コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 萩原さんは今日も不機嫌
- 日時: 2013/04/18 19:48
- 名前: トレモロ (ID: NXpyFAIT)
- 参照: http://blog.goo.ne.jp/roki000
オリ小説執筆経験は持ち合わせていますが、学園物は初めてでありまして、作品を上手く作れる自信がありませんorz
ですがどうしてもやってみたくなってしまい書かせて頂きます。
どうかあなたのお時間を少々この作品に向けていただけると、作者としては光悦至極ッてなもんでございます。
『作品のジャンル」
・学園モノ
・コメディ?
・多少シリアス
・ほのぼの成分増し増し・・・・にしたい!
『登場人物』&『性格容姿設定』
主人公—萩原 琳奈(はぎわら りな)
無表情・男口調・恋愛無関心症状。という乙女という種類の生物から正反対の女。ちなみに結構の美人だがそれについて無頓着で髪に寝癖があっても全く気にしない。
基本、人に愛想は良く人間嫌いというわけではない、だが積極的に人に関わろうというタイプでもないようだ。
熱血漢—藤堂 奏 (とうどう そう)
熱い・五月蠅い・イケメン。という熱血イケメン馬鹿という単語がぴったりの男。
萩原同様自分の容姿に興味はないがファッション誌を少し位気にする程度には気を使っている。
人好き合いは女子男子ともに上手く立ち回っており、両性から人気。
転校生だが、たった一ヶ月で学校になじんでしまった。
貧弱男—浅木 隼人(あさぎ はやと)
貧弱・内気・優柔不断。という、モヤシ男。
高一で十月に入った今でもその内気な性格の所為なのかクラスに友人が少ない。
【エコ会】に入ったのは萩原と木内の影響であり、自分を変えたいという願いである。
実は成績学年トップの秀才であり努力家。
天然女ー木内 希 (きうち のぞみ)
おっとり・上品・美少女。という典型的なお嬢様。
入学仕立ての高一の頃はクラスの人間にもてはやされてきたが、彼女はそういう普通でない自分を嫌っていた、だが、他クラスの萩原と知り合い、色々在ったのち友人。その後当時二年生だった【エコ会】会長に誘われ入会。
人を疑うことを知らない、内外共に綺麗過ぎる女性。実はトラブルメーカー。
破天荒—清水 恵美(しみず めぐみ)
唯我独尊・自己中心的・天才。というハタ迷惑極まりない人間。
【エコ会】副会長だが、最早会長の様なふるまいを普通にする。絶対的な天才であり、それが破天荒な振る舞いに拍車を掛けている。【エコ会】を作り会長を風宮にした張本人。
実は片思いの幼馴染が居る、純情少女でもある……。
苦労人—風宮 来夏(かぜみや らいか)
苦労・疲労・労働。というスローガンを持つ生粋の苦労人(本人不本意)
いろんな人間に頼られて、仕事を押し付けられている見ているだけで涙が出そうなお人。
【エコ会】会長に清水に無理やりさせられた訳だが、一つの信念を持って行動している。
実は片思いの幼馴染が居るが、最早告白は諦めている。
頑張れ!
以下登場人物考慮中
『補足』
主人公視点での物語
主人公は女ですが男口調です、不快に思ったらゴメンナサイ。
誤植や意味の繋がらない文が在るかもしれませんが、温かい目で見守っていただくかご指摘頂けると嬉しいです。
今後どうなるかは神のみぞ知る……いや神にも解らんだろう……
ちなみにコメントやキャラのイラストなどは諸手を挙げて歓迎しているのでご気軽にお願いします。
【他の作品】
『殺す事がお仕事なんです』>>15
『結末を破壊する救済者達』>>53
『頑張りやがれクズ野郎』>>65
【交流場】
雑談場にあります。
【挿絵】
『私はあなた方の絵を求めている!!』>>28
【アトガキ】
『とあるトレモロの雑記帳』
——《カテゴリー》にて >>29
【目次】
『物語のハジマリ』
【>>1】
『第一話 萩原さんの日常』
【>>2】【>>3】【>>6】【>>7】
『第二話 萩原さんのお仕事』
【>>10】【>>12】【>>13】【>>14】【>>16】
『第三話 萩原さんの休日事情』
【>>19】【>>23】【>>30】【>>31】【>>37】【>>38】【>>41】【>>42】【>>46】【>>54】【>>55】【>>56】【>>57】【>>58】【>>59】
『第四話 萩原さんと厄介な連中』
【>>63】【>>64】【>>67】【>>68】
それではこの作品があなたに何らかの影響を与えることを祈って、作品紹介を終わらせて頂きます(ペコリ
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- Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.66 )
- 日時: 2011/06/13 22:32
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
『第四話 萩原さんと厄介な連中』4-2 1/2
わが校の食堂は一般的な食堂より、上等な部類に入る。
一応私が通っているこの学校は、【私立高校】なので校内設備が公立高校よりは良い。
その分親の財布やら通帳は、深刻なダメージを負っているだろうが、それは私が将来いい大学と就職先を見つけるという条件で、何とか気を鎮めてほしいものだ。
まあ、そんな事情から、当然食堂も付近の他の学校よりは高水準だ。
最もそれは【町】中だけの話なのだが……。
それでも、恵まれた環境に居るというのは、事実なのである。
椅子とテーブルがセットで、いくつも並んで置いてある大食堂。
仕切りのドアの向こうには、食券販売機や雇われたおばさん達がせっせと料理を作っている姿が見える。
メニューも豊富で、定食系や単品系。デザートだって量も多く、味もそこそこだ。
最も、値段はそれなりにするので、私の様な五人家族で収入も大して無い様な家では、安価な弁当に頼るしかない。
昨日の夕飯の残りや、漬物などが入った。かなり庶民的な昼食。
それが私の昼休みの、栄養補給アイテムなのだ……。
「いや、何を言っているんだ私は。弁当だって素晴らしいはずだ。そうだ、私はみじめだなんて思っていないぞ……」
「は? 何ぶつぶつ言っているのですか琳奈」
私の哀れな独り言に、右隣で歩く如月が反応してくる。
ポニーテイルを左右に揺らしながら、歩く彼女の両手に支えられて運ばれているのは、白いトレイの上に乗った料理群。
醤油ラーメンに、林檎ジュースに、デザートのプリンだ。
「……っち、ブルジョワジーめ。将来貧乏に喘ぎ苦しめ」
「な、なんでこの程度の料理でそんな事言われなくてはならないのですか!?」
この程度……?
今この女この程度と抜かしたか?
「貴様。その素晴らしいまでの金持ちの昼食を前にして、その言い草。……死ぬ覚悟は出来ているんだろうな?」
「えぇ!? 一般的な食堂料理ですよ! そこまで言われる程の代物じゃあないです!」
分かっていないこの女。
その無駄に光沢を放っているスープにつかる、なんか無駄に喉越しがよさそうな麺。
それらをさらに際立たせている、チャーシューやメンマ。そして、ナルト。
それだけでも大分豪華なのに、それにデザートだと? しかもよりにもよってプリンだと?
止めとばかりに、絶対にその料理に合わないだろうと思える林檎ジュースが。
私は唯の水とか飲みたくないのさっ! という主張が見え隠れしているようで、妙に腹立つ。
腹立つったら、腹立つ!
「まあまあ琳奈。私だってお弁当よ? だから機嫌直して?」
と、左隣で歩いている木内が宥めてくる。
だが、そんな言葉を彼女から聞いても、私の感情が収まる訳がない。
寧ろ悪化する。
何故かって? それはこいつが生粋の【お嬢様】だからだ。
確かに木内は弁当派だ。しかし、彼女の弁当と私の弁当とは天と地の差がある。
月とスッポン程の差だ! 美女と野獣並みの差だっ!!
私のモノは昨日の残り。
木内のモノは今日の朝、出来たてホヤホヤの豪勢なお料理が並びやがっているだろうよ。
何せお嬢様だ。彼女と昼食を共にするとき、偶にちょこっとおかずを貰うのだが。
毎回そのおかずの余りの美味しさに、偶に泣きそうになる。
只の卵焼きの癖に、なんだか高級料亭で食べた錯覚を覚える。
いや、高級料亭の味なんて知らないから、正確には解らないのだがな。
「お前の弁当は弁当じゃない。最早懐石料理だ。なので、お前も同罪だ」
「あらあら、食べ物の事になると直ぐ僻んじゃうんだから。困ったさんね〜」
それなりに込んでいる食堂で、後ろの方の席にあいているテーブルを見つけ、三人で座りながら私たちは言い合う。
別に食べ物に固執しているつもりはないが、食というモノは私の数少ない娯楽の一つなので、そこそこ固執しているのかもしれない。
あれ? やっぱり固執してるじゃないか。
何たる言葉のラビリンスだ。
といううか、僻んでいるとまで言われる自分の貧乏性が情けなくなる。
食というものは、貧困の高低差が一番でるものだとつくづく思うね。
「【エコ会】のクールビューティーは、実は食に異常執着を見せる、食べるの大好き女の子っと。メモメモ」
と、そんな事を思案していたら、隣で如月が失礼な事を失礼な文体で失礼な笑いを浮かべながら、取材メモ用紙らしきものに嬉々としてペンを走らせていた。
こいつの傍にいるときに自分の欠点を見せるのは、危険だと再認識する。
「おい、やめろゴシップ馬髪女。メモ用紙を燃やすぞ」
「だれが馬髪女ですか! しかもゴシップって、失礼な! 私は記者精神に乗っ取りありのままを伝えるだけです!!」
メモ用紙を奪い取ろうとした私の手を叩きながら、如月は声を大にして叫ぶ。
何度も言うが、ゴシップ記者の方がお前と一緒にされたくない筈だって—の。
まあ、いい。
こいつからあのメモ用紙を奪い取るのは、たぶん無理だ。
なら、無駄に労力を使わずさっさと昼食をとって、英気を養おう。
正直お腹の方は、先程から食物を欲して鳴りだしそうな勢いだからな。
私は弁当を包んでいた、薄緑のおばあちゃんが使ってそうな風呂敷の包みをテーブルに広げ、弁当の蓋をとり、箸入れから箸を取り出し、手を前に合わせる。
「いだたきます」
そして、食事の前のあいさつをして、箸をおかずに伸ばし摘まんで口に運ぶ。
口の中で転がる昨日の残りの肉じゃがは、また何とも……普通の味だ。
可もなく不可もなく。
普通だ。
なんでだろう、ちょっと悲しい。別に肉じゃがは嫌いじゃない筈なのだが、隣の腐れ新聞記者が、上手そうにラーメンを啜っているのを見ると、何故か凄く悲しい。
- Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.67 )
- 日時: 2011/06/13 22:32
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
『第四話 萩原さんと厄介な連中』4-2 2/2
私がもの寂しい顔をして、もそもそ弁当を消化していると。
隣で私同様弁当を広げていた木内が、弁当箱を覗きこんできた。
「あら、琳奈のお弁当のおかずは肉じゃが?」
こちらの弁当を興味深げに眺めながら、木内が尋ねてくる。
こんな一般的な料理などあまり口にした事のない木内は、どうやら庶民の味を知りたいらしい。
「なんだいるのか? そっちのおかずを何かくれるなら分けてやらんでも無いぞ?」
「ホント? じゃあ、はい」
そういって、割り箸で摘まんで寄越してきたおかずは私の目を疑うモノだった。
「お、おい、こ、これ、もしかして……」
「ん? 唯の茸だよ?」
平然と返してきやがった、唯の茸ときやがった。
こいつは、これは、この茸様は。
「マツタケ……だろコレ……」
思わず呆然と呟いてしまう。
「そうそう、松茸。美味しいよ?」
そりゃそうだろうよ、明らかにいい香りがするし、国産か?
なんなんだこのブルジョワさんは。
木内お嬢様は一体何食って生きてきたんだ。
なんで弁当に茸の最高峰レベルの食べ物が入っているんだ。
お前の平日の昼食は、一般の人間には永遠に手が出せなさそうな究極のメニューかよ。
「さ、肉じゃが頂戴? なんだかすっごく美味しそうで、食べたくなっちゃった」
……。
まあいい。
明らかに松茸とは釣り合わんが、本人が欲しているなら問題ないはずだ。
私は箸で、肉じゃがのジャガイモを掴んで木内の、これまた豪華そうな弁当箱に運んでいく、途中で……。
「ああ!! やんのかコラァッ!?」
べちゃり
『あ』
木内と私の声が重なる。
突如後ろから聞こえてきた大声に、思わず箸がぶれてジャガイモを落としてしまった。
床に無様に崩れたお芋様。
「……三秒ルールを適応致しましょうか、お嬢様?」
思わずジャガイモ様を凝視しながら、丁寧語になって話しかけるが、木内からは反応がない。
もしや怒っているのかと思って、彼女の顔を伺うと。
木内は驚いた表情のまま、私ではなく、どなり声があった方に視線を向けている。
「り、琳奈。あれ、もしかして……」
焦ったように私の肩を叩く木内。
「ん、どうした? 喧嘩か?」
私も木内につられて、椅子に座りながら後ろを振り向く。
そこに居たのは——
「一体俺のどこが下らないっていうんだ!!」
「下らないよ。お前がその女に惚れこんで、行動したとしても。その恋が実ると思ってのいるのか?」
「当り前だろうがっ!!」
「あのなぁ、藤堂。貴様の言っている事は、アホが妄想して、アホみたいに行動している。まさしくアホだ、もしくは馬鹿野郎だ」
「な、テメェっ! アホアホ言うんじゃねえ!! 俺の愛は本物だから良いんだよ!!」
「恋は盲目、愛は浪費。時間も感情もすり減らす愛なんてものに、何の意味がある?」
「すり減らしてねえよっ!!」
「すり減らしているよ。最も今現在は、貴様の大声で周りの人間の楽しい食事時間がすり減っているが」
「なぬ〜!!」
——馬鹿だった。
大声で公衆の面前で、喧嘩をおっぱじめる馬鹿カッコ藤堂カッコ閉じる、だった。
「何してるんだあいつは……」
思わず頭を抱える。
ここには如月も居るんだ。唯でさえあいつがこの場に居るっていうのに、あんな騒ぎを起こしたらどうなる事か……。
つーか、もう隣の席を見たら馬神女はいないとか言うオチじゃないだろうな?
私は恐る恐る、木内とは反対側の、隣の席に座る女に顔を向ける。
だが、
「あちゃぁ〜」
意外にも如月は彼らの方へ特攻をかけたりせず、手で顔を覆って、何か苦悩している様子だ。
「どうした? てっきり、『取材ですっ! なんで喧嘩したのか面白おかしく聞かせてくださいっ!!』とか言って、あの間に入っていくものかと思ったが? アレ、藤堂だぞ?」
「いえ、本当ならそうしたいものなのですが。折角の【エコ会】期待のイケメン新人が喧嘩。なんていう特大スクープが、目の前にあるという奇跡なんですが……」
如月は手を顔から離して、大声で怒鳴り合っている——怒鳴っているのは藤堂だけだが——方を見て、大きくため息をつく。
「残念ながら、藤堂君と喧嘩をしている相手がね……」
「あら、知り合いなのかしら?」
会話を聞いていた木内が、如月に質問する。
彼女の質問に、如月はどこかぎこちない笑顔を浮かべ、応える。
「ええ、知り合いも何もねぇ。あれ、うちの新聞部の——」
喧騒の方を、苦々しげに見つめながら、如月はこちらにとっても面倒な事を。
頭をかきながら告げた。
「副部長なんですよ……」
- Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.68 )
- 日時: 2011/06/15 23:37
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
目次完成いたしました。
少しは見やすくなったかな?
ついでに色々追加。
作品へのイメージソング待ってます。
何かあったら、是非お教えください。
- Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.69 )
- 日時: 2011/07/20 16:12
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
『第四話 萩原さんと厄介な連中』4-3 1/2
男の喧嘩ってのはひどく面倒だと思う。
自分の意志や意見を曲げずに、どうにか相手を納得させ捩じ伏せようとする。
自分の言葉が絶対的に有利で、空気を読まず、自らのプライドが大事。
そんな連中が多いのが男という性別だ。
勿論そういう基本構造が土台なだけであって、その中にも人それぞれ、十人十色の性格はあるにはあるが……。
どちらにしたって、根っからの【男】同士というのが喧嘩を始めると。
どうしたって、後には引けなくなる。
殴り合いに発展したりすることだってあるだろう。
まあ、女よりは後に引いたりしないところがいいところではあるが、やはりスマートではない。
それに熱血な野郎が絡んできたら、面倒臭さは倍増だ。
そんな理由から女と男というのは、同じ人間とは言え、まったく別種の種族のように感じられる。
女であるといっても、だいぶ人から男っぽいといわれる私だって。
男の喧嘩は面倒くさいと思うし、暑すぎていけないと思う。
長々と脳内思考しているが、要するに何が言いたいかというと。
「だぁーっ! この分からず屋! この俺の愛の熱さがなんで分からねえんだぁっ!!」
「黙れうるさいこっちみんな。暑苦しんだよお前は。アイアイアイやかましい。猿か君は」
「馬鹿かてめぇはっ! だぁれが猿じゃぼけぇっ! 俺は人間だっツーの!」
「あ、そうなんですか知りませんでしたー。初耳初耳」
「て・め・え!! むかつくんだよその言い方ァッ! ぶっ殺すぞこらぁっ!!」
「やってみろってんだ。この俺の筋肉の前じゃ、お前なんてただの糸こんにゃくだっつーの」
「なぜにこんにゃくだ馬鹿野郎!!」
藤堂奏という男は。
どうしようもなくメンドクサイ【喧嘩相手】に成り得るということだ。
「あの、萩原さん。止めないんですか?」
如月が言葉づかいを新聞部モードにしながら、語りかけてくる。
私は、言い合いを続ける二人を一瞥した後、如月に顔を向けて疲れた表情を顔に張り付け言う。
「……いや、お前が止めてこいよ。あれ新聞部の副部長なんだろう?」
「彼は私の言うこと聞かないんですよ。よく『ハッ、部長。そんな偉そうにこの私に命令したいんなら、腹筋をもっと付けてから出直してきなさいな』って、私の命令をしょっちゅう無視するんです」
どんな命令無視の仕方だそれは。女に腹筋付けてどうしたいんだあの男。どんだけ筋肉が大好きなんだよ。
見たところ、藤堂と言い合っている副部長さんは、高い身長に全体的に細身な体。
顔は、世界のすべてを馬鹿にしたような冷めた目にメガネをかけ、目鼻立ちもはすっきりしいる。
全体的に好青年といった感じだが、視線を見たら粗野な感じがする。
どちらかというと、パソコンが得意で、勉強ができる。将来はプログラマー志望です。
といった感じにしか見えない。
どういう角度から見ても、筋肉モリモリの体育会系にはみえないのだが……。
「あ。あの人知っているわ。確か如月さんのクラスの、高松君……だったかしらね?」
聞いたことのない名前だ。
もとよりクラスメイトの人間以外の名前は、関わり合いがなければ覚えない性質ではあるから、当然ではあるが。
「そうです。名前は高松正弘(たかまつ まさひろ)。頭はいいんですが、どうも性格が宇宙人思考でしてね。人の上に立つ人間といった感じでもないんですが、人の下にも付く感じでもないんですよ」
「一匹狼系か?」
「いや、周りに人間はあつまってくるし、慕われてはいるんですが。どうも変人なんです」
「ほぉー」
この学校は一般高に比べてだいぶ馬鹿と変人濃度が高い。
妙な研究ばかりをしていて、たまに警察までに目をつけられる『科学部』。
この【市】一帯の不良どもを、力ですべて束ねようとしている、阿呆丸出しの少年漫画みたいなことを目指し、実行している『格闘部』。
生徒をまとめなければいけないはずなのに、自分たちがしょっちゅう暴走している『生徒会』。
個人では。
ゲームばっかやっていて、学校にそれを持ち込み授業中も机に隠してやっているバカや。
女性愛主義とほざきながら、女のためなら死ねると語っている変態男なんてのも居る。
もう、しっちゃかめっちゃかだ。
どうやら、高松という男も、その変人共のお一人らしい。
まあ、藤堂もその変人同盟の一人だと、私は確信をもって言えるがな……。
ああ、そうそう。
われわれ【エコ会】も、他人から見ればだいぶ変な団体の一つだろう。
そんな目で見られたくはないが、わざわざ人のために自分の時間を削る人間たちは、どう考えたって変人だ。
人間ってのは自分本位で当たり前の生き物だからな。
「はぁ。まあでも、仕方ない。止めに行きましょうかね」
「ん、先生でも呼びに行くか? あの二人を止められるとしたら、やっぱ体育教師の【現人神】菅原でも呼んだほうがいいかもな」
鬼神の様な、ではなく、鬼神其の物の威圧感と必要とあらば鉄拳制裁を加える、現代の頑固親父。菅原武人(すがわら たけと)先生。
生徒からはそのあまりの傲慢さから【現人神】とよばれ、恐れられている。
あだ名の理由は、神のごとき所業を人間の身によって行う、暴力鬼教師。
という意味らしい。
ひどいなオイ。
「いえいえ、面倒事にはしたくありませんし。手っ取り早く、説得してきますよ」
「いや、お前さっきあのメガネは私の言うこと聞かないって言ってたじゃないか」
私の疑問に、如月はにやりと笑いながら意味深な言葉を持って答える。
「ええ、【言葉】は通じませんよ、言葉はね」
「は? それって、どういう——」
こと、と私が続ける前に、如月はすでに走り出していた。
二人が争っているテーブルへと、一目散に駈け出した。
他の生徒たちが昼食をとっている、テーブルをとび跳ねながら駈け出した。
- Re: 萩原さんは今日も不機嫌 ( No.70 )
- 日時: 2011/07/20 16:12
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
『第四話 萩原さんと厄介な連中』4-3 2/2
「ぎゃああああ!!」
「うわっ、ちょ、おま、何やっとんじゃあ!」
「俺のチャァハァアアアアアアアアンンンンン!?」
「なんだぁ! 俺の頭踏みつけて飛んでいったの誰だぁっ!」
「……」
大惨事。
飯食っている人が大勢いる中、長テーブルやら丸テーブルやらの上を、如月は軽快に走っていく。
勿論違うテーブルに飛び移ったりするため、生徒たちが食べていた皿やらコップやらは、土台が揺れることで盛大にぶちまけられ。
あたりには悲鳴と怒声が飛び散っていた。
「あら……まあ……」
さすがの木内もビックリしたのか、口に両手をあててお上品に驚いてらっしゃる。
そんな唖然としている私たちや、被害にあっている生徒たちを置いてけぼりにして、如月は疾駆する。
さながら競走馬の様な速さで、不敵な笑みとともに走っていく。
勿論行き先には藤堂と高松君。
「て、ちょっと待てよオイ。あの女まさかあの二人を!」
感づいた私は、急いで止めようと走るが、さすがにあんな早いスピードで走る如月に、後走りで勝てるわけもない。
「だから! 俺の愛はこんにゃくみたいにへにょへにょしてねえんだよ! いうなれば熱い鉄板男心!!」
「なんだそれ、そんなのがカッコいいと思っているのか? まったくもってお笑いだな」
いまだ呑気に。いや、本人たちは熱くだろうが、もっと言えば藤堂だけ熱くだろうが。言い合っている二人組。
ちっ、仕様がない。ここは大声でも出して危機回避を促すしかないな。
「藤堂っ!! 【避けろ】!!」
「えぁ?」
「ん?」
こちらの大声に気付いたのか、二人ともこちらに顔を向けてくる。
だが、どうやらもう遅かったようだ。
「ええええ?」
「ちょ、ぶ、ぶちょ」
二人が振り返った先に待っていたことは。
足が顔面にめり込むという事象だけだった……。
「あべからぢっ!?」
「ぶべらぶやっ!?」
ベキリ。という嫌な音と共に。二人して妙な叫びをあげながら、後ろに倒れていく。
勿論そんな所業をした足癖の悪い馬鹿は、如月弥生だ。
「喧嘩両成敗ってやつですよ、はっはっはっ!」
「はっはっは。じゃねえっ!」
「がふっ!」
ようやく追いついた私が、思いっきり頭をぶんなぐる。
「何するんですか!? 私は二人の喧嘩を止めただけですよ!」
「止めるって、被害増大しているだろうが! 『あの二人うるさいな、喧嘩さっさと終わんねえかな』って被害から。『うおらっ! なに人の食べ物まきちらし飛んじゃボケェっ!』っていう被害レベルまで格上げしてんだろうが!」
全力疾走の後の、荒い呼吸の中。
あらん限りの大声で、如月を怒鳴りつける。
こともあろうにこの馬鹿は、人さまの昼食タイムを邪魔してメシを蹴散らした揚句に、ジャンピングしながら、両足を。より正確に言うと、右足を藤堂の顔面に、左足を高松君の顔面にベストヒット。クリティカルナイスすぎる攻撃をかましてくれやがった。
それだと、スカートの所為で中のパンツ丸見えのくせに、何をやっているんだこいつは。
あらゆる意味で恥をしってくれ。
「まあまあ。喧嘩が収まってよかったじゃないの」
のほほんムードを取り戻した木内がやんわりとした笑みを浮かべながら、いつの間にか近くに寄ってきてそんなことを言う。
「そうはいかないだろうよ。ほらみろ、周りの連中の殺意と怨嗟の視線を」
貴重な飯時を邪魔された人間たちが、思いっきりこちらをにらんできている。
やばい。すごく怖い。集団の敵意ってのは怖すぎるな。ついでに言うと、飯の恨みは怖い。
「いやぁー、困ったもんですね」
お前の所為だっつーの。
「そうね、ここは私に任せて」
「え?」
木内はにこやかに笑いながら、食べ物の恨みで暴力集団と化しそうな人間たちに近づいていく。
危ないと言おうとする間もなく、すたすたと無警戒に進んでいってしまった。
「みなさーん。昼食の代金と、汚れてしまった衣類のクリーニング代は、私が持ちますか
ら、どうかここは落ち着いてくださーい」
……。
いやいやいや。
いやいやいやいやいやいやいやっ!?
ありえないだろう!
何人分の、食費!?
何人分のクリーニング代!?
何円するの!?
つーか、気前よすぎでしょう木内お嬢様!!
「いやぁー、凄い。太っ腹ですね」
「お前、なに人に弁済させてほざいてんだよ」
「いやなに、これで丸く収まるッぽいですからいいじゃないですか」
確かに、あれほど殺気に満ちていた連中が、木内の一言で大分静かになってしまった。
あの言葉を発したのが、学校一のお嬢様兼トップクラスの美人の木内が言ったからだろうか?
なんにしたって凄いことだ。
「おい、木内。いいのか? 結構な額だぞ多分」
「大丈夫よ。一千万位なら軽く動かせるから、私でもね」
わおっ。
木内じゃなければ、殴りたくなる言葉をさらりと言いやがった。
この笑顔がなければ、嫌味に聞こえるのだが、彼女特有のほんわか笑顔の前では、そんな意志は塵芥だ。
「助かりますよ木内さん! 俺に木内さんへはわが新聞部ご用命とあらば即お助けします! 主に情報面で!」
「あらあら。それはありがたいわ〜」
う〜ん。なんか納得いかないが。まあいいか。
木内がいいというならそれでいいさ。
さて、それよりも大事な問題は……。
「さて、この二人を起こすか」
蹴られた衝撃で、壁に激突し気絶したうえに、顔に靴跡がくっきり残った男二人に歩み寄る。
哀れな被害者二人組の片方である藤堂は、なぜか幸せそうな笑顔で気絶していた。
「なんでこんないい笑顔しているんだこいつは……」
私が呆れつつもつぶやくと、藤堂から小さなつぶやきが聞こえる。
顔を近づけると何かとぎれとぎれに呟いているのが分かる。
耳をすませると、その内容が聞き取れた。
「ん、んん。萩原、そこは、だめだって……あ、も」
……こいつ、ここまで変態なことを寝言で。いや気絶言でのたまうとは。
このまま永眠させてやっても罰は当たらない気がするな……。
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