ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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もしもきみが、ここにいたら
日時: 2011/02/03 16:38
名前: とある板の住民 (ID: y0p55S3d)



移転しました


キーワード「空前絶後のこの世界で」

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Re: 君のいない物語 ( No.1 )
日時: 2011/01/07 15:32
名前: とある板の住民 (ID: y0p55S3d)

__プロローグ


あなたは魔術を信じますか?


未来を予知できたら?

嘘を見抜けたら?

炎を操れたら?

誰よりも強かったら?


そんなこと、ありえないでしょう。


それが、ありえる。


それが、俺が関わった物語。

Re: 君のいない物語 ( No.2 )
日時: 2010/11/02 18:21
名前: とある板の住民 ◆qTm8IKA.tA (ID: d3Qv8qHc)

_第一話「ゆめ」

 眩しい光に照らされて、俺は目覚めた。ボーッとする意識の中、俺はゆっくりと目を開く。

「夢……?」

カーテンの間から射す朝の日差しが、やけに眩しい。重い体を起こし、ソファから降りてみる。壁にかけてある時計の針は五時三十分をさしていた。

「早く起きすぎた……」

少し痛む頭を抱えながら、一人で呟く。今朝はやけに体がだるい。
早く起きすぎたせいでもあるだろうけど、変な夢を見たせいでもあるだろう。そう自分を納得させる。

俺は台所へ移動し、コップに水を注いだ。と、注ぎ終わったと同時に、朝から忙しい母親がどたばたと慌てた様子でリビングに入ってきた。

「あ、瞬じゃない。おはよう、今日は朝早いのね……って、顔色悪いけど大丈夫?」

リビングの机の上にある書類をまとめながら、母はそう言う。俺は水を一口飲んでから、

「ああ……何だか、変な夢見たからさ」

と言ってみたものの、変な夢というより不吉な夢と言ったほうが正しかったのかもしれない。鮮明に覚えている夢の様子を脳裏で思い出しながら、俺はコップの水を飲み干した。

本当に……不吉な夢だ……



「お母さん、もう行くからね。あと、ちゃんと寝るときは布団で寝なさい。ソファで寝ると風邪ひくわよ?」
「はいはい」

母の注意に対し適当に相槌をうつ。呆れてそれ以上言う気にもならなかったのか、母はさっさと家を出た。
考え事をしていたので母の後姿を目で追う暇もなかった。脳裏で繰り返し再生されるのは、ただただ、あの不吉な夢だけだ。
夢とは思えないくらい現実感があった、あの夢。出てくる少女も本物そっくりで、夢とは思えなかった。

「……何を考えているんだ、俺は」

一人で呟いてみた。俺は頭を横に左右に振り、考えるのをやめようとした。早く、夢のことなんて頭から離れてほしい。どうせ、何も起きないに決まっているさ。
そう、きっと何も起きない。

心の中で、そう自分に言い聞かせる。だけど、俺の心の中にはやはり゛違和感゛が残っていた……

Re: 君のいない物語 ( No.3 )
日時: 2010/11/01 16:59
名前: とある板の住民 ◆qTm8IKA.tA (ID: d3Qv8qHc)

_第二話「白巫女」


 高校二年生の休日といえば、真面目なやつは勉強、明るいやつは友達と外出、暇なやつは家でごろごろしているのだろう。
いつもの俺なら、どんなにいい天気の土曜日でも休日といえば゛暇なやつ゛の休日の過ごし方しかない。そう、いつもならな。だから、今日の俺はどうかしているのだ。


砂利の敷かれた地面を歩きながら、ふぅとため息をついた。残暑の残った秋とはいえ、朝は肌寒い。長袖の薄いシャツに茶色のカーデガン、ジャージを履いてるだけじゃ少し寒い。もう少し着込んでくればよかったなと思いつつ、俺は足を進める。
休日の朝は驚くほど人がいない。ここ辺りは少し田舎なんだが、昼間に外へ出れば必ず誰かに会う。やっぱり土曜日の朝のこの時間帯は、ほとんどの人が寝ているんだろうな。

そんなことを考えているうちに、俺はその場で立ち止まった。
見上げると、そこにはいつもの神社の鳥居がある。奥には賽銭箱があって、その周りには綺麗な手水舎(手洗所)や゛七比良神社お土産グッス゛という看板のある売店があったりするが今は誰もいない。
神社の本殿と拝殿もとても立派で、こんな田舎でも神社だけは豪華なんだなと思わせるほどだ。観光名所にもなるくらいで、地元で有名な場所といえばこの神社だけだと言ってもいい。
だが、俺が今日朝から神社にきたのは、お参りしにきた訳でもお土産グッスを買いに訳でもない。

そう……俺が神社に来た理由は——





「あっ、瞬!」




遠くの方から、女の子の透き通った声が聞こえてきた。すぐに誰だかわかった。綺麗な声も、元気な口調も、いつもの通りだから安心した。

「瞬ー!」

声は背後から聞こえてきて、だんだん足音と共に近づいてきた。やがて足音は、俺の後ろで止まった。

「おはよう、瞬……!」

俺は背後を振り返る。

そこにいたのは、やはり予想通りの人物だった。

「瞬が土曜日に神社に来てくれるなんて……珍しいね」

風になびく艶やかで美しい黒髪、白くて綺麗な肌、ぱっちりとした二重の大きな目と、それを縁取る長いまつげ、上品で小さな鼻に、愛らしい桃色の唇と粒ぞろいの白い歯。白衣に赤い袴の巫女装束がとても似合っている。
少女は頬を赤く染めながら、にっこり笑った。
正直、その笑顔に見惚れてしまった。心が少し穏やかになった気がして、つられて俺も小さく笑ってしまう。

「おはよ、あやめ」

巫女の格好をした少女——あやめはふふっとまた笑った。

「今日は機嫌いいんだね、瞬」
「何でそう思うんだよ」
「いつもみたいに、無愛想な顔してないもん」

笑顔のあやめにそう言われても、憎めなかった。俺は「無愛想な顔で悪かったな」とだけ言って、あやめの頭をくしゃっと撫でる。

「今日はなにしに来たの?」

そう聞かれ、言葉を詰まらせた。

「えっと……まあ……その……だな」
「えー、なになに?」

目を泳がせながら、嘘の言葉を吐き捨てる。

「暇つぶしだ」
「暇つぶしに、こんな朝早くから私のいる神社に来るんだ?」

ニヤニヤしながら言葉を即効で返すあやめ……やっぱり憎めない。
俺は目をそらし、やっと思っていた言葉を吐くこと出来た。

「……おまえに会いにきた」

たったその一言だけ。それでも俺にとっては、精一杯の言葉だった。顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。

「……ありがとう。嬉しい」

優しく微笑みながらそう言ったあやめ——肌寒いことなんて忘れて、体が火照っていく。一人の女の子の笑顔で、熱くなってしまう自分がなんだか恥ずかしい。

「着替えてくるから、待っててね!」

甲高い声があたりに響く。俺は耳を押さえながら適当に相槌をうった。すると、あやめは早速家に向かったのか、子供のように走り去っていった。その後姿は見ててなんだか危なっかしい。
まったく、本当にあやめは子供みたいだな。見た目はおとしやかな巫女でも、やっぱりまだ高校生だもんな。もちろん、同い年の俺もまだ子供なんだろうけど。





風に吹かれた木の葉が、ひらひらと空を舞う。
それをじっと見上げて、なんだか安心した。


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