ダーク・ファンタジー小説

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バッドエンドアリスの招待状
日時: 2021/02/02 23:46
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: vQ7cfuks)


 僕の親愛なるアリス。
 どうしても君に真実を伝えることができない。本当に申し訳ないと思っている。
 君の悲しむ顔を見たくないだけなんだ。
 どうか、君が何も知らないまま幸せに生きてくれることを願う。


 ねえ、アリス。ずっと君はそのままで。何も知らない幼気な子供のままでいてくれ。


 秘密は絶対に解き明かしてはいけないよ。








「 お客様 」


 すーぱーうるとらすぺしゃるさんくす!!!!!!!!!!!!!!(意味不明)
 コメントありがとうございます。励みになります。
 読んでくださる皆様もありがとうございます。もしよろしければ、もう暫くお付き合いくださいませ。

■電波 様
□小夜 鳴子 様






藍色の宝石 【中編集】/5作品目

(1作品目)優しい蝉が死んだ夏 >>003
(2作品目) 深青ちゃんは憂鬱だ。 >>029
(3作品目) 意地悪しても、いいですか。 >>039
(4作品目) 恋のつまった砂糖菓子 >>057

015 ( No.54 )
日時: 2018/01/06 13:44
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: PFFeSaYl)

「今思い出しても、気持ち悪いや」

 自分の部屋に戻ってドアを閉める。朝比奈さんがつけてくれた鍵は私のプライベートを守るためのものだった。がちゃりと右にまわし施錠し、私はベッドに勢いよくダイブする。抱き枕にギュッと抱きつき、私はふーと深呼吸を一つ。

「愛人なんて、楽しかったのかな」

 朝比奈和幸という人間は、母公認の父の愛人だった。
 お父さんの高校の時の後輩で、お父さんの最愛の人。
 
「じゃあ、なんで、さ」


 ゆっくり瞼を閉じた。思い出したくないことばかりが、頭に浮かんでは消えていく。気持ち悪い。
 お父さんもお母さんも、お互いを本当の意味では愛していなかった。


     □ □ □

 うちの両親は偽造結婚だった。お父さんもお母さんもちゃんと他に好きな人がいて、それで結婚した。お互いに一つずつ条件を出して、夫婦という形を作った。
 父の条件は愛人の存在を認めること。高校の頃から付き合っている朝比奈和幸という人間と「まだ続ける」ことを母が認めることだった。普通の人間なら浮気だとかなんだとかで嫌がるそれを母はいともあっさりと受諾した。
 母の条件は子供を作ることだった。生憎、父はバイだったために、母ともちゃんと関係を持った。そのことに関して和幸さんは何も言わなかったが、二股していた本人のお父さんはどういう気持ちだったんだろう。今では分からない。
 お母さんは好きだった人が自分の実の兄だったそうだ。近親相姦というやつである。自分も罪を犯しているから、だから大丈夫と、いつも何でも許してしまうお母さんが私は大嫌いだった。


「……んん、ん? うる、さい」

 びびびっと大きな目覚まし時計の音が響き渡った。勢いよく停止ボタンを殴りつけるように押し、目を開ける。ピントの合っていない世界を一度消して、また目を開く。
 時間はもう八時を過ぎていた。
 九時には家を出る約束をしているのに、一時間でどうするんだ。というか目覚ましを八時にセットしたのは誰だよ、私だ。
 急いでパジャマを脱ぎ、用意していた白いワンピースに着替える。裾のレースの柄が可愛くて、私が窓越しにじっと見ていたのをスバルがあっさりと買ってくれたものだった。誕生日プレゼント、と彼は言ったが、私の誕生日はまだまだ先だった。馬鹿な奴だなと思いながらもそれを口にはしない。私のことなんて好きじゃないくせに。


「やっぱり、このワンピ可愛いな……」

 六月。梅雨の時期で雨が続いていたのだが、今日はとても空が青い。雲の形を見ているとお腹が空いて、ふと時間を見たらもう八時半を過ぎている。勢いよく階段を下りて行ってリビングに向かうと、机の上にはもう既に朝食が置かれていた。ハムと卵、レタスがはさまれたサンドイッチに、ストレートティー。キッチンの方には洗い物をしている浩輔の姿があった。

「真尋様、お時間大丈夫ですか」
「心配するなら、起こしに来てくれても良かったじゃない」
「真尋様、自分で何を仰っているかちゃんとご理解なさった上で発言なさっておりますか?」
「……うるさい」

 パクっと一口でサンドイッチをたいらげる。口についたマヨネーズをナプキンで拭って私はお皿を下げにキッチンに入っていく。

「浩輔さ、どうしてお墓参りなんて行きたいの?」
「どうしてって、そりゃ。一種の懺悔みたいな、ものじゃないですか」



 浩輔は何も悪くないでしょ。



 誰もそれを浩輔に言ってあげなかったんだ、今まで。
 浩輔はこれまでも、そしてこれからも、私のことを「全部奪ってしまった可哀想な女の子」として見るんだろうか。可愛そうなんて思われたくない。同情なんてされたくない。
 私が何も話さないのが悪いのだろうか。私の両親は殺されても仕方がないような、それくらいに頭のねじが一本飛んだ人間だったと。それを浩輔に言わないのがいけないのだろうか。

 言えないよ、浩輔に嫌われたくないもん。言えないよ。


 玄関の扉を開けた。黒いスーツ姿の和幸さんは、真っ直ぐに空を見ていた。そこにお父さんはいないんだよ、って言ってあげるべきだろうか。お父さんはもうどこにもいないのだと、言ってあげないと気づかないのかな。

「あ、真尋ちゃん。そっか、もう九時か。じゃあ、車に乗って。行こうか」

 口にしても、しなくても、最初から全部壊れていたら関係ないのかな。
 車の中で、煙草の匂いがした。

あとがきのようなもの ( No.55 )
日時: 2018/01/06 17:02
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: PFFeSaYl)




 【 あとがき 】


 すみません、大遅刻。一月を過ぎてしまいました、なんという不覚。
 今回の作品は「クズと奴隷。」という作品の前編となります。タイトルのクズは真尋。奴隷は浩輔なのですが、本タイトルの正式名称が「クズという名の私の奴隷。」なので、結局クズは浩輔なのでは、という推測(作者が言うことではない)
 半年以上前に書いた作品でしたので、誤字脱字が酷いです。確認する暇がなかったので、また時間が確保できましたら修正していきます。すみません、酷いです。


 

 十一月〜十二月 「意地悪しても、いいですか。」


 タイトル詐欺だと思う作品です。自覚はしてます、めっちゃラブストーリーっぽいタイトルなのに、えげつないシリアス。ごめんなさい、やってしもうた笑
 報われない恋の先には報われない恋しかないんだよ、っていうのがテーマです。親を殺した殺人犯の息子に恋をした女の子が苦しみながら彼の傍でいることを願うお話です。
 こういうお話が一番好きなお話で、書きたいお話でした。そして書きにくいお話でもあります。


 ( ストーリー )


 親を殺された少女、真尋は父の知り合いである朝比奈和幸に引き取られた。
 彼女が望む唯一の願いは、自分の親を殺した柿谷の息子、浩輔と一緒に暮らすことだった。真尋の伸ばした手を掴んでしまった浩輔は彼女の「奴隷」になることを強いられる。
 長い月日が過ぎ、彼女の忠実な奴隷(執事)と成長した浩輔は、いつも不機嫌な真尋とドジでヘタレな和幸の世話を焼いていた。
 ある日、突然真尋が飛び降りようとする姿を見て、自分が彼女を「そう」させてしまった原因だと改めて実感させられ、心が痛くなる。真尋は自分がいなきゃ死んでしまうのだと、自覚した瞬間、やっぱり殺したくなった。浩輔も彼女と同じように、どうしようもなく好きで、だからこそ殺したいのだ。



 −−− キャラクター −−−


 ストーリーだけでは絶対に分からないと思うので、キャラについて深くしゃべりたいと思います。

 真尋。簡単に言うと彼女はクズではないし、彼女が一番可哀想な子だと私は思います。
 親を殺された挙句、引き取られた相手も相手。和幸さんこそクズいなぁと思うのですが、本作で一番好きなキャラは和幸さんですごめんなさい。
 ただ純粋に浩輔のことが好きなのですが、それをどうしても言葉にはできません。浩輔を守るためにスバルと付き合うまでしても、彼が真尋を好きになることはないのに。分かってるくせに、ずっと好きなんです。ほんとマゾいキャラ。
 だけど好きな人のために一生懸命で、嫌われても守ることさえできればいいという自己犠牲の精神を持ったキャラが大好きなので、はい。

 浩輔。こいつは本当に良く分かんない、むしろ分かりたくないキャラ。
 真尋のことが好きなんだろうなとは思うのですが、絶対にこいつこそ言葉にしない気がします。自分がやったことではなくとも、真尋を傷つけたのは自分の父親ということでかなりの罪悪感を持っています。奴隷のように扱われるたび殺意を抱くのは、そうしないと彼女を好きになってしまうから。真尋が好きと言葉にしなくても自分に好意を持っていることは分かるのです。殺したいと思わないと、いつか自分の感情が崩壊するのではないかと不安なのです。

 和幸さんは私の好きな芸能人の下の名前を頂きました。だから好きです(違う)
 私の大好きな健気なキャラです。高校時代に好きだった人が男性で、どうしても好きで、やっと付き合えるようになったけど、その人は別の人と結婚することになって、それでも愛人として傍に居たくて。先輩が死んだ後もその人の子どもを引き取って育てるところが、なんとなく奥さんへの罪悪感からだったのではないかと思われます。
 ああああああああ幸せになってほしい。後編では幸せになってほしい。私次第なんですけどね、ごめんね!!!!!




 後編はまた夏ぐらいに書こうかなと思っています。あ、もし春に書けたら褒めてください。
 次回の作品は「赤ずきんちゃんは殺したい」というタイトルで、前にこういうのが書きてえよおおおというのをツイートしてて読み返したらやっぱり書きたくなったので書きます。頑張る。

 読んでくださった皆様、ほんとうにありがとうございました。
 また参照が1700を超えておりました。ありがとうございます。またこのスレを立ててそろそろ半年くらいでしょうか。支えてくださる皆様に感謝です。これからも宜しくお願い致します。

 立花

Re: 藍色の宝石 【中編集】 ( No.56 )
日時: 2018/04/09 15:56
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: CSxMVp1E)



 お久しぶりです、立花です。忙しかったわけではなく、ただただのんびりとしてたらあっという間に四月がやってまいりました。この四月から仕事が始まりましたので、更新が不定期になります。まぁ、いつものことなのですが(汗
 基本的にこのスレッドは二か月に一本のペースで短い小説を書かせていただいているのですが、私が執筆をさぼっていたせいで、今月で一本を仕上げないときりが悪くなるのです。困りました。で、前にお知らせしていました新作は五月からの執筆にさせていただいて、今回は以前書いた小説を上げさせていただきたいと思います。ごめんなさい。でも短いお話なので楽しんでいただけると嬉しいです。私がものすごく若いころに書いた小説ですので、文章は今より荒く稚拙ですし、読んでて痛いなと思うこともありますが、気に入っている作品ですのでもしよろしければ。
 どうぞ楽しんでいってください。

 参照2000突破いたしました。どうぞ次の作品もよろしくお願いいたします。

恋のつまった砂糖菓子 ( No.57 )
日時: 2021/02/02 23:46
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: vQ7cfuks)



 それはとっても甘くて、ときどき吐いてしまいそうなくらい。

 それはとっても苦くて、ときどき泣いてしまいそうなくらい。



 「 恋のつまった砂糖菓子 」


 1 好きって言ってもいいですか >>058
 2 落ちた氷はまだ溶けない >>059
 

1 ( No.58 )
日時: 2018/04/12 21:10
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: CSxMVp1E)

 放課後の校舎の響く楽器の音。オレンジ色の夕日が窓から差し込み、光で金色の楽器がキラキラと輝いて見える。リードをマウスピースにつけて、ゆっくり息を流し込む。テナーサックスは優しい音を響かせた。


 「どしたの、窓ばっか見て」
 「ふぇ、ああ、いやなんでもない」
 「何でもなくはないでしょう。どうせ綾瀬のこと見てたんでしょ」 
 「ち、ちがう、ちがうもん!」

 アルトサックスの手入れ中の友達がにやにやしながら声をかけてきた。私はどぎまぎしながら、楽譜に目を落として誤魔化す。見てない、見てない。わたしは綾瀬君のことなんか見てない。心に何度も言い聞かせ、ごほんとわざとらしい咳ばらいを一つして、また楽器を吹き始める。

 「あんた好きすぎでしょ。もう告白すればぁ? どうせ両想いだって。あいつと仲いいの楓ぐらいだし」
 「で、でもぉ」

 自然と楽器を離し、私は大きなため息をついてしまう。恋になると奥手だよね、楓って。友達は呆れたように頭の後ろをかいてまた楽器を吹き始めた。苦手だと言ってた連符がすらすらと吹けるようになっているのに気づいて、ああ負けたくないと思った。

 私には好きな人がいる。同じクラスの男の子でサッカー部に所属している、名前は綾瀬純平くん。明るくて爽やかで、誰にだって分け隔てなく優しい彼に惹かれているのはきっと私だけではなく、彼がほかのクラスの女の子から告白されているのだって知っているし、だからこそ自分が付き合えるなんてどうしても思えなかった。
 話すようになったきっかけは、クラス委員。吹奏楽部で部長を務める私に委員長を任せようというのは、クラス全員の総意らしく、断りたくても断れなかった。ただ副委員長である綾瀬くんがいろいろサポートしてくれて、今までみたいに「いやだな」と思うことは少なくなった。

 「あんた、頑張りすぎだろ。ちょっとは人に頼ればいいのに」


 重たい資料運びを何も言わず代わってくれた綾瀬くんがすたすたと歩いていくのに私は何も言えず立ち尽くしてしまったことがある。うまく言えないけれど、今までこんなことは一回もなかったから。楓は何でも一人でできるでしょって、勝手に決められてそれが当然になってたから。綾瀬くんの何気ない優しさにうっかりときめいてしまったのだ。


 好きと気づいた時にはもう遅かった。彼の顔を見るたびに顔が火照ってうまく話せない。心臓がバクバク音を立てて呼吸がくるしくなる。でも、彼を見つめずにはいられない。
 放課後、校舎の中から彼の姿を探してしまうのが癖になってしまった。ああ、好きだよ。大好きだよ。いつか言葉にできたらいいのに。
 教本の中に入っているラブソングを吹きながら、私は今日も彼のことを只管に想う。どうにもならないこの感情をいつか伝えられたらいいな、そんな幸せなことを考える。夕日は落ちて、きっと私は何も知らないまま君を想い続けるのだろう。



 「 小波楓 “ 好きって言ってもいいですか ” 」


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