コメディ・ライト小説(新)

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憑きもん!~こんな日常疲れます~【更新停止】
日時: 2024/01/26 23:11
名前: むう (ID: F7nC67Td)

 中学2年生の私・月森コマリには一つだけ悩みがある!
 それは、世にも珍しい【逆憑き】という体質なこと!
 なんとなんと、自分の行い全てが悪い方向に行くみたい。
 自分の存在自体が悪い妖怪とかを呼び寄せてしまうんだって。
 治すには、悪い妖怪と一緒に集まってきた、いい妖怪か幽霊さんの力を借りるべし。
 でもなかなか、そんな優しい幽霊来ないんですけど———!?
 悪運強すぎJCの日常ラブコメディはじまりはじまりっ。
 ―-----------
 《2023年夏☆小説大会 
2023年冬☆小説大会 銀賞入賞!》
 投票して頂きありがとうございます!!
作者とキャラの感想はコチラ→>>54

 ★重要キャラクターLog★
 >>23

 ★応援コメント★
 >>09 >>47

 ※不定期更新です! 
 ※視点変更をメインとした展開です。毎話ごとの主人公がいます。ご了承ください。
 ※若干のシリアス描写がありますが、基本は日常コメディです。
 
 
---------------------

 【目次】一気読み>>01-

 〈第1章:新たな出会いは疲れます! >>01-17
 プロローグ>>01
 第1話「ヘンな同居人」>>02-04 
 第2話「誰だお前」>>05-06
 第3話「ヘンな協力者」>>07-09 >>10
 第4話「変化」>>11-17

〈第2章:新たな関係は疲れます!>>18-33
 第5話「要らない力」>>18-21
 第6話「契り」>>22-24
 第7話「プレゼント」>>25-28
 第8話「側にいれたら」>>29-33
 アフタートーク>>34

 閲覧数1000突破記念★キャラトーク>>46
 閲覧数1400突破記念★キャラ深堀紹介>>51
 閲覧数2100突破記念★○○しないと出られない部屋>>65-70 >>71-75

 〈第3章:〔過去編〕疲れたきみと僕の話>>35-57
 第9話「幽憂レコード:前編」>>35-38
 第10話「幽憂レコード:後編」>>39-40
 第11話「禍と鳥:前編」>>41-45
 第12話「禍と鳥:中編」>>47-50
 第13話「禍と鳥:後編」>>52>>53>>55>>56
 アフタートーク>>57

〈第4章:新たな試練は疲れます!>>58-
 第14話「転校生がやってきた」>>58-60
 第15話「素直になれない僕らは」>>61-64
 第16話「違和感」>>76-


 【重要なお知らせ ※必読お願いします】>>81
 

 
[記録Log]
 2023年1月11日、本編執筆開始。
 2024年1月13日〜更新停止
[参考文献リスト]
・新訳:古事記
・妖怪大辞典
・京都弁(YouTube講座)
 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第2章開始★】 ( No.31 )
日時: 2023/04/21 18:25
名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: viErlMEE)

 更新遅くなってごめんなさい。
 最近調子が悪くて、思うように筆が進みませんでした。
 大変お待たせして申し訳ありません。
 続きです!

 ――――――――――――――――――――――――

 〈こいとside〉

「協力してもらえるとは思っていませんでした」
 わたしはポツリと言った。

 ベッドの上で正座をしていたけど、足が疲れて来た。
体制を整えようと、腰を少し浮かして両足を伸ばす。

「ふーん。なあ、そっち行ってもええ?」

 荷物を整理し終わった宇月サンから返ってきたのは、なんとも曖昧な返事。
 自分の評価が低くて落ちこんでいるんじゃない。
ただ単に、そこまで気にしていないようで、ニッコリ笑っている。

 彼の口調につられて、ついついわたしも、「うん?」とから返事をしてしまった。
 普通こういうときは、怒るか、黙るかするものじゃないっけ。

「よっしゃ。おりゃっ」
 呆然とするわたしは気にも留めず、宇月サンはベッドに駆け寄る。
「え、あの、ちょっと!?」

そして、そのままダイブ! 
 布団の海に体を預けて、「わははははっ」と子供みたく無邪気な声を出した。

「あ~、ベッドって最高やなー。桃根ちゃんもそう思わん?」
「い、いやぁ。う、うち、アパートに住んでたので、布団の方が慣れてるって言うか」

 良い歳した大人が、子供の前で飛び込みますかね?
 ちょっとばかりの苛立ちと、自分もやってみようかなと燻る思考を抑える為に、わたしはわざと突き放した言葉遣いをとる。

「そうなん? この包容力には抗えんわぁ。あー、もう仕事したくなーい。だるーい」
「数分と絶ってないのに、この人もう堕落を極めてっ」
「ふっふっふ。これこそが寝具の力。これこそが寝具の沼やでぇ。きみもハマろー」
「寝具の沼……??」

 彼は、どこか周りとは違うような……どこかかけ離れているような、大人びたオーラをまとっている。良くも悪くも冷静で落ち着いてる。だから物事を俯瞰できる。

 しかし時々、ほんの稀だけど、こうやって子供っぽい一面をのぞかせることもあった。
 コマリさんにも、いとこの美祢さんにも隠しがちな素の表情を、わたしにだけ見せてくれる。
 なんだか自分が特別扱いされているみたいで、正直かなり嬉しい。

 ただ。
(口には出さないけどね)

 だって、わたしにとっての一番は、由比だもん。
 側にいてほしい人は、隣で笑ってほしい相手は、昔からずっと変わらない。
 由比若菜――大切なクラスメート。

 宇月サンは、わたしの—―桃根こいとの『特別』ではない。
 これはコマリさんも、美祢さんも同様。
 どうしたって彼らは由比を超えられない。わたしにとっては友達でしかない。

 それでも彼らの元を離れられないのは、協力を頼んでしまうのは、きっとわたしが弱いからだ。
 ひとりぼっちが嫌で、寂しくて、たとえ打算でも人と群れたかった。
 自分の涙を自分で守るだけの強さがなかったんだ。

「――羨ましかったんや」
 不意に、宇月さんが言った。
 いつの間にか彼は、寝転がりながら、ベッドの横の棚から取ったタブレットを操作している。
 小さい音だけどBGⅯが鳴っていることから予測するに、多分ゲームかLINEかインスタ? かな。

「何の話?」
「さっき言うてたやろ。なんで協力してくれたのかって」

 目線は画面に落としたまま、宇月さんは淡々と話を続けた。

「ボクな。昔っから人と関わるんが下手くそやったんや。今もやけど、誰かを頼ったり、逆に頼られたり、そういう経験をせんまま大人になって」
「……頼らなかったのは、なにか理由があって?」
「立派な理由ではないんやけど、まあな」


 ――誰かを頼るのは、自分が弱いって証明してるようで嫌いだったんや。

 宇月さんが膝を抱え、スンと洟をすすった。
「助けてください、しんどいんですって、ホントは叫びたかった。やけど、自分が何もできひんって相手に話したら、自分でそう認めたことになるやんか。それがずっと嫌で、だから、言えなかった」

「………」

「馬鹿やって、自分でも思ってる。ありもしないプライドで己の首絞めて、なにが得するんって。でも、気づけばいっつもその繰り返しで。いっつも、前後になにか付け足しては、それで人を傷つけとった」

 
 その言葉にハッとする。
 一年前の、あの、屋上での出来事を思い出したんだ。
 
 フェンスに手をかける友人の後ろ姿。私は聞いた。「なんで」と。「なんで、どうして」と。
 あの子は―由比は、問いかけるわたしに「ごめんね」と言って、柵に足をかけて……。
 最期の最期まで、なにがあったのかを教えてくれなかった。これは言葉に置き換えると、『墓まで持って行った』ってことだ。

 由比も、同じ気持ちだったの?
 弱い自分が、赦せなかったの?

「誰かを助けたいと必死になれる桃根ちゃんを見て、なんか、すごく情けなくなって。同時に、ボクでええんやって………やから」

 宇月さんは、そっと、こちらへと手を伸ばす。
 そして、肩の上に垂れていたわたしの髪を、指ですくった。
 
 目と目が合った。

「……っ」
(なに? なになになになになになになに?)

 驚きすぎて、身体が上手く動かない。動かなきゃ、何か言わなきゃ。頭ではしっかり考えているのに、カチコチに固まっちゃって一ミリも動かない。
 頬がほてって、頭がくらくらする。目元に涙が溜まる。

「やっぱりツインテールの方が好きやわ」
 宇月さんは、ふふっと笑った。
 いつもの、陰のある笑顔じゃなくて、心の底からの純粋な笑顔だった。

「ありがとう。ボクを頼ってくれて。……栄えある一番目のフォロワーに、なってくれて」



 ※次回へ続く!

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【4/25更新】 ( No.32 )
日時: 2023/04/26 18:29
名前: むう (ID: viErlMEE)

 公式カップリングは、
 ・トキマリ(美祢×コマリ)
 ・月恋(宇月×こいと)
 ・ゆいこい(由比×こいと)です!
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〈コマリside〉
『夜の七時に、白雲公園前に来てほしい。大事な話がある』
 トキ兄の言葉に、私は目を見開いた。

 公園に行くことが不安なのではない。夕方、お菓子を買いにコンビニへ出かけたこともあるので、夜遅くに出歩くことには慣れている。
 私が不安なのは、その後の『大事な話』 の部分だ。
大事な話とは、一体なんだろう。

 トキ兄は数えきれない恩がある。彼がいなければ、平穏な日常を送ることはできなかっただろう。
 12年間取り続けた赤点のテストも、心霊現象も、降水確率100%の誕生日も、全て『嫌なこと』として頭の引き出しにしまわれただろう。

自分のせいで皆が泣いちゃうんだ。なんでこうなるのって、自分を責め続けていたかも。
実際、やるせなくて寝付けない夜も、食事が喉を通らない夜も何十回も経験したよ。

 でも、トキ兄と一緒に暮らすようになって。
 いつだって横で彼が横で微笑んでくれたから、喜びや悲しみを共に感じてくれたから、私は明るく毎日を過ごせたんだよね。

 逆憑きって体質も、自分の個性だって思うようになった。自分を愛せるようになったんだ。

  でも、悪い想像もたまにする。時々見る悪夢がある。
  トキ兄とこいとちゃんが、「つきあってられない」と私に言い出す夢。遠ざかる二人の背中に、泣きながら「待って」と叫ぶ夢。暗くてじめじめした路地の裏で泣きじゃくる私をあざ笑うかのように、皆が明るい陽だまりへと走って行く夢。

 前に宇月さんが言っていたセリフを、頭の中で反芻する。
『自分のことも守れんような奴には、誰かを守る資格はない』

 これの対義語があるならば、文章はきっとこうだ。
『相手に手を差しの述べられない人間は、いつまでたっても守られる側だ』

 トキ兄は私に勉強を教えてくれる。ボディーガードとして、常に私のことを気にかけてくれる。それだけではなく、掃除・料理・洗濯まですべてやってくれる。
 逆に私は何をしたんだろうか? 彼にありがとうと、しっかり言っただろうか。彼が喜ぶことを考え、実行に移していただろうか。

 ■□■


 夜の七時。私は白雲公園のベンチに座って、トキ兄を待っていた。
 白雲公園は、アパートから歩いて五分の距離にある市立公園で、ブランコとシーソー、あとは簡素なジャングルジムがある。
 昼間は小さい子がお母さんと遊びに来ているけど、夜中なのもあって、私以外に人の姿はない。

「はぁ……。別にいいって伝えたのに」
 私は丁寧にセットされた髪を、指でそっと触る。

 呼び出されたことを親友に話したのが間違いだった。親友の杏里は、たちまち「告白だよ!」と目をキラキラさせて……なんと、私のボブカットの両サイドの髪を編みこみ、桃色のリボンまでつけちゃったのだ。

 『コマちゃん、頑張って!』とグッドサインをする友達に、「ヤメテ」とは言い出せず。結局そのまま公園に来てしまった。
似合ってないなあと苦笑いしたその時。

「コマリ!」
 至近距離から馴染みのある低い声が聞こえて、私はバッと顔を上げた。いつの間にか、目の前にトキ兄の顔がある。

 足音も立てず忍び寄るなんてさては忍者!? と一瞬馬鹿な考えがよぎる。
 実際は、私がボーッとしていただけなんだけどね。

 トキ兄は両手をすり合わせる。
「寒いな。お前そんな薄着で大丈夫なのか? 最近寒暖差激しいから風邪引く……」

 そのあとは聞き取れない。
視線を地面から私へと移した直後のことだった。一瞬で、彼の顔がリンゴのように赤く染まる。滅多にないトキ兄の動揺を見て、私も口からも「はぇ?」と変な声が出た。

「そ、……っ。それ、じ、自分でやった、のか」
「ああこれ? 友だちが勝手にやっちゃったんだ。あはは、似合ってない、よね」

 フリフリのレース付きのワンピースを含め、ガーリーな色合いの洋服が私は苦手。
『今流行ってるんですよ~』とおススメされても、着ようとは思わない。自分には似合わない気がして、手を出せない。自分のイメージが崩れちゃいそうで怖かったんだ。

「わ、わたし、そ、素材って言うのかな? ブスだし平凡な顔立ちだし、今更着飾ったところでマイナスがプラスになるわけないって、伝えたんだけどさ」
 あああああ、沈黙に耐えかねた口が勝手に……!

 トキ兄は一瞬ピタッとフリーズ。そのあとの数分間、口元を金魚のようにパクパクさせては閉じを繰り返す。言いたいことがあるけど言葉が見つからない……でも伝えたい。意を決し、彼は私に向き直り……。

「………かわいい」
 蚊の鳴くようなか細い声を、必死に喉から絞り出した。
「………え?」

 え、ええぇぇぇぇぇぇぇ? あ、あの時常美祢が、「かわいい」って言った⁉ 嘘⁉
 ひっひひ、人違いだったり……? 

 失礼と思いつつも横目でチラリと相手の風貌を確認する。
 黒いコートの下に、毎度おなじみゲーマー風パーカー。耳には銀色のピアス、極めつけはピンク色の髪。

 私の同居人兼ボディーガードの男の子は、私の右腕をグイッと掴む。そして、曇りのない双眸を真っ直ぐこちらに向ける。

「充分、かわいいけど、今もすっげえ、かわいい」

 ※次回に続く!

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第2章開始★】 ( No.33 )
日時: 2023/06/16 16:01
名前: むう (ID: viErlMEE)

学校、趣味、習い事、将来
 悩み事が多すぎる!
 ---------------------------

 〈美祢side〉

 『大事な話がある』。コマリに連絡した後、俺は思った。
 ひょっとすると、言葉の選択を間違えたのではないか、と。

 誕生日プレゼントを渡したい。
 そう説明するのが恥ずかしくて、わざと回りくどい表現をしてしまったけど……。
 『渡すものがある』でも充分伝わったはずだ。

(ぬおぉぉぉぉぉぉぉお、違う、違うんだ! 待ってくれ、違う!)

 残念ながら、発した言葉は取り消せないもので。
 補足しようと「あ、あの」と口を開いたときには、もう通話は終了してしまっていた。

「あぁぁぁぁ…」
 俺は部屋のクッションにボフンと顔をうずめる。
 ふつうに誕生日を祝いたいだけなのに、自分でハードルを上げてどうするんだ。
 ただでさえ少ない俺の対女子ライフが、どんどん減っていく……。

 ちゃぶ台の上に置いている白い紙袋を確認する。この前、デパートで買った商品だ。
 箱の中には、手のひらサイズの正方形の黒い箱が入っており、ピンクのリボンでラッピングされている。

「渡すだけ。渡すだけ。落ち着け俺。落ち着け」
 
 人生初、誕プレ。人生初、女子への贈り物。
 あれを見たら、コマリはどういう反応をするかな。「似合わないよ」って怒るかもな。
 笑ってくれるといいなあ。

 月森コマリはすごいやつだ。
 相手のことなんか興味がなかった少年を、ここまで変えることができるんだから。
 
 
 ■□■

 そして現在、俺は白雲公園で、ベンチに座っているコマリの手を取っている。

 ボブカットの両サイドはゆるく編み込んであり、結ばれたリボンが風に揺れる。ヘアアイロンを使ったのか、いつもボサボサの髪が今日はストレートになっている。服装は相変わらず無地のパーカーだが、それすらも新鮮味がある。
 
 きれい。かわいい。似合ってる。
 頭の中に浮かんだのは、自分にとってなじみのない単語。でも、そう思わずにはいられない。
 胸が苦しい。まるで、心臓を手でグーッとつかまれているみたいだ。なのになぜか、嫌じゃない。むしろそれが心地いい。

「ぎゃああああああああ!!」
 我慢できず、コマリが悲鳴を上げ、両手で俺のからだをドンッと突き飛ばした。

「おわっ」
 体勢を崩され、俺はふらつく。
 もう少し姿勢が傾いたら、ベンチ横の蛍光灯の柱に頭からぶつかるところだった。あぶねえ!

「おいコマリ、なにすんだよ」
「わ、わかんない、わかんない……」

 コマリはふるふると首を振る。

「なにがわかんねえんだよ」
「だ、だって今日のトキ兄、変なんだもん。めっちゃ素直なんだもん! わかんないよ! か、かわいいとか、滅多に言わないじゃん。そんなん反則……」
 コマリは涙目になりながら、こちらをにらんだ。鼻の頭も、頬も耳も赤く染まっている。
 
「ずるいよ。トキ兄」

 滅多に言わない、か。確かにそうだな。言ってないもん。
 心の中では、ずっと思っているんだけどな。意外とかわいいじゃん、って。

 おまえと同じだよコマリ。おまえが女の子っぽい服を着ることを躊躇するように、俺も「かわいい」と相手に伝えることに躊躇してしまうんだ。
 引かれることが怖い。笑われることが怖い。今のように、疑われることが怖い。
 だから、自分には似合わないのだと結論をつけてしまって。

 これが『ずるい』ということになるのなら、それで構わない。
 実際俺は十六年間、ずるく生きてきた人間だ。程よくバカやって、程よく真面目ぶって、その場その場で部分点を取ってきた人間だ。

 でもさっきのあのセリフは、自分に点数をつけてほしくて言ったのではない。
 単純に、俺はコマリに言いたかったんだ。
 自分をそんなふうに卑下するなよ。俺はおまえのいいところ、ちゃんと知ってるぞって。
 
 今日は、素直に想いを伝えるって決めたんだ。

「コマリ。追い打ちかけるようで悪い。これ、受け取ってくれ」
 俺はパーカーのポケットに忍ばせていた小箱を取り出し、コマリへ差し出した。

「誕生日おめでとう。似合うと思って」
「えっ……。え、え!? 嘘!」
 コマリが箱を受け取る。

「あ、ありがと。開けていい?」
「うん」

 結局、文房具の案も服の案も没になってしまった。
 というのも、俺はあのデパートでの再会のあと、星原にこうアドバイスされたのだ。

 ――最近はペアルックが流行っているみたいだよ。一緒につけれるものとか、どう?

 黒い箱には、プラスチック製へアピンが二つ入っていた。
 一個は、お化けモチーフのヘアピン。もう一つは、時計モチーフのヘアピンだ。

「わぁぁ! かわいいっ」
「お化けの方をお前にやるよ。時計の方は俺がつける。コンビ感出ていいだろ」
「うん! つけてみるね。トキ兄も、はい」

 コマリは箱に敷いてあるスポンジからピンを抜き取り、前髪につける。蛍光灯の明かりで、表面がキラリと輝いた。
 俺も時計型のヘアピンで髪をはさんでみる。前髪が邪魔だったし、これはこれでいいかも。

「ありがとうトキ兄。大切にするね」
 コマリが照れ臭そうに微笑む。その控えめな笑顔に、トクンと胸が高鳴る。

 ああ、良かった。ちゃんと、受け止めてくれた。
 俺も、ふふっと口の端を上げる。
 そして今日の締めくくりである大切なセリフを、彼女に伝える。

「お誕生日おめでとう。これからもずっと一緒にいてください」




 ※第8話完→第9話に続く!


 


 
 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第3章へ】 ( No.34 )
日時: 2023/08/28 07:42
名前: むう (ID: viErlMEE)

 【憑きもん! 第1回アフタートーク★】
 
 むう「初めまして作者のむうです! 今回は小休憩ということで、キャラとまったり雑談したり、裏設定を公開していきたいと思っています。よろしくお願いいたします」
 キャラ一同「よろしくお願いいたしまーす!」

 むう「改めて、みんな第8話まで登場感謝。誰一人やられなくてよかったです」
 宇月「ちょ、待て待て。ボク危うく死ぬところやったけど。
 みんな覚えとるかな? 怪異に首根っこ掴まれたんですよボク」

 むう「でも、そのあとこいとちゃんが、ラブはめ破してくれたでしょ?」
 こいと「ラブはめ破って言うなしー。ラブコンボールだし」
 むう「相変わらずダサいね」
 こいと「発案者あなたですからね?」

 コマリ「まあまあ宇月さん。むうちゃんのおかげで、私たちは出会えたわけですし。作者にアレコレ言わずに、楽しく行こうよ!」
 美祢「……お前、作者になんの不満もないのかよ」
 コマリ「え?」
 美祢「この機会逃したら二度と言えないぞ」
 むう「おい美祢、余計なこと言うな」

 コマリ「まあ、あるにはあるけどさあ。それがこのお話の魅力でしょ? 逆憑き嫌ですって言って、『わかりました、直します』ってこの人が言ったら、もうそれで作品〈完〉だよ」
 美祢「メタいって」

 むう「はい、それで! アフタートーク、始めていきます!」
 一同「いえーい!」

 むう「このコーナーは一つの章が終わるごとにやっていきたいと思っています。いえーい!」
 一同「(パチパチ)」
 由比「今回は何するの~?」
 むう「今日はね。第1回目なので、公式からそれぞれのキャラに一問一答をしようかなって」
 由比「わあ! 凄い楽しそうだねっ。いいね!」

 むう「とうことで最初の質問に移ります」

【①全員の年齢と学年を教えて下さい!】

 コマリ「はーい。月森コマリ・14歳。中学二年生です!」
 美祢「時常美祢、16歳。高校1年、色々あって学校中退」
 こいと「桃根こいと。13歳、中学1年生! その後いろいろあって幽霊になったぴえん(苦笑)」
 由比「由比若菜、同じく13歳、中学1年生。ぼ、僕も色々あって幽霊になりましたっ」
 宇月「夜芽宇月。京都出身の18歳。大学行ってましたー。色々あってやめたけど」

 むう「『色々ある』を使いまわさないでください、みなさん。それでは次の質問!」
 
 【②好きな教科を教えて下さい!】
 コマリ「全部ニガテです(断言)」
 美祢「数学と物理と歴史」←難関高校出身
 こいと「音楽と美術と体育!」
 由比「全教科寝てました~」←マイペース
 宇月「英語。I like English.」

 【③好きな映画は?】
 コマリ「コ〇ン!」
 美祢「クマのプーさん」(一同「クマのプーさん!??」)
 こいと「タイタニック!」
 由比「ハリーポッターと普通の石」(一同「賢者の石!」)
 宇月「ノーモア映画泥棒」←映画じゃないぞ


 【③自分の長所と短所を教えて!】
 コマリ「長所はポジティブなところかな? 短所はガサツなところです、あはは」
 美祢「良くも悪くも神経質」
 こいと「長所は人が好きなところ。短所は流行に乗りやすいところ」
 由比「長所とかよくわかんないけど、マイペースって言われがちです~」
 宇月「猫被り……プライド高い……あれ、ボクの長所ってどこにあるんやろ。怪異倒せることしかないんちゃう? 悲し……(ぐすん)」
 むう「宇月さん、これからだから! ああ、落ち込まないでぇぇぇ」

 【④なかなか更新をしない作者をどう思ってますか】
 コマリ「勉強忙しいんだなって思ってます」←いい子!
 美祢「別に何とも」←ツンデレもういいぞー
 こいと「不定期更新ならいいんじゃない?」←優しすぎる
 由比「む、無理しないでね? のんびりだよっ」←流石、憑きもんの良心
 宇月「駄作者」←はい通常運転!

 【⑤最後に、閲覧者さんに一言お願いします!】
 コマリ「いつも見に来てくれてありがとう。これからも引き続きよろしくね」
 美祢「第3章では新キャラも出るみたいだ。さらに肩こりがひどくなりそうで怖い」
 こいと「ゆ、由比に会うまで終われません! マジで!」
 由比「あんまり登場回数多くないけど、僕も精一杯頑張りまーす」
 宇月「ボク推しの子ぉ、ほんまにありがとうな! これからもっと好感度あげてこ思いますんで(言わんでいい)、また立ち寄ってみてくださーい」

 むう「それでは、第3章をお楽しみに! ばいばーい」
 
 
 

Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【第3章準備中】 ( No.35 )
日時: 2023/11/30 23:48
名前: むう (ID: F7nC67Td)

 お久しぶりです。失踪しかけました、むうです。
 相変わらず多忙ですがこっちも頑張ります。
 第3章開始! 更新は遅いですがよろしくお願いします。

 ------------------------

 〈XXside〉

  雨が降っていた。
  梅雨前線と台風が重なってしまったと、今朝ニュースでアナウンサーさんが言ってたっけ。
  僕の住んでいる関東地方は特に影響はないけど、東北の県では次々に停電が起きているらしい。
  お母さんから渡されている連絡用の携帯を開く。飼い猫のアイコンから一通の連絡が来ていた。
  
  僕はメッセージアプリの個別チャットボタンに手を伸ばし……、文面を確認する。
  じっくり読んだりはしない。めんどくさいから。
 

 『早く帰って来なさい。塾に遅れるわよ。
  今日は数学の集中講座があるって、遠藤先生から聞いたわ。
  あなた、ちゃんと勉強はやってるんでしょうね?
  せっかく中学受験をさせたのに不合格。なんでいつもそうなの?
  とにかく、来週は中学最初の中間テストだから、しっかり勉強してね。頼むわよ』

  ……うざい。
  ……うるさい。
  ……黙れ。

  汚い言葉が脳裏に浮かんできて、僕はあわてて首を振った。
  乱暴なセリフを口に出してはいけない。人を傷つけてはいけない。
  だって、相手はお母さんで、僕は子どもだ。口答えしていい年齢は五歳までだ。

  僕はスマホのフリック入力で、返信欄に文字を書き込んでいく。
 『わかった。すぐ帰るね(グッジョブの絵文字)』
  そして、送信。

  お母さんの会話はこれで終わりだ。
  これ以上もこれ以下もない。
  
  反論するとキレられるんだ。「私の何が悪いの?」って、一時間ぶっ通しで質問される。
  そんなことを息子の僕に聞かれても困る。もちろん親に対しての不満はゼロではない。ただ、素 
 直に告げるとまた泣かれる。
  
  だから僕はニッコリ笑って答えるんだ。
 『何も悪くないよ。全部僕が悪いんだ』ってね。

  事実だし。
  
  五行にもわたって打たれた長ったらしい文字。
  長文メッセージを受け取ったのは、今日が初めてじゃない。昨日もそうだった。一昨日も送られ 
 てきた。その前も、その前も、ずっとこんな調子だった。
 
  僕のお母さんは、とても身勝手な人でね。
  勉強だけではなく、挨拶の仕方とか、箸の持ち方とか、友達との接し方とか。好きなマンガも好
 きなアニメも、自分が納得できるものでないと許さない。

 『その漫画、つまんないわよ。お母さんが買ってきた奴を読みなさい。この作者の人、とってもいい人なのよ。○○大学の○○学部出身でね、だから若菜も……』

  ……………僕の好きだった漫画は段ボール箱の中に入れられて、燃やされたんだ。

  誰も自分を助けようとはしてくれない。兄妹もいないし親戚もいない。
  おばあちゃんは先月空に昇っていった。
  お父さんはトラックの運転手で、ほとんど家にいない。連絡先は知っているけど、相談したら絶対心配される。なので、打ち明けられない。

  学校に行きたくないんです、という子がチラホラいる。家が落ち着くんです、ってね。
  ………いいなあって思ったんだ。家が落ち着く。僕も言ってみたいよ、その言葉。
  まあ、お母さんから逃げるために学校に行っている自分には、どうせ似合わないだろうけど。
 

  ■□■

  遠くの方から、一人の女の子がかけてくる。
  淡い桃色の傘をさして、リュックについたアクリルキーホルダーをカシャカシャいわせて。
  水たまりの水を蹴飛ばしながら、全速力でこっちに向かってダッシュ。

 「由比ー! 一緒に帰ろ~! 今日、部活雨でなくなっちゃって。体力づくりできなくてさ!」

  ふふ、相変わらずでっかい声。
  走らなくても、僕はちゃんと待ってるのに。
  せっかちで真っすぐなところ、出会った時から変わってないね。

  気を取り直して、僕は彼女に手を振る。
  できるだけ大きく。できるだけ大げさに。自然に見えるように。
  笑え、笑え笑え笑え笑え。嫌なことは考えるな。今のこの時間が、自分にとっての天国だ。

  だから笑え。どんなに苦しくても。どんなに寂しくても、笑えるならまだ大丈夫だ。
  たとえそれが作り笑いだとしても。表情を作れる時間があるのは、きっと良いことだと思う。

  …………助けてほしいと打ち明けるには、まだ早いよね。


 「いとちゃ――――ん! 部活お疲れ様――――――――――っ!」

 
 


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