二次創作小説(紙ほか)

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originalダンガンロンパ キャラアンケート 
日時: 2013/09/19 17:42
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)

 皆様こんにちは。
初めましての方は初めまして。
以前、お付き合いくださった方はお久しぶりです。
編集などの都合で以前、別サイトに移転していたのですが、今回こちらでも活動を再会させていただくことになりました。
(わがままを言ってすみません)

 注意書きを読み、以下の内容にご理解いただけた方のみ、この作品を閲覧ください。



 最初に、公式とは一切関係ありません。
ダンガンロンパが好きで、その世界観に惹かれたファンの二次創作です。

 次に、モノクマを除いてすべてオリキャラのみのダンガンロンパになっています。
キャラクターの称号が公式と思いっきり被っていますが気に止めないでください。
(実はダンロン2公開前から執筆していたため、数名被っています)
また、本編【ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】と【ダンガンロンパ ゼロ】のネタバレが出る可能性があります。
クリアしていない方、苦手な方はお控えください。
なお、スーパーダンガンロンパ2のネタバレはありません。

 主人公は速水刹那(はやみ せつな)=[超高校級の警察官]とし物語は展開します。
 もちろんダンガンロンパであれば、推理やおしおきのシーンが前提としてありますが、作者は推理小説に触れたことがありませんので、無茶な推理や、矛盾点も多くありますが、ご了承いただけるようお願いいたします。
キャラ紹介の内容は話が進むごとに増えていきます。


以上のことを了解した方は、読み進めていってください。

……コメントいただけると喜びます(主に作者)





*お知らせ

>>96 >>97を追加 9/19
・次回の更新予定は未定です。

☆アンケート中 >>69 >>89

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>>17-18 阿部様
>>46-47 >>56-57 >>79 >>91-92 モノクマ様
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プロローグ-
>>1

第一章 絶望のハジマリ
>>2 >>3 >>4 >>5 >>6
>>7 >>8

キャラクター紹介編
>>9-13
>>40 キャラクターイメージ

第二章 殺人ゲェム

一日目 日常編
>>14-16 >>19-21 >>22-24
>>25-27 >>28-30 >>31-33
>>34-36

二日目 日常編
>>37-39 >>41-43 >>44-45
>>48-49 >>52-53

三日目 (非)日常編
>>54-55 >>60-62 >>63-65

三日目 First学級裁判
>>73-74 >>75-76 >>80-81←おしおき編
>>86-87 >>88


キャラ劇場
>>90 >>93-94


第三章 サイコポップハイスクール

四日目 日常編
>>95-97

Re: originalダンガンロンパ ( No.2 )
日時: 2013/07/03 12:46
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)



 目が覚めたとき、おれは部屋の中にいた。
 新品のような白いすべすべとした机と、事務用椅子がまず目の前にとびこんでくる。どうやら、おれはここで眠っていたらしい。
後ろに椅子を回転させる。すると、今度は真っ白な一人用にしては大きいシングルベットがあった。
ベットの中心には鍵らしきものが無造作に置かれている。

−速水刹那

 鍵についているキーホルダーに刻まれた、名前を読み上げ、おれは薄々とここがどこなのか確信する。
おそらく、ここはおれの部屋だ。
 床には群青色の絨毯が敷かれ、壁は青い縦のストライプの模様で彩られている。
こうしてみると何もないいたって普通の部屋だが、この部屋には一つだけおかしなところがあった。


「なんだ、これは……?」


 机から向かって左手のプラスチック製の棚の先にある光景に、おれは首を傾げる。
 位置からして、本来は窓だろうか。
外の風景はおろか壁も見えない程、その区画だけ隙間なく木の板や鉄板を敷き詰めてあった。
四端は太いネジが埋め込まれ、とてもじゃないが外せそうにない。


「テロか?」


 経験から、もっともらしい答えを探る。
 FBIとあろう者が閉じ込められるとはなんとも情けない話だ。


(にしても、一体どうなっているんだ……)


 確か、おれは希望ヶ峰学園の入り口にきていたはずだ。どうしてこんな場所にいる?
と、考えたところで答えが出るわけでもない。

 止む無くおれは、出口になりそうなものを探し始めた。
すると、ちょうどこの奇妙な壁の反対がわに白いノブを回す用のドアを発見した。


「武器になりそうなものは……ないな」


 外に何があるか分からないため、机の引き出しを調べる。
引き出しの中はほとんど何もない状態だった。
あったのは、一番上に鉛筆などの筆記用具とカッター、のり、はさみといった文房具と、新品のノートが三冊。
二番目は何もなく、一番下にはおれの手の平に簡単に収まるくらいの透明な液体が入った小さな瓶が置いてある。


「なんだ、これは?」


よく分からないので、おれは触らず静かに元に戻しておいた。
低いとはいえ、爆発物という可能性も捨てきれないからだ。

 続いて、棚を調べると寝間着が一着と、シャツ、下着が二枚ずつ。
それ以外はなにもない。


「結局、着の身着のままか……」


 隠し持っていたはずの拳銃(もちろん本物だ)とジャックナイフも無くしたらしい。
落とすはずがないのに、本当に理解不能だ。


ピンポーン!!
「!?」


 突如、鳴らされたチャイム音におれは思わず腰を低くして身構える。
どうやら、今の音はドアの方からしたようだ。
しかも、チャイムは一度きりでなく間を開けて、二度、三度と鳴らされている。


(だれだ……?)


 声もなく、ひたすら鳴らされるチャイム音に、おれはドアを睨みつけた。
だが、扉の向こうの相手がこちらに入ってくる気配はない。

 いつまでも立ち止まっている訳にいかず、おれは鍵を取り、警戒を緩めることなくドアに向かう。
それから、気晴らし程度の小さなドア穴を覗くとまだハッキリと分かった訳ではないが、下側に小さな人影が揺れていた。


「だれかいませんかー?」
(……子供?)


 幼子のような声におれは一瞬ためらうも、警戒を解かずにドアノブに手をかける。
それからゆっくり回して、物音も立てないように開いた。


「あ、やっぱりあなたなんだね」


 くりくりした青い目が狭いドアの隙間から現れる。
それはどう見ても、やはり小学生程の子供のものだった。


「大丈夫だよ。わたしは米倉 澪(よねくら みお)。あなたと同じ79期生だよ」
「米倉?」


 おれは聞き覚えのある名前に思考を巡らせる。
米倉 澪。確か、世界中の音楽家たちを魅了する演奏を奏でる"超高校級のピアニスト"だ。
ソロに留まらず、合唱や楽器の伴奏も一流で、彼女が入ればその楽団の演奏会は大成功を収めるとさえいわれている。
だが、それがこんなに小さい子供とは……。
非常に失礼であるがおれは正直、驚いていた。


「"超高校級のピアニスト"の、米倉 澪か?」
「え?わぁ、すごーいっ!大正解だよっ。よく知ってるね」


随分失礼な物言い、更にドア越しだというのに、彼女はにこにことこちらに微笑んでくる。

 どうやら、警戒する必要はなさそうだ。
おれは半分気を緩め一思いにドアを開ける。

 そこには空色の青い瞳にプラチナブロンドのウェーブがかった髪を宙になびかせた人形のような少女が、柔和な笑みを浮かべていた。


「失礼した。おれは速水刹那という者だ。好きに呼んでくれ」
「えーと……それじゃあ、刹那くんでいいかな?」
「ああ、かまわない。おれはなんと呼べばいい?」
「わたしも好きに呼んでいいよ〜」
「では、米倉と呼ばせてもらう。いいか?」
「うん」


 随分と同年代の人間と話さなかったせいか、どうしても挨拶が堅苦しい。
それでも、米倉は微笑みを絶やさずに答えてくれた。


「体調は大丈夫?」
「ああ。問題ない」
「そっか。よかった。あなただけいなかったから、心配してたんだよ」
「おれだけ?」
「そう。もう他のみんなは集まっているから、一階の玄関ロビーに行こう?」
「……分かった」


 他のみな、つまりここに今日、入学する連中が揃っているという。
おれは心の底から感じる嫌な予感を覚えながらも、米倉の案内に従って玄関ロビーへと向かっていった。


(見られているな……)


 米倉について廊下を歩きながら嫌な気配を感じて振り返る。
自室では確認していなかったが、この廊下には数箇所にわたって監視カメラが配置されていた。それに付随して、小型テレビも見受けられる。


(犯人の意図はなんだ……?)


 道幅も広く、カーペットが一面に敷いてある廊下はホテルを思わせるものだが、変わった蛍光灯によって全体的に蛍光色に照らされていた。
以前、極秘の任務で裏組織に潜入したこともあるが、それでもここまで悪趣味な廊下は見たことがない。


「辰美ちゃん」


 ふと、米倉の足が止まる。
先を見ると、ちょうど下り階段の前に手を挙げている一つの人影が見えた。

 ラフにYシャツとズボンを着こなした茶色のショートヘアの、女だろう。
胸の辺りにそれらしい膨らみがあるのが分かる。


「おお、澪。そいつが最後の一人か?」
「うん。速水刹那くんっていうんだって」
「へぇー。かっこいい名前だなぁ」


 彼女は赤いフレームの眼鏡をかけ直すと、おれの顔をまじまじと見た。


「ありがとう。君は?」
「おれかい?おれは笹川 辰美(ささかわ たつみ)。超高校級のゲーマーってやつだ。まぁ、好きに呼んでくれ」


 笹川 辰美。どの分野のゲームも世界大会で連勝。そして数々の新記録を打ち出し、誰よりも早く裏技を見つける“超高校級のゲーマー”。
 女性だとは事前に分かっていたが、彼女の態度や口癖はどうも男性を思わせる。だが、悪い気はしない。


「では笹川で。おれも好きに呼んでくれてかまわない」
「お堅いやつだな。落とすには時間のかかりそうなタイプってやつ?」
「落とす?」
「ああ。なんでもねーよ。じゃ、おれは刹那って呼ばせてもらうぜ。さてと、他の連中はもう待ちくたびれてんじゃねぇかな?早く行くぞ」


 笹川は背を向けると、おれたちを急かすように足早に階段を下りていった。


「辰美ちゃんはね、口は男の子みたいだけどすっごく優しいの。怖がっていたわたしに最初に話しかけてくれた子なの」
「そうか。怖がっていた、とは?」
「実は……あ、でもまずは下にいってから話すね。みんな待ってるから」
「そうだったな。すまない」
「ううん、いいよ。じゃあ行こう、刹那くん」


 米倉に続いておれも階段を下りる。
 階段を下りた先を真っ直ぐ進むと、そこにはおれたちを含めて15名の生徒が集まっていた。
やはりある分野の天才級の人間が揃っているせいか、オーラを感じる、と言ったら言い過ぎだろうか。


Re: originalダンガンロンパ ( No.3 )
日時: 2013/07/03 12:47
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)

「お?お前が最後のやつか」
「ああ。おれは速水刹那。好きに呼んでくれてかまわない」


 敢えて警察であることは伏せ、とりあえず名乗りをあげる。すると、他の生徒たちは一斉にざわめき始めた。


「速水刹那だな?初日から遅刻とはどういうことだっ!!もうみんなとっくに集まっていたんだぞ!!」
「おいおい。そう言いなさんな。こんな状況だろ?」
「すまない。どうも……気を失ってな。気がついたら自室と思われるところに倒れていた」
「なんだと?お前もなのか?」
「お前も?」
「実はさー、わたしたちもなんだよね。その、気絶して部屋にいたのって」


 全員だと?
 おれはなにか引っかかるものを感じて、今の状況を整理する。
ここに今日入学するはずの全員がいるということは、やはり誘拐か何かに巻き込まれたと考えた方がしっくりはくるが……。


「ねぇ、みんな自己紹介してくれないかな?わたしと辰美ちゃんはしたんだけど、刹那くんはみんなのことは知らないから」
「面倒くせぇな」
「でも、彼がだれと話してるか分からない、っていうのも困るわよ」
「そう……ですね」
「では、改めて自己紹介していきましょう。私たちも確認も兼ねて」
「りょーかい」


 14名全員の視線がおれに集中する。
既に彼らの準備はできているようだ。


まずは手前にいるやつから話していくことにしよう。
おれは最初に、ピンク色の着物に濃い緑色の袴姿のお下げの女に話しかけた。


「あ、あの、初め……ましてわたし……えと……その……」
「?」
「お、怒ってます?」
「……怒っていない」


 不本意ながら怖い顔と言われ慣れてはいるが……。
さすがに、初対面でここまで怯えられるとおれでも傷つく。


「す、すみません。あの……わたし、東雲 菊(しののめ きく)っていいます。超高校級の大和撫子って言われて……ます」


 東雲 菊。
大和撫子といえば、言葉の意味では日本女性の理想とされる意味だが、彼女の場合、茶道、日本舞踊、生け花、カルタ取り、鞠付きといった大方の日本の伝統を極めた女性、だったな。
その業績から、国に国宝とまで認められているらしい。
しかし……。


「……そんなに怖がらなくても、おれは何もしない」
「は、はい……すみません」


 やはり、おれが怖いらしく彼女は今だにしっかりと視線を合わせようとはしない。
下手をすると今にも泣きだしそうだ。ただでさえ弱々しい声が震えきっている。
 どうにも、いじめているようにしか思えないので、おれはそれ以上何も言わず、ため息を一つだけ吐いて別の生徒に向かっていった。

 次におれはブカブカの白衣着た、栗色のパーマを散らした中性的な生徒に話しかけた。


「ぼくは間宮 式(まみや しき)。数学者だよ」


 間宮 式。
抜群の集中力と発想力で数々の難題を打ち破った数学オリンピックの優勝者で、数学者たちも一目置く“超高校級の数学者”だったな。
高校生ながら大学院に出入りしていて、日夜数字に囲まれる日々を送っている、とのことだ。


「ところで、君はどんな数式が好き?」
「数式?」
「そう。友愛数とかルートとかがベタだけど、ぼくは円の数式が好きだな。綺麗にまとまるもの。sinとcosってほんと、すばらしいよねっ。
 数字といえばやっぱり零の概念は重要でしょ?あれが確立されたからこそ、数学は大きく発展したんだ。現代の機器はまさにこの恩恵をたまわっているよね」


 話の通り、数学について語り始めると止まらない性分らしい。
のんびりとしていた間宮の顔は輝き、言葉にはどんどん熱がこもっていく。
さすがに、長くなりそうなのでおれは断りを入れてから次の生徒に向かった。

 今度の生徒は、カウボーイハットと茜色の髪と同色の顎髭が特徴的な男だ。


「よっ。オレは御剣 隼人(みつるぎはやと)。ここでは超高校級のホストで通ってるぜ」


 御剣 隼人。
口説きのテクニックと、親しみやすさから多くの女性客に指名をもらう“超高校級のホスト”。
おれはこの類いには詳しくないのでよく分からないのだが、彼に会うためにはるばる遠方から訪れる女性も多いそうだ。


「お前酒はイケる口か?」
「……どういう意味だ?」


 急に振られた話題に、おれは顔をしかめる。
諸外国はまだしも、ここは日本だ。二十歳未満の飲酒は禁止されているはず。


「おや、ここの連中は堅物だなぁ。さっきのやつもえらい手厳しいやつだったし。ま、飲む酒もないんだけどな」
「はぁ……」


  職種上やむを得ないのかもしれないが、普通は飲まないのが常識だと思うが……。
おれはそう思いつつ、彼から背を向ける。
すると、その先で腰まで届きそうな深紅の髪をなびかせた、プロポーションのいい女性と目が合った。


「あら、こんにちは。私はアヤメ・ローゼンよ。“超高校級の俳優”と言われているわ」


 アヤメ・ローゼン。
10歳の頃から俳優を目指し、主人公の子供役としてハリウッド映画で一躍デビュー。
以降、数々の名作でその演技力を発揮している“超高校級の俳優”だったな。


「よろしく頼む。アヤメ、と呼べばいいのか?」
「ええ。お好きにどうぞ。私は速水と呼ばせてもらうわ」
「ああ。それにしても光栄だな。“サイタニック”で見たことがあるが、迫真に迫る演技だった」
「あら?あなた、映画はよく見る人なの?」
「いや。連れに映画好きのやつがいてな。あんたのことをよく誉めていたよ」
「そうなの。嬉しいわ。次回作はわたしが主役のものだから二人で是非観てちょうだい」
「ああ」


 姿勢、喋り方、まるで隙がない。
さすがに一際厳しい芸能界に身を置く人間だけはある、といったところか。


「それじゃあ、他の子にも挨拶してらっしゃい」
「そうさせてもらう」


 これで後は8名。
おれは奥の方にいるやつらに向き直ると、まずは浴衣姿に羽織をはおった坊主頭の男に話しかけた。


「おれは花月 京(かげつ きょう)!”超高校級の歌舞伎者”さ!」


 花月 京。
幼少期から女形めがた役者として出演し、現在も子供と女の役を専門にしている“超高校級の歌舞伎者”だ。
彼の活躍はめざましく、廃れつつある歌舞伎にブームを巻き起こしたと言われている。


「速水刹那だ。よろしく頼む」
「おうよっ!刹那って呼ばせてもらうぜ!にしても、いいよなー、その身長」
「身長?」
「そうそう。だって身長さえ高けりゃ女もんなんてやらなくて済むだろ?」
「なるほど……。歌舞伎は、男性しかできないからな。男性が女性の役をする必要があるのか」
「お!分かってんじゃん!!とまー、そんなわけでよろしくっ!!」
「ああ」


 歌舞伎者と聞いて古風な男児を想像していたが、元気で明るいやつだ。
 笑顔をふりまく彼におれは手を挙げて答えてから、次に黒髪を上で一つにくくった、気の強そうな女性に話しかけた。


「私は篠田 眞弓(しのだ まゆみ)だ。よろしく頼む」


 篠田 眞弓。
有名な弓道場の跡取りで、幼い頃から弓道に励んでいる”超高校級の弓道者“だったな。
彼女が小学生のとき、流鏑馬(やぶさめ)に選ばれて見事真ん中に的中させた話はおれも記憶にある。


「篠田、と呼んでかまわないか?」
「ああ、別に……かまわないぞ。わたしも速水と呼ばせてもらうからな」
「ああ。…………」
「…………」


 お互い、相手を見ながら無言が続く。
……どうやら、彼女とおれは似た者同士ということらしい。


「……失礼する」


彼女はそう言って頭を下げると道を開けるように、離れていった。

Re: originalダンガンロンパ ( No.4 )
日時: 2013/07/03 12:48
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)

 おれは次に、白いシェフの格好をした水色の髪の男に話しかけた。


「僕は石蕗 優(つわぶき まさる)。料理人です」


 石蕗 優。
一流のグルメたちの舌を唸らせ、彼のいるレストランは連日行列ができる程の”超高校級の料理人“だ。
特に創作料理が得意で、石蕗優のオリジナルランチがそのレストランの一番人気メニューらしい。


「速水刹那だ。よろしく頼む。石蕗でいいか?」
「はい。速水さんと呼ばせてもらっていいですか?」
「ああ、かまわない」
「よかった。何か食べたい物があれば言ってください。といっても、こんな状況でそんなことを言うのもどうかと思いますが……」
「いや、気にしていない。むしろ楽しみにしている」
「はい」


 笑顔で頷いた石蕗を背に、おれは次に亜麻色の髪を巻いたドレス姿の女に話しかけた。


「ごきげんよう。わたくしは北条 花梨(ほうじょう かりん)。自分でこういうのもなんですが、”超高校級のお嬢様“ですわ」


 北条 花梨。
何人もの使用人がつき、固有財産で島一つさえ持っている宝石業者の大富豪である北条家の一人娘から”超高校級のお嬢様“と言われている女性だ。
教養が高く、外国語では英語を始めイタリア語、フランス語、ドイツ語を習得し、またバイオリンの腕も相当なものだという。
 ただ……この北条家に関して言えば、あまり良い話がない。
いわゆる金の亡者というのか、賃貸料の安い発展途上国の人々を酷使し、件数は少ないが質の悪い宝石をわざと高く売りつけたことが報告されている。


「速水刹那だ。よろしく頼む。北条と呼んでいいだろうか?」
「ええ。かまいませんわ。代わりに私も速水様と呼ばせていただきますわよ。ところで速水様」
「なにか?」
「私の下で働く気はありませんか?」
「……言っている意味がよく分からないが」
「そのままです。ちょうど動きの早そうな腕っ節の強い男が必要だと思いまして」
「悪いが、おれは遠慮させていただく」
「そうですか、残念ですわ」


 微かだが、ちっ、と舌打ちの音が聞こえた気がする。
どうも、彼女も一筋縄ではいかない女のようだ。敵に回すと、厄介なタイプかもしれない。
おれはそんなことを思いながら、次にこの中で一番大きい浴衣姿の男に話しかけた。


「おいは……大山 力也(おおやま りきや)。”超高校級の力士“だ」


 大山 力也。
 中学生で170cmの巨体を生かして最年少で相撲界に入り、その後初陣で優勝候補をつっぱり一撃で倒した”超高校級の力士“だ。
話によると、彼は気さくで、相撲ファンの間では彼との会話を楽しみにしている者も多いと聞く。


「速水で……いいか?」
「かまわない。おれも大山と呼ばせてもらっていいか?」
「ああ……。おいは、喋る、苦手だ」
「別に、おれは気にしていない」
「そう、か。……ありがとう」
「いや。これからよろしくな」
「よろしく、だ。速水」


 なるほど。片言であるが、穏やかで優しそうだ。
老若男女問わず、話しかけやすいだろう。
おれは一人納得すると、大山の影に隠れて遊んでいた女性に話しかけた。


「あ、わたし、雅 歌音(みやび かのん)っていうの!よろしくね!!」


 雅 歌音。
 小学6年生にして世界を飛び交う有名な合唱団の熾烈なオーディションを勝ち抜き、以後オペラや独唱の舞台で活躍している”超高校級のソプラノ歌手“だ。
彼女の歌は動画に上げられていたので聴いてみたが、音楽に詳しくないおれでもとても上手いのがよく分かる。


「速水刹那だ。よろしく頼む」
「じゃあ、せっちゃんねっ!」
「……せっちゃん?」


 なんのことか一瞬分からず、おれは思わず聞き返す。


「せっちゃん、とはおれのことか?」
「うんっ!あ、わたしのことはなんでもいいからね。好きに呼んじゃっていいよ〜っ!ただまーくんみたいにマヌケとかそういうのはなしねっ!!」
「あ、ああ。まーくん、とは?」
「あっちの子」


 雅はそう言って黒髪の白衣の男を指差す。
指された男はかなり、いや、相当機嫌が悪そうだ。


「ちっ……。おい、マヌケ。だれがその名前で呼んでいいっつった?ぶっ殺すぞ」
「あー!またマヌケって言った!」
「てめぇがふざけたことぬかすからだ、マヌケ。そして人の話はちゃんと聞け。耳が腐ってんのか?ああ?」
「ううー。せっちゃん、まーくんが怖いよー。行ってきてー」
「はぁ……」


 確かに、彼の言葉は随分と乱暴だろう。しかし、それに油を注ぐ雅も問題だと思うのだが……。
後ろに隠れている雅を一度覗き、おれは仕方なく彼のもとに向かった。


「ちっ。おい、一発しか言わないからよく聞けよ。俺様は不動 正治(ふどう まさはる)。“超高校級の医者”だ」


 ……不動 正治?
おれは一瞬耳を疑った。

 不動 正治。
外国に留学し、日本でいえば中学を卒業する前に医師免許を獲得した天才児。
診療はもちろん手術、薬の処方も的確で、どんな病気でも治す奇跡の名医とも聞いている。

だが、その彼がまさかこんなやつだとは……。


「速水刹那だ。よろしく頼む」


 何を話せばいいか分からず、とりあえずおれは手を差し出してみせる。
しかし、不動はおれにただ鋭い視線を返しただけだった。


「俺様は消毒液に浸した無菌の綺麗な手以外に触れるのが嫌いなんだ。どっか行け」
「はあ……」


 奇妙なことを述べるやつだと思いつつ、おれはすぐ隣で渋い表情をした赤いジャージを着た短髪の男に向き直る。
おそらくこいつで最後のはずだ。


「ああ。僕で最後だな。初めまして。僕は安積 闘真(あづみ とうま)。“超高校級のボクサー”と呼ばれている」


 安積 闘真。
中学生頃に始めたボクシングで才能が開花し、アマチュアから今やライト級のプロボクサーとしてオリンピックの出場を期待されている“超高校級のボクサー”だったな。
彼の戦い方は素早さを生かした高速のジャブと、相手の攻撃を避けることにある。
相手に攻撃を当てず、自分は的確にダメージを与えて点を稼ぐ。言わば、蝶のように舞い、蜂のように刺す、といったところだ。


「速水刹那だ。よろしく頼む」
「ああ。速水刹那、僕のことは好きに呼んでくれてかまわない」
「では、安積、と呼ばせてもらう」
「了解した。……」


 安積は一度おれを見ると、手を差し出してきた。
握手のつもりだろう。おれはその手をとって応えた。


「ふふ。遅刻はしたが、君はなかなか骨のありそうな男だな。こちらこそよろしく頼むよ」
「ああ」


 安積闘真か……。
どうにも初めて会った気がしない、不思議なやつだ。


(これで全員だな)


 おれは安積と堅く結んだ手を離し、改めて同期の生徒たちの顔を見回す。やはり、超高校級の者たちとだけあって皆、どこか特徴的だ。
もっとも、それは向こうからすれば、おれにも当てはまるのだろうが。


Re: originalダンガンロンパ ( No.5 )
日時: 2013/07/03 12:50
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)

(しかし、なんだあれは?)


 おれは目の前の巨大な鉄板の扉を見る。
米倉が玄関ロビーと言っていたことを考えれば、おそらくこれが出口に繋がっているはずだ。
そう思ったところで、不動が声をあげた。


「おい、本題に入るぞ。仲良く“はじめまして”ばかり、やっている場合じゃないからな」
「そういえば、さっき言っていたな。この状況とお前も、という台詞。あれは、どういう意味だ?」
「刹那君、言ってたよね?色々あって寝ちゃったって。それってわたしたちも一緒なんだ」
「一緒だと?」
「希望ヶ峰学園の玄関ホールに入った直後に、いきなり気を失ってさぁ。そんで、気づいたらなんか自分の部屋っぽいとこで寝てたって訳!刹那もそうなんだろ?」
「ああ。だが、ここにいる全員が揃って気を失うということはそもそも考えられないことだが……」
「だから、お手上げってこったな。まるで質の悪いゲームの世界だぜ」


 笹川の言葉に一同に全員が肩をすくめてみせる。


「だが、異常なのは、気を失った件だけではないぞ。君たちもここや、廊下の窓を見ただろう?至る所に、鉄板が打ち付けられていた。あれは一体なんだ!?」
「それと、わたしの荷物が見つかってないのよ。鞄はともかく、スケジュール帳がないと困るのだけど……」
「わたしの……鞠も……ありません」
「オレの持ってきたとっておきのドンペリもないんだ。せっかく祝いに一杯やろうとしてたのに」


一人、おかしなやつが混じっていたが、おれは無視することにした。


「それに、妙なのは、この玄関ホールもだ!奥の入り口が妙な鉄の塊で見事に塞がれてしまっているじゃないか。僕が入ってきた時にはあんな物なんてなかったぞ?」
「ひょっとして、なんか犯罪チックなことに巻き込まれたとか?」
「犯罪って…。もしかして、誘拐、とかですか?」
「みんなで希望ヶ峰学園から連れ去られて人質にとられました……なんてオチか? 最悪過ぎんだろ。オリエンテーション的なもんじゃないのか?」
「オリエンテーション?」
「そういえば、中学校では入学して間もない頃にそんなことやってたよ!学校に早く慣れるようにって」
「学校に慣れる……。ありえませんわ」
「ああ。この企画を立てたやつが目の前にいたら、泣かせてやる」
「ちょいちょい、お兄さん。マジで怖いから止せって」
「でも、ドッキリなら安心だよね! ねっ、まゆゆん!」
「なっ!?あ、あのなぁ、雅。わたしをそんな名前で呼ぶな!」
「え?どうして?まゆゆん可愛いのに」
「わたしもかわいいと思うよ」
「こらこら澪、そう言ってやんな。まゆゆんが恥ずかしがるだろ?」
「おい笹川!!」


 そうして、いつの間にか異常事態から、雅が付けた篠田のニックネームについての論争が起こりそうなその時だった。

突然“それ”は始まった。


『ピンポンパンポーン…』
「あー、あー…!マイクテスッ、マイクテスッ!校内放送、校内放送…!」
「!?」


 おれは突如鳴ったチャイムに周囲を見回した。
どうやらこの声はシャッターの閉まった受付の窓口上部にあるスピーカーから出ているらしい。
 それは場違いな程、脳天気で明るい声……。
例えば、事故現場で鳴り響く笑い声のように、思わず眉をしかめたくなるような不快感、といえばいいだろうか。
とにかく、おれはその声に強烈な不快感を抱いていた。


「大丈夫?聞こえてるよね?えーっ、ではでは……。
 えー、新入生の皆さん。今から、入寮式を執り行いたいと思いますので、至急小ホールまでお集まりくださ〜い。って事で、ヨロシク!」


ぷつりと音声が切れ、静寂が訪れる。
見ると、そこにいるだれもが困惑した面立ちだった。


「小ホール?っていうか、なんだ?今のって…?」
「入寮式、と言っていたが……」


 花月と篠田がそう呟いたところで、ガタンとおれたちの右手側の扉が重々しく開く。
扉の右にある立て札を見ると、それには確かに『小ホール』と書かれていた。


「奥が……見えない」
「本当、真っ暗だね〜」


 扉付近にいた大山と間宮が興味深そうに扉の先を眺める。
本当に真っ暗だ。何があるのか、まるで予測できない。
もしかしたら、何か罠があるかもしれない。


「はっ。俺様は先に行くぞ」
「おいおい、そりゃ危なくねぇか!?」
「だったら一生そこで突っ立ってろ」
「でも、一人は危ないよ〜っ!まーくん待ってーっ!」
「だれが待つか。そしてマヌケ、てめぇは一回死ねッ!!」
「雅!まったく仕方ないやつだな」


 不動のあらぶった声に引き続いて雅が行き、篠田がその後に続く。
にしても……まるで懲りてないな、雅は。


「入寮式?入寮式って言ったよな?」
「辰美ちゃん、どうしたの?」
「だっておれたちは希望ヶ峰学園に来てただろ?普通は入学式って言うんじゃないか?」
「確かに、そうですよね」
「なんだ。ってことはドッキリかよ。ビビって損したぜ。よし、行くか!」
「あ……。京くん、わたしも……行きます」
「僕もいこーっと」
「では、私も先に失礼しますわ」


 ぞろぞろと暗闇に入り込んでいく面々を横目に、おれはしばしその場を動けずにいた。
本当ならFBIであるおれが最初に動くべきなのだが、どうにも頭に浮かんだ“嫌な予感”が頭から離れなかった。
そう考えていたのは、おれだけでもなかったらしい。


「本当に、大丈夫なのかな…?」
「今の校内放送にしたって、おかしいからな…」


 安積、大山、笹川、石蕗、御剣、米倉、アヤメ、そしておれがその場には残っていた。


「でも、ここに残っていたとしても、仕方ないわ。それに、あなたたちだって気になるでしょ?今、何が起こっているか」
「そう……だな」


 確かにそうだ。
炎の中に自ら身を投じるような危険が待っていたとしても、手がかりのない今となっては、行くしかない。


「この中だな」


 先に入った者を追いかけるようにして、おれ達は歩きだした。
やはり、全員不安らしく、あの放送から沈黙を保っている。
それは無理もない。
もちろん、おれも多少なりとも不安を感じるが、経験上ある程度は慣れている。
ただ、こういう場合、彼らにどう声をかければいいか、それが分からなかった。

Re: originalダンガンロンパ ( No.6 )
日時: 2013/07/03 12:52
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)


「それにしても、変だよな」
「何がだ?笹川辰美」
「だってよ。寮と言えば、79期生以外の連中もいるわけだろ?だれも見かけてないじゃないか」
「そうだな。それにあの鉄板は、まるでおれたちを閉じ込めるためのようだ」
「おいと……安積でやったが……壊れなかった」
「無理もないわ。鉄だもの」
「どうなっているんでしょうね。ドッキリでしょうか?」
「ドッキリにしちゃ、ちぃと手が込み過ぎじゃないか。やっぱり、ヤバいんじゃねぇの?」
「どちらにせよ、腹をくくるしかない。虎穴に入らずんば虎児を得ず、だ」
「うふふ……。もうとっくに入ってるけどね」


 アヤメの笑い声が辺りに反芻する。
既に真っ暗闇に突入したおれたちは、だれがどこにいるかも分からない。

 辛うじて、まだ出口の扉が開いているのが救いだ。
ここで閉じられでもしたら、何人かは混乱に陥るだろう。


「おい、来てやったぞ。とっとと明かりをつけやがれ」


 彼の声を合図に、天井の照明が一斉に点灯する。
そこで、おれたちを待ち受けていたのは…


「あれ?入学式だね、どう見ても…」


 米倉がホッとした表情を浮かべる。
 赤い絨毯の敷かれた上には、ちょうど15人分のパイプイスが並んでいた。
奥の舞台にはマイクの付いた教壇とその後ろに日の丸の旗と希望ヶ峰学園の校章が掲げられている。


「んー、これって“普通”の入学式と同じだね」


 ずいぶんと前にいた雅が真っ先にパイプイスに座り、きょろきょろと辺りを見回す。


「ほら、みんなも座りなよ」
「だな。ずっと立ちっぱだと疲れるし。菊もしんどいだろ?」
「あ……はい……」
「静かに。ここは式場なんだぞ。とりあえず、空いてる席からみんなつくんだ」
「お前さんは先生かよ」


 雑談を交えながら、各自で適当に座り、おれも後ろの席につく。
それから、おれはゆっくりと辺りを見回した。

 小ホールという割には体育館並の広さがあり、ザッと見ても縦30m、横は15mくらいありそうだ。
そして、今は上げられているが、奥の舞台は天幕付きの立派なもので、それだけでも希望ヶ峰学園の凄さを実感できる。


(やはりな……)


 しかし、おれは予想通りの光景にため息をついた。
左右を見渡すと、バスケット用のゴールの下に見える通気孔らしき場所にも、鉄板が打ち込んである。

 どうにも、この企画を練った人間は徹底しておれたちを外から隔離させていると思わせたいらしい。
思わせたい、だけならいいのだが。


「それにしても……おふざけにしては、ずいぶんと悪趣味ですわね」
「まったくな。とんだびっくりだぜ」


 花月がそう言って明るく笑い飛ばしたときだった。
おれたちが“普通じゃない”光景を目の当たりにする事となるのは…


「オーイ、全員集まった〜!?それじゃあ、そろそろ始めよっか!!」


 どこからともなく声が、先ほどの校内放送の時のものが聞こえたかと思うと、“ソレ”はいきなり現れた。
白と黒色のカラーリングが、縦で半分に分かれたクマ、か?


「え…?ヌイグルミ……ですか?」
「ヌイグルミじゃないよ!ボクはモノクマだよ!キミたちの、この学園の学園長なのだッ!!」
「学園長……?」


 ここまで何かに視線を奪われたのは、生まれて初めてだったかもしれない。
だが、その対象が、あんな訳の分からない物体だったとは……思いもしなかったが。


「ヨロシクねッ!!」


場違いなほど明るい声。
場違いなほど脳天気な振る舞い。
間違いない、先程の声の主はこいつだろう。
 おれの抱いていた不快感はいつの間にか、底知れない恐怖へと変わっていた。
が、しかし……


「うおおお、スッゲェェェーッ!!!」
「ヌイグルミが喋ったぁぁぁー!!」


その中でも、花月と雅は幼い子供のように目を輝かせていた。


「お、おお、落ち着け!どうせ、ヌイグルミの中にスピーカーが仕込んであるだけだろう!!」
「お前さんが落ち着けよ」


 空気も読めずにはしゃぎだす花月と雅。
それに突っ込む篠田と御剣に、おれは一瞬どうすればいいのか分からなくなる。

ただ、冷静そうな篠田が、この状況にどこか戸惑っているのだけは理解できた。


「だからさぁ、ヌイグルミじゃなくてモノクマなんですけど!しかも、学園長なんですけど!」
「うわぁぁぁぁ!動いたぁぁぁぁっ!!」
「おいマヌケども。そのうるせぇ口閉じねぇと、糸縫い付けて二度としゃべれなくしてやるぞ?」
「雅歌音、花月京、落ち着くんだ!恐らく、ラジコンかなにかだろう」
「しょぼーん。ラジコンなんて子供のおもちゃと一緒にしないで。深く深くマリアナ海溝より深く傷付くよ」
「あ、ごめんなさい。クマさ……じゃなくてモノクマさん」
「米倉、謝らなくていい」


 おれは息を深く吸い込んで、モノクマというぬいぐるみを睨みつける。
やつはこの希望ヶ峰学園の学園長だと言っていたが、仮にこれがオリエンテーションというのなら、ここまでの悪ふざけも大概だ。


「あのねぇボクには、NASAも真っ青の遠隔操作システムが搭載されてて!って、夢をデストロイするような発言をさせないで欲しいクマー!!」
「クマ?ベタなのね」
「じゃあ、進行も押してるんで、さっさと始めちゃうナリよ!」
「それキャラ違うだろ、コロ○ケだろ」
「ご静粛にご静粛に。えー、ではではっ!」
「…諦めた、な」
「起立、礼!オマエラ、おはようございます!」
「「おはようございまーすっ!!」」
「おい、ここは幼稚園か?ぶっ殺すぞ?」


 きゃっきゃっとはしゃぐ花月と雅に不動の苛立った声が混じる。
知らぬが仏、という言葉の通りか。楽しそうだ。


「まあまあ、落ち着いて。では、これより記念すべき入学式を執り行いたいと思います!まず最初に、これから始まるオマエラに学園生活について一言。
えー、オマエラのような才能あふれる高校生は、“世界の希望”に他なりません!そんなすばらしい希望を保護するため、オマエラには“この寮内だけ”で、共同生活を送ってもらいます!みんな仲良く秩序を守って暮らすようにね!」
「は?」
「えー、そしてですね…その共同生活の期限についてなんですが」


なんのことかよく分からないおれたちに、わざとらしく、モノクマは一拍溜めると


「残念!!期限はありませんっ!!つまり、一生ここで暮らしていくのです!それがオマエラに課せられた学園生活なのです!」


きっぱりとそう言い放った。

 一生ここで暮らす?

おれはその言葉を自分の中で繰り返して、雷に打たれたような衝撃を覚えた。



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