ダーク・ファンタジー小説

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バッドエンドアリスの招待状
日時: 2021/02/02 23:46
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: vQ7cfuks)


 僕の親愛なるアリス。
 どうしても君に真実を伝えることができない。本当に申し訳ないと思っている。
 君の悲しむ顔を見たくないだけなんだ。
 どうか、君が何も知らないまま幸せに生きてくれることを願う。


 ねえ、アリス。ずっと君はそのままで。何も知らない幼気な子供のままでいてくれ。


 秘密は絶対に解き明かしてはいけないよ。








「 お客様 」


 すーぱーうるとらすぺしゃるさんくす!!!!!!!!!!!!!!(意味不明)
 コメントありがとうございます。励みになります。
 読んでくださる皆様もありがとうございます。もしよろしければ、もう暫くお付き合いくださいませ。

■電波 様
□小夜 鳴子 様






藍色の宝石 【中編集】/5作品目

(1作品目)優しい蝉が死んだ夏 >>003
(2作品目) 深青ちゃんは憂鬱だ。 >>029
(3作品目) 意地悪しても、いいですか。 >>039
(4作品目) 恋のつまった砂糖菓子 >>057

2 ( No.59 )
日時: 2018/04/12 22:42
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: CSxMVp1E)

 「君はまだ恋を知らないのね」とあの人は笑って俺の頭を撫でた。真っ黒なランドセルを背負った俺は、セーラー服のこの人が泣いてるのをただ見ていた。

 「くん、——綾瀬くん」

 ぼおっとしていたのか上から降ってきた声に気づいた瞬間、俺の体はぶるっと震え、まるでよく夢で見る降下の感覚に陥った。俺の顔を心配そうにのぞき込む委員長は、大丈夫と声をかけて不安そうにこちらをじいっと見つめていた。


 「あ、んん。ごめん、ちょっと寝てた」
 「そっか。本当に具合悪くなったら保健室行ったほうがいいよ。最近、綾瀬くん調子悪そうだし、心配」
 「そう? おれはだいじょうぶだよ。ほら、見ての通りめちゃくちゃ元気」

 数学の宿題であるノートの提出を促しに来た委員長にノートを渡し、ジュースを買いに教室を出た。自動販売機の前までに来て、何を飲もうか考えつつ、財布から小銭を取り出す。ふいに目に入ったレモンティが、なぜか好きなわけではなかったのに唐突に飲みたくなった。あの人が良く飲んでいたレモンティ。

 「俺、飲めないのに」

 レモンティを初めて飲んだのは、小学五年生の夏。あの人がおいしいよ、と言って飲みかけのペットボトルを俺に渡してきたのがきっかけだった。間接キスだとおもったけれど、何の意識もしてない彼女に俺は何か言うこともできず、黙ってレモンティを飲んだ。甘ったるい、まるで彼女のようだった。

 ***

 「おっかえりぃ、純平っ」

 玄関を開けると、ばっちりお洒落をした彼女が、にこやかな笑顔で出迎えてきた。彼女——沙織さんは俺を見るなり、可愛いワンピースを自慢するようにくるりと一回転してスカートを翻して見せた。

 「なに、兄貴とどっかでかけるの?」
 「そう、珍しく帰ってくるから一緒にご飯食べに行くことになったの」
 「ふうん。兄貴、いつまでこっちにいんの?」
 「明後日かなぁ。あ、もしかして純平も一緒にご飯行きたかったぁ? ごめんごめん、明日一緒に行こうねぇ」
 「いや、いいよ。俺、寝るから」

 沙織さんの嬉しそうな表情を見たくなくて、俺はすぐに階段を上って部屋に閉じこもった。幸せそうな顔が俺にとっては喜べなくて、自分がとても小さな人間だと思い知らされて嫌だった。
 ああ、ちっちぇえ。器が小さすぎるだろう、俺。小学生の時に恋に落ちた。恋をしていた沙織さんはとても綺麗で、儚くて、俺がどうにか笑顔にしてあげたかった。彼女が好きだったレモンティをカバンから取り出して、また少し口に含んでみる。でも、やっぱり甘すぎて口に合わなかった。
 洗面台の前に立ってペットボトルをさかさまにする。どぶどぶと流れ落ちていく液体に勿体なさは感じなかった。彼女への好きがこんな感じで消えて行ってくれたらいいのに。ただ純粋にそう思った。
 俺の消えない恋心は、彼女が結婚してからも続いている。もう俺のものにはならないのに。ずっと兄貴を好きでい続ける彼女はとても美しく、それでこそ沙織さんだと思うのに。それでも好きだ。好きなのだ。醜い俺は、まだ彼女に恋し続けている。かなわない恋なのに。

 「小波みたいに、俺も勇気出せたらな、」

 委員長の告白に、イエスと答えられなかったのは、きっと自分が彼女に見合わない存在だと思ったからだ。まだ恋を引きずっている俺なんかは、きっと彼女を幸せにできない。
 ベッドに転がって布団をかぶった。きっと台所に行けば沙織さんが作った夜ご飯が用意されているのだろう。食べたくない、と思った。だから、ゆっくり目をつむって、ゆっくり沙織さんへの恋を忘れていこう、と思った。
 


 「 綾瀬純平 “ 落ちた氷はまだ溶けない ” 」

Re: 恋のつまった砂糖菓子 ( No.60 )
日時: 2018/07/26 15:31
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: BBxFBYlz)


 しばらく浮上しなくてすみません。遅くなりましたが、再開いたします。七〜八月は「ショタくんの反撃!」です。割とコメディチックなお話になると思います。よろしくお願いします。


 恋のつまった砂糖菓子はちゃんと終わらせることができませんでしたが、この二話で一旦閉めさせていただきます。片思いはしんどいよね!!!最高!!!って思ってた高校生の頃に書いた作品です。残りのお話はプロットがどこかに消えました。見つかったらまた書くかもです。読んでくださった皆様ありがとうございました。

ショタくんの反撃!「その1」 ( No.61 )
日時: 2018/08/16 23:59
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: BBxFBYlz)

 近所に住んでいた六つ下の男の子。名前は嵯峨翔太くん。わたしに物凄く懐いてくれていて、いつもお姉ちゃんおねえちゃんって私の後ろに引っ付いてきた。可愛い。とってもとっても可愛い。つい心の中で「ショタくん」なんて呼んでいて、ひたすらに可愛いと拝み奉っていた彼は、それから十年後、私のもとに再び現れて言うのです。





 ガキ扱いするのは、やめろよ。





+++



「どうして、どうしてなの、あんなに可愛かったショタくんはどこに行ったの??? うええええええんっかむばあああああっく、ショタくううううううんっ」
「うるせえ、黙れ」

 私の頭をばしっと叩いた二十歳の青年には、もうあの頃の可愛い可愛いショタくんの面影は全くない。あんなに天使だったショタくんはもう存在しないと思うと、悲しくて悲しくて今日も九時間睡眠できる気がしない。

「ああああああああ、私の可愛いショタくんがああああああ」
「だからうるせえって、ってか俺はショタじゃねえ、翔太だ!」
「っていうか、もうおうち帰りなよ、私の部屋狭いんだから、大きいショタくんがいるともっと狭くなる」

 ショタくんがうちに転がり込んできたのが先週の水曜日。ちょうど一週間前だ。俺のこと覚えてる、って大雨のその日、傘もささずに土砂降りの中びしょびしょになって私の部屋の前でそう聞いた彼があのショタくんだと気づける人間はきっといない。
 ていうか、どうやってこの場所を知ったのか疑問はたくさんあったけど、とりあえずお風呂に入れて着替えを渡してその日彼は私の部屋のソファで眠った。
 
「本当にあのショタくん、なの?」
「どっからどう見ても、そうだろ。あほかよ、お姉ちゃん」
「…………」
「なに、イケメンになっててびっくりした? 惚れたなら別に泊めてくれたお礼でごにょごにょ」
「なんで、なんで」
「…………?」

 思い出す、あの可愛かったショタくんを。ランドセルを背負って笑顔で「お姉ちゃん、今日はね、みーくんとね、鬼ごっこやったの!」ってそんな可愛い報告をしてきてくれたあのショタくんが



「あああああああああショタくんはこんなんじゃないもんっ!!!」
「は? てかショタくんってなんだよ、俺は翔太だし」
「なにこれ、どう見てもただの男じゃん。十年経ってもショタくんはあのままショタくんのままであることを願ってたのに」

 私がショタくんの顔をつかんで凝視すると、見る見るうちにショタくんの顔は真っ赤になっていく。
 そんなことなんかまったく気にせずに私は大号泣。でも仕方ない、あんなに可愛かったショタくんは、もう、もういないんだ。


「ほら、お姉ちゃん。俺、カッコよくなっただろ、俺はもう子供じゃない!」
「いやああああああああああ、無理無理。可愛くないショタくんはショタくんじゃないもんっ」



 「あああ、うるせえな。もう、わかれよ」


 私が現実逃避しようとしているのをいとも簡単に彼は止める。私の手をつかんで自分のもとに引っ張って私を優しく抱きしめたショタくんは、大人の体で、大人の声で、そっと私に囁く。
 

 「お姉ちゃんのことが好きなんだ。だからさ、このまま泊めてくれるよね」

 あの頃の可愛いショタくんなら絶対「イエスッマイロード」って言っておねだり何でも聞いてただろうけど、今は違う。全然違う。無理だ。私は三次元の人間は死ぬほどダメなんだ。
 可愛くおねだりしてきても見た目は成人男子。無理、死ぬ。吐く。


「いや、出て行ってください」
「はあ、なんでだよ、泊めてくれてもいいじゃん。ほら、何でもするから」
「じゃあ昔の可愛いショタくんに戻ってよおおおおおおおお」



 これは昔最高に好きだった可愛い天使、ショタくんとの再会の物語(死亡フラグ)

ショタくんの反撃!「その2」 ( No.62 )
日時: 2018/11/10 14:59
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: xVqXnuQU)

「で、純菜はどうすんの、それ」
「え、どうするって?」

 お昼休憩中。職場で同僚の潮見とここ最近の非日常の話をしていると、彼は唐突にそう聞いてきた。

「だって、もうそいつはショタじゃないんだろ。じゃあ、もうお前のストライクゾーンからは大きく外れて、ってかむしろ圏外じゃん」
「あー、ほんとそれ、つらみ。まじ、つらみ」
「しかも、その翔太くん? って、あれだろ、なんか最近話題の」
「話題……?」

 休憩室の端っこにある雑誌コーナーから一冊の人気雑誌を彼は持ち出してきた。見て、びっくり。なんとその表紙にはあのショタくんの顔がばっちり映っている。

「ちょ、え、待って、なにこれ。ショタくんじゃんっ」
「ああ、さっき名前聞いたあたりからなんか聞いたことあんなぁって思ってたら、やっぱそうなんだ。ってか、お前もこれくらい知っとけよ。嵯峨翔太っていったら、今話題のモデルじゃん」


 潮見がさらっというものだから、もう私はプチパニック。雑誌をパラパラめくってみると、ショタくんの特集が十ページくらいにわたって続いていた。あの頃のショタくんを匂わせるものなんて一つもない成長してしまった彼の姿に私は心底ショックを受けて、ゆっくりとその雑誌を閉じた。


「しおみいいいい、どうしよう、なんかイケメンと一緒に暮らしてる私やばいよおおおおお」
「おう、ファンに見つかって焼け野原になる前に次の部屋探しとけよ」
「やだよおおお、ショタくんのファンに家燃やされるなんてやだああああああ」

 家に帰ると、きっと今日もショタくんは当然のように私の帰りを待っているのだろう。最近は気軽に「好きだよ」なんて私に触れてくるようになった。ませてる。本当あいつませてる。

「潮見、やっぱさ、ショタは健気で儚くて……」
「可愛いのが鉄則だよな」
「だよね!!!!!ほんと、それ!!!!!」


 私は潮見の手を取ってぶんぶん振った。
 潮見は私の同僚で、親友だ。入社式のあとにあった歓迎飲み会でショタ好きの趣味がお互い発覚し(正しくは酔っぱらったせいでうっかり喋ってしまった)すぐに仲良くなった私たち。いい新刊が手に入るたびに二人飲み会を開き、明け方まで語りつくす。周りは私たちが付き合ってるなんて勘違いをしているけれど、むしろ好都合だ。潮見に彼女なんかできたらこの幸せの時間が終わってしまう。そんなの嫌だ。


「潮見はずっと私のショタ好き仲間だよね!!!!」
「どした、急に」
「なんか、いま潮見に彼女できた時のこと考えちゃった」
「あー、まぁしばらくはできないだろうな、お前とこうやって喋るほうが楽しいし」

 潮見が歯を見せて笑う。私も満面の笑みを浮かべて今日もサイトで発見したショタ小説を潮見に見せる。
 こんなにもショタは素晴らしく、天使なのに。
 いつかは大人になってしまう短いその時間を、私たちは止めることができないからとても歯がゆい。ショタくんがあのまま、ずっと可愛い子供のままだったら、私は彼の好きに全力で応えれたのだろうか。



Re: ショタくんの反撃!「その3」 ( No.63 )
日時: 2018/09/04 23:12
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg (ID: BBxFBYlz)
参照: 名前間違えました。ごめんなさい立花です。

「あ、そういえばショタくんってモデルさんだったんだね。今日さあ会社の同僚に教えてもらって」

 ショタくんが当たり前のように私の家に帰ってくるようになって、洗濯物をたたみながらショタくんとこんな話をするようになった現状に何の違和感も抱かなくなった。慣れって怖い。

「え、待って。お姉ちゃん知らなかったの」
「ああ、結構人気なんだよって今日教えてもらった。私リアル関係にはちょっと疎くて」
「お姉ちゃんってあれだよね、なんていうか、オタクっていうか」
「あ、馬鹿にした!!!??? 私はショタが好きな普通のオフィスレディですぅ!」

 それを普通とは言わないよ、とショタくんから的確なツッコミを受け、私ははあとため息をつく。
 可愛いものが好きだ。尊くなるような、しんどくなるような、心を抉るほどの沼に落ちたジャンルが「ショタ」である。初めてショタくんに会ったとき、彼はまだ小学生で、いっつも私と一緒に学校に行くってランドセル背負ってパタパタと可愛い音を立てて駆けてくる。あの可愛さを、私は恋のようなものと錯覚してしまった。手に入れられない可愛いものを愛したくなった。私のショタ好きのきっかけはショタくんであり、ショタであったショタくんをいくら愛せても、大人になった彼を愛す自信は私には……。

「ねえ、私のことが好きって、ほんと?」
「ああ、ってかそれ何回言ったらわかってくれるの? 俺の気持ちは嘘偽りないよ」
「でもさ、私とショタくん何歳歳離れてるか知ってる?」
「歳の差とか今更関係ないじゃん。俺らもう大人だろ。なあ、いい加減俺のこと「男」としてみてよ」

 私の前髪をかきあげて、ゆっくりとショタくんが顔を近づける。まるでチューする距離まで顔が近づいて私は怖くなって目をつぶった。五秒経っても何も起こらなくて、私がゆっくり目を開けると、ショタくんは私の前にちょこんと座って悲しそうな顔をしていた。

「俺のこと、好きじゃない?」

 まるで子犬みたいな、あの幼き頃のショタくんを思い出させるようなその瞳に私の心臓はバクバクと脈打つ。

「す、好きじゃないことは、ない、けど」
「じゃあ、チューくらいさせてよ」

 むっと口をとがらせるショタくんは、二十歳の大人の男とか自分で言ってたくせにほんと子供みたいだ。ショタくんの大きな右手の手のひらが私の髪に優しく触れる。

「好きなんだよ、お姉ちゃん」

 どきどきする。こんなカッコいいショタくんに口説かれたら普通の女の子なら即落ちで、喜んで付き合ったりするんだろう。だけど、私はそうはなれない。私は推しの夢女子にはなれないから。

「ご、ごめんね。ショタくん」

 簡単に恋に落ちることができたら、きっと私もこんな罪悪感を抱かなくて済むのに。ショタくんの真剣な表情から目を逸らしたくて、私は部屋を出た。あの頃の可愛いショタくんなら、きっとひたすらに可愛いって愛せたのに。私は臆病者だ。恋愛ができない、弱虫だ。ショタくんの気持ちに応えることができないのに、きっとショタくんが別の誰かを好きになったら悲しくなるんだろう。ほんと、嫌な奴だ。


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