二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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<稲妻11> 初夏夜空 <リク受付中>
日時: 2011/07/02 14:14
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: qJY1uOvM)
参照: http://to-a.ru/aMtdrQ/img1

 ■ロックすることにしました。立て直す予定なのでその時はよろしくです!>>226


 +作者より
  クリックしてくれた皆様、初めましてorこんにちは、作者の桃李トウリです。詳しくは、>>27でどうぞ。
  このスレでは、主にイナズマイレブンの夢小説を扱っていきます。長編や短編、いろいろな夢が置いてあります。たまにNLなど。
  暇つぶしのお供になれれば、嬉しいです。コメ、感想、お待ちしております。
  参照1900突破、本当にありがとうございます!

 +大事なお話
  01.すっごい不定期更新。でも早いなんて事は、絶対に有り得な(ry
  02.作者は、"王道"や"ありきたり"が大好物です。驚きや刺激を求める人は、『戻る』にLet'Go!
  03.読んでいて哀れになる程の駄文。同情するなら文才をくれ!←
  04.荒し&悪口コメは駄目!!だって下手だなんて解りきってるもの♪(タヒ
  05.スレタイは、気に入るものが見つかるまでコロコロ変更。突っ込んだらアウトーっ!!
  06.一行コメはご遠慮下さい。

 ≫お知らせとか
  01.プロローグ>>4を少し変更しました。
  02.自分のための情報>>108
  03.リクエスト受付開始しました>>170…4/4
  04.新長編ねたうp>>201

 大事なお話を把握した&大丈夫というお客様はどうぞ!

*。+*。+*。+

  +長編一覧 夢が主です。

 【夜桜よ、咲き誇れ】>>212
 ——…夜桜中学サッカー部。
 そこは、かつて"FF、もう一つの優勝候補"と謳われた幻のサッカー部だった。
 そんなサッカー部のキャプテンと雷門の、『夜桜のストライカー』を巡る長いお話。


 【剣士と少女と江戸の町っ!!】>>160
 ——時は、江戸時代にまで遡る。
 舞台は、人で栄えた江戸の町。そこへやってきたのは、少女剣士と連れの娘。彼女らとそこに住む愉快な仲間達との長いお話。イナズマキャラが江戸っ子になって登場!!
 江戸時代をベースに進めていきますが、実際とはかなり違うので覚悟してください←


  +中編一覧 だらだら続く短編置き場

◇The tears which I forgot
   Ⅰ〜The words pierce him>>151
   Ⅱ〜The boy who was pushed>>164
   Ⅲ〜I cried in secret>>
 (帝国のお二人さんのgdgd話。シリアス風味でよくわからない)

◆Coward search >>162-163 >>165 【end】
 (オリさんとブレイク組が下僕になってるよ、みたいなw王国物?ツボった)

◇バッドエンドの塗り替え方>>173 >>174
 (ちょっとよくわからない。出演者もよくわからない←)

◆粉雪はらり。
    01*巻雲もくり>>175  02*粉雪はらり>>
    03*雨粒ぽたり>>     04*春風ふわり>>
 (珠→吹桃/白恋/シリアス、微甘、微ほのぼの/自己満足!)

◇見えない症候群/四編製……かな?
 —司令塔少年編—>>181 —偽愛少女編—>>182


  +短編一覧 夢とNLなどを取り扱っています。

◆スレ作成日〜2011/04/21までの更新分(21コ)>>179-
○夢幻泡影>>180 (風→円豪っぽくなった/歪んだ風丸さんが書きたかっただけ)
●さよならラヴソング>>184 (秋ちゃんが怖い)
○ありがとう!( 、そしてサヨナラ ) (円秋なのに円冬。恋を知らない円堂さんが秋ちゃんを振り回すイメージ)
●流星ヴォーイと葵ちゃん。>>190 (どう考えてもおふざけw)
○涼風が吹かなかったとある夏休み>>191 (涼野さんだよ☆←)
●涙の味がした、>>193 (※練習文)
○題名未定>>194 (バンレアだよっ!)
●ブレイク!>>202 (ブレイク組+葵/短いしほぼ会話文)
○その目は何も映さない、>>206 私には、きみが眩しい


  +企画小説
●キャラソン組×夢主企画>>219


  +リクエスト小説!
○愛されお兄様! 【鬼道さんと未来ちゃん/ほのぼのを目指したのにギャグ/しずく様リク】>>186
●私と彼女と、恋のお話 【秋ちゃんと桃花/ほのぼのだよ!←/しずく様リク】>>197-198
○茜色カルテット 【鬼道さんと弥生ちゃん/甘/海穹様リク】>>200


  +頂いたお題

〜ひふみ。様より〜>>176 消化中。。。


  +めも。
 【Platonic love】>>吹雪×桃花(→)←アツヤ
 【春色前線】??×春奈ちゃん
 【初夏夜空】??×夏未さん
 【夕闇秋景】??×秋ちゃん
 【粉雪幻冬】??×冬花さん

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 なんて綺麗な眺めなんでしょうか! ( No.150 )
日時: 2011/03/13 12:30
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: uXqk6hqo)



 心底嬉しそうな笑み。彼女が、素直に自分の気持ちを表情に出すなんてことは、滅多に無い。いこーる、今の状況はものすごく珍しいことになる。が、できればもっと違う時に出くわしたかった。そうなれば、俺も一緒に二人で笑い合えたかもしれないのに。

「う〜ん、我ながら完璧なセッティング」

 うっとりと、何かに酔い痴れてしまったかのように呟いた小鳥遊。ちょっと待て。何がセッティングだ、俺は舞台道具か! 思いっきり罵ってやりたかったが、口が上手く動かない。どんなに喉の奥から声を絞り出しても、自分の耳に届くのは、掠れた叫び声だけだった。
 そんなことを考えている間にも、目の前の小鳥遊はどんどんぼやけていく。じんじんと疼く右肩に、無意識に左手を置く。かかった時間は、六秒弱。左腕も、軋むように痛い。ふと気付くと、身体中が言葉にならない痛さに犯されていた。肩に置いた指に、生暖かい液体が絡む。気持ち悪いほどねっとりしていて、今にでもふき取りたかったが、もう何も感じなかった。この状況で身体を清潔にして、何になる? 素直な疑問符でさえ、目の前のアイツには届かない。

「ね……、これでずーっと一緒!」

 にっこりと微笑む彼女を可愛いと思ってしまったのもつかの間、青白く変色した指を伝ってつうと流れてきた紅い"ソレ"を見て、そんな暢気なことを考えていられなくなった。ちょっと、ヤバイのかもしれない。俺は多分、知らず知らずのうちに死の瀬戸際に立たされていたのだ。それでも、身体中を巡る鼓動が、まだ生きてるっつう証拠っぽい。
 最高の眺めだわ、とうなだれる俺に向かって囁いた小鳥遊。それは、俺を散々痛めつけ、傷つけたことによって今まで溜まっていた憎悪が晴らされたからなのか。はたまた、何一つ抵抗しない俺を"手に入れた"と勘違いしているのか——

「……大好きだよ、明王」

 こうなってしまっては、どうでもいい話なのだった。



 *。+

初めて書いてみた二人でした。題名は現実逃避Pの「ワールズエンド・ダンスホール」より引用させて頂きました。

つくづく自分は、流血表現苦手だなあと思います。それと、忍ちゃんの苗字が変換できないことにビックリ。ジャンルは……よくわかんない(ぇ
ネタが尽きつつあるこの頃……うーん、どうしよう? 打開策模索中です。

なぬ……参照1000突破、だと?!
おお、この中で何人が間違えてクリックしたのか気になrあ、ストップ帰らないで。
ほんっとうにありがとうございます! 記念作品が書きたいけどどうしよう? っていうかどうしたら上手く書けるだろう? だれか文才を下さーいっ!

 The tears which I forgot ( No.151 )
日時: 2011/03/16 14:33
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 2lvkklET)
参照: 発熱しました。だがしかしパソはやる!←



 何を勝手に嘆いているのだろうか。深い意味など、あるはずが無いのに。そう、俺が受け取り方を間違えただけなのだ。俺が一番よく知っているだろう? あいつは、正しい。
 あの日から今日まで、まるで立ち直ったかのように現実を偽装し、結局逃げ出していた。ぎこちないながらも、普通の生活を送り始めている彼等とは違う。俺は未だに、抜け出せていないのだ。底なし沼に突き落とされてしまったかのように。所詮、俺なんぞこの程度だ。努力もしないで強さを求め続け、結果として歪んでしまったのは……

 ———きっと、弱い哀れな俺だけなのだ。



     *     *     *



   一体、俺が何をしたと言うのか。

 答えは見つからないであろう疑問が、さっきからぐるぐると身体中を駆け巡っている。大きな溜め息を吐き出すと再度、自らが招いた厄介な疑問と格闘し始めた。簡単に肺から追い出せる空気のように、この悩みも吐き出せたらどんなに楽か……なんて、無理か。我ながら幼稚だと呆れてしまい、自然と苦笑が漏れる。
 それにしても、だ。
 本当に、俺は何をやらかしたのだろう。
 薄れかけた記憶をも叩き起こし、躍起になって原因を探す。が、どこを洗っても浮かぶのは、穏やかに微笑し、純粋にサッカーを楽しんでいる場面ばかりだ。そして、すべてに共通しているのは、俺もその一員だということ。外れているわけでもない。普通に、ごく普通にサッカーをしているのだ。人を傷つけるような、そんな棘を含ませた言葉を放った覚えは無い。けれど、原因が見つからないからと言って、このまま放置しても良いのか? ……いや、絶対に良くない。俺はあの優しさに、幾度となく助けられてきたのだ。見捨てるような真似は、したくない。しては、いけない。
 今日、あいつが一瞬だけ見せた虚ろな瞳は、異様なほどに俺に執着し、離れようとはしてくれず。けれど、俺が何故そこまで気に掛けてしまうのか、その理由が明らかになっているだけマシだった。あの表情は、あの瞳は、あいつが唯一見せてくれる"弱み"だから。そして俺は長いこと、そんな瞳を隣で見てきたから。そう、あの日から……———

               ———陶酔してしまいそうなほど綺麗な紫色の石に触れた、あの日から。


   + The words pierce him   ( 1/3 )


 *。+

なんだか中編っぽくなりそうです。ああ、すっごい難しいよこのお二人さん……
やっぱり表現が上手くいかない……うーん、誰かご指導を……

参照1000突破記念は、ぼちぼち考えてます。でも、ネタも無けりゃ文才も無いので、苦戦中なうw
そう言えば先日、さっくんが眼帯外して帝国メンバーとイチャイチャキャピキャピする夢を見ました。マジで俺得でしたね!
いやぁ〜、さっくんは眼帯取っても可愛い男前でした!(矛盾

【09】巡り合わせと呼ぶのです-04 ( No.152 )
日時: 2011/03/16 17:11
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 2lvkklET)
参照: 結論:佐久間は眼帯取っても可愛い男前。




 肺をぎゅうっと握られているかのように、呼吸は浅く、そして苦しい。すぅと思いっきり息を吸ったが、それでも楽になれなかった。僕、過呼吸にでもなっちゃったんじゃないかなってくらい苦しい。うう、自分の体力不足が目に見えてわかるよ。あーあ、ちゃんと外周走っとけば良かった……と言うか、このメンツの中でよくサッカーしたよ自分。スタミナ足りないのに、よくついていったよね。とりあえず自分に拍手だ!
 誰もいないベンチに腰掛け、大きな溜め息を吐き出す。雷門イレブンは、まだまだサッカーし足りないらしく、今も尚練習中……男女の差を見せ付けられた気がするな……

「葵さん、あのー……これ、どうぞ」
「え……?」

 差し出されたのは、濃い黄色のボトル。お礼もそこそこに受け取り、がぶ飲みする。ゴクゴクと音をたてながら飲んでいくスポドリ。乾いた喉がようやく潤って、ぷはぁと息を吐き出した。
 そこで初めて、自分がガン見されていることに気付く。ペコッと浅く首を動かし、「ありがとうございます」と付け足した。

「ゴメンね。円堂くん、サッカーになると本当に夢中になっちゃって……止められないんだ」

 関係のないマネージャーさん(多分、秋さんだったと思う)に謝られてる僕。きっと悪いのは……と言うか、円堂がサッカーバカなのは仕方が無いことだし、それは円堂の個性であり長所なのだから、謝る必要は無いと思うなぁ。新聞部から聞いたけど、そんなキャプテンに幾度と無く救われてるメンバーもいるようだし。第一、僕はそこまで迷惑してないもん……とまでは、言い切れないな。

「大丈夫ですよ! 僕も楽しいですから!」

 僕、偉いなぁ……人を気遣えるなんて。

「藤浪はいつも真面目にやらないからな、良い運動になっただろ!」

 いきなり、絶対に女子のものではない声が、後ろから降ってきた。声変わりしてるし。いやいや待て待て自分。この声、僕が一番よく聞いてるじゃんか。

「か、監督っ!? なんでこんなとこにいるんですか?」
「いやあ、ついつい話が盛り上がってな。今、帰るところだ」

 そろそろ僕も帰ろうかなー……あんまり遅くなっても、お互いに迷惑だろうし。うんうん、帰ろう!
 スクッと立ち上がり、ふと円堂のほうへ視線を向けると……なんかすっごい盛り上がっていた。いいな、あーゆー雰囲気。すっごい仲良さそう……チーム一丸みたいな一体感、羨ましい。和気藹々とする会話が時折、僕にも聞こえてくる。森本は左上のコースが苦手だとか、飯島はピンチになればなるほど直球勝負っぽくなるらしいだとか、カレンを抜きたかったら揺さぶりを掛けると素直に迷うだとか、夜桜の弱点が赤裸々になってて……え。

「なるほど、次の試合はこのポイントを押さえれば勝率が上がるのか……」

 ぽつりと呟く天才ゲームメイカー。いやいや、あんたに作戦立てられたら夜桜は勝ち目無いって。自分でも顔が真っ青になっていくのがわかる。額に冷や汗が流れたが、拭うどころじゃなかった。すぐさま監督を睨みつけ、真相を自白するよう目で訴えかける。唇をきゅっと噛み締め、監督の言葉を待った。苛立ちからか、無意識に地面を蹴る。そのせいで爪先が少なからず痛かったけど、パニックのせいで、落ち着くことができなかった。

「夜桜イレブンのやる気が上がるようにな、弱点を全て把握してもらった」
「バカですか監督」
「ははは、これも藤浪たちの為だからな」

 悪びれる様子も見られず……溜め息ばかりがあふれ出す。ああもう、監督が僕と対等の立場だったら、殴ってたかどうかもわからないな。基本、人に対してあまり怒らない僕だけど、今回は抑えられない。
 ……なんて意地を張ったところで、円堂たちが僕等の弱点を忘れてくれるはずがないし。今度は呆れた溜め息が零れた。明日、朝練のとき皆に忠告してあげよう。どんな反応が返ってきても、僕に責任は無いんだ!

「よーし! 次は藤浪の弱点について話してやろう!」
「キャプテンの弱点か……」

 ……え?

「あ、ちょ、監督っ!?」
「藤浪はディフェンスがド下手だからな。狙うならこいつだぞ」

 おぉ、と雷門イレブンから声があがる。あーもー僕知らないから!監督が勝手に暴露したんだからね! 僕は止めたからね?

「でも、夜桜で一番厄介なプレーヤーも藤浪だ」
「…………?」

 監督の表情は、どこか誇りに満ちていた。なんで監督が胸を張ってるのかはわからないけど……、ここまで暴露されたら、もう引き返せない。時間が経っちゃってもいいから、監督の話を全部聞いてみよう。ヤケクソになりかけてる僕の、唯一の冷静な判断である。


江戸物語! ( No.154 )
日時: 2011/03/17 15:15
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 2lvkklET)
参照: 長すぎて疲れた……


   第十三話【果たして、勝利は誰の手に】



「あとどれくらいですか〜?」
「多分……通りを二本抜けた先だったと……」

 桃花の質問に対する返答は、あっさり途切れてしまった。それもそのはず。かなりの距離を一度も止まらずに、全速力で駆けてきたのだから。桃花はそこまで疲れていないようだが、葵のほうは相当息切れが酷かった。それも、腰元に光る二本の刀のせいなのだろう。カチャリ、と不気味な音を立て、刀は揺れた。戦闘に役立つとはいえ、逃げるのには重過ぎる。一度立ち止まった二人は、一軒の商店の影に身を潜めた。その間に葵は、手際よく刀を仕舞いなおす。あの五人に追われていることを知らぬはずの二人だが、やはり本能が危険信号を発しているのだろう。声も囁きに近い音量まで下げ、すっかり江戸の町並みに溶け込んでいた。

「通り二本ですか……でも、どうして私たち隠れてるんでしょうね?」

 瞳に掛かった栗色の柔らかい髪を払うと、桃花は緩んだ小袖の首元を絞め始めた。首筋には、うっすらと汗が浮かんでいる。葵は忠告しようかどうか、一瞬迷ったのだが、桃花が取り出した自前の手ぬぐいを見て、自らの小袖を直すことに専念した。かなり寄れてしまっていて、気持ちが悪い。それでも、手際の良い桃花に手伝って貰ったため、一人でやるよりも相当早く終わった。さすが、いい家柄の一人娘である。花嫁修業は、とうに終わらせたのだろうか。
 もともと、旅を始めるに当って連れと共にまわる予定は無かった。一人のほうが気楽だという、なんとも安易な理由からなのだが。まあ、あの時桃花と出会っていなければ、一人でのんびりと各地を歩き回っているのかもしれない。……いや、もしくは倒れて、旅どころではなかったのではないか。さまざまな考えが頭を過ぎり、自分の世界へと引き込まれていく。が、そんな葵を現世に呼び戻してくれたのは、桃花の無邪気な一声だった。

「あ! あれって、円堂さんと吹雪さんじゃないですか?」
「え……ほんとだ。誰か捜してるっぽいね……あれ?」

 向かいの呉服屋のお陰でばれていないらしいが、円堂と吹雪、よくよく見ると虎丸までもが揃っている。辺りをきょろきょろと見渡している様子は、さながら迷子を捜す母親のようだった。
 とっさに顔を隠す葵。が、後ろを見ると、もっとややこしい人物がいることに気付く。逆立った髪型、南蛮風の怪しいマントは、険しい表情で道の真ん中を堂々と歩いていた。しかし、円堂たち同様、何かを捜しながら歩いているようで。何故だか悪寒が走る。

「まさか、僕たちを捜してるんじゃないよね? だよね、桃花?」
「……案外、図星みたいです」

 葵〜、桃花〜と二人の名を大きな声で叫ぶ円堂。ばれますからやめてください! と虎丸が必死になって抑えている。合流したらしい五人は、いたか? そっちは? などという会話を繰り広げていた。暑くて仕方が無いはずなのに、背中に冷や汗が流れる。こちらの誤解だとしても、逃げたほうが身の為なのだろう。

「逃げましょう、葵さん」
「え? ちょ、桃花ちゃん!?」
「何故か嫌な予感がするんです!」

 今度は、葵が桃花に手を引かれ、駆け出した。まだ呼吸を整えきっていなかった葵にとっては、散々である。が、逃げたほうが良いという桃花の意見には賛成なので、大人しく走り出した。目指す場所は……———

「江戸一番の刀鍛冶の元へっ!」

*。+

 家の主の名を呼ぶのも忘れ、二人がかりで戸を引っ張る。建てつけが悪いわけではなさそうだが、長屋は結構な年代物だ。元は質の良い建物だったのだろうが、襲い来る雨風をまともに受けて、ぼろくならないわけが無い。わかってはいるものの、体力が限界に陥っている二人には、ただの面倒な戸にしか見えないのだ。その後、幾度となくあの五人衆に見つかりかけた二人は、遠回りを余儀なくされ、その上全速力で走ることを選ばざるを得なかったので、声も枯れるほどにくたびれていたのだった。

「早く、入りたい、のに……おやっさんは、何を、して、いるんだよ……」

 息が切れた独り言を吐き、再度戸を開けることに専念し出す。が、せーのと息を合わせた途端、戸は簡単に開いてしまい、二人は勢いよく尻餅をついてしまった。犯人は勿論、内側から戸を開けた家の主である。

「いたた……」
「響木のおやっさん……いたのなら早く開けて下さいよっ」
「すまないな。今、昼寝をしていたから気付かなかったんだ」

 このお方こそ、江戸で一番有名な刀鍛冶職人、"響木正剛"である。

「藤浪、隣のやつは? 新入りか? お前、連れを作ったのか?」

 響木の質問に答えるよりも早く、二人は長屋の中へ逃げ込んだ。理由は、察して頂きたい。奥へ上がると草鞋を脱ぎ、脱力の声をあげる。彼女達が相当疲れていることを察した響木は早速、茶の支度を始めた。

「あ、私……春崎桃花と申します」
「結構、大きな家の一人娘さんだからね。手を出しちゃ駄目ですよ」

 桃花と旅を共にすることになった経緯は、話せば長くなる。また時間があるときにも、おやっさんに説明すれば良いか。脳内で簡単に処理すると、差し出された湯のみを奪うように受け取った。桃花にも手渡し、黙って飲む。区切りがつくと、葵は刀を二本差し出した。響木は黙って受け取ると鞘から抜き、じっと見つめる。葵はまだ飲み足りないらしく、自分でお茶を注ぎに台所へ向かった。

「二本も持っていたのか?」
「一本は父上の形見。もう一本は、桃花に気安く触った武士から頂戴した」
「……ほう、厳しいな」

 でもやはり、こいつには見る目がある。この刀も上等な品でなかなかお目にかかれない一刀だ。選んで略奪しているのだろうか? まあ、父親から譲り受けたという名刀のほうが名高いのだが……。だいぶ傷ついた刀を眺めながら、響木はこんなことを考えていた。
 台所から帰ってきた葵は、桃花の手から空になった湯のみを奪い取り、注ぎに台所へ向かう。悪いですから! と追いかける二人は、誰の目から見ても仲睦まじく見えるのであろう。
 ふと外が騒がしくなり、響木は顔を上げた。古くなった戸をガラッと開け、騒々しい面子が長屋を訪れた。先頭にいる少年は、ぺこりと一礼する。

「おやっさーん、茶の粉、なくなりそうだよー」

 桃花との湯のみ争奪戦に勝利した葵は、両手に湯飲みを持ち、のこのこと居間に現れる。畳を一歩踏みしめたとき、突然の来訪客の存在に気付いた。そして……湯飲みを落としかける。固まってしまった葵を不思議に思いながら居間に帰ってきた桃花。が、彼女も動揺を隠せていない。

「師匠、こいつ等にお茶を一杯、奢ってもいいですか?」
「まったく、お前は徒弟のくせに……本当に自由だな、円堂」

 人を捜すのに苦戦してて、と円堂は笑顔で答える。反射的に裏口から逃げ出そうとする二人。が、運命とは悪戯に廻るものだ。

「おっ! 葵に桃花じゃないか! 捜したんだぞー」

 暢気に笑う円堂の後ろで、黒い殺気が見え隠れしたのは、気のせいか……


 その涙を拭えたら、 ( No.156 )
日時: 2011/03/17 16:01
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 2lvkklET)
参照: 参照1000突破記念作品!




「やっぱり私は、彼女に勝てないのよ」

 話はいつも、この一言から始まる。いつも強気で他人に弱みを見せないような人間、それが雷門夏未だと思っていたが、案外、そうでもないらしい。人間には、誰にも打ち明けられない悩みがある。が、理事長の娘として堂々と生きてきた雷門だ。その手の悩みは、自らで処理できてしまうのだろう。そうなるとやはり、問題の論点は違う方向へとずれていく。残念ながら、この悩みに対して的確なアドバイスをしてやれる程、俺は大人ではない。ただただ、抑揚の無い淡々とした口調で発せられる言葉を、静かに聞いてやることしかできないのだ。

「私と彼女では、過ごしてきた時間が違いすぎる」

 それは否定できない。誰が見てもそう思うのだから。"誰が"と言い表した大人数の中には、まだ未熟な俺も含まれている。円堂とは、それなりの付き合いをしてきたつもりだ。その程度のことならばわかる。わかってしまうのだ。だからなのかもしれない。雷門の気持ちにも、少しばかり同情してしまうのは。
 今までの距離を縮めようと、雷門が努力をしてきたことは認める。が、初めから遠すぎたのだ。雷門はいつも円堂の背中を追ってきたことに対して、彼女はずっと隣にいた。スタートの合図が鳴るよりも前に、二人の間には距離がありすぎた。雷門がそのことに気付いて、今日まで円堂を慕い続けてきたのかは知らないが、知った上でこれほどの月日を過ごしてきたのだと言うならば、雷門はどれほど悩んだのだろう。

「……遠くから円堂くんを見守ってきた私とは違う。いつだって彼女は、隣で励まし続けてきたのだから」

 小刻みに震える肩。そして比例しているかのように声色まで涙色に染まっていった。俺はただ、聞くことしかできない。せめて雷門の瞳に、円堂以外の姿が映りこむ瞬間があったならば。他の選択もあったのではないかと、はっきりしない意識の中で思った。だが、そんなことが実現したとしても……俺は今、こうして雷門の話を聞いているのだろう。結局のところ、雷門は円堂に好意を寄せている。この事実は、きっと変わりはしない。

「でも、それでも私……」

 何かを言いかけて、唇をきゅっと噛み締める。言いかけたことは、予想できた。そんなのわかりきっている。ではなぜ、聞きたくないと思ってしまうのだろうか?
 握った拳が、がたがたと震える。爪が手の腹に食い込んだらしく、じんわりと広がっていく痛み。この程度の痛みなら、もう慣れてしまった。

「円堂くんが、好きだから」

 ゴーグルを隔てていても、雷門の瞳から流れ落ちた透明な光は、鮮明な映像となって届き、結果として、俺の困惑は増していくばかりだった。
 


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