コメディ・ライト小説(新)
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- 憑きもん!~こんな日常疲れます~【更新停止】
- 日時: 2024/01/26 23:11
- 名前: むう (ID: F7nC67Td)
中学2年生の私・月森コマリには一つだけ悩みがある!
それは、世にも珍しい【逆憑き】という体質なこと!
なんとなんと、自分の行い全てが悪い方向に行くみたい。
自分の存在自体が悪い妖怪とかを呼び寄せてしまうんだって。
治すには、悪い妖怪と一緒に集まってきた、いい妖怪か幽霊さんの力を借りるべし。
でもなかなか、そんな優しい幽霊来ないんですけど———!?
悪運強すぎJCの日常ラブコメディはじまりはじまりっ。
―-----------
《2023年夏☆小説大会
2023年冬☆小説大会 銀賞入賞!》
投票して頂きありがとうございます!!
作者とキャラの感想はコチラ→>>54
★重要キャラクターLog★
>>23
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>>09 >>47
※不定期更新です!
※視点変更をメインとした展開です。毎話ごとの主人公がいます。ご了承ください。
※若干のシリアス描写がありますが、基本は日常コメディです。
---------------------
【目次】一気読み>>01-
〈第1章:新たな出会いは疲れます! >>01-17〉
プロローグ>>01
第1話「ヘンな同居人」>>02-04
第2話「誰だお前」>>05-06
第3話「ヘンな協力者」>>07-09 >>10
第4話「変化」>>11-17
〈第2章:新たな関係は疲れます!>>18-33〉
第5話「要らない力」>>18-21
第6話「契り」>>22-24
第7話「プレゼント」>>25-28
第8話「側にいれたら」>>29-33
アフタートーク>>34
閲覧数1000突破記念★キャラトーク>>46
閲覧数1400突破記念★キャラ深堀紹介>>51
閲覧数2100突破記念★○○しないと出られない部屋>>65-70 >>71-75
〈第3章:〔過去編〕疲れたきみと僕の話>>35-57〉
第9話「幽憂レコード:前編」>>35-38
第10話「幽憂レコード:後編」>>39-40
第11話「禍と鳥:前編」>>41-45
第12話「禍と鳥:中編」>>47-50
第13話「禍と鳥:後編」>>52>>53>>55>>56
アフタートーク>>57
〈第4章:新たな試練は疲れます!>>58-〉
第14話「転校生がやってきた」>>58-60
第15話「素直になれない僕らは」>>61-64
第16話「違和感」>>76-
【重要なお知らせ ※必読お願いします】>>81
[記録Log]
2023年1月11日、本編執筆開始。
2024年1月13日〜更新停止
[参考文献リスト]
・新訳:古事記
・妖怪大辞典
・京都弁(YouTube講座)
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【15話更新しました!】 ( No.62 )
- 日時: 2023/10/11 08:01
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: viErlMEE)
〈コマリの登校日の翌日、美祢side〉
ヴ―ッヴ―ッというスマホのアラーム音で目が覚めた。
携帯の画面を開く。ホーム画面には、〈6:30〉の文字。朝だ。
俺はまぶたをこすりながら、もぞもぞと布団から這い上がった。
「ふわぁぁぁ」
とあくびをかます。
高校を中退し、バイトも習い事もしていない俺。日中にやることといえば、家事や読書やゲーム。たまに外出もするが、モールに行って貯めていた小遣いを崩して服を買う程度。
しかし今日は珍しく朝に用事があった。外出の用事だ。早めに朝食を作り置きしなければ。
俺は自分の布団・シーツ・枕をまとめて腕に抱え、奥にある脱衣所にそれらを運ぼうとし。
ふと足を止めた。
左横の布団で、同居人であるコマリが寝ている。すうすうと穏やかな寝息を立てていた。本来ならばもう起きる時間だけど、残念ながら俺は優しい人間ではない。
夢でも見ているのか、時々「うみゃぁ、おかーさん、お団子そんなに食べるとパンダになるよお」と訳の分からない呟きが耳に飛び込んでくる。なぜ団子を食べるとパンダになるのか全く分からない。生地の中に特殊な薬が混合されているんだろうか。怖いな。
「……幸せそうな顔しやがって。つーか寝相ヤバすぎだろ」
コマリは両手をダラーッと上に持ち上げ、股を開くと言った誠におかしな体制をとっている。
世間一般の女子の寝相がどうなのかは知らないが、流石にこれはダメだ。流石の俺でも擁護できん。こいつは、女子が本来持っている何かをお腹の中に落としてきたのかもしれない。
脱衣所に向かった俺は、ドラム式洗濯機の中に洗濯物を放り込んだ。そして、外に誰もいないことを確認してから扉を閉め、そそくさと着替えを始める。
うちのアパートは、ひとつの階に五つの部屋がある。部屋は全て1LⅮK。リビング・ダイニング・キッチンがキュッと、一つの部屋に詰め込まれている。子供部屋などない。当たり前だが脱衣所はワンルームに一つだ。
すると何が起こるか。注意を怠ると、同居人に着替えを見られる可能性がある。
しかもアイツの寝起きはひどい。脳が上手く働いていない状態で朝の準備を始める。「いただきます」すら満足に言えず、一昨日は「食うべからず頬張ります」と食べるのか食べないのかどっちなんだよ、という謎の言語を発していた。後にこの言語はコマリ語と名付けられる。
『トキ兄ー? トキ兄はお醤油、ご飯にふりかけたほうが好きだっけ』
『ふりかけは30回降ってから箸でまぜるとおいしいよ』
『今日の7時間目は放課後だよー』
なので時常美祢は毎朝、同居人が起きるまでの約三十分の間に準備をすます。
なんで忙しい朝にタイムアタックしないといけないんだよ。
脱衣所の床に設置している籠の中からTシャツとズボンを出して大急ぎで着替え、寝間着は洗濯機へin。洗剤を入れて、洗濯機のスイッチオン。そのあとすぐに台所へ向かい、冷蔵庫の中から冷凍ご飯と味噌玉(みそ汁の具をラップで丸めたもの)を取り出す。ご飯は電子レンジであっためてから茶碗に盛る。味噌汁も同様。ふりかけをかけて納豆を添えてお盆にのせて。
ここまでに使った時間はおよそ十五分。はぁ、はぁ。今日も何とかなった。
後はメモ帳に出かける趣旨を書いて、机の上に置いとけばいかな。
「ふわああ、あ、おはようございまふ美祢さん」
声のしたほうを見やると、同居人ナンバー2である浮遊霊の少女・桃根こいとが宙に浮いていた。
抱き枕として使っているのだろうか。大きなクマの人形をもっている。服装は桃色の可愛らしいルームウェア。頭にはナイトキャップ。トレードマークである二つ結びの髪は降ろされて、肩口に垂れている。
「おはよ。お前、いつもどこで寝てるの? てか、いつ入ってきた」
「ふふーん。美祢さん、幽霊に扉を開けるという概念はありませんよ。壁も窓も床も、するするーってすり抜けるんですから。……私こいとちゃん、今あなたの後ろにいるの……」
怖い顔で凄んで来たところ悪いけど、早朝なので全く怖く感じないぞ。
「驚かすんだったら服装から整えるんだな」
「ちぇっ。少しは乗ってくださいよお」
こいとは最近、アパートに来なくなった。来るとしても一週間に一、二回といったペースだ。話し相手がいなくなったコマリは毎日のように俺に彼女の居場所を尋ねてくるが、こちらも何も知らされていない。だから答えられない。
こいとはブスッとむくれながらも、素直に質問に答えてくれた。
「どこで寝てるか? 知り合いのところです。仲いい人がいて、その人に身の回りのお世話をしてもらってるんですよ。ご飯作ってもらったり、寝る場所与えてもらったりね」
「そいつ、男?」
なんとなく気になって聞くと、幽霊の女の子は「だったらなんだって言うんですか」と不服そうにくちびるを尖らせる。
肯定した。へえ、コイツ男と一緒に寝てるんだ、と内心驚く。
そうだ。この調子で更に情報を引き出してみるか。
隠し事されるの嫌いだし。経験上こういうのを放っておくとろくな目に合わない。アパートに来れない理由を教えてもらえれば、コマリも安心するだろうし。
幸い出かけるまでの時間も、たっぷりある。
俺は寝癖でくしゃくしゃになった髪を手櫛でとかしながら、冷静に聞こえるように出来るだけ意識して口火を切った。
「つまり年上か。年の近い子―例えば前に言っていた幽霊友達なら、知り合いではなく『あの子』とか『友達』って言葉を使うのが普通だ。それなのにお前は敢えて『知り合い』といった」
「なっ」
こいとは、痛いところを突かれたような顔になり、口元を手で覆った。
なるほど図星か。俺の推理は的外れじゃなかったってことだな。よしよし。
さて、年上の男で幽霊友達じゃないとすると、人物はかなり絞られてくる。
「ここで仮説その一。つまりお前と相手の心の距離はあまり近くない。だが、知り合いと呼ぶくらいなら何かしら接点がある人物だ」
「……」
「仮説その二。そいつは俺とコマリがよく知っている人物だ。なぜか。こいと、お前は俺らに行き先を公表していない。『知り合いの○○さん』と伝えることもできるのに、それをしなかった。つまり名前を明かす行為はお前にとってハードルが高いということ。俺らに『なぜアイツとつるむのか』と問い詰められるのが怖いから」
俺が左手の指を一本ずつ立てる度、こいとの表情は暗く沈んでいく。
「仮説その三。相手は霊感がある人物。浮遊霊に飯をやったり家の場所を教えたりできる人間は、霊が視えなきゃいけない。そして、この三つの情報を照らし合わせると、条件の合うやつは一人しかいない」
初対面で俺とコマリに術をかけ、疑似恋愛をさせて反応を楽しんでいた薄汚い人間。
プライドが高くて気取ってて、飄々としていて、つかみどころがない猫みたいな人間。
昔から顔を突き合わせるたびに喧嘩ばっかりしていた人間。
才能があって傲慢で、俺がずっと憧れていた大っ嫌いな人間。
なんでお前、あんなやつと協力してるんだ。
なんで今まで黙ってたんだ。
お前らは俺たちに隠れて、何をやろうとしてる?
「お前の協力者は宇月だ。お前は幽霊友達に会いに行くって嘘ついて、隠れて宇月と会っていた」
こいとは反論しなかった。ただ忌々し気に俺を見上げ、軽くうなずいた。
「いずればれるだろうなとは思ってたけど、まさかあなたに暴かれるとはね」
幽霊の少女は、悲しいような嬉しいような、複雑な顔で笑ったのだった。
(次回に続く!)
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【15話更新しました!】 ( No.63 )
- 日時: 2023/10/25 20:18
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)
〈翌日、美祢side〉
「どういうことだよお前!」
郊外にあるビルの一階、受付の前で俺は声を荒げた。
「全部聞いたぞ! 隠そうとしても遅いからな!」
視線の先には、「は?」と目を白黒させている宇月がいる。彼の今日の服装は無地のTシャツに長ズボン。いつも長い白衣を着ているので、ラフな格好は珍しい。
何事かと目を見張るカウンターのお姉さんに頭を下げた宇月は、「あんなあ」と眉を寄せた。
「何に対して怒っとるんか知らんけど、まあ落ち着きぃや。ここロビーやぞ。あと、これから面接やぞ!?」
----------------------
俺が今いる場所は、霊能力者の教育機関である〈ACE〉の事務所だ。
こちらの建物、表向きは廃ビルとなっている。外にある看板に〈旧黒女市ダンススクール〉とあるが、これはカムフラージュ用だ。ビルの周りには強力な結界が張られている。
能力を持たない民間人の立ち入りを防止しているらしい。
何故俺がこんなところにいるのかというと。
先日、いとこである宇月に言われたのだ。「好待遇のバイトがあるんやけど、やらん?」って。
時給10000円~。半日勤務可能、シフト要相談。昼食つき。
仕事はちょっとキツイが、優しい人が多く、働くには絶好の場所とのこと。
16歳、高校中退。アパート生活。親の経営するアパートなので家賃はタダ、光熱費や水道代は親からの仕送り。同居人は中学生女子(+幽霊)。
俺は部屋主として、同居人たちの食費と生活費を自力で稼がなければならない。
バイトの文字が脳裏をチラつくことは、今までに何回かあった。
頼れる大人はいない(一人いるがウザくて無理)。家族に幽霊が、逆憑きがなんて言ったら頭の病気を疑われる(一人だけ信じてくれる奴がいるがウザくて……以下略)。
バイトしなきゃなあと思いながらも、なかなか実行に移せないでいたのだ。
実は、俺はバイト未経験者ではない。高1の初め、一か月だけ本屋のバイトをしていた。しかし、先輩—バイトリーダーと気が合わず、直ぐに辞めてしまった。
『好待遇のバイトには絶対裏がある。前バイトしてたとこも同じやり口だった。フラットな職場って書いてあったのに、陰で社員のいじめが起こってたから』
『大丈夫やって。ボクが勤めてるとこやし。知人紹介で色んな特典もつくから』
特典という特別感あふれる単語に軽く流されそうになる。
って、お前が働いているところかよ!? やっぱり裏があるじゃねえか。
俺はスマホを耳から離し、通話終了ボタンを押そうとして。
画面の向こうから聞こえてきた声に、手を止めた。
『宇月だから嫌いとか、宇月だからウザいとか。いい加減哀しくなるわ。……まあ、それだけボクが人様に迷惑かけたってことなんやけどさ』
微かだが、すすり泣きのような音も混じっている。
俺のいとこは演技が上手いが、演技にしては声量が小さいような気がした。何かを演じるとき、人は無意識に声を張り上げ、大げさな態度をとる。しかし彼の言葉は一貫して同じトーン。
『なあ美祢。少しだけで良いから、手伝いに来らん? 報酬はずむで。 コマリちゃんのボディーガードすんの、大変やろ。受け身とか、簡単な護身術くらいなら、ボクも教えられるから――』
宇月はスウッと息を吐き、さっきよりも強い口調で言う。
『償わせてほしいんや。今までやってきたこと謝る。お前に言うたこと全部撤回する。やから、ボクのこと苦手でええから、せめて嫌わんどってくれへん?』
俺は、思わず口をぽっかり開けてしまった。あまりにも突飛な発言だったから。
何だお前。苦手以上嫌い未満? なんだそりゃ。
だってお前は昔から、事あるごとに誰かを見下してた。人の失態をネタにして、自分の失態は隠して。上手く立ち回って、巧みな言葉で人をだまして、味方につけて。
夜芽宇月はそうやって生きてきたんだろ? 全部自分で決めたんだろ? なんでそんな、泣きそうな声を出すんだよ。なんで被害者気取りなんだよ。
……そこまで考えて、ハッとする。
もしかしたら、俺が宇月の首を絞めていたんじゃないか?
宇月は変わろうとしていた。変わりたいと願っていた。なのに、俺が「嫌い」とか「無理」とか言ったから。突き離してしまったから、彼は勘違いしたのではないだろうか。
――自分は、嫌われて当然の人間なんだって。
――変わる権利すらないんだって。
会うたびに指をさされる。考えを否定される。本当のことを話したのに嘘つき扱いされる。
俺はこれまで、宇月の話を真剣に聞いたことがあっただろうか。
彼に笑い返したことがあっただろうか。
『しゃーない。嫌なもんを無理やり押し付けるのはあかんしな。んじゃ切るわ。おやす――』
『面接の時間と日程は?』
いとこのセリフに被せて俺は言った。
何をするにしても、まずは自分から動かないと。
稼ぐ稼がないは置いといて、とりあえず、見学だけ行ってみよう。そこで職場の雰囲気や、作業環境を確認しよう。
そう思ってたのに。
----------------------
「なんで言ってくれなかったんだよ!」
人目を避けるべく。俺は宇月と一緒に一旦建物を出、裏へと回った。
ビルの裏にある駐輪場のトタンの壁に、いとこの身体を思いっきり押し付ける。ガシャンッと大きな音が響いた。
「なんでこいとのこと、俺に教えてくれなかったんだよ! なんでもかんでも、一人で決めようとすんなよっ、馬鹿野郎!」
俺は今朝、こいとに持っている情報を一つ残らず吐露してもらった。なぜ彼女がコマリに近づいたのか、なぜ神様の力を持っているのか、過去に何があったのか、なぜ宇月と協力しているのか。
こいとは最初淡々とした口調で話していたけど、当時のことを思い出したのか急にしゃっくり上げ、話が終わる頃には赤い顔で洟をすすっていた。
俺はその後、「助けたかっただけなんですぅぅぅぅぅ」「叱らないで……怒らないで……」と頭を下げる幽霊の少女の身体を、そっと抱きしめた。冷たかった。体温がないから、冷たかったよ。
「俺がお前を嫌いな理由、教えてやろうか。めんどくせーからだよ!」
俺は、宇月の両腕を掴む手のひらにグッと力を籠める。宇月は「ぐえッ」と呻いた。
「本当は構ってもらいたいくせに、ひとりになろうとする! 痛いときに痛いって言えない! 寂しいときに寂しいって言えない! だから自分をひたすらに強く見せようとする。平気で噓をつく。平気で愛想笑いする。全然平気じゃないのに、平気なふりをする。孤独と不安が自分を強くさせると勘違いしてる。そういうところだよ! そういうところが嫌いだ!」
「うっさいわ!」
突然、宇月が叫んだ。俺の拘束を振り払い、思いっきり右足を振り上げる。
厚底ブーツのスパイクが、俺の腹にめりこんだ。
「ボクのこと見んかったくせに! ボクのこと嫌いだったくせに! お前に何がわかるん、お前が何を知るん。頭悪い性格悪い能力汚い。そんなん、自分をだまして生きるしかないやろ! 成績優秀・真面目・素直なお前に何がわかるん! なあ!」
(次回に続く!)
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【最新話更新しました!】 ( No.64 )
- 日時: 2023/12/05 09:22
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)
Q.なんでそんなに更新が遅いのですか?
A.別サイトの小説執筆と掛け持ちしているからです。スミマセン。
Q.美祢と宇月はよく喧嘩しますが、喧嘩ップルなんですか?
A.喧嘩ップルですね。お互いツンデレのツンが強く意固地ですが、リスペクトしあっています。
ただ、『大好きだよ』と言うのが恥ずかしいだけなんです。デレる方法を知らないんです。
----------------------
〈宇月side〉
ボクは、自分のことが大嫌いだ。小学校の時からずっと嫌いだ。
普通に会話をしているつもりでも、気づけば誰かを泣かせていて。謝ろうとしたら、また深く抉ってしまって。呆れられて、怖がられて、見放されて。ごめんなさい、を許してもらえなくて。
家に帰ったら怪異払いの仕事。
人と怪異の心を操り、主導権を奪い、一匹また一匹と倒していく。無心で祓う。ちょっと笑う。
無理やり、笑顔を張り付ける。アンタは街の平和を守るカッコいいヒーローなのだと、自分に言い聞かせる。だから笑え、泣くな。
『お前はもう、何もしゃべるな』と、父ちゃんに言われたことがあった。
『そんな子に産んだつもりはない』と母ちゃんに言われたことがあった。
中学生くらいから、家族内でも評判が下がっていった。
明るかった母親は、一緒に食事を取らなくなった。父親は、あからさまにボクを拒絶した。
両親とは元からあまり話さなかったが、流石にこれは堪えた。
そして、思ったのだ。遠いところに行きたい。この場所から逃げ出したい。
ボクなんか、いないほうがいいやろって。
その一心で、家を抜け出した。高校も大学も、寮つきの学校を選んだ。やけくそだった。大学在学中に、家族からメールが送られてきたが全部未読無視した。内容を見るのが怖かった。
『ばぁちゃぁぁぁぁぁぁん!!!』
小学校の時、クラスの女の子が転校した。夜芽宇月の揶揄いに耐え切れんくなって。
彼女が転校することを知った日の夜、ボクは逃げるように家に帰って、キッチンで洗い物をしていた祖母の腰にしがみついた。
『ばあちゃん、そのハサミ、ボクに貸してぇや! なあ!』
ばあちゃんは、キッチンバサミで昆布を切っていた。味噌汁の出汁の準備中で。
『どしたん宇月。えらい慌てて』
目を丸くする祖母に、ボクは何の説明もなしに、こう叫んでしまった。
『それ使ったら楽になるんやろ!?』って。
ばあちゃんは更に目を丸くした。
ボクは彼女に全てを話した。人をいじめてしまったこと。人を悲しませてしまったこと。今回だけではなく、毎日誰かを泣かせていること。改善しようとしているけど、なかなか上手くできないこと。周りと違う自分が大嫌いだということ。
『もう無理や。ボクもう無理や。悪人になってもうたぁぁぁ! もう全部真っ黒や』
ばあちゃんは、暫く何も言わなかった。喚く孫の頭を、ゆっくり撫でるだけだった。何かを発しようとして、すぐに口を閉じてしまう。どう返答していいか、困っているようだった。
何分、経っただろうか。
『アンタは、私の光や』
しわがれた、聞きなれた声が頭上から降って来た。
そっと顔を上げる。ばあちゃんはキュッと目を細め、静かに笑う。
『……ちゃう。だってボクはっ、全然っ』
『せやなあ。アンタは小っちゃい頃から問題児やったからなあ』
家のコンセントは勝手に抜くし。野良猫は手で追い払うし。母親と父親にアッカンべして、良く怒られとったな。いとこの美祢にも、ちょっかいかけとったやろ。今もか。先生にもしょっちゅう呼び出されとったし、成績表のコメントも毎回悪い文章ばっかやったな。
『――気にしてもらいたかったんやろ』
不意に、ばあちゃんが言った。丸眼鏡の奥の瞳を光らせながら、ゆっくりと告げる。
『注意を引いたら、みんな寄ってくるからな。寂しさが紛れてええよなあ』
寂しいと思うことは、ダサいと思っていた。悲しいと泣くことは、ダメだと思っていた。
これまで沢山人に迷惑をかけてきた。自分より、相手が泣いた数の方が圧倒的に多い。
だから、ボクが弱音を吐くのは違う気がした。言う権利なんて、ない気がしたんや。
『………せきにん、とらんといけん、気がして』
つっかえながら、ボクは説明する。ばあちゃんの前でだけ、素直になれた。
『人を泣かせたやつが、シクシク泣いとったら、感じ悪いやろ? 「悪かった、友達になろう」って言っても怖がられるやろ。……笑ったら、裏があるってなるやろ。泣いたら、演技やってなるやろ。やから、ずーっと、悪い奴でおった方がええんじゃないかって、その。でも、寂しくて、その』
誰にも言えなかった。演技って思わんどいてって、言えんかった。
コロコロ表情を変えてしまうのは、迷っているからだって、言えなかった。
『宇月。大丈夫。周りの子は、アンタのことなんてこれっぽちも考えてない』
言いたいことは分かるけど、それはそれで悲しいな。
ボクはススンと洟をすすって、「ぼっちやな」と少し強い口調で返した。
ばあちゃんは「せやな。みーんな、ひとりぼっちや」とカラカラ笑う。
『やから、もしアンタのことを知りたいって人が現れたら。それは自分が愛されてる証拠なんや』
宇月は、悪い子やと私も思うで。愛してくれた人の気持ちを、踏みにじっとんのやからな。
素直になったらあかんとか、泣いたらあかんとか、思わんでええから。人様泣かした分以上の幸せを、見つけなさい。
これは、二人だけの約束。つらいときは思い出してな。
----------------------
「――痛ってえなぁ!」
蹴られた腹をさすりながら、美祢が起き上がった。Tシャツの胸元は、泥で茶色くなっている。
いとこの少年は口に入った砂をぺッと吐き出し、その視線をこちらに向けた。
そして。
こちらに近寄り、ボクの体を思いっきり抱きしめた。
身長はこちらの方が十センチほど高い。必然的に美祢は背伸びをせざるを得なかった。細い足
が、プルプルと震えている。
「はっ? なにキモイことやっとるんや! 離れろっ、おいっ」
必死で腰をよじるけど。あかん、力強い!
小・中・高と帰宅部だったくせに! ヒョロヒョロのモヤシ体系のくせに!
「……俺、お前のことめっちゃ好きだよ」と美祢はボクを見上げる。
「え? な、なんっ……な、なんっ」
「尊敬してるよ。昔からずっと。ずっと好きで、嫌いなんだよ」
顔が赤く染まる。心臓がうるさい。
「なんやねん! 嫌い嫌い言うてたやろ! ツンデレか?」
「ツンデレだよ! 好きな奴に意地悪したくなるあれだよ! これで分かったか! 俺はお前のことずー―――っと見てんだよ! お前は俺の光だからな」
美祢は一呼吸ついて、話を続けた。
嫌いって言ってたのは、置いておかれそうで怖かったからだよ。お前が憧れだったんだよ。
いつも自信たっぷりで。頭の回転が速くて。自分の力で何かを救うことが出来て。
中途半端で、人の機嫌を取ってばかりの俺とは違う。お前の自慢話が嫌いだったよ。
年を重ねるごとに、相手の考えていることが薄っすら分かるようになってきてさ。
お前の行動から、打算的に生きていることが読み取れて。自分を嫌っていることが分かって。
すっごくムカついたんだ。俺の期待を返せよって。期待させたくせに何なんだよ。
腹に一物抱えたまま笑うお前が嫌いだった。
自分が信用されていないことが嫌だった。
「今までごめん。嫌いって言ってごめん。相談相手になれなくてごめん。でも、見てるよ、ちゃんと。だからお前もちゃんと見ろよ。こっちを見ろよ! 昔みたいに、肩並べて話そう! 俺も素直になるから、だから信じてくれ!」
――気にしてもらいたかったんやろ。
ばあちゃんの言葉を思い出す。
そうやけど、そうやったけど!
ボクはもう成人済みなわけで。いとこ同士とはいえ、ボディタッチは恥ずかしいわけで。しかも
ここ、職場の裏やしっ。
あぁぁぁ、もう。なんやねんお前。毎回毎回。
そういうところ、ほんまに。ほんまに。
大っ嫌いや。
「……好きって言えなくて、ごめん」
「許す」美祢はフフッと笑った。
「……寂しいときに、寂しいって言えなくて、ごめん。泣きたいときに、泣きたいって言えなくてごめん。しんどいって言えなくて、ごめん。助けてって言えなくてごめん。笑ってごめん。嘘ついて、ごめん。今までずっと、相談でできなくて、ごめん」
両目から、熱い水滴が零れ落ちた。それは顎を伝い、床にしみ込んでいく。
言ってしまったら、もう止めることはできなくて。
ボクは美祢の背中に両手を回す。子供体温やなあ。あったか。
「ごめんって言えなくてごめんな。ありがとうって言えなくて、ごめんな」
(次回に続く!)
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【最新話更新しました!】 ( No.65 )
- 日時: 2023/11/13 20:04
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)
【閲覧数2100突破記念★特別編】
こんにちは、こんばんは。作者のむうです。
次回の更新は一月ですと言っていたのですが、私実は現在メンタル絶不調で療養してまして。
その一つに手の震え……って言うのがあるんですよね。
なので、長いお話を書けなくて。
リハビリで少しずつ、短い文章から書いていきたいなと思っています。
今回の特別編は、台本形式になります。
地の文じゃなくてごめんなさい。
二次創作版の『ろくきせ』を知っている方は、馴染みのある書き方かな。
よって、本編は一旦置いといて、特別編を書きます。
ご了承くださいませ。それでは行ってみましょう。
----------------------
〈特別編★○○しないと出られない部屋〉
美祢「作者に『この部屋でステイしといて』って言われたんだが」
コマリ「しかも私とトキ兄だけ。こいとちゃんや宇月さんはいないし……」
~トキマリペア in白い部屋~
美祢「だだっ広い部屋だな。ドアは正面に一つだけか。出られたりするのかな」
コマリ「わ、私見てくるっ(ドアの近くへ駆け寄って)」
コマリ「(カチャカチャ)ダメだ、鍵がかかってる」
美祢「つまり、閉じ込められたってことか!?」
コマリ「そうみたい。でもなんで、むうちゃんがそんなことを?」
美祢「分からねえ。分からねえが作者は、いつも妙な行動をとる。キャラの仲を勝手に引き裂いたり、カップルを爆誕させたり、敵キャラを乱入させたり、やけに複雑な設定作ったり」
コマリ「納得」
美祢「つまり今回も作者のおふざけによるものと見られる。……ったく」
コマリ「おふざけって言っても、どうすればいいんだろう。ど、ドア蹴ってみる?」
美祢「やめとけコマリ。お前の足が折れる」
コマリ「でも、だって……」
~コマリ、くるりと部屋を見回して~
コマリ「? トキ兄、壁に張り紙がしてあるよっ」
美祢「ん? ほんとだ。なになに」
【○○しないと出られない部屋】
コマリ・美祢「○○しないと出られない部屋ぁ??」
コマリ「えーっと。『アナウンスが流れるので、それに従ってお題をクリアしてください。全問クリアできれば、ドアが開きます。せいぜい頑張ってください』だって」
美祢「はぁ!?」
コマリ「あ、最後の行に『むうより』って書いてある。ご丁寧に似顔絵まで」
美祢「あいつ、いったい何を考えてるんだ? お題ってなんだよ」
コマリ「し、知らないよ私に聞かれてもっ」
~ピロン(アナウンス)~
[お題其の1。手をつながないと出られない部屋]
美祢「は? 手?」
アナウンス「制限時間―二分以内に手をつないでください。クリアすれば、部屋の鍵を差し上げます。さあ早くいちゃつきなさい。タイマーぽち」
コマリ「ちょっ。やばい、タイマーの音してる。始まってるよ!」
美祢「いちゃつくって……。(チラリとコマリを見る)」
コマリ「ま、まあ手をつなぐくらいは何とかできそうだよねっ。はいっ(右手を差し出す)」
美祢「お、おいコマリ!?」
コマリ「やだなー、トキ兄。いくら私でも手くらい洗ってるよ」
美祢「いや、そういうことじゃなくて」
コマリ「トキ兄、早くしないとクリアできないよ。さっさと終わらせて帰ろうよ」
美祢「(うぉおおおお、こいつマジか? なんで平気そうなんだよ! 天然なのか!?)」
コマリ「とーきーにーいー(不満そうに口を尖らす)」
美祢「だぁああああ、もう! ……ん」
~美祢、コマリの右手を取り、指を絡ませる~
美祢「あったかいな、お前の手(ぬぉおおおお、何話せばいいんだ。だ、大丈夫だよな? 気持ち悪いって思われてないよな? 怖えええええええ!!)」
コマリ「う、うん。杏里からもよく言われる(う、なんか恥ずかしくなってきた。手つないだことは今までに何度かあるけど、いざやるってなったらちょっと……)」
アナウンス「ブッブー。誰が普通に手をつなげって言いましたか?」
美祢「――――――は?」
アナウンス「こういうのは恋人つなぎがセオリーでしょう」
美祢「知らねえよ。 なんだよそれ!」
アナウンス「最近はシリアス展開多めでラブを書けていなかった。そもそも私が恋愛経験が乏しいから中々筆が進まなかった。でも今なら書ける気がするんだ。シチュエーションに頼れば書ける気がするんだ!」
美祢「すっげえ嬉々として喋るなコイツ。うぜえ」
コマリ「トキ兄が心の底から呆れてる……」
アナウンス「無駄口をたたいていいのかい?、あと30秒だぜ?」
コマリ・美祢「!!」
コマリ「ど、どうしようトキ兄っ」
美祢「(なんで俺らが作者の嗜好に付き合わねえといけねえんだよ! あああ、このままじっとする訳にもいかねえし、時間は過ぎるし。緊張で汗ヤバいしっ!)」
アナウンス「あと20秒。ほらほらー、早くうー」
コマリ「トキ兄、急がないと閉じ込められちゃ………わっ」
~キュッ~
コマリ「…………え、その、トキ兄?(ゆっくりと美祢を見る)ぐむっ」
美祢「こっち見んな馬鹿(コマリの顔を右手で覆って)」
コマリ「ちょ、ちょっと! やめてよ前見えな」
~コマリはそこで言葉を切る。美祢の顔がリンゴのように赤い~
コマリ「(耳まで真っ赤だ。手をつなぐだけなのに。そういやボディタッチ苦手だったっけ)」
美祢「~~~~っ。お、おいこれでいいかっ?(天井を見上げ)」
アナウンス「尊、じゃなかった。おめでとう!レベル1クリアです!」
コマリ「今何か言いかけてなかった?」
アナウンス「作者っていいなって思ったら、本音が」
美祢「お前にはオブラートに包むって概念がないのか?」
アナウンス「ということで、部屋の鍵を開けましょう!」
コマリ「やった! どっかから鍵が出てくるのかな? (きょろきょろ)」
~ウィ――――ン。(ドアが横にスライドされる)~
コマリ「あ、あれ、自動で開いた。ど、ドアノブついてるのに横に滑った」
アナウンス「あ、これオートロックなのよ」
美祢「じゃあなんでドアノブついてんだよ……」
アナウンス「設計ミs、じゃなかった。カムフラージュ用。 密室じゃなきゃ意味がないからね。決して業者がアホで組み立てミスったって話じゃないの!」
美祢「おーおーおー、全部言っていくな。そんな奴に委託するなよ」
アナウンス「ところで君らはいつまでお手手をつないでいるのかい?」
美祢「えっ? っっ!!(バッと手を放し、目をそらす)」
コマリ「あはは、トキ兄挙動不審すぎー」
美祢「……うるせー! とっとと次行くぞっ。早く帰ってイベランしたい。昨日徹夜でチーム編成してたんだよこんなことに時間取られてたまるか」
アナウンス「ゲーム何やってんの」
美祢「フォ〇ナ!!」
~美祢、逃げるように部屋の外へ~
コマリ「むうちゃん、さては書くの楽しくなってきてない? 昔の書き方が書きやすすぎてニヤニヤしてるでしょ」
アナウンス「なぜバレたs、じゃなかった。さあコマリちゃん、君も美祢の跡を追いなさい。私はトキマリのイチャイチャを見れてテンション爆上がりしたから」
コマリ「全てを曝け出すね!? わ、わかった。じゃあまた後でねっ(タタタッ。扉の奥へ)」
アナウンス「ふっ。てえてえな!」
コマリ「何も隠し通せてないよ!!」
※次回に続く!
- Re: 憑きもん!~こんな日常疲れます~【最新話更新しました!】 ( No.66 )
- 日時: 2023/12/22 11:47
- 名前: むう ◆CUadtRRWc6 (ID: F7nC67Td)
[特別編 第2話]★天敵組★
猿田彦(体は由比)「どうなってんだよこの部屋っ! 出られないとかおかしいだろォ!」
禍津日神「なんで我が此奴と一緒にされなければいけぬのだ。甚だしい」
猿田彦「こっちのセリフだ! はぁ、はぁ。ダメだ、開かない(ドアノブから手を放す)」
禍津日神「どけ。替わる(猿田彦を後ろに下がらせて)」
禍津日神「――禍火・炎玉!」
~マガっちの手のひらから、黒い球が発生する~
禍津日神「これを扉に投擲すれば、何とか脱出できるだろう」
猿田彦「ぉおおおい待て待て待て待て! 正気か!? 壊れたらどうすんだよ!」
禍津日神「誰にモノを言っている。我は禍の神だぞ。何が壊れようと此方の知ったことではない」
猿田彦「ちょっ、待てって!(マガっちの手を掴んで)」
禍津日神「なんだ貴様。わざわざ戸を開けてやろうとしているのに、無礼な奴だな」
猿田彦「世の中には、力で解決できねえ問題もあるんだよ! それにお前がそれを投げれば、俺の体も吹っ飛ぶし!」
禍津日神「……チッ。なら貴様も策を講じろ(術を解いて)」
猿田彦「はぁ、はぁ。なんだか、反抗期の餓鬼の相手をしてるみてぇだ」
禍津日神「奴らと一緒にするな。我は万物を創造する神だぞ」
猿田彦「なら『力を使ったらどうなるか』もちゃんと想像しろよ馬鹿垂れッ」
禍津日神「というか貴様、未来予知ができるのではなかったか? なのになぜこんなところで右往左往している?」
猿田彦「熱出て体調崩してんだよ。だから思うように力が出せないんだ。俺が乗っ取り解除したら、由比はお前と二人きりになっちまう。流石にそれは、かわいそすぎるだろう」
禍津日神「風邪か? ちゃんと薬は飲ませたのだろうな? 安静にさせろ戯けが」
猿田彦「絶対言わなさそうな言葉が本人の口から出たんだが」
禍津日神「勘違いするな。我は優しくない。完璧なものを壊すことにやりがい感じるから、ここでくたばって欲しくないだけだ。近い将来、お前ら二人を吸収してやる。本編でな」
猿田彦「はあ。一瞬でも期待した俺の純情を返せよ。とりあえず風邪薬を飲ませたけど、まだあまり効いてねえな。頭が痛え」
禍津日神「数が足りぬのではないか? いっそ全部ぶち込んだ方が」
猿田彦「お前に『優しさ』という感情がないことは、よーくわかった」
~ピーンポーンパーンポーン~
アナウンス「やあやあやあやあ。お久しぶりだね二人とも」
猿田彦「なんだこの声。って、むうじゃねえか!」
アナウンス「だ、誰そいつ。知らないですよ」
禍津日神「カキコ作家・むうを知らないだと? ならば我が教えてやる」
アナウンス・猿田彦「へ?」
禍津日神「むうは17歳、通信高校に通う学生だ。学業と並行して執筆活動を行っている。性格は陰気で思慮深く繊細。これらを三十秒以内にしっかり脳に叩き込め」
アナウンス「短ッ。ていうかマガっち何? あなた、むうのガチ勢かなんか?」
禍津日神「我はむうの創作物だ。ガチ勢ではない」
猿田彦「間違っちゃいねえけど、いいのそれで!? っうぉ、頭が……痛っ、うわっ(ふらっ)」
禍津日神「何やってるんだ貴様は――」
由比「ゴホッ。ゴホゴホッ。ちょっと猿ちゃん、また僕の体乗っ取って、ゴホ」
アナウンス「おっとここで、猿田彦選手、由比選手と交代か―――っ」
禍津日神「実況アナウンスをウキウキルンルンでやるな! 状況を簡潔に説明しろ!」
由比「えーっと、ここどこ。何この部屋。ってか、あなたは誰」
禍津日神「禍津日神だ」
由比「ッ!? (バッと身を引いて)な、何が目的ですか」
禍津日神「我に聞くな。答えは放送者に聞け。此方も突然閉じ込められて、意味が分からぬのだ」
由比「アナウンス?」
アナウンス「由比くんこんばんは。本日の司会進行を務める天の声です」
由比「えっと。むうちゃん、だよね? ひ、久しぶり。ゴホッ。ごめんね、風邪ひいてて」
アナウンス「わ、わたしはむうではないって何度も言ってるじゃないですか」
禍津日神「何故だ。その聞き取りにくい音量と声質。むう以外の何者でもない」
アナウンス「ひどくない?」
由比「ま、まあ。アレだよ、設定だよ。ここは乗ってあげよう(コソッとマガっちに耳打ち)」
禍津日神「……仕方ない。このまま話が進まないのも癪だ(コソコソ)」
アナウンス「あ、じゃあ天の声ってことで。あのですね、今企画で特別編をしてましてね」
禍津日神「今企画って云ったぞ。やはり貴様」
由比「も、もしかしたらどっかの会社の社員さんかもしれないよ! 企画会議とかあるじゃん。き、きっとそれだよ。ねっ(必死のフォロー)」
アナウンス「そ、そそそ、そうだよー」
禍津日神「無理がありすぎる気がするが」
アナウンス「そんで、2人をペアにして、密室に閉じ込めたんですよ。魔法で」
禍津日神「神が扱う力は魔法ではなく神通力だが」
アナウンス「細かいことは置いといて(スルー)。なので今、別の部屋でも君たちと同じように、誰かが閉じ込められてるよ」
由比「な、なんでそんなことを? ゴホッ。」
アナウンス「君たちの連携力を試したくてね。私がお題にクリアすれば、次の部屋の鍵がもらえるしくみになっているよ。順番に部屋を回っていって、どのペアが一番乗りするかっていうゲームなんだ」
禍津日神「我以外にも参加者がいるのか」
アナウンス「ちなみにペアは、コマリ×美祢のボディーガード組、宇月×こいとの秘密共有組、飛燕×飛鳥の双子組、そして君たち妖怪組だね」
由比「そ、そんなに閉じ込めちゃったの? つ、捕まるよっ!?」
アナウンス「ピュアやね君。大丈夫よ、私作者だもん」
禍津日神「………今、自白したな。貴様はもう、むうで確T」
アナウンス「このゲームの作者ってことね!!(必死)」
アナウンス「ということで、クリア頑張ってください~。私はモニターで各チームの様子を確認します。優勝者には豪華特典があります」
由比「豪華特典?」
アナウンス「題して〈視点変更権〉。自分が主役でやる回を、作者に書かせる権利です!!」
由比・禍津日神「やっぱり君(貴様)はむう(ちゃん)では」
アナウンス「天の声です!!!」
next→次回は宇月×こいとペアの様子をお伝えします! 次回もお楽しみに。
★そして今回のお話は閲覧数に応じて、優勝ペアを決めようと思っています。
閲覧数が偶数→美祢ペア、宇月ペアから ランダムに選定
閲覧数が奇数→双子ペア、妖怪組、全員一斉クリア からランダムに選定
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