ダーク・ファンタジー小説

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アール・ブレイド【改訂版 投稿中】
日時: 2013/02/05 09:46
名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: 76WtbC5A)

※改訂版を投稿しています!! よければ、感想などお聞かせいただけると嬉しいです!!


※この小説は他サイトでも公開しているものです。
 ご了承ください。
 また、一部残酷描写が入りますので、ご了承ください。


●あらすじ
連日続いた依頼もひと段落。
そんな凄腕ハンターのアールの元に、一通のメールが届いた。
頼まれたのは、あるデータチップの運送。
……だけでなく、車椅子の少女も同乗させることになってしまった。
しかも追っ手が次々と、アール達を狙って迫ってくる!?
ハイスピードアクション! ロボット対ロボットの白熱バトル!!
彼らの行く先にあるのは、改変を求める未来か、それとも……。
「アール。私は幸せだ……」
呟く彼女の手に、涙が……落ちた。

●改訂版
改訂版はこちら >>39-52

Re: アール・ブレイド ( No.1 )
日時: 2012/08/05 15:29
名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: 76WtbC5A)

プロローグ ◆美味しい香り〜ある辺境の酒場にて

 暖かいカーテン越しの陽の光が差し込んでいた。
 まどろみながら、目を擦る。
 ああ、さっき見ていたのは、夢なのかと思う。
 だが、もうどんな夢だったのか忘れてしまった。
 暖かく、心地よい夢だったのは覚えているのだが。
 そう思った途端、美味しそうな香りが漂ってきて、きゅうっとお腹が鳴ってしまった。
「姫様、お目覚めですかな?」
「じい……おはよう」
 音まで聞こえただろうか? 僅かに紅く火照る顔を気づかれないように、身を起こし、カーテンを開こうとする。
 が……届かない。
 やはり、ベッドから降りなくては、カーテンを引くことはできないのか。
 そのことに少し憤慨しながらも。
「じいが開きましょう」
 いつの間にか側に来たじいが、カーテンを開けてくれた。
 とたんに刺すような明るい光が部屋に飛び込んでくる。
「ありがとう」
 眩しそうに瞳を細めながら、私はじいに声をかけた。
「今日はポトフ?」
 美味しそうな香りに思わず顔を綻ばせながら、尋ねた。
「ええ、ポトフでございますぞ。今日は姫様にとって、大切な日ですから」
「誕生日はまだ先だ」
 不思議に思いながら、ベッドの上で方向回転。すぐに降りれるように体勢を整えた。
 じいは、慣れた手つきで車椅子を持ってくると、私をベッドから降ろし、その椅子に座らせてくれた。
「そうですな」
 むっとした顔で私は考える。
「じいの誕生日……も、まだ先か」
 確か、あと数週間でじいの誕生日だということを、思い出した。
 じいに車椅子を押してもらいながら、テーブルに向かう。
 焼きたてのパンとポトフが二人を出迎えていた。
「今日も旨そうだ」
 美味しそうな料理を前に、自然に笑みが零れた。
 考える前に、まずは食べよう。
 湯気の立つポトフ。入っている具は全て、蕩けるほど柔らかい。
 前に聴いたことがある。材料を特殊な鍋で数分煮込むだけで、こんな美味しい料理ができるとか。
「じい、今度、ポトフの作り方、教えてくれないか」
「おや、姫様が料理するなんて、珍しいことですじゃ」
「いいじゃないか」
 もうすぐ来るじいの誕生日に作ってやろうと思ったのだが。
「やっぱりいい」
 全てポトフを食べつくして、私は空いた皿を手渡して、お替りを催促する。
「花嫁修業するのかと思い、このじい、ちょっと感動したんですぞ?」
「いいったら、いいんだ」
 こういうのは、内緒で準備して驚かすのがいい。
 だから、後でネットで調べることにしよう。
 特殊な鍋とやらの使い方も覚えないとな。
 これからの準備に頭がいっぱいになった。
 じいの言っていた、特別な日のことなんて、もう忘れていた。
「じい、もう一杯」
「姫様、食べすぎですぞ」
 幸せなこの時間が、このままずっと続けばいい。



 時は遥か未来。
 限界を迎えた惑星から、いつしか人々は、宇宙に飛び出していった。
 しかし、宇宙ほど無限に広がる場所は無い。少し間違えば遭難してしまうほど、宇宙と言う場所は広くて恐ろしい場所だった。
 そこで、星の位置を基準としたワープ技術が開発された。
 星と星を繋ぐ『プラネットゲート』。
 この方法でなら、迷うことなく一気に、より安全に長距離を跳躍(ワープ)することができる。また、ゲート間ならば、どんな距離があっても数日で行き来できる。
 宇宙船(スペースシップ)は、今日も宇宙(そら)を駆け巡る。
 様々な荷物と共に。
 人々の想いを詰めて。



 そこは、とある銀河の辺境の街。
 彼はその街の薄暗いバーに居た。
 人は少ない。なんの変哲も無い平日の夜なら、仕方のないことだろう。
 けれど彼は一人、カウンターでアルコール度数の高い酒ばかり頼んでいた。
 今もウォッカの水割りを頼んで、ちびちびと飲んでいる。
「あれ? 先生がここに来るなんて珍しいなぁ」
 突然、声を掛けられ、彼は振り向いた。
 眼鏡を掛けた青年。長いぱさついた茶髪を一つにまとめて、先生と呼ばれた青年は視線をもう一人の彼に向けた。
「ザムダ?」
「人の顔は分かるんだな」
 先生の隣にどっかと座り、ザムダも酒を注文する。
 間もなく、ザムダにも酒が届く。一口飲んだところで、先生が口を開いた。
「人はなんて、無力なんでしょうね」
「哲学っぽい話か? 先生らしいな。また面倒なことを考えて……」
 ザムダが二口めを飲んで、先生を見る。
「人一人の力なんて、たかが知れてるんです……例えばそう、あの男のように」
「話なら、付き合ってもいいぜ」
 にっと笑みを浮かべるザムダに先生は僅かに笑みを見せた。
「ある男の話ですよ」
 からんと氷が落ちるグラスを置いて、先生はザムダに向き直る。
 ザムダも酒を飲みながら、その話に耳を傾けた。

Re: アール・ブレイド ( No.2 )
日時: 2012/08/05 15:31
名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: 76WtbC5A)

第1話 ◆メルビアンの老騎士と姫君

 シュン、という軽い音と共に、スペースシップの扉が開いた。
 目の前に飛び込んでくるのは、無限に広がる宇宙。
 ブリッジから見える宇宙は、なんと美しいのだろうか。
 珍しくそんなことを思いながら、彼の歩は自分の席へと向けられた。
 三本の太いベルトで固定された、黒の頑丈そうなブーツ。
 太ももには、両方に1丁ずつ、黒光りする銃がホルスターで固定されていた。
 腰には二本のショートソード。それを互い違いに固定し、両手で一気に抜けるようになっている。
 体格は中肉中背といったところか、身長は170近い。
 彼は黒いジャケットを、自分の席の背もたれに乱暴にかけ、どっかと座った。
「ふあーーっ!! 終わったぁーーっ!!」
 ぐいっと席の背もたれを倒しながら、彼はぐうーっと伸びをする。
「お疲れ様でした、マスター」
 音もなく、そっと彼の側に控えるのは、彼よりも少し背の低い女性。
 こちらは白を基調とした、飾り気の無いシンプルなワンピースに身を包んでいた。
 足元には足首を隠すくらいの、ショートブーツのヒールは高い。
 長くゆるいウェーブをかけた金髪を一つにまとめ、グレーの瞳で、彼女は表情なく彼を労った。
 これでも彼女なりに、精一杯、表情を付けているつもり……らしい。
「ありがと、カリス」
 くるりと席を回して、カリスと呼ばれた金髪女性に向き直る。
「今回も君のお陰で、全ての依頼をこなす事が出来たよ」
「いえ、それには及びません。わたくしはマスターに比べれば、まだまだですから」
 そういうカリスに彼は思わず、苦笑を浮かべた。
「それにしても、ソレを外さないのですか?」
「ああ、忘れてた」
 カリスに指摘されて、彼は耳元にあるボタンを押す。すると目元を覆っていたミラーシェードが音もなく耳元のイヤーギアに収納された。
 その振動で、彼の長い銀髪が揺れる。彼の銀髪は首もとで一つにまとめられ、左肩に垂らしていた。
「道理でちょっと暗いと思ったよ」
「もう少し早く気づくべきでは?」
 そんな鋭いカリスの突っ込みに彼は。
「だってさ、こっちは昨日まで寝ないで船をかっ飛ばしたんだ。他のこと疎かになっても、仕方ないってもんだよ」
 席の前にあるデスクに触れて、キーボードと立体ディスプレイを展開した。
「まあ、お陰でこっちは予定外に懐が潤ったし、帰るまで余裕が出来たんだ。これならあと一つくらい依頼を受けてもいいかもね」
 キーボードを慣れた手つきで打ち込み、自分のメールボックスを開く。
 その殆どが身内からの定期連絡ばかりであったが。
「あ、一つ依頼が来てる」
 さっそく彼はそのメールを開いた。

『アール殿
 貴殿の噂は、このメルビアンまで届いている。
 良いものも悪いものも。
 それを思慮しても、ぜひ貴殿に頼みたい案件がある。
 メルビアンの我が城に来ていただきたい。
               メルビアンの老騎士より』

 そのメールの末尾には、メルビアンの城の場所らしい、座標が記されていた。
「老騎士、か……」
 彼……いや、アールはオッドアイの瞳を細めて、口元に笑みを浮かべた。
「決まりましたか?」
「メルビアンの食べ物は美味しいって聞くからね」
 アールはそう言いながら、そちらに向かう旨をかの老騎士にメールで伝えたのだった。


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