ダーク・ファンタジー小説

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アール・ブレイド【改訂版 投稿中】
日時: 2013/02/05 09:46
名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: 76WtbC5A)

※改訂版を投稿しています!! よければ、感想などお聞かせいただけると嬉しいです!!


※この小説は他サイトでも公開しているものです。
 ご了承ください。
 また、一部残酷描写が入りますので、ご了承ください。


●あらすじ
連日続いた依頼もひと段落。
そんな凄腕ハンターのアールの元に、一通のメールが届いた。
頼まれたのは、あるデータチップの運送。
……だけでなく、車椅子の少女も同乗させることになってしまった。
しかも追っ手が次々と、アール達を狙って迫ってくる!?
ハイスピードアクション! ロボット対ロボットの白熱バトル!!
彼らの行く先にあるのは、改変を求める未来か、それとも……。
「アール。私は幸せだ……」
呟く彼女の手に、涙が……落ちた。

●改訂版
改訂版はこちら >>39-52

Re: アール・ブレイド ( No.23 )
日時: 2012/08/16 18:20
名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: 76WtbC5A)

「来たね。ゾクゾクしてくるよ」
『マスター、そんなことを言ったら、怖がられますよ』
「だってさ、俺、そんな風に『造られた』んだぜ? 相手をびびらせるくらいじゃないと、『アイツ』らは倒せなかったんだ。仕方ないだろ?」
 そう言いながら、その500機の中に突っ込んでいった。
『プログラム・ハヤブサ起動』
「腕とか足とか狙おうかなと思ったけど、ちょっと多過ぎ。面倒になってきた」
 蒼白い炎のようなオーラを纏って、そのまま、アールは敵の機体に突っ込んでいく。
「シャイニング・ブルーバード」
 アールの機体は、今、青い鳥のように、宇宙を駆け巡り、敵機を蹂躙していく。
 もちろん、敵も容赦ない銃撃をアールの機体に浴びせてきた。
『マスター、デカイのが来ます』
「いいよ、受けようじゃないか」
 アールはこの戦いを楽しむかのように告げた。
「そろそろ、この『鎧』も……重くなってきたからね」


「はっ!! このランチャーを受けて、生きてるやつぁ居ねぇからな」
 巨大なランチャーを構えたリョウガの機体は、ゆっくりとそのランチャーを投げ捨てた。
「ただ、この難点は、弾が一つしか入らねぇことだ。もう少し入るようにしてくれたって良いんじゃねのか、全く」
 紅いダイヤの光沢。
 雄々しき鬣を持つレオを思わせる機体。
 それが、リョウガの愛機だった。
 その両腕には、ダイヤの装甲と同じ素材で出来た、最強のクローが備わっている。
 リョウガは、弾の当たった残念なバカに向かってあばよと告げた。
「もうちょっと遊びたか……んっ?」
 煙と共に現れたのは。
「あ、あれが……あの、マトリョーシカ……か?」
『ごきげんよう、皆さん。重い鎧を外してくれてありがとう。お礼に一つ教えてあげよう』
 背には四枚の翼がはためき。
 背中には見たことのないランチャーが取り付けられており。
 まるで人が鎧を着たかのような、スマートなフォルムの機体。
 それは、本当の騎士を思わせた。
 それだけではない。彼を守るかのように、無数の光のビットが宙に浮かんでいる。
『無敗の鬼神。それがかつての私の呼び名だ』
「上等じゃないか、面白い」
 リョウガは震える手を、握ることで忘れることにした。
 震える足を踏み込むことで、忘れることにした。
「俺に武者震いをさせるとは、本当に面白いっ!!」
 声を張り上げ、気合を入れる。
「無敗の鬼神!! なら、俺がその無敗を消し去ってくれよう!!」
 レオの機体が騎士の前に飛び出してきた。

「おやまあ、誰かと思ったら」
『あのときの彼ですね』
 どこからともなく宙から、2本の剣を引き抜き、それでレオのクローを止めた。
『マスター、一ついいですか?』
「何? 面白いこと?」
 いとも簡単に彼のクローを剣で受け止めていく。
『サーチしたところ、リンレイ様を殺したのは、この方だと判明しました』
「なんだって?」
 ばんと勢い良く、レオの爪を恥じ返して、距離を取った。
「もう一度、言ってみろ……」
『リョウガです。リンレイを、殺したのは』
「ふっ……」
 時が止まった。
「あははははははははは、あーーーっはははははっ!!」
 哂い声が、コクピットの中で満たされる。
「こんな、こんな『ランク』の男が、リンレイを?」
『はいそうです』
「こんな男にリンレイが、殺されたっていうのか?」
『はいそうです』
「こんな、男に……こんな、屑野郎に……リンレイが……」
 ばちっと、何かが弾けた。アールの周りに、暗いオーラが漂い始める。
「神に感謝しよう。ここで逢えたことに」
 アールの瞳が、両目とも深紅に変わった。
「もっとも、俺が『神』なんだがな」


 がきんがきんと剣相手に爪を振るう。
 可笑しい。
 何故だ?
 この爪はダイヤの装甲で出来ている。
 切り裂けないものは、この世のどこにもないはずなのに。
 なぜ、こいつの剣は切れない?
 それに、こいつのフレームはなんなんだ?
 蒼白く輝いたり、今は、凶悪な黒に変わり始めている。
 こいつは何なんだ? 何なんだというのだ。
 コイツを殺すだけのはずだった。
 コイツを倒せば終わるのに。
 いつの間にか残っているのは、俺と戦艦だけになっている。
 こいつは、本当に……。
 人間なのか?

 そこに至って、リョウガは、さっと後ろに下がった。
 震えが止まらなくなっていた。
 禍々しい黒のオーラを纏った敵が、ゆっくりと近づいてくる。
 可笑しい。
 いつから、変わったんだ?
 俺は唯、叔父に命令されてやっただけだった。
 命令に従えば、後は金と良い女を宛がわせてくれるって約束してくれた。
 だから、汚いことも全部引き受けてきた。
 可笑しい、俺はなんで、こんなことを考えている?
 俺は悪くない。
 悪くないんだ。
 悪いのは、叔父上なんだ。叔父上が命令したから。

『そう、命令されただけなのか』
「はっ!!」
 その声は、モニターから流れたものではなく。
『だからといって、許されるものじゃない。そうだろ? リョウガ』
 この声に聞き覚えがあった。
「あ、アール……だと……」
『へえ、覚えてたんだ。俺の声。嬉しいね』
 ザン。
 それと同時に。
「うああああああああああああ!!!」
 両足に鋭い痛みが走った。熱い、なんて熱いんだ。熱い熱い熱い熱い!!
『リンレイは歩けなかったんだ。でも、歩こうとしてたんだ。必死に生きようとしていた。幸せになる権利を持っていた』
 ゆっくりと足元を見た。
 そこには、足が……なかった。
 いや違う。斬られたのだ。
 ギアごと、足をごっそりと。
「うあああああああああああああああああああ!!」
 ザン。
 また薙いだ。
「ぐおおおおおお!!」
『この腕で彼女の命を奪ったのか?』
 今度は右腕が、なくなった。熱くて熱くて熱くて熱くて、熱い熱い熱い熱い。熱いよう!!
『老騎士をやったのは、お前か?』
 ザン。
 今度は左腕。左腕が消えうせた。熱いよ熱いよもうやめて熱い熱い熱いよう。もうやめてよ。もうもうもうもうもうもうやめてやめてやめてやめて。
「ああそうだよっ!! 俺がやったんだ!! 見物だったぜ! 大きな花火であっという間に消えちまったっ!!」
 熱いから熱くてたまんないから。ねえもうやめて、おねがいだからゆるしてよかみさま。ねえおねがいおねがいゆるしてかみさま。
『そうか、それを聞いて良かった』
「はっ、はっはっ、はっ……」
 もう何もできなかった。生きていることが不思議なくらいだった。
 その声は優しく聞こえた……気がした。
『消えろ』
「へっ!?」
『地獄の中で永遠に苦しむが良い』
「やめて、ゆるし……」
 ザン。
 爆発。
 最後に残っていたギアが……消滅した。
 跡形もなく、そこに存在しなかったかのように、綺麗さっぱりと。


Re: アール・ブレイド ( No.24 )
日時: 2012/08/16 18:20
名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: 76WtbC5A)

「ななななな、何をしているぅ〜〜!!」
 インクブスは、震える声で指示した。
「バスターだ、バスター砲を用意しろっ!! あの忌々しい機体を消すんだっ!!」
 その間に、アールの機体はゆっくりと巨大戦艦を見据えていた。
 ただ、見据えていた。
 先ほどの黒いオーラはいつの間にか消えうせ、いつもの蒼白い光を取り戻していた。
「早く早く、チャージはまだか!?」
「準備できました!!」
 その部下の声に、インクブスは安堵した。
「なら、すぐ撃て! 今すぐに!!」


『マスター、マスター』
 カリスの声が響く。
 俺は仇を討った。二人の仇を討つことができたんだ。
 この手で、この俺が……。

『……くん』

 えっ!?
 聞こえるはずのない、愛する人の声が聞こえた気がした。

『マスターっ!!』
「カリス?」
 意識を取り戻したアールに、カリスは安堵する。
『マスター。向こうが大物を出してきました』
「大物って……」
『バスター砲です』
「はあっ!? ちょっと待って、バスターって、あの、バスター?」
『はい、あのバスターです』
 頭を抱えて、アールは大きな大きなため息を零した。
「こんなところでぶっ放したら、この星が危険でしょ?」
 掠めるだけでも被害があるはずだ。ちらりと近くにある星を見た。
 綺麗な緑色の星。
 彼らが愛していた星を、失うわけにはいかない。

 がしゃりと、背中のランチャーを展開。引き伸ばした。
 と同時にチャージに入る。
 ミラーシェードの前に、もう一枚、黒いガードが下りてきた。
 アールの右腕に擬似トリガーが現れる。
「タイミングはそっちに任せる」
『プログラム・カウンターバスター起動。秒読み開始します』
 正確な数字がミラーシェードの中でも表示される。
 照準を合わせて、その時を待つ。
 背にした星を守るために。
 そして、その星を蹂躙した者達に、最後の裁きを与える。

 先に放ったのは、戦艦の方だった。
「ははは、これで終わりだ。馬鹿なやつよ。はーっはっはっ!!」
「閣下っ! 閣下、高熱反応あり! こっちに向かってます……こ、これは……ま、まさかそんなっ!」
 うろたえる部下にインクブスは一喝する。
「何をうろたえている。もう我々の勝利は目前……」
「敵が、敵がバスターを……撃ちました」
「な、なんだと、そんな馬鹿な! ギアでバスターなんぞ、撃てるはずが」
 インクブスの声は、返ってくるバスター砲でかき消された。
 巨大戦艦だけでなく、傍にいた3艘の戦艦までも巻き込んで。


「ふう、終わりましたね」
『危ないところでした』
「ごめん、ちょっとトリップしちゃった。久しぶりに乗ったからかな? 『リキッド』使ってないのに」
『マスターの精神によって左右されると、グランドマスターに言われたではありませんか』
「そういえば……親父がそんなこと言ってたな……」
 時空の歪みがゆっくりと、元に戻っていく。
 それを確認してから、アールは『カリス』を反転させた。
「さあ、帰ろうか。『みんな』が待ってる」
『はい。このまま転移しますね』
「よろしく」
 それを最後に、アールはその惑星から離れたのだった。

Re: アール・ブレイド ( No.25 )
日時: 2012/08/16 18:21
名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: 76WtbC5A)

エピローグ ◆辺境のバーの片隅で

 からんと、氷が解けた音が響いた。
 ここは辺境のとあるバー。
 眼鏡を掛けた青年と、いかつい体つきの青年が飲み明かしていた。
「その男、いいやつじゃないですか。先生」
「ちっとも良くないですよ、ザムダ」
 そういって、眼鏡をかけた先生はちびちびと酒に手を伸ばした。
「憎しみの連鎖は、そう断ち切れるものではありません。それに」
 ごくりと飲み干し、先生はグラスをテーブルに置いた。
「人を殺すことは良いことではありませんよ。たとえ悪人でも、です」
「けどさ、それだけぶっ殺したら、逆に誰が殺したかわかんねえんじゃないのか? まあ、あの事件があの『アール』が絡んでるって聞けば、まあ納得できるしな。アイツは色んな意味で規格外みてえなもんだしな」
「そうですね、私もそう思います。まあ……昔の話ですよ」
 先生は思わず、胸のロケットに手を伸ばした。蓋をあけて、中を見る。
 そこには、先生と若い金髪の女性、それに愛らしい赤ちゃんの写真が入っていた。
 ぱちんと閉めて、先生は。
「はあ……でも、ザムダに話したら、少し楽になったような気がします」
「だろうな、すっげー長い話につき合わされた俺の気持ちも分かって欲しいけどな」
「すみません、ちょっと飲みすぎました」
 くすくすと笑いあう二人の元に。
『臨時ニュースをお伝えします』
 傍にあったテレビから、映像が流れた。
『ミラノセイア地区にて、新たな指導者が誕生しました』
 その声と共に現れたのは。
「えっ!?」
「おいおい、まさか」
 先生とザムダが声を失う。
 赤毛の青年が、片腕を力強く掲げて、声援に応えている。その横には『ジョイ・イノセンテ』というテロップが流れていた。
『正直、どこまで出来るかわかりません。だけど、やれるところまでやりたい。俺に道を教えてくれた人や、俺に希望を託してくれた人達の為に』
 そういう彼の笑顔が眩しく映った。
「ザムダ」
「ん、何だ、先生」
「もうちょっと付き合ってもらえませんか? 先日、出稼ぎしたんで、懐は暖かいですし」
 そこには、暗い表情はなかった。先生はにこりと笑って、酒を誘う。
「おっ、もう少しやるか!! 俺ももうちょっとだけ、飲みてえと思ったんだ……あっと、その前に」
 ザムダは思い出したかのように、先生の前で両手を合わせて、ぺこぺこ頭を下げ始めた。
「先生、この通りだっ!! 俺の家内のオルゴール、直してくれねぇかっ!!」
「はあ? オルゴール?」
 突然の申し出に、先生も驚きを通り越して、呆れている。
「家内の大事なもんらしいんだ。それを知らずにこう、ばきんとやっちまってさ、動かなくなってしまってだな、その……ちょっと、な……」
 その困り果てた姿のザムダに、先生は。
「いいですよ」
「マジかっ!!」
「漢に二言はありませんよ」
「ありがたいっ!! 感謝するぜ、先生!! じゃあ、今日は祝いだ祝い酒だ!!」
 とたんに機嫌を良くするザムダに、先生は優しく瞳を細めた。
「後で持ってきてくださいね。ちゃんと直してあげますから」
「ああ、ああ、頼むぜ先生!! ついでに酒も!!」
「調子良すぎます」
 けれどと、先生は続けた。
「こういうのも、悪くはありませんね」
 二人の前に新たな酒が用意された。二人は笑い合い、そして、グラスの音を響かせる。
「今日という日に」
「「乾杯っ!!」」

Re: アール・ブレイド【完結済】 ( No.26 )
日時: 2012/08/21 15:55
名前: 秋桜 ◆SVvO/z.cC. (ID: uMmok.3B)

鑑定が終わりましたことをお知らせに参りました。

そして、個人的な感想を。
リンレイが死んでしまうシーンでは涙があふれました……
エピローグに出てきた先生が誰だったのか気になります!

Re: アール・ブレイド【完結済】 ( No.27 )
日時: 2012/08/21 18:11
名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: 76WtbC5A)

こちらにも感想、ありがとうございます♪
実は「先生」はプロローグにもいます。
先生の正体については……彼の持っているペンダントにヒントがあります。ふふふふ。
そして……何だか嬉しいです。あのシーンは、読者に泣いてもらおうと思って書きましたから!

鑑定もありがとうございました。
嬉しかったです!!


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