自分は立ち上がってドアに手をかけた瞬間だった、事務所の電話が鳴る、えっ? 何で電話が……? そう思いながら自分が電話の受話器を手に取り、耳に近付けた、すると機械音の声で喋ってきた。
「やァ、初めマシテ、蘭万屋のニンゲンよ……私は枝垂、と言いマス、梨花、浅井を誘拐したニンゲンのボスです」
その言葉を聞いた瞬間、自分は枝垂とやらに対し、怒鳴って返答する。
「てめぇ! 早く解放しやがれ! 粉に帰すぞ!」
「そんな脅し文句聞いた事がねぇ!」
と後ろの赤色のロングヘアーの女性が言う、今はそんなツッコミどうでも良い、それよりも早く二人を解放しないと……! すると枝垂が自分に言う。
「良いデスよ、ですが条件がありマス」
「で、ですよねぇ」
自分はそう言って落胆する、一体どんな条件なのだろうか? 自分はそう思いながら枝垂の言葉を待つ、すると枝垂は自分にとってとんでもない事を言う。
「簡単デスよ、『自分の正体を梨花、浅井の二人の前で明かして下さい』、ソレが出来たら二人を解放しましょう」
「…………」
「お、おい蘭……さっさと明かしちまえよ、どうせ減るもんじゃねぇんだし──」
赤色のロングヘアーの女性がそう言う、だが自分は言いたくなかった、『自分の正体』を──すると赤色のロングヘアーの女性が自分の耳に当てていた受話器を奪って枝垂に話しかける。
「てめぇ、いい加減にしやがれ、正体言ってやるから、てめぇらが今居る場所を言いやがれ、それが最初だろ?」
赤色のロングヘアーの女性がそう言うと不思議そうな感じで枝垂が言ってきた。
「えっ? あの……貴方は誰なんですか? 私は蘭に話しかけたのですが……」
枝垂の言い方に対し赤色のロングヘアーの女性が笑いながら言う。
「私か? 私の名前は翌檜、蘭の友達だ、友達と言ってもアッチ系ではない、コッチ系だ」
「てめぇ! 何気に誤解される様な言い方すんじゃねぇ!」
赤色のロングヘアーの女性──翌檜だ──の言葉に対し自分は間違いを正す、だが翌檜は笑顔のまま自分をおちょくる。
「えぇ〜? だって少し前に私を押し倒したじゃん? そしてそのまま──」
「あれは単純にこけて押し倒しただけじゃねぇか! そんな変な良い方しなくても……!」
「あ、あのー……」
枝垂の言葉を聞いてハッと我に帰る自分、その前に居場所を聞かないと!
「おい、一体居場所は何処なんだ!? 早く答えやがれ!」
自分がそう言うと枝垂は小さな声で言った。
「……枝垂港、そこで待っている──番号は11だ──以上だ!」
枝垂はそう言って電話を切る、自分は受話器を耳に当てながら深呼吸をする、枝垂港か……急がないと、そう思いながら自分は事務所を出る、そして自分は翌檜が運転する車の助手席に乗って枝垂港に向かう──待ってろ、浅井さん、梨花ちゃん、そう思いながら──
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