コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

銀の星細工師
日時: 2015/01/28 15:12
名前: 妖狐 (ID: e.VqsKX6)

■あらすじ
 人々に幸せを運ぶと言われる『星硝子(ほしがらす)』
母を亡くしたばかりの少女ティアラは星硝子細工師になることを目指し、狩り人と呼ばれるパートナーを探す。
 細工師になるべく奮闘する日々で、天才的狩り人のキースや、伯爵の息子ヒューと出会い、ある学園へ入学することになって…!?

「私は諦めたくないよ。だって見つけたいものがあるから」
 やっかいな仲間たちと共に、時には傷だらけになりながらも、一心に夢を見て進む物語。
 

■こんにちは
あるいは初めまして。 妖狐と申します<(_ _)>
このお話は私の「頑張る女の子」が書きたい! という思いから執筆をはじめました。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しい限りです。

■主な登場人物
主人公/ティアラ・グレイス
一匹狼の狩り人/キース
<一級>星硝子細工師/フレッド
優しい貴公子/ヒュー

(学園の生徒)
腹黒お嬢様/アリア
失礼すぎる後輩/ジャスパー
極度の緊張症の先輩/ミラ
異国の純粋な青年/ラト
頼りがいのある兄貴肌/ブラッド


■目次

プロローグ            >>1
第一章 細工師と狩り人      1話>>2-3 2話>>14 3話>>21
                 4話>>26-27
第二章 王国パーティーへご招待  幕間>>34 5話>>35-36 6話>>37 
                 7話>>41-42 8話>>48 9話>>51-52
第三章 学園生活は前途多難!?   幕間>>54 10話>>57 11話>>71-72
                 12話>>77-78 13話>>84 14話>>85
第四章 難問のアンサー      幕間>>92 15話>>93 16話 >>94
                 17話>>100
第五章 やっかいで愛しい仲間たち 幕間>>103 18話>>112 19話>>117
                 20話>>120 21話>>123 22話>>130
                 23話>>133 24話>>134 25話>>139
                 26話>>146 27話>>149 28話>>153
                 29話>>156
第六章 魔女の陰謀と本音     幕間>>157 30話>>165 31話>>166
                 32話>>167 33話>>170 34話>>171
                 35話>>174 36話>>175 37話>>176
                 38話>>177
第七章 いざ、戦いのとき     幕間>>179 39話>>180 40話>>181
                 41話>>182
第八章 隣同士の想い       幕間>>189 42話>>192 43話>>193
第九章 最後の決断と誓い     幕間>>194 44話>>195-196 45話>>197
                 46話>>200 47話>>201
最終章 銀の星細工師       幕間>>202 48話>>203 49話>>204
エピローグ            >>207

 400参照突破【告知】 >>53
 600参照突破【トーク:ポッキーゲーム】>>81
 900参照突破【人物紹介】 >>116
 1000参照突破【番外編:誠実の皮をかぶった肉食動物】 >>126-127
 1500参照突破【番外編:ガチョウのみぞ知る想い】 >>161
 2000参照突破【特別編:お嬢様の番犬】>>183-185
 3000参照突破【特別編:唯一無二の君】>>216-217
 あとがき >>211      

■注意・お願い
・ほとんどファンタジー
・糖分は甘め
・学園、冒険、ファンタジー、コメディ、全て詰めました。
・亀最新です。ノロノロです。それでも気長に待ってくれれば。
・誤字・脱字があったらすぐコメを!
・荒らしはご遠慮します。(辛口コメントは大歓迎です)

■お客様
*コメントをくださった方

珠紀様
夜桜様
カリン様
朔良様
ひよこ様
反逆者A様
ああ様
八田きいち様
寝音様
ゴマ猫様
いろはうた様
雨様
オレンジ様
にゃは様
村雨様
苑様
再英78様
驟雨様
葉月様
スミレ様


■執筆作品
少年(仮)真白と怪物騎士団      新連載
救世主はマフィア様!?         完結
吸血鬼だって恋に落ちるらしい     完結
ラスト・ファンタジア         連載中止
神様による合縁奇縁な恋結び!?    連載再開
僕等の宝物の日々〜君が隣にいるから〜 完結
笑ってよ サンタさん!        完結

それでは本編へ レッツゴー!!

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46



Re: 銀の星細工師【新章突入!】 ( No.161 )
日時: 2014/07/17 23:24
名前: 妖狐 (ID: 69bzu.rx)

■参照1500突破!■

「銀の星細工師」を読んでくださっている方、ありがとうございます!
小説を書いていて、読んでくださっている方がいる、と一番実感するのは参照数とコメントです。
そこでこんなに大きな参照数をもらえて幸せです(*^_^*)
これからは夏休みに入り、私自身も受験生ですが、もっとスピードアップして書いていきたいと思いますので(←おい
今まで以上に楽しんでいただけたらいいです!

それでは参照記念として番外編を書いたので、どうぞ!
今回は最近あまり出ていないキース君目線のものです。

ちなみにガチョウの誕生鳥の月日は私の誕生日です♪(読んだらわかると思います)

ではでは、番外編スタート!



■特別番外編 『ガチョウのみぞ知る想い』■

「ふわふわサクサク、この触感たまらない! 最高!」
 弾んだような声が上がる。昼寝の途中、唐突にキースの耳へ飛び込んできたのはティアラによく似た声だった。
 ゆっくり瞼を開けて声のする方を向く。屋根の上で日向ぼっこをするように寝そべっていたキースは下を覗くように中庭の一角へ目を向けた。
 中庭は狩り人専用の校舎と細工師専用の校舎の中間地点に位置する場所で、共通スペースにもなっている。
 自分の運動神経を生かして屋根の上という特等席で今日は昼休みに昼寝をしていた。
「やっぱり、あいつか……」
 目に飛び込んできたのは一度見たら忘れられない銀色の鮮やかな髪を持ったティアラだった。頬を押さえて、美味しいと叫びながら悶えている。
 どこか、懐かしいような感じがした。
 ティアラは同じ学園の敷地内にいるのに会うことが滅多にない。それは多分、星硝子の関する仕事と言っても専門とする部が違うからだろう。少し前まではうるさいほど聞こえていたティアラの声が、今はもう聞こえない。けれどやはり、ティアラは変わっていなかった。
「ああ、もう。なんでこんなにチョコクロワッサンは美味しいの! 外側の生地はサクサクしてるんだけど、中のチョコがとろーりって溶けてくる……、もう最高!」
 歓喜しながら口いっぱいに頬張るティアラを見て、ついキースは吹き出す。あの大食らいな様子はいつまでたっても変わらないのだろう。
 心がなぜかふわりと軽くなるのを感じる。見てて飽きないティアラを観察するのは、キースにとって思ったよりも面白かった。
「あいつ、食いすぎだろう」
 忍び笑いが次から次に漏れる。突っ込めるだけ突っ込んだような頬は芸でもやっているかのような様だった。
 そのとき、ふいにティアラへ飲み物を差し出す人影が現れた。ついキースは眉を寄せてその人物をよく観察する。どこか見覚えのある顔だ。
「ヒュー、ありがとう」
 笑顔で飲み物を受け取るティアラの言葉を聞いて、キースはその人物のことを思い出した。国王主催の王国パーティーで何度か見た、伯爵家の息子ではないか。まさか彼がここにいるとは思わず、キースは驚きを隠せなかった。
(なんで伯爵家の坊主がここに……? 普通は跡取りのために有名な学校へ通わせるが、まさか星硝子を扱った専門学校に入学だなんて。あいつは星細工師になりたいのか?)
 彼の身に着けている細工師希望の生徒の制服を見て首をかしげる。不可解な疑問が頭の中を回った。けれどそれも全てティアラの言動に塗りつぶされてしまう。
「あ、ヒュー、その手に持っているのはハニーワッフルだよね! 一口でいいから分けてください! そのワッフル好きなんだ」
 瞳を輝かせて頼むティアラへヒューは笑ってうなづいた。ワッフルをちぎってティアラに渡す。それを有難そうにもらいながら、ティアラは口の中減へ入れて、たちまち笑顔になった。
「甘くてふわふわしてて、美味しい……!」
 その表情にまたしてもヒューは笑う。そんな二人を見てキースは表情を曇らせた。頭の中は二人の仲の良さそうな様子で一杯だ。感じたことのない薄暗い感情がキースの気づかないところでゆっくり湧き上がる。
 二人は談笑しながらベンチに寄り掛かっていた。
 いつから仲良くなったのだろうか。思い返せば王国パーティーのときも会話をしていた気がする。
 ティアラたちから目が離せなくなっていると、ワッフルを食べ終わったティアラの口へ、ヒューが不意にもう一口ワッフルを運んだ。ティアラはまた喜んで食べる。
 キースは一気に駆け上がってくる感情に気づいた。まだ小さいけれど胸を刺す棘。
「あいつは俺の阿呆鳥なのに……」
 知らぬ間にそんなつぶやきが口から漏れていた。
 他の奴に餌付けされるなんて許せない、とどこか脈略のない怒りさえわいてくる。
 キースは重たい体を無理やり起こして、二人から強引に目線をそらすと背を向けた。これ以上ここにいたら知りたくない自分の気持ちを知ってしまいそうだったからだ。
 中庭とは反対の裏庭へ向かって屋根を下りる。中庭のにぎやかな声が遠ざかったが、二人の姿は脳内に焼き付いて離れなかった。
 
             *

 そのまま宛もなく裏庭をさまよった。昼休みの時間は長いため、そうそう授業を告げる鐘も鳴らないだろう。
 伸び放題の草をかき分けながら道なき道を行くのは案外楽しかった。狩り人として山に登ることが多いため、自然には慣れっこだからだ。狩り人の探究心をくすぐられた。
 庭とは呼べない広大な森の中を真っ直ぐに歩いていくと湖に出た。向こう岸が見える小さな湖だ。湖の底までもが見える透明な水につい手を伸ばして触れると、冷たい感触が手を襲った。けれどそれがとても心地よかった。
「……」
 言葉にならないため息がでる。そのとき突然、首を絞められたような「グアッ」という苦しげな声が聞こえた。警戒してそちらを向くと白い羽をもった鳥が一羽、優雅に湖を泳いでいる。
「白鳥……?」
 目を細めてそちらを見やり、すぐさま白鳥ではない違うものだと分かった。
「あれはガチョウか」
 小柄な体のガチョウが堂々と湖を隅から隅まで泳ぎ歩く。きっとこの湖はあのガチョウの住処なのだろう。ガチョウの様子を見ながら、キースは記憶の中の言葉を思いだしていた。それはガチョウの鳥言葉についてだった。花言葉のように鳥にも鳥言葉がるのだと、旅路の中で聞いたことがある。誕生鳥なども定められているようで、印象強い内容だったからよく覚えていた。
「確かガチョウの鳥言葉は『敵対心』だったか……?」
 口に出してみてキースは心が跳ねるのを感じた。溢れるようにティアラとヒューの姿が浮かんでくる。仲の良さそうな二人の姿。いつの間にかティアラの隣にいたヒュー。
 ヒューに芽生えた感情は……敵対心?
「まさかな」
 頭を振ってキースは乾いた笑みを浮かべた。
「そんなはずはないだろ。俺はあのぺったんこに何の感情も抱いていない。だから伯爵の坊主に思う感情もない」
 ガチョウに話しかけるように言って自分でうなづく。
 敵対心という名の嫉妬、かもしれない感情をまぎらわそうとするキースへ、ガチョウはあざ笑うかのごとく「グアアッ」と鳴くのだった。

Re: 銀の星細工師【参照1500突破】 ( No.162 )
日時: 2014/07/23 00:02
名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: mGXNpy6x)


 こんばんは、ゴマ猫です。

 かなりご無沙汰しておりました(汗)
 遅くなりましたが、未読の部分読み終わりましたのでコメントを。

 まずジャスパーくん、このひねくれた感じがゴマ猫のお気に入りでした(^^) なんだかんだで、いい子だなぁと。
 途中でパンの描写がありましたが、個人的に好きなシーンでした。と言うのも、パンが大好きなので若干くい気味に見てしまいましたね。
 ヒューくんのピーナッツバターのやり取りも良かったですね。一瞬、ヒューくんは天然たらしさんなのかと思いましたが、後の描写を見て、あぁ可愛い人だとニヤニヤしてました。
 あと、「僕は太らない体質だからさ」のセリフは、それはヒューくん言ったらいけないよ。みんな気にしてるんだから。と、ひとりツッコミ。
 物語も人数がそろって、盛り上がるシーンですね。楽しみです!

 なんかいつも思うのですが、妖狐さんの描写は安定していますよね。≪≫で、ふりがなをつける所も読者さんに対する配慮なんだろうなぁとか、丁寧かつ親切な作者様だなと再確認しました。例をあげるとキリがないので、今日はこの辺で自重しておきますね。

 参照1500超えおめでとうございます! これからも応援しておりますので、無理せず頑張ってくださいませ(^^)

Re: 銀の星細工師【参照1500突破】 ( No.163 )
日時: 2014/07/25 19:20
名前: 雨 (ID: 5YqwrR3X)

 こんばんは、雨です。おひさしぶりです!
 そして参照1500突破、おめでとうございます<(_ _)>

 五人目あつまりましたね! よかったです。
 肝心の試験はどうなるんでしょうか……。幕間の魔女さん、邪魔したりしないですよね!?;;;;;
無事終わ……りはしないでしょうけど、幸運をお祈りします(ー人ー)

 番外編もとってもおもしろいです(^^)
 久々のキース君登場に(°∇°*)! となりました(笑

 ではでは、更新頑張ってください。
 

Re: 銀の星細工師【参照1500突破】 ( No.164 )
日時: 2014/07/26 08:30
名前: 妖狐 (ID: 69bzu.rx)

ゴマ猫さん>

こんにちは、お久しぶりです!

ジャスパーくん、お好みでしたか! 嬉しいです(^◇^)
パンの描写を書いたとき、私はとってもお腹が空いていました…。
というか大体の割合で私が小説を書く時間帯にお腹が鳴ります。
なのでつい、手も食べ物の描写に走ってしまって…。
食い気味に見てくださったということで、あのとき、お腹が空いててよかったな、と思います(笑

ゴマ猫さんの言う通り、だんだん盛り上げていこうと思います!
駆け抜けるように書いていけたらな、なんて。
(いや、無理かもしれない。私、ノロノロ更新だし…)
でも、今まで出せなかったキャラも新たに出していきたいです!

はΣ(・Д・)
最後になんだかとっても嬉しいお言葉が 。・゜・(ノД`)・゜・。ブワッ
あ、安定していますかね…?
自分が書きたいままに書いているのでよくわかりませんが、ゴマ猫さんに言って頂けると自信が湧いてきます!

たくさんの嬉しいお言葉ありがとうございました!


雨さん>

こんにちは、お久しぶりです!
そしてありがとうございます(*^_^*)

はい、五人やっと集まりました。長かったです…。

魔女さん、これからどんどん出していきたいと思います!
そして彼女は今までに何度か出てきたことのある登場人物なのです!
幸運をお祈りしてい頂けますか!
ありがとうございます<(_ _)>

番外編2でのコメントを頂けたのは雨さんが初めてなので、嬉しい限りです!
キースを最近書かなさすぎて一応ヒーロー役だったのにな、と思って書きました。
ですが、これからもキースを出す機会があまりないようなのです。
待っていただけると嬉しいです

ありがとうございました!






Re: 銀の星細工師【参照1500突破】 ( No.165 )
日時: 2014/07/29 09:34
名前: 妖狐 (ID: 69bzu.rx)

「スター獲得試験。グループ参加」
 それは定期的に行われる試験の中でも年に一度だけ設けられた参加方法。そして貴重な試験。個人の能力だけでなく団体となることで、スター獲得確率が一気に跳ね上がるからだ。
 星を獲得するチャンスとも呼べる今回の試験に、学園の生徒たちは溢れ出るばかりやる気と活発さを見せていた。
 今日も学園は騒がしい。人ごみの中で、密かにたくらむ者がいるのも気づかないほどに——。

                 *

 試験まで七日をきった土曜の朝、休日にも関わらず学園には多くの生徒がつめ寄せていた。試験の星細工に関する重要な規定が発表されたからだ。
『一、この度のスター獲得試験では、五人一組のグループ参加である。それ以上、それ以下はグループとして認めない。
 二、制限時間は最大十時間とし、時間内にグループのメンバーである者だけで合同の星硝子を制作する。時間内に完成できなかったものは失格。またメンバー以外の者が手助けしても失格。
 三、制作する星硝子はお題を取り入れたものとする。

 お題、飛行

 以上の項目をふまえて、生徒諸君には制作に取り組んでほしい。学園長より。
 追記、楽しみにしてるぞ』
 最後の一行を見て、朝早くに集まったティアラは目を丸くした。掲示板へ厳かに貼り付けられ紙の隅に、落書きのような文字で追記が書かれている。脳内に小人のような学園長が浮かび上がった。こう言うのは失礼だが、まったく威厳がなくむしろフレンドリーな学園長だった。
 出会った当初から友達のように接してきた学園長を思い出して懐かしく感じていると、軽く肩を叩かれた。振り向くとジャスパーがフードを深くかぶった状態で立っている。早朝のせいか少し不機嫌な顔でジャスパーは短く言った。
「作戦会議だ」
 なんの作戦会議か、なんて聞かなくても分かる。試験に向けての作戦なのだ。
 仲間が五人集まった今、次なる目標は試験で多くの星を獲得すること。それには五人の団結力が必要不可欠。作戦会議はもっともそれぞれの意見を交わし合い、知ることのできる場なので団結もしやすい。それに何よりもティアラは仲間と集まれることが嬉しかった。
「わくわくするわ」
 スキップしそうな勢いで、歩き出すジャスパーの後を追った。

                 *

 ジャスパーに案内された場所は中庭の一角だった。丁度テーブルがいくつか並んで置いてあり、その中央にミラとラト、ブラッドがいる。案内されるまま椅子に座り、五人は輪のように円になって向かい合った。
「それじゃあ、さっそく私たちが作る星細工のデザインについて決めなきゃね」
 ティアラが開口一番に言うとブラッドが大きくうなづいた。
「だな。まずはそれを決めなきゃ細工の試作もできないしな。お題は飛行だったか? つまり飛ぶってことだよな」
 もうすでに学園中で噂になっていたため知っていたのか、ブラッドは考えるふうに言った。
「作る物の範囲が限られたお題だよな。飛ぶって言ったら鳥か?」
「飛行機とかロケットとかもありですよね」
 ブラッドの言葉にミラもうなづきながら口を開く。ジャスパーはフードを外して上を指さした。
「もっと広く言ったら空とかもそうだね。飛ぶっていったら上空の物も連想できるし」
 そのほかにもジャンプやダイビングなどという飛び降りる系のものも出てくる。様々なキーワードに耳を傾けながらティアラは瞳を輝かせていた。自分では考え付かなかったアイディアが次から次に湧き出る。これぞ三人寄れば文殊の知恵だ。いや、五人寄ればか。それぞれの違う考えが集まってより豊かな想像が膨らむ。
「なんだかすごい物ができそうな気がする。やっぱりわくわくするな」
 高鳴る鼓動を押さえて笑うとジャスパーも微かに笑った。
「お姉さんは本当に能天気だね。まあ、そういうの嫌いじゃないけど」
 以前よりもジャスパーの表情が柔らかくなったような気がした。そのとき突然、ガクンッと肩に圧力がかかる。
「うわっ」
 重さに負けそうになる体を慌てながらどうにか立て直す。驚いて横を見るとラトが瞼を閉じて寝息をたてながら寝ていた。
「え、何で寝てるの!?」
 ラトを凝視するとブラッドは面白そうに笑った。いや、笑ってる場合じゃなくて、と言いたくなる。なにせラトは一見痩せているためか軽そうに見えるが、ティアラにとってはかなりの重力だった。
(お、重い……っ)
「そいつさっきから寝てたぞ。そんで体が左右にぐらついてたからお前の方に倒れたんだろう」
 いきなりラトがこちらに向かって傾いてきた理由が分かった。どうにかラトを押し返そうとしたとき、ミラが額に汗を浮かべて立ち上がった。
「ティ、ティアラさんに襲い掛かるなんて不埒だわ!」
「いや、襲い掛かられたわけじゃ……」
「しかもティアラさんの肩に寄り掛かって寝るだなんて、羨ましい!」
 顔を真っ赤にさせながら叫ぶと、ミラは服のフリルをせわしなく揺らしてティアラのもとへ来る。急いでティアラからラトを離すと、その反動で起きたのか、ラトは眠気眼をこすりながら、かくんと首を下げた。
「ごめん……。朝、早い。だから眠かった」
 まだぼやけた様子のラトにティアラは気にしないで、と首を振った。確かに今の時刻だってティアラなら一度起きて、二度寝をし直す時間帯だ。加えて椅子に座りながらの作戦会議だったから、余計にラトの眠気を誘ったのだろう。
「まだお題について何かのデザインが決まったわけじゃないけど……」
 ティアラは思案した。このまま話し合いを続行してもいいが、それだとラトはまた眠くなってしまうだろう。それに案だってそろそろ尽きてきた。長らく硬い椅子に座っていたせいか少々、体が疲れている。ティアラは学園を振り返って唐突に立ちあがった。
「気分転換に皆で星硝子を作りにいかない? まだお互いの能力だって知らないし」
 提案に皆も話す口を止めて、興味をそそられたようにうなづいた。

                   *

 星硝子を制作するための工房へ足を運ぶと、工房内は作業用エプロンをつけた生徒で溢れかえっていた。早くも構図を決めたのか試作を作ったり、細工の練習をしている生徒もいる。賑やかな工房内を見つめてティアラは驚きに声を染めた。
「びっくりした。こんないっぱい人がいるなんて!」
「皆、より多くの星を獲得するために必死なんだよ。多分試験までの一週間はずっとこの調子だろうね」
 ジャスパーの説明にティアラは納得した。ティアラがより良い星細工を作りたいと望むように、他の生徒もそれを目指して努力しているのだ。
「おーい、こっちの作業台空いてるぞー!」
 良く通る大きなブラッドの声が耳に届いてティアラは手を振った。心が早く星硝子に触れたい、作りたいと騒ぐのが聞こえる。空いていた作業台に集まり、エプロンを装着するとティアラはさっそく星硝子を練り始めた。
 練りの工程は細工にも、とても重要な工程だ。練りで細工後の完成品の質がぐっと変わり、価値だって変化する。いくら細工する技術を持っていても練りが下手では話にならないと言える程だ。
 ティアラは自分の手を冷水に浸して冷やすと、少しずつ水を加えながら粉の星硝子をまとめていく。叩いたり伸ばしたり、まるでクッキーの生地を作るように捏ね上げていく。ティアラの手際が良い手つきにミラが関心したような声を上げた。
「すごい、みるみるうちに星硝子が上質な練りの状態へと変わっていくわ。まるでティアラさんの手に従うよう……」
 見入るような目つきはミラだけでなく、ブラッドやラトにもあった。ジャスパーは一度ティアラの練りを見たためか怪しく笑っている。
 繊細な光を発しながら、滑らかな表面を練られるたびに覗かしていく。さらに固い個体が柔らかさを持ち始め、流れるようにティアラの手の中で踊った。そのさわり心地にティアラは小さく微笑んだ。
 以前、練りの工程で失敗してしまったことがる。それは期限切れのパウダーを使ってしまったためだ。それからジャスパーにそのことを教えてもらい、ティアラはこの学園のパウダーはなるべく使わないことにしてきたのだ。だから今回は失敗する恐れもない。
 何分程かで星硝子をティアラは丹念に、かつ素早く練り上げた。
「よーし、出来上がり。まあ、こんなものかな。後は細工をして乾かして……ってあれ、皆、作らないの?」
 ティアラは不思議そうに自分を見る皆を見た。ミラ達は夢から覚めるみたいに瞼を瞬かせると、いつの間にか止まっていた息を吐き出す。
(この子が本当に星なしなの……?)
 ミラは眉をひそめた。ティアラのレベルは星二つを軽く超えるほどで、もしかしたら星四つまでいけるかもしれないものだった。
「お、俺もやるぞ」
 我に返ったような声でブラッドは宣言すると、彼らしい力強い手つきで星硝子を練りはじめた。それにラトも続く。大好きな星硝子に触れて嬉しそうな、けれどとても真剣な様子のティアラを見てミラは口を開いた。
「ねえ、ジャスパーさん。一つ聞いてもいい?」
 エプロンもつけずに細工を始めようとするジャスパーにミラは話しかけた。無表情のまま、彼はミラを見る。けれどミラはジャスパーを見るのではなく、ティアラを見つめたままだった。
「なぜ彼女は星なしなの? 私分かるの。彼女は星なしなんてレベルじゃないわ。思い返せば彼女は一級星細工師の推薦者だったじゃない。ということは実力だって相当のもののはずなのに……」
 ジャスパーは静かに冷水へ自分の手を浸した。ミラはさすがこの中で一番の年長者というべきか、いち早くティアラの能力に気づいたようだ。多分、ブラッドやラトだって何かを感じているのだろう。ひんやりした感触に目を閉じた。
「うん、先輩の言う通りだよ。お姉さんは確かに実力がある。……でも、運や頭の中身は残念ながらないんだ。前回の試験は不運だったとしか言いようがない」
「そうだったの」
 納得するようにミラはうなづいた。するとジャスパーは楽しそうにくっくっくと笑い声をあげた。
「だから僕は思うんだ。藁の詰まった馬鹿なお姉さんを僕ら、仲間でどうにかしてあげようって。そうすれば、さすがの不運体質なお姉さんも実力発揮できるでしょう」
「ええ、そうね。確かにティアラさんの支えになりたいわ。だって私がここにいるのも彼女のお陰なんだもの」
 ミラは微笑んで作業台へ歩いていく。ちゃっかりティアラの隣をキープして星硝子を練り始めた。ジャスパーは、楽しげに作業台を囲む四人を見て冷水から手を引き上げた。
 星硝子に触れた瞬間、鼓動が一気に高鳴る。ああ、これに触るのはいつぶりだろうか。
「お姉さんの言ってたとこ、少し分かったかも。僕も……——わくわくする」
 久しぶりに本気になってみるか、とジャスパーは首にかけていたヘッドホンを外した。不思議とティアラの周りにいれば音がうるさく感じなかったからだ。

 ミラがティアラのほかに星なしという不釣り合いな階級を持つ、もう一人の天才に気づくのは、あと数秒後のお話。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46



この掲示板は過去ログ化されています。