ダーク・ファンタジー小説

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神が導く学園生活
日時: 2022/09/25 12:31
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: SEvijNFF)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12800

 

  初めましての方は初めまして。こんにちはの方はいつも私の作品を見て下さりありがとうございます!

今回ファンタジー物に挑戦してみようと思いまして、このスレを立てました。しかし、いざ作品わ作ると私が書いてる既存の作品「裏の陰謀」と既視感があるように思えてしまいまして…… 難しいものですね(苦笑

〇小説大会2022・夏 ダークファンタジー板銀賞受賞。ありがとうございます。ありがとうございます。

さて前座はここで終わりまして注意書きです。

 ◤◢◤◢注意◤◢◤◢

○文才がありません。分かりにくい描写が多々あるため、その際は教えて下さると嬉しいです。

○グロ要素があるため苦手な方は閉じてください。

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【記録】


登場人物 生物紹介 >>2

世界の魔法と、国ランクと学園ランク、学年 >>5

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
【物語】

プロローグ >>1

【第一幕】
大きな秘密を抱えた4人の学園物語。

第一章 入学式編
>>3-10
第二章 ファミリア編
>>11-13
第三章 日常、コウ編
>>14-16
第四章 日常、剣編
>>17-19
第五章 ダンジョン編
>>20-31

Re: 神が導く学園生活 ( No.18 )
日時: 2022/02/28 19:35
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: AwgGnLCM)

午前6時。テラテラ様ががオレンジ色に滲み出ている頃。俺、赤魔 光は学校に併設されている特訓場へ向かっていた。
俺達が降格されてから毎日特訓場へ通い、4人で魔法、剣術、体術の特訓をしていた。

「アンタの髪。気持ち悪いのよ!」

どこまでも澄み、広範囲に響くような声。そこには赤髪に団子ツインテールの女の子と、白髪に髪先が水色のボブヘアの女の子がいた。

赤髪の子は...確か大貴族スカーレット家の娘じゃなかったか?名前は確か...アリス・スカーレット。横暴わがままお嬢様で有名である。
白髪に髪先が水色の女子は見慣れた姿の子。ラナだ。
ラナはスカーレットにタコ殴りにされている。要するに虐められているのだ。しかし、前のタミとラナの剣術の戦闘を見る限りラナはかなり運動神経がいいはずだが、やり返さないのだろうか?それかスカーレットの方が運動神経が良いと?
まあ、どちらにせよ俺が割り込んだらややこしい事になるんだよな。ラナには悪いがここは無視させてもらう。

「もうっ、何黙ってるのよ!」

そう言った瞬間スカーレットは手に炎を浮かばせた。あれは火魔法だろう。ラナは水系統使いだから大丈夫だろうけど...
俺は無視すると決意した癖にその様子を遠くから見ていた。

「参・業火!」

スカーレットが両手の炎を合わせ、ラナに放つ。
おいおい待て待て!それは火魔法初級の中でも1番威力がある魔法じゃねぇか!
その様子を俺は黙っていられなかった。

「参・業火!」

俺は1番魔素濃度が高い技を放つ。その魔法はスカーレットが放った魔法とぶつかり、宙に向かって飛んでいくと消えていった。
無視すると言ったくせに助けちまったじゃねぇか...
俺は呆れながらもスカーレットのことを睨みつける。

「邪魔が入ったと思ったら...また悪魔が出てきたわね。2人まとめて排除してあげる!参・業火!」

そういうと、スカーレットは手から大量の炎を俺に放つ。まるで滝のように流れてくる炎を見た俺は瞬時に唱えた。

「ロゥワ・ブレイズ」

俺が出せる限界の魔法。炎魔法だ。炎系統には灯、火、炎の3つの魔法があるが、炎魔法は威力が違うだけで他は火を出す魔法というほぼ同じ。光系統の闇と光や、水系統の水と氷のように威力ではなく魔法の種類が違うこともあるが、大体の魔法は威力順に分かれている。
見た限り彼女は火魔法までしか使えないようだからその上位互換である炎魔法のブレイズを放ってやった。といっても火魔法である「参・業火」は初級火魔法の中で最大の威力。ブレイズも威力が小さい順に「アン・ブレイズ」「ドゥ・ブレイズ」「ロゥワ・ブレイズ」があるが、「参・業火」は「ドゥ・ブレイズ」と同じほどの威力を発することが出来る。そのため「ロゥワ・ブレイズ」が最高限界の俺にとっては魔法の実力は近いが俺の方が1枚上手だ。
俺の思った通り、スカーレットの魔法は俺の魔法によって消え去ってしまう。スカーレットも俺と同じ事を思ったのか、どこからか取り出した木の剣を俺に振るってきた。

おいおい待て待て待て!剣術はずるいぞ!
俺は体力もやしのヒョロヒョロ男だから抵抗出来ない。いや、スカーレットの体力が俺より低かったら勝ち目はあるが...
俺は交わそうとバックステップを踏む。しかし脚力も無いため1メートルも飛べなかった。

「えいやっ!」

見後にスカーレットの剣は俺の脇腹に直撃する。
ダメだこれ。俺よりも運動神経高い奴だ。まずあんな重い木の剣を軽々ふえる時点で運動神経はかなり高いと分かったはずだ。何やってんだよ。俺。
そんな後悔と共に俺の意識は遠のいていった。

「ドゥ・オプスキュリテ!」

甲高く芯がある少年のような声が響き渡る。
すると俺の後ろから黒い球体がスカーレットにぶつかった。

「キャァッ!」

スカーレットは見事に吹っ飛び、壁にぶち当たる。中々の高威力な魔法だ。そしてこの声には聞き覚えがある。

「おい大丈夫なのか!」

後ろからクロが心配そうな声色で向かってくる。た、助かった...このままタコ殴りにされるかと思ったぜ。
クロは俺に向かって走ってくる...と思いきやクロは俺を避けてラナの方へ向かう。
うん。そうだよな。やっぱり俺よりラナの方が優先度は高いもんな。
俺は分かっていたはずなのに少しガッカリする。
ラナは幾つか殴られていたようで顔に痣が出来てたり引っかかれて血が出ている。
女子に...いや、性別の差別は良くないかもしれないが...女の子の顔に傷を付けるのはいただけない

「お前...」

クロの周りに魔素が集まり、フサフサの耳やしっぽ、牙が出てくる。
獣化してる...またランク付けの時のように暴れたら大変だ!しかし、周りの魔素がクロに集まってるため俺は魔素を取り込めない。体内の魔素が無い体質だとこういう時不便だな...タミを呼んでくるか?しかし、俺とタミとラナ相手でようやく抑えられたクロだ。タミを呼んでもどうにかなりそうにない。なら先生を呼ぶか...?
そう考えてるうちにクロは完全に獣化していた。

「ガルルルッ!」

クロは爪をたてスカーレットの顔に爪を立てる。次にスカーレットの胸ぐらを掴みぶっ飛ばして行った。
待て待て待て…!いくらラナの顔に傷が付けられたからってこれはやりすぎじゃないか!
しかし俺は攻撃が出来ない。ラナ...ラナは?!
俺は倒れているラナに近づく。口に手を当てると風を感じる。息はしている。

「んっんん...」

ラナは微かに目を開くと周りをちらっと見回す。すると獣化してるクロを見たらしく目を見開く。多分驚いてるんだろうな...

「ラナ。お前はここで待ってろ。俺は先生を呼んでくる。」

俺がそう言った瞬間クロとスカーレットの体が凍りついた。これは...氷魔法ロゥワ・グラソンか?無口頭でこの威力の魔法とは...中々凄い。なんせ獣化のクロを止めたぐらいだからな。

「ググ...グァァァ!」

前言撤回獣化クロは抑えられなかったようだ。クロは本格的に自我を失っているようでラナの魔法で動けないスカーレットに向かって爪を奮った。
俺は何かに背中を舌で舐められたような感覚を襲う。

「ロゥワ・ブレイズ!」

クロは止めきれなかったか!俺は冷や汗が伝う中一生懸命魔法を出そうと叫ぶが手から炎の『ほ』の字も出てこない。
このままじゃスカーレットが無事じゃない!いや、自分の脇腹に剣ぶっ叩かれた相手だが、やはり心配せざる負えない。

すると辺りから砂が漂ってくる。どんどんうっとおしいと思ってきたら、クロを中心に砂嵐が発生する。これは土魔法の砂嵐だ。一体誰が...
そう思ったら後ろの建物から黒い影が出てくる。黒髪に茶色メッシュ。黒と茶のオッドアイ。顔や腕に包帯が巻かれており、ヒラヒラと包帯が舞っている。剣術の授業で居たコク先生だ。
すると先生の手から黒い何かができたと思うとクロに直撃する。それはクロに直撃したあと、無数の小さい玉になり、天空へ待ったと思うとくらいバラのような形になって消えた。
たしか、闇魔法の初級、暗花だ。俺達アインスがギリギリ使えるか使えないかの魔法を無口頭で軽々と撃つところさすが先生と言うべきか...
それよりもクロだ!クロはどうなった...?
クロは獣化が収まった人間の姿になって目を回して居る。スカーレットは身体中ボロボロになって壁に座っている。けれどもラナの顔の傷の方が酷い。

「待ってろよ」

俺は何も言わずにラナの顔に手を当てる。すると黄色の光がラナの顔を照らす。その瞬間ラナの傷はみるみるうちに消え去った。

「コウ...これ...」

ラナは珍しく驚いた顔で俺を見る。

「別に、普通の魔法だ」

普通の子供はこれで騙されるんだが...これでもラナは世界一デカい学園の生徒だ。これで騙されないはず。しかし、黙っとけという意図は伝わっただろう。

「これはどういうことなんだ」

するとコク先生がいつの間にか俺たちの横に居た。スカーレットはお姫様抱っこをして、クロは肩に乗せている。クロだけ扱い雑くないか?
そう思ったのもつかの間俺は異変に気づく。スカーレットの傷が無くなっている。ラナも同じことに気づいたのか先生に問う。

「コク先生。地系統と光系統が使えるんですか?」

地系統と光系統。要するに土魔法と地魔法と闇魔法と光魔法を使えるということだ。2種類の系統を使える種族は2種類しか居ない。天使と悪魔だ。この先生は...一体?

「そうだな。でもラナと同じで天使でも悪魔でも無い。」

天使でも悪魔でも無い...?どういうことだ?他に2種類の魔法系統を使える種族はいねえぞ?それにラナの事を知ってるなんて...

「それよりも2人。詳しく事情聴取したいから職員室に来るように」

するとコク先生はジャンプする。その瞬間闇に覆われ気づくと居なくなっていた。この魔法は知らない。多分中級以上の魔法なのだろう。それよりも...

「ラナ。コク先生と知り合いなのか?」

「いいえ...。前の剣術...の授業で...初めてあったわ...」

ラナは事情は分からないが水系統と炎系統の魔法を使える。2種類魔法を使える種族はいるものの、光系統魔法+各個人に適した属性の魔法、だ。ラナが、使える魔法系統の組み合わせはおかしい。それを知ってるのは俺とクロとラナだけのはず... それよりもコク先生も2種類の魔法が使えるし組み合わせも天使と悪魔と合ってるはずなのに天使でも悪魔でも無い...?
分からない。いずれ分かるのか?

「コウ...行こ...」

ラナがボソッと呟く。そうだ職員室に呼ばれてたんだった。あまり行きたくはないが行くしかないか...
俺たちは諦めて職員室へ向かった。さあ、鬼が出るか蛇が出るか...

Re: 神が導く学園生活 ( No.19 )
日時: 2022/03/21 00:47
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: fqLv/Uya)

朝のクロ獣化事件から数時間後。俺らは放課後にいつものようにラナの机に集まっていた。
あの事件後、俺ら4人は職員室に呼び出され事情聴取をすることになった。しかし、教師陣は俺たちの話なんて目もくれずスカーレットの話ばっか信じた。その結果ラナの氷魔法が着いていたことが証拠となり「スカーレットの事を妬んだ俺らが一方的にいじめていた」ということになった。

「はぁぁぁ?!異議あり異議あり!」

事の経緯を軽く話すとタミは手を挙げ叫んだ。するとクラスメートがこちらに冷たい眼差しを送ってくるため俺らはタミを抑える。

「仕方ないだろ。弱小貴族出身より大貴族の方を信じるのが筋だ。」

俺は呆れながら言う。一応貴重なペット、牙狼族と人間のハーフのクロはスカーレットに近い権限を持っているが、弱小貴族出身2人を背負うとさすがに負けてしまったようだ。

「それだけ...じゃない」

ラナが珍しくボソッと呟く。それだけじゃない?どういうことだ?

「アリス・スカーレットはワガママで横暴なお嬢様で有名。それに反した物は物理でも権力でもなんでも使って相手を追い詰める。教師陣もそれに恐れてあえて私たちの話は聞かなかった。」

ラナにしては珍しく長文で答える。
身分以外にもそんな権力があるだなんて。俺は外の世界の大きさと自分の無力感に絶望した。

『私達一族は無力。外の世界に行ったとてなんらかわりはしないさ』

小さい頃、今は亡き初代に教えられた言葉。それでも、何か変えられるのではないかと淡い期待を抱いた俺。しかし結果は惨敗。自分の無力感にただ絶望するだけだった。

「なんだよこの理不尽…意味わかんねぇ」

俺は苦しみ、怒り、悲しみ。全ての負の感情をこれでもかと込めた一言を呟いた。皆は急に呟いた俺の言葉にギョッとする。なぜここでギョッとするのか疑問だが。

「コウって、悪魔…じゃないよね?」

タミが恐る恐る俺に聞く。あぁ。さっきの俺の呟いた様子が悪魔に見えたのか。

「違うに決まってるだろ。俺は人類だ。」

俺は当たり前だと言うようにタミに言う。

「だよねぇ」

タミはホッとする。そんなに悪魔は恐れられ、警戒されるものなのか。俺は改めて感じた。
『悪魔』
それは…恐ろしく、横暴で、汚い生き物。けれど、俺はそんな生物に同情せざる得なかった。

『悪魔だけ不公平だ。ガーデス様』

心の底から憎悪に満ちたその一言は誰にも届かないんだろうな。そう思いながらいつものラナ、クロ、タミの馬鹿馬鹿しい茶番を見ていた。

日常、剣編 ~完~

Re: 神が導く学園生活 ( No.20 )
日時: 2022/03/23 19:41
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: rKVc2nvw)

第五章 ダンジョン編

《コウ》

時が経つのは早いものでついついさっきまで入学式と思っていたのが嘘のようだった。俺は寮のベランダに立って月を見ていた。今は文の月。葉の月になると長期休みのためもうすぐ一学期が終わる。

「よぉ。コウ」

隣からクロが近づいてくる。ベランダは各部屋と繋がっており、自由に行き来でいるのだ。クロの部屋は分からないが、俺に声をかけたところ多分俺の部屋の近くに住んでいるのだろう。

「珍しいな。クロ単体で俺に話しかけてくるなんて。」

俺はちょっと皮肉を込めて言った。しかし、クロは華麗にスルーして、紙コップのコーヒー片手に俺の隣に立つ。
満月をバックに俺たちをくすぐるかのように吹く夜風、それにサラサラな黒髪に10歳とは思えない切れ長のクールな目。このクロは見た目だけならオール百億万点何だがな。性格が…勿体ない…

「何か失礼なこと考えてなかったか?」

「いや、何でも?」

クロは牙狼族のためか野生の勘がやけにいい。俺は余りクロに隠し事はしないようにしようと決めた。

「ふぅ…」

クロはそう言うと頭をブルンと動かす。何事かと思った俺の目の前にはしっぽと耳が生えていたクロが居た。何故急に獣化したのだろう?

「こっちの方が落ち着くんだ。いつもは抑えてるからな」

クロはズズッとコーヒーをすするとため息にも聞こえるセリフを吐き出す。それって俺の前だとリラックス出来るってことなのだろうか。そう思うとなんかこそばゆい。
数分。沈黙が続いた。所詮友人の友人の関係のため余り関わりはない。クロは自他ともに認めるHENTAIだが、残念ながら容姿は完璧でクラスの影の人気者。俺は悪魔のような見た目だからと嫌われ者になっている。
こんな真反対の俺らが話そうでなんて無理がある話だ。

「なんでクロはそんなラナが好きなんだ?」

別にずっと沈黙でも良かった。しかし、ふと思い出した疑問をクロに投げかける。クロは1口コーヒーを飲むと、ふぅと、息を着く。

「最初の授業ので、ラナがスライムを倒した時に惚れた。美しい白髪にくすんだ深く深い緋色の目。牙狼族は1度認めた相手には死ぬまで尽くす習性がある。それが関係してラナの事が好きなのかもな。」

クロは照れずに淡々と答える。コイツ本当にクロか?と思うほど落ち着いており、俺は驚きを隠せざるおえなかった。だって、今目の前にいるやつは毎日ラナラナ言ってるあのHENTAIだぜ?多分。素はこういうクールな性格だからモテるんだろうな。ラナの前も素なのだろうがあれは例外。
てかなんでこんな変態がモテるんだよちくしょう。
そんな中、俺はふと疑問が浮かんだ。

「じゃあ、牙狼族のハーフじゃなく、純血の人類だったらラナのことは好きじゃ無かったんじゃないか?」

愚問だった。その事に、今更気づいた。クロなら迷わず否定するだろう。そんなことは容易に考えられたのに、何故俺はこんな問いかけをしたんだ。

「…分からない。」

返ってきた言葉は意外にも迷いのあるように感じる言葉だった。
クロは牙狼族という特異を除いて、人類のままだったら今とは違う性格になっていたかもしれないと。そう語った。

「それに、ラナに対する気持ちも分からない…」

クロは飲み干した紙コップをグシャッと握りつぶした。これまた意外だった。ずっとラナには恋愛感情を抱いていると、勘違いをしていた。

恋愛れんあい寵愛ちょうあい親愛しんあい慈愛じあい恩愛おんあい敬愛けいあい?」

これまたクロは難しいことを考えるな。それか俺のめんどくさい性格が出てしまっているのか… とりあえず適当に返しておこう。

「異性が好きなら恋愛で決まってるんじゃないのか?」

なんとまあ10歳らしい考え方だと自分でも思う。けど、愛に答えなんて出さなくとも『好き』というだけでいいと思うんだがな。

「分からない…もし、俺がラナを慈愛として見ているのならば俺はラナのことを格下として見ているということになる。最低だ。じゃあ敬愛か?それは牙狼族の血のせいだ。人類の方の俺はラナのことは好きじゃないってことだ。」

うっわ。めんどくせぇ。俺はそんなに頭が良くないから哲学的なことを今ひとつ考えられない。好きなら好きで異性愛で良いのに。
まあ、クロが牙狼族ってことが自体をややこしくしてるんだろうな。せめてクロが純血の牙狼族なら…いやそしたら姿、形がまんま犬のようになってしまう。なら、純血の人類か。そしたら今のクロという人格が無くなるかもしれない。クロは牙狼族と人類のハーフであるが故にクロなのだ。なんか俺カッコイイこと考えたな。まあ話がズレそうだからクロには言わないが。
それより、俺はクロの発言で引っかかったことがあった。

「クロがラナを格下と見ていることを自分が許せないんだったら、クロはラナのことを格下とは見てないんじゃないか?」

「え?」

クロは俺の言葉に反応し、耳をピンッと立てた。感情がわかりやすいな。牙狼族は。

「だって、仮にラナを格下と見ているならば、クロがラナを格下と見ていることに対して『最低だ』なんて思わねぇだろ。少なくともクロがラナに抱いてる物は慈愛とは違うものだ。」

てか慈愛ってどういう意味だっけ。愛愛愛愛言いすぎてゲシュタルト崩壊してやがる。たしか下のものに対して優しくする事…だったか?ならクロがラナに格下格下言ってるのも理解できる。
それより、頭のいいクロならこんなこと直ぐに考えつくと思うがな。きっと、自分に自信が無かったのだろう。

「じゃあ、俺がラナに抱いてるものはなんだ?」

話が振り出しに戻る。いや、だから異性愛でいいんじゃないのかよ。こういう所をきっちりと線引きしたがるクロは真面目なんだろう。不真面目で適当な俺とは真反対だ。

「答えは今じゃなくても良いんじゃないか?」

俺は何気ないことを口に出す。事実今俺たちが考える内容にしては重すぎる。第一俺の頭がキャパオーバーしてしまいそうだ。俺はどうにかこの話を終えるために四苦八苦して考えていた。

「ふっ…なんだよその百面相」

クロが笑う。今の俺に笑う要素あったか?なんだか不服だが、この話が終わるのならば万々歳だ。

「笑うなよ…」

俺は照れくささを隠しきれていない言葉を発した。
そうして話がようやく落ち着いた瞬間。

『キャーー!』

誰かの悲鳴が聞こえた。セリフと声の高さからするに女子だろうが、ここは男性寮だ。女子の声がするはずがない。俺は顔を見合わせるとベランダから身を乗り出して下の方を見た。すると男性寮と女性寮の間の道に人だかりが出来ていた。
何か起きたらしい。

「行くか?」

クロがいつの間にか耳としっぽをしまって人だかりを指さして言う。俺は首を横に振る。

「いいや、面倒くさそうだから辞めとこう」

そういった瞬間、クロの部屋であろう所からクロのファミリアのロラが飛び出してきた。

「ん?どうしたんだ?ロラ?」

その瞬間。クロの顔がとろけた。凛々しい目つきは目尻がとろけ、一の字に固めていた口は半開きになっている。クロHENTAIフォームのご登場だ。さっきまでシリアスな話してた相手だとは思えない。
本当、こういうのを残念イケメンって言うんだろうな。

「キュー!キュゥッ!」

ロラは可愛い声を出しながらクロの袖を引っ張る。その方向はクロの部屋だった。

「なんだ腹が減ったのか?」

クロなら甘やかしてロラにエサ大量に与えてそうだよな。健康面は大丈夫なのだろうか。

「けどダメだぞ。お菓子は週に1回と決まってるだろ?」

クロはロラに『めっ』と言う。意外と健康面を気にしてるんだな。それにしてもキリッとしたクロを見た後にHENTAIクロを見るとなにか、悪い方のギャップ萌えで吐き気が襲う。

「キャウッ!」

ロラは首を振りながらクロを部屋に戻そうとする。流石は竜と言ったところか。牙狼族のハーフであるクロが踏ん張っても、クロは引きずられている。

「なんだなんだー?俺と遊びたいのか?」

完全にとろけきったクロの顔を見て引いている俺。ロラもこんなんが主なんて溜まったものじゃないだろう。少し同情するぜ。
ロラはクロの袖を引っ張りながら俺に視線を向ける。
なんだ?助けて欲しいのか?残念ながらそれは出来んぞ?
俺はそう思いながら2匹の様子を横目にベランダの外に目を向ける。
…外には騒ぎが起きていて、ロラはクロの部屋に連れていこうとしている。
なんだ?この騒ぎを見せたくないのか?でもそしたら俺も部屋に連れ戻されるだろう。なら、何してるんだ?ロラは。
すると俺の頭の中に電流が走った。

「なあ。ロラはあの騒ぎに連れていきたいんじゃないか?」

俺が言うとクロとロラの動きが止まり、ロラが俺に近づくと、頭上を回りながら『キャウキャウ』と吠えている。どうやら正解のようだ。

「…なんで分かるんだよ」

クロは不服そうな表情を浮かべる。俺も分からないけど、何となく分かったんだよな。

「まあ、とりあえずあの騒ぎに行こう。」

俺がそう言うとロラは先にクロの部屋経由で騒ぎの所へ向かう。
俺達も慌ててロラの後を追った。

Re: 神が導く学園生活 ( No.21 )
日時: 2022/03/26 02:28
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: te9LMWl4)

人混みをかき分けるとそこには馬車があり、黒服の大人達。その中から一際目立つ人物がいた。

「やあ、諸君。もう夜じゃないか。部屋に帰らないのかい?」

そう言い、ニッコリと笑う人物。その一言で男子も女子も、ファミリアでさえ黄色い悲鳴をあげている。
髪色が紫と茶色の半々で分かれていて、目も茶と紫のオッドアイ。制服であるコートの下にはワイシャツでなく、紫の学ランを来ている。
顔立ちもよく、整っており、目は比較的丸く、鼻筋は通っており、口元はいつでも笑みを絶やしていない。
同性から見る俺でもわかる。イケメンだ。なんでこの学園はイケメンが多いんだ?
あ、それよりも何故こんなに人が集まっているのだろう。

「あ、クロコウ!2人も来てたんだね!」

聞きなれた明るい声。そこにはラナとタミが立っていた。2人ともリラックスしていたのか寝巻きの上にカーディガンを来ている。The女子という感じだ。

「ラナ!」

そうクロが叫ぶとすぐ様ラナの後ろのポジションに立つ。いつもそこに立っており、ラナを立たせている上にボディーガードもしている。意外と頭良いんだよなあいつ…
それより、俺も3人の元へ向かった。

「イケメンだよねバルタザール様…」

タミの目がハート型になる。いや、実際はなってないのだが、このとろけた顔はハート型の目をしてると表現せざる得ない。比喩だ比喩。
クロほどでは無いがタミの表情がとろけるほどの人物って何者なんだ…

「あの人誰?」

ラナがいつもの如くオブラートに包んでない言葉を発する。ラナって、何にも興味無さそうだが一体何に興味あるんだよ…

「バルタザール様!バルタザール・クープラン様だよ?!知らないの?!」

「「知らない」」

俺とラナの声が被った。俺もオブラートに包めてない所この人物に興味無いんだな。

「あー確かフィーア(4学年)のバルタザール先輩だっけ。」

「クロも知ってるのか?!」

「そりゃもちろん。逆に知らない人は居ないぞ。」

クロが涼しい顔で答える。あぁ、俺友達…というか親友がこの3人しかいないから情報網が薄いんだわ。ラナも見たところ俺達意外と関わらない…というか関われないから知らなかったんだろうな。対して2人はクラスの人気者。情報網はそんじょそこらとは比にならない。

「バルタザール・クープラン様。この学園の数少ない天使の1人で、身分的にも国の上から数えたら早いほど高い。性格も本当に非の打ち所がない完璧天使様だよ!」

タミが興奮気味に話すとぽっけから何かの本を取り出す。これは空間魔法の応用で作られた異空間ぽっけだ。正式名称は無いため皆呼び方が異なる。これ結構作るのも大変だし、入手困難なはずなのだが…やはりエルフは身分が高いため希少な道具も持っているというのか…
それより本の中身が気になるぞ?

「ほら!これこれ!」

タミが指したページを見ると、俺達3人は軽く引いた。
そこにはバルタザール先輩の写真が集まってる。俺とラナは驚きすぎて声が出なかった。しかし、クロは口を開いた。

「なんだこれ…盗撮でもしたのか?」

「違うよ!バルタザール様公式の写真集だよ!」

そんなものがあるのか…
するとタミは他ページも見せてくれる。そこには田舎者の俺でも知ってる人気者の人物や、芸子等が居た。

「なるほど。タミはアイドルオタクって訳か…」

クロが呟く。あいどるおたく…ってなんだ?

「そうそう!私美男美女の顔面を拝めるのが好きで…ぐへへへへ」

気持ち悪い。クロといい勝負してるんじゃないか?
俺らは3人で一通り本を見てみる。確かに美男美女の写真しか載ってない。ありすぎて盗撮とかしてないよな…?と不安になる。

「それよりあいどるおたくってなんだ?」

俺が空気に飲まれて言えなかった事を聞く。

「アイドル。は歌ったり踊ったりして人を楽しませる職業のことで、オタクは特定の物が好きすぎる人のことを指す。」

ラナが俺の質問に丁寧に答えてくれる。田舎者過ぎて今まで知らなかったが、確かに俺の里にも似たような職業があったな。芸子っていう人を楽しませるものが。
しかしまあ、気持ち悪い。

「昔はオタクってだけでも非難を受けてたけど、最近はそれが一般化されてて当たり前に近い事なんだよ!」

タミが自分の名誉挽回のためか必死でそう説明する。

「いや、そうなんだがな…こんなに人に固執する人はあまり見たことがないから驚いたというか…」

「それクロが言うのか?」

俺は面白半分でクロをからかってみた。いや、でも実際その通りだろ?ラナに固執しすぎてるクロがこんなこと言うなんてブーメランこの上ない。

「あ"?」

「なんでもないです。」

クロに魔素が集まり始め獣化しかけてる事を悟り俺はすぐ口を閉じた。
クロが獣化すると俺が魔素を取り込めないようになって、敵いっこないからな。

「は、話が一区切り着いた所で話を戻そう。この人だかりは何なんだ?」

俺は逃げるように3人に聞く。クロは不服そうだが、ここで暴れてもらっては困るためここは逃げさせて貰う。

「バルタザール様を1目見ようと低学年が集まってるんだよ。バルタザール様は高学年。低学年じゃ普段お目にかかれないからね。」

タミが人差し指を空に向けながら説明する。あぁ、なるほど。人気者を人目見ようとするギャラリーの集まりだったってことか。それなのに何故ロラはここに連れてこようとしたのだろう?バルタザール先輩を見せたかったのか?俺達男だし片方はラナ・コンプレックス。訳してラナコンのHENTAIだぞ?需要は地の底に着いている。
まああんまり見かけられないならラッキー程度に思っておこう。
すると俺達の前に赤いシートが引かれた。その先は男性寮の入口がある。俺達の4人はそのシートを踏まないように道を開ける。

「さぁ!バルタザールのお通りだ!しかと目に焼き付けるのだよ子羊共!」

天使…か。初めて見たけどこんなに容姿も声もスタイルも完璧なのか?人類に重宝されてるのも頷けるが…腑に落ちない。

「キャー!バルタザール様がお通りになる道の最前列に並べた!もう死んでもいい…」

「いや、死んだらダメだろ」

タミは甲高い悲鳴に近い声をあげて両手を上げる。それに対して俺は冷静にツッコミを入れた。こんなどうでもいいことで死なれたらこまるぞ…

「おぉ。アインスの子羊共…クロとタミだね。」

最前列でタミが全力アピールをしていたことが功を奏しバルタザール先輩に声をかけられる。

「わっ、私達のこと知ってるんですか!」

「あぁ。もちろんだとも。アインスで1番人気者の上に成績もいいと、他の学年まで伝わっているよ。」

するとバルタザール先輩がウインクをする。それに対してタミが更に甲高い悲鳴を上げる。
うるさいうるさい。俺らの鼓膜を破る気か。

「そして…君達は…」

バルタザール先輩が俺とラナに声をかけられる。俺たちは逆に悪名高いからな…悪い意味で知ってるのかも…

「あぁ、人間だと思ったらただのスライムの糞では無いか。ハッハッハ!ゴミクズの分際で俺様を笑わせられるとは。予想外だったよ。」

その瞬間。辺りが静まり返る。
…え、俺ら今罵倒され…た?
なんでだ?俺は理解が追いつけずにいた。ラナ…は言うまでもない。無表情である。

すると遅れて他の生徒も笑い始める。それはまるで、俺とラナだけ別世界にいるような感覚だった。

「いや、何故スライムの糞である君たちがこの高貴で美しい学園に居るのかな?糞は糞らしく土にかえるのが君達のためだと思うよ?それに世界一の学園の生徒である私達も穢れてしまう。分かるかい?」

こいつ…天使だからって、なんで俺達を罵倒するんだよ…!
けど俺はそこら辺の陰キャ。周りの圧力に負け何も言えなかった。それに半泣きになっていた。

「おやおや、糞が水を流しているよ?汚らしいから水洗便所に自ら突っ込んでくれないか?」

なんで何もしてないのに急に先輩に罵倒されて他の生徒から笑われなきゃ何ねぇんだよ。

「ドゥ・オプスキュリテ」

一番最初に抗議したのは…クロだった。しかも実力行使で。
クロの顔はお茶の間にお見せできないような顔をしてる上に耳やしっぽまで生えている。
しかしクロの魔法はバルタザールの杖によってかき消されていた。
これは、ファミリア召喚の際にチェック先生もやっていた闇魔法?

「俺様は天使だ。光魔法、地魔法専門だが、闇魔法も中級までなら使える。黒の子羊。君の魔法は『アインスにしては』中々だが、俺様には一切効かない。」

バルタザール先輩はクロを諭すように言う。流石は高学年のフィーア。レベルが違う。
クロも魔法では対抗出来ないと踏んだのだろう。魔素を集めないようになった。

「それにしても黒の子羊よ。何故悪魔の肩なんて持つ?悪魔は滅ぶべき存在だ。高貴な牙狼族のハーフである君が肩を持つ必要なんてない。」

「うるさい」

バルタザール先輩の言葉は更にクロの怒りのボルテージを上げていく。クロは魔法は使えないと分かっているのか拳でバルタザールを殴ろうとするが軽々と受け止められる。

「おっと驚いた。筋力だけはフィーア以上の力を有してるじゃないか。天使の俺様でないと受け止められないな。」

いちいちカッコつけるのが腹立つ。けど魔法しか使えない俺ではこの人には歯が立たないだろう。物理でもクロが敵わない相手なのにひょろひょろもやしが勝てるとは到底思えない。

「クロ、タミ。2人は特別だ。高貴で美しい存在なんだ。悪魔の傍でなく、我ら生徒会に来ないかい?」

ここで生徒会のスカウトが来る。生徒会…確かシステムが複雑な学園の組織だったよな。
各学年に生徒会が10人いて、その中からリーダーを決める。そのリーダーの中から学園を運営する仕事につく人が選ばれるのだ。生徒会メンバーを選べるのは運営の仕事に着けてるトップのみ。要するにバルタザール先輩は生徒会のトップについているのだろう。そしてクロとタミは生徒会に選ばれた。
流石に一番下の学年のアインスが運営につくのは難しいが、生徒会一員として学園都市の見回りで忙しくなり、俺らと顔を合わせられなくなるだろう。
それが狙いか…?

「冗談じゃない。ラナから離れるなんて考えられないな。」

クロらしい。しかし、学園の地位を手放したことはでかい。生徒会に入ると卒業した後の職の確保や学園都市からの待遇が良くなるなどの高待遇の上に地位を得られるのだが… さすがクロ。揺るがない。

「なら、今ここで2人を殺すしかないわけだ。悪魔は見過ごせない。」

待て待て待て!俺達は世界一の学園都市にいる身だ!悪魔なわけないだろう!と言いたかったが俺は驚き過ぎて口をパクパクする他なかった。
ラナは無表情。おい、流石にここまで来たら何かリアクション取れよ!

「ま、待ってください…!2人はこの世界一の学園にいる身です!悪魔なわけ無いじゃないですか!それに…2人がもし悪魔出なかったら。バルタザール様は殺人罪で問われることになってしまいますー」

今まで黙っていたタミが焦り出す。そして俺の言いたかったことを言ってくれた。嬉しいことだが、好きな人相手にそんな対抗してもいいのか?

「ふむ。そうだな。赤の子羊の見た目が悪魔のように醜いからと言って悪魔と決めつけるのは良くない。考えを改めよう。赤の子羊。すまなかった。」

すまなかったと言いながら頭は下げないんだな。無駄にプライドが高いことで。俺はムスッとした顔でバルタザール先輩を見上げる。

「しかし、そこの異様な物は別だ。白髪に毛先が水色。緋色の目をしている。その物だ。明らかに人類でない。そしてガーデスという最恐の悪魔に酷似している。ここで処すべきだ。」

「っ…!」

標的が俺からラナに変わる。ラナは無表情のままだが、声にならない声を出した。もちろんそれをクロが許すわけがなく…

「ラナを殺すなら俺を殺せ。」

「それは出来ない。黒の子羊を生徒会に入れるために異端物を排除するのだから。黒の子羊を殺したら意味が無いじゃないか?」

バルタザール先輩は考えを曲げない。このままでは冗談抜きでラナが殺されてしまう…!仮にラナが悪魔でなくても『天使だから』という理由で許されるだろう。要するにバルタザール先輩がラナを殺すデメリットは無いということだ。

「すまないが異端物。君が生まれたのは間違いだ。嬲り殺してやろう。安心しろ、天使の攻撃の精度は伊達じゃない。異端物が苦しみながら消えされる程の力加減はできる。」

こいつ…!ラナを殺す上に拷問もするつもりか?!なんで…なんでこんな悪魔には悪待遇なんだよ…!それにラナが悪魔とは決まったわけじゃない!

「待て!悪魔ガーデスは白髪に『髪先は赤色』の筈だろ!ラナの『髪先は水色』じゃないか!」

ようやく声が出た。喉に詰まってた何かが一気に溢れ出てきた。ラナは少ない時間だったが、箒の件だったり、クロが獣化した件だったり、俺たちを助けてくれた。悪いやつのはずがない!

「そうだね。確かに異端物の髪先は赤色でない。しかし、異端物なのは、ガーデスに似ているのは変わりないだろう。」

その通りだが…そんな偏見だけで消える命って…ラナが可哀想じゃないか…!俺も感情が高ぶり体から僅かに炎が溢れだしてくる。しかし、魔法は彼には効かない。だから打てないのだ。残念ながら今の俺にはラナを助けられる程の力がない。それが感情を更に高ぶらせた。
クロはさっきの言葉で感情のリミッターが外れたのか、完全に獣化する。
こんな大勢の中獣化するのは危なくないか?!
クロが獣化した瞬間。俺から溢れ出た炎が一気に引っ込んだ。

「グァァァァッ!」

完全に獣化し、理性を失ったクロはバルタザール先輩に襲いかかる。身体中から毛が生え、制服は破れ、クロの雄叫びが辺りを襲う。アインスである俺らは足がすくみ、腰を抜かすものもいた。それで俺ら5人の周りには半径数十メートルもの空間ができる。
しかし、バルタザール先輩は落ち着いている。先輩はくるりと杖を回すと黒色のボールがクロを襲った。
あれはドゥ・オプスキュリテじゃないか?いや、俺らが見慣れてるオプスキュリテと全く違う…!速さ、精度、魔素濃度何もかもが。

「グアッ!ガァァッ!」

クロはバルタザール先輩の魔法一撃で見事ノックダウンし、獣化も溶ける。
嘘だろ…?あのクロ完全獣化体が一撃で…しかも無口頭魔法でやられた…?

「ラ…ナ…」

しかしクロも執念深い。ノックアウトされてもなお、ラナを守ろうとする。

「少し黒の子羊には静かにしてもらおう。」

するとまたバルタザール先輩が杖を回す。すると次は地面から鋭利な岩が出てきて、クロを拘束する。

「あ…あっ…あぁ…」

最初はクロも抵抗しようとするが全く動けないことを悟ると次は絶望する。ノックダウンされたはずのクロから魔素が溢れ出ており、かなり感情的になってるのが分かる。

「赤いのと黄色い子羊。止めなくていいのか?」

バルタザール先輩がラナに近づく途中。俺らに声をかける。

「…俺らじゃ…敵わない…」

俺は涙を流し、溢れ出そうな声を押し殺しながらそういう。

「…ラナは親友です。守りたい。守ってあげたい…けど。私じゃ到底バルタザール様には敵いません。」

タミは下を向いてそう言った。けど俺には分かった。タミはバルタザール先輩に敵わないと思うと同時にラナが悪魔であることを恐れているのだ。悪魔なら殺さなければならない。それが外の世界の常識のようで、タミはなかなかそれが拭いきれないのだろう。ラナコンのクロでさえ、ファミリア召喚の時、チェック先生に攻撃するのを躊躇っていたからな。

「そうか。素直でよろしい。さて異端物。最期の言葉ぐらい聞き届けてやろう。」

バルタザール先輩は情けをかけているのかラナにそう言った。悪魔と思われるラナに情けをかける辺り、いい人ではあるのだろうが…今やろうとしていることが残酷極まりないが。

「…」

ラナはまだ黙りこくっている。恐怖で言葉が出ないのだろうか…俺はただ、ラナが死んだ後幸せになれるよう願うしか無かった。

Re: 神が導く学園生活 ( No.22 )
日時: 2022/03/26 17:13
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 9/mZECQN)

「さて、始めようか。」

バルタザール先輩は杖を軽く振るう。するとおどろおどろしい闇の塊がゆっくりとラナの方へ向かう。俺はこれが何だかは分からない。しかし、その魔法がクロをおかしくした。

「ああ…あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!!」

その叫び声はその場にいた全員を恐怖させた。バルタザール先輩をもだ。唯の叫び声だ。しかし、その声で、俺らもいかれてしまう程感情がこもっていた。だが、魔法に感情は伝わらない。無慈悲にも魔法はじりじりとラナに近づく。ここでラナが動いた。何かをその魔法の中にいれたのだ。その何かは…スライムだった。

「縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ょ勧縺代※蜉ゥ縺代※縺薙m縺励※縺医∴!!!!」

スライムは本来声などださない。しかしこの瞬間金属音のようなスライムの叫び声が響いた。俺はそこでようやく気づいた。この魔法は唯死を与えるだけの魔法ではない。これは…

「おっと。アインスだからと油断してしまった。しかしこれは魂の死を与える魔法。深淵魔法だ。次あたったらもう明日は無い。魂は砕け散り異端物そのものが無くなる。」

背筋が氷魔法並に冷たくなった。そんな残酷な魔法を、何の罪もないラナにつかうのか?残虐非道この上ない。
またバルタザール先輩は杖を振るう。しかしこの魔法の速度は遅い。ラナも同じことを思ったようでかわそうと動き出す。

「おっと、させないよ?」

バルタザールがまた杖を振るう。するとラナの体にクロにかけた魔法と似たような拘束魔法がまとまりつき、ラナの自由を奪う。これでラナはもう動けない。それはラナが殺されずに済むかもしれないという俺の希望も奪った。

なにもやれなかった。ラナ…ラ…ナ…


バキッ

なにかが折れる音がした。ラナが拘束を解いたのだ。

「先輩には悪いけど。ここで消える訳にはいきません。」

ラナがようやく口を開いた。するとラナの手に魔素がたまっていく。そして、その魔素をバルタザール先輩にぶつけた。バルタザール先輩は杖で先ほどのように魔法をかき消そうとする。しかし…

バチっ

「なっ!」

ラナとバルタザール先輩の間で魔素が暴発した。

「参・氷塊」

その隙をラナは見逃さなかった。ラナが呟く。氷魔法はラナの得意分野だ。そのため普段口頭魔法を使わない。しかし今回は口頭魔術を使った。要するにいつもより本気度が上がっているということだ。
バルタザール先輩は一瞬怯むが、俺達を黙らせてきた闇魔法でラナの攻撃を消そう…とするが。

バチンッ!

「なっ!んで…!」

バルタザール先輩が驚く。無理もない。クロの攻撃でさえ防いだ魔法は、爆発して使えない。その魔法を無視して氷塊はバルタザール先輩を襲う。

「ストーンエッジ!」

バルタザール先輩が叫ぶと無数の尖った岩が地面から生えて、バルタザール先輩の身を守る。

「ほう。このバルタザール様を本気にさせるとは。異端物も中々やるようだが殺すことには変わりない。」

バルタザール先輩はそう言うと果物ナイフを取り出した。何を…する気だ?

「悔しいが俺様は異端物に魔法では敵わないようだが、力業だと話は違うだろ?これで目をひん剥いて皮を剥いで無様な姿を晒させてやる。」

果物ナイフを持ったバルタザール先輩は、ラナに近づくと…ついた。が、ラナは間一髪で避ける。しかし、バルタザール先輩もつくのを辞めない。何回も何回もつくが、ラナは躱すか受け流すかで全然当たらない。更にラナは魔法をちょいちょい発動させバルタザール先輩の動きを鈍らせる。
アインスとは思えない動きだ…ラナってこんな強かったのか?
いや…

「捕まえました…」

「っ〜!」

筋量ではバルタザール先輩が圧倒的に多かった。更に魔法防御も硬い。それは制服のコートが関係していると思うのだが。
ラナは一瞬怯み、最後に諦めたような雰囲気を出す。
諦めるなよ…お前は…強いんだから…!

「さあ、ショータイムだ。」

バルタザール先輩のナイフがラナの目に刺さる…

「参・雷撃!」

女子の中では甲高い声の方の聞きなれた声がきこえる。
すると空から雷撃がふり、バルタザール先輩に直撃した。バルタザール先輩は学校製の魔法防御特化の制服のコートを着ていたため助かってるが、アインスの生徒に打ったら死んでる威力だぞ?!
声の主を見ると…辺りにバチバチっと電流が走っている。かなり感情が高ぶっているのだろう。半泣きになってこちらを見ている。

「ラナは…悪魔かもしれない。けどっ、何もしてないラナが死ぬ事なんてない!」

タミがようやく戦闘態勢になる。3対1。としても、相手には魔法を消し去る魔法が使える。勝てるかどうか…

「ははっ!これだけの攻撃で俺様が止められると…」


「よくやった。カタバミ・エルフ・ガベーラ。」

すると静かで俺達を諭すようなそれでも嫌じゃない声が聞こえる。この声は…

「「「チェック先生…!」」」

俺とタミとクロの声が重なった。チェック先生は悪魔の象徴であるコッコ(コウモリ)のような羽を背中からだし、ラナとバルタザール先輩の間に立っている。

「チェック・トイフェル…いつもいつも俺様の邪魔をしやがって。」

「邪魔じゃない。教師として生徒を平等に接しているだけだ。」

「ぬかせっ…【ホワイトホール!】」

聞いたことの無い魔法だ。バルタザール先輩が叫ぶと杖を中心に白い光が渦巻いた何かが大きくなり、中から尋常でない魔素が溢れ出てくる。俺達はそれに吹き飛ばされそうになりながらも必死で踏ん張っていた。

「【ブラックホール】」

チェック先生は軽く、そう言った。その瞬間。一瞬でホワイトホールはチェック先生のブラックホールに飲まれてしまった。チェック先生はホワイトホールを小さくすると片手でしまってしまった。

「俺とお前の歴然の差。諦めろ。あと、お前後で生徒指導室来いよ。あと、悪魔虐めも程々にな。こいつらは悪魔である俺が保証する。『人類』だ。」

チェック先生はそう言うと、去ってしまった。嵐のような人だったが、俺達を助けてくれた。さすが悪魔。人類の常識なんて通用しない。いい意味でも悪い意味でも。

「…今回はチェック・トイフェルに免じて目を瞑ってやる。」

バルタザール先輩はそう言うとレッドカーペットの上を歩いていってしまった。
その瞬間、クロの拘束も溶けた。

「ラナっ、ラナ!」

クロはバルタザール先輩にボコボコにされたと思えないほどの速さでラナに駆け寄ると、頬をつねった。

「あぁ、生きてる。よかった。よかった!」

するとクロは次にラナを抱きしめる。流石にこんなことがあった後だろ。ラナだって何か感情が…無いな。全くない無表情だ。

「ラナ。怖くなかったの?」

タミが心底不思議な顔で言う。当事者でない俺らでさえ腰抜けるほど怖い出来事だったのにな。

「怖い?なんで。」

ラナは何も感じていなかったようだ。まあ、ラナらしいというかなんというか…まあ、そこがラナのいい所でもあるか。悪くいうと危機感がないって事になるがな。

「ラナ…良かった…良かった…」

さっきから良かったしか連呼してない奴が1名いる。もちろんクロである。一体ラナの何がクロをこんな事にさせるんだ?確かにラナは人類離れしてるけれど…そこを好きになるとかどれほど命知らず何だよ。

「…クロは何で私が好きなの。」

ラナがクロに問いかける。そりゃそうだよな。こんな親が死にかけたような反応されたら誰でもそうなるわ。

「…答えは今じゃなくても良いんじゃないか?」

クロは闇属性とは思えない程の満面の笑みをラナに向ける。こいつ…俺のセリフパクリやがった…


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