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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 蘭万屋録 CASE 8 不倫ゆえの苦しみ

「……数ヶ月前、私は尾長先生に惚れました、最近この学校に来た尾長先生に私は惚れたんです、そして私は尾長先生に言いました、『貴方がすきです、付き合って下さい』と……ですが尾長先生は妻子持ちで……私は強引に絡んで肉体関係を結びました──その後、私のお腹に──意味は分かりますよね?」
 御手洗さんはそう言って淡々と述べた、そんなの分かる、そして自分は言葉を発す。
「あぁ、分かった、続けて?」
「そしてお腹の事を言いました、すると尾長先生は……!」
 御手洗さんは泣きながら言い続ける。
「尾長先生はぁ!『な、何なんだよ? 君が好きだ、と言ったから肉体関係を結んだだけで、自分の子は妻との子のみ! だから君との子は認知しないぞ! 早く堕胎しろ! 堕胎しないと君を退学処分にするぞ!』と言ってきたんです! そう言われて私は腹が立ちました、全て私が悪いです、だけど私は子を認知して欲しかったのです! 先生と私の繋がりを壊されたくなくって!」
「…………」
 成程なぁ、痴情の縺れ、ってかぁ? 自分はそう思いながら話を切り出した。
「成程ね、君も大変だった訳だ、まだまだ成長中の精神に対し、恋愛、そして捨てられるって事──君の心の痛みは十分に分かった、それでは本題に入ろうか、どうやって尾長先生を殺害した?」
「それは……」
 彼女はそう言って尾長先生殺害法の説明を始めた──大まかに言うとこうだ、新体操の部活が始まっている時間に更衣室に尾長先生を呼んで、御手洗さんが更衣室に向かう、そして尾長先生を新体操のリボンで絞殺、そしてリボンを回収した後、首に縄を巻いて、リボンでの絞殺を偽装、そして御手洗さんは奪っておいた更衣室のメインキーを使用して、施錠、大体女子更衣室は盗難被害もあったので、最後に更衣室に出た人は必ず施錠する事になっている、先生が更衣室の前に居ると安心して鍵を施錠せずに部活に行ったかも知れない。
 そしてトイレに篭って時間を潰す、その時間潰しの間に新体操で使うリボンをリボンケースに直す、次にメインキーを鞄の奥深くに隠す、次にトイレから出て、部活メンバーからサブキーを借りて、更衣室に向かい、開錠する、そして殺害した尾長先生に向かって悲鳴を上げる、すると悲鳴を聞いた部員メンバーが集まって、部室に向かうと言う事だ……何と言う完全犯罪だ、自分はそう思いながら御手洗さんに言葉をかける。
「成程、君のトリックは特に複雑で初めての難解なトリックだったよ、凄い……だけど君は許されない事をした、ちゃんと罪を償うんだ」
「はい……尾長先生、蘭さん……!」
 御手洗さんはそう言って、稲田が用意したパトカーに乗って、警察署へと向かった──その後、御手洗さんは手首に手錠をかけられたと言う──それを知ったのは軽く48時間後だった。
「それじゃあ、梨花ちゃん、浅井さんを呼びますか」
 自分はそう言って保健室へと向かった──そして保健室前、浅井さんは直立不動で目を瞑り、頭を垂れていた。
「あっ、浅井さん、終わりましたよ、残念ですが御手洗さんが犯人でした──」
 自分がそう言うと浅井さんは大きな溜息をして、自分に言う。
「そうなんですか……成程、あぁ、蘭さん、少し聞きたい事が」
 今日は珍しく浅井さんが話しかけてきた、自分は彼女に耳を傾ける。
「ん? 何なんですか、浅井さん?」
 自分がそう言うと、浅井さんは言う。
「貴方、『何年前からこの街にいる』んですか? 教えて下さい」
「……別に? 精々十年、二十年しかこの街に存在しないで──」
「それは有り得ないです、何故なら私は『生まれてこのかたこの街に住んでいる』んです、なので、有り得ないんです、『蘭さんが引っ越した、とか元から住んでいる、とか聞いた事が無い』んです」
「……」
 何だ、『気付いた』か、そう思いながら自分は言葉を発す。
「まぁまぁ、それは良いんだけどね──何が知りたいの? 自分の何が──と言ってもあまり語らないよ?」
「そうですねぇ……あまり語らない、となると情報は限られます──それでは、蘭さん、貴方は本当に万屋の人間なんですか?」
「は、はぁ? 何言っているんだ? 自分は蘭万屋の所長、蘭ですよ、あぁ、後、梨花ちゃんを起こしてくれると有難いです、もうじき帰るので」
 自分はそう言ってタクシーを呼ぶべく外へ向かう、そんな中、浅井さんは一人で梨花ちゃんを起こしにいった──浅井さんの中で少し不思議な事を思う──蘭さんは一体何者何でしょう? 浅井さんはそう思いながらお姫様抱っこをする梨花ちゃん(それでも呑気に寝ている)を安芸学園の出入り口にあるタクシーに乗せて、三人で蘭万屋へと帰る──
 明日から少しでも蘭さんの事を探ろうと決意する浅井さん、そんな心の中の決意を自分は物静かに聞いていた──
(明日から探られるのかぁ……明日から少し大変だな、アハハ……)
 自分はそう思いながら心の中で溜息を吐く──大変だ、そう思いながら──

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