二次創作小説(紙ほか)

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ポケモン二次創作 裏の陰謀
日時: 2022/08/02 23:03
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: eldbtQ7Y)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12800

ここはは地球。
この星の不思議な不思議な生き物、ポケットモンスター
ちぢめて「ポケモン」
彼らは、海に大地に空に森に、至るところに生息している。

この世界には『表』『裏』があり、どちらを潰しても作っても、必ず表裏は現れてしまう。5年前それを無くそうとした哀れな小さき人は、結局世界に絶望し、失望し、仲間だけを助けようとしたが、仲間も、自分自身も失い、体を溶かした。これは、そんな世界で旅を始めた4人の少年少女達が『裏』に巻き込まれ、時には巻き込み牙を向け向かれる。そんな誰かを救おうとする哀れな人の物語。

※注意
〇これはポケモン二次創作です。原作とはなんの関係もございません。
〇微グロ注意です。
〇二次創作キャラもいます。殆どがオリキャラ、リクキャラです。
〇こんなのポケモンじゃねぇ!という方は閉じていただいて…
〇総合リクにて連載されているsidestory『最期の足掻き』も見てもらえれば更に楽しめると思います。

【目次】
〇第1部 ~イッシュ編~
始まりの始まり。いや、もう本当は始まっていた。その始まりを活発化させるレイナ、ヒュウ、トモバ、マオが四苦八苦しながら自分に向き合い、自分なりの答えを探す旅。

「登場人物紹介」

ホドモエシティ※ネタバレ注意
(トモバ~私~)時点の紹介 >>86

プロローグ >>1-8

第一章 レイナ 
〜旅に出る〜  >>10-21

第二章 ヒュウ 
〜ジム戦と成し遂げないといけないこと〜 >>24-28

第三章 トモバ 
〜逃げる責任感〜 >>29-34

第四章 マオ  
~目的~ >>35-42

第五章 レイナ 
~信じる~ >>43-51

第5.5章 レイナ 
~進歩~ >>52

第六章 ヒュウ 
〜強さ〜 >>57-73

6.6章 ヒュウ 
〜俺のち俺〜 >>74

第七章 トモバ 
〜私〜 >>75-90

第八章 マオ  
〜PWT〜 >>92-102

第九章 レイナ 
〜過去と仲間と霊 麗菜〜 >>104-111

第十章 ヒュウ 
~海だ!春だ!夏じゃねぇのかよッ!〜
>>112-118

第十一章 トモバ マオ 
〜1歩先へ踏み出すために〜
>>120-124

ーーーーーーーーーー
【短編集】
イッシュ編
マオとレイナのバレンタインデー >>96

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.120 )
日時: 2022/06/18 09:02
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: KqRHiSU0)

第十一章 トモバ マオ 〜1歩先へ踏み出すために〜
 
初めて出会った時は"気味が悪い"その一言に尽きていた。頬がぷっくりと桃色に染まりパーツの位置も綺麗で可愛い。実際。そいつの周りには俺が関わってコネを作る予定だった偉い人々が集まっていた。
 けど、俺はコイツを好きになれない。黒い髪にシワシワで古血を連想させてしまう赤いタオル。そして瞳が奥深くまで濁っていて不気味だ。極めつけは何も喋らない。まるでフランス人形のように喋らず動かずただ虚空を認めていた。
 気味が悪い、怖い彼女を見るとそれしか考えられなくなり、本能的に逃げたくなってしまっていたのだ。

ーーーーーーーーーーー

「えっ、出会い最悪じゃん! 」

 シイナが俺の話を聞いて驚いたように叫ぶ。
俺ことマオ。今はサザナミタウンを抜け、カゴメタウンで一休みし、ソリュウシティまでの道路で野宿をしていた。
 パチパチと鳴る炎を中心に俺らはシチューを食べていた。

「確かに、そんな悪い印象なのに今に至ったのが不思議だねぇ」

 リンドウはニコニコしながらシチューを飲む。俺も不思議である。最初は恐怖の対象だったのに今や幼馴染の1人として迎え入れている。そして、レイナは俺の人生を変えてくれた教師のような存在だった。同い年だけど。

「お偉いさんとのコネを集める…ということは、マオが社長候補だった時の話なんですか?」

 ミツキさんが俺の話を興味深そうに聞く。あの少しの情報で頭が回るのは流石としか言いようがない。

「……まあそうですね。その頃はあまり思い出したくないんですけど。」

 俺はそう言いながら少ししか残ってない冷めたシチューを掻き回しながら、躊躇いながら言った。7歳ぐらいまでの俺は黒歴史のようなものであった。

「そうなんですね。それならあまり詮索はしません……」

「僕は聞きたいよぉ。昔のマオって新鮮そうでワクワクするもん」

 この話を振ったのはミツキさんだ。だからこそ俺の黒歴史の話に発展しそうになっている所で中断しようとした。しかし、リンドウはそんなのお構い無しにグイグイ来る。こういう所だぞ嫌われるのは。
 しかし、黒歴史と言っても半分はいい思い出であることには変わらない。

「長くなるぞ」

 俺はニヤッと笑いリンドウに言った。リンドウほ能天気に『ヤッター! 』と両手を上げて喜んでいる。

「えっ良いの? マオ」

「心配すんなシイナ。俺にとっては半分良い思い出だからさ。」

 そう言って、俺は自然とニヤケながら昔の出来事に思いを馳せていた。

ーーーーーーーーーーー

 初めての出会いはパーティだった。レイ 結香ユカさん……今のレイナの母親だな。その人が世界的な女優の大きな賞を取ったのを祝うパーティであった。その頃俺の親とユカさんには関わりなんてなかったが、間接的な繋がりによって参加することになった。
 ユカさんのマネージャーである赤白セキシロ カナエさん……今のヒュウのお母さんも参加していてな。レイナとヒュウ、ヒュウの妹のメイも参加してたんだ。

「あっ、統治さんの息子さんと娘さんじゃない! ほら、カナエ、ヒユウ君、メイちゃん、レイナ!」

 ある程度顔見知りの他企業の人や財閥の人と挨拶を終えた後、タイミングを見計らったようにユカさんが朗らかにレイナ達を連れて俺たちの元へ来た。今回のパーティはユカさんが主役だが、権力は俺とトモバの方が高かったため、殆ど統治家とのコネを作るチャンスのようなパーティで、俺達も疲れていた。

「チッ、なんだよ。俺らはもう疲れてるんだっつの。」

 当時の俺は激しく荒れており、まあグレていた。今の俺は見た目は不良、中身は普通のつもりでいるが、当時は見た目は不良、中身も不良であった。そのため誰も近づきずらく、殆どトモバに人が集まっていた。そんなトモバを見捨てるわけでもなく、俺はトモバと行動を共にしていた。
 そんな中俺達に話しかけたということはよっぽどユカさんは酔っ払っていたのだろう。

「あっ、こんばんわ。本日はこのようなパーティに及び頂き誠にありがとうございます。我々一族も誇りに思いますわ。」
 
 そしてトモバは逆で、今よりかなり落ち着いた性格であった。目付きは生まれつき悪いが、ストレートロングに片目を隠して俯いている事が多い引っ込み思案なお嬢様だった。
 
 そこで俺とトモバは社交辞令しただけだがそれがレイナ、ヒュウとの初対面だった。

 その後あったのは、俺が旅に出る前に通っていた学校であった。俺たちの学校はイッシュで1番偏差値が高く、お嬢様お坊ちゃまのようなボンボンが集まる私立学校で、大学付属幼等部から高等部まである名のある学校だった。
 俺は元々幼等部からこの学校に通っていたが、レイナとヒュウが幼等部に転入してきた。転入理由はレイナを良い学校に行かせたいユカさんの希望と、それに着いていきたいヒュウの意向であった。編入試験は受験と比べると難易度が跳ね上がる。それを突破して転入してきた2人は良い意味でも悪い意味でも注目が集まった。
 かく言う俺とトモバも興味を持っており、統治家の人間として全生徒を把握しなければならない。という理由を作りヒュウに近づいた。

「俺はマオ、前会っただろ。統治家の長男だ。だから無礼なことしたら家を丸ごと潰してやるからな。」

 と言っても当時の俺は幼く、プライドが無駄に高い不良であったため、かなり高圧的な態度を取ってしまぅた。

「それは困るな! 俺はセキシロ ヒユウ! よろしく頼むゼッ! 」

 大抵の人は俺のその言葉で俺から離れてしまう。けど、ヒュウは違った。この頃のヒュウは今の柏やトモバのようなはっちゃけて明るい性格だった。ヒュウの後ろの席では心ここにあらずと言ったような表情を浮かべ外を見ていたレイナが居た。やはり不気味である。最近生徒内の噂ではレイナが不気味すぎて『呪いの子』というあだ名がつきかけている。だからあまり関わりたくはない。

「えっと、私はトモバと言いますわ。今後ともよろしくなさって?」

 トモバは言葉の節々に照れが垣間見えながらも、レイナに近づく。当時の俺はレイナに近づいた理由等分からなかった。確かに編入試験を通ってきたという珍しさがあるがそれ以上にいじめの対象になりかけてるやつと関わるとろくな事は無い。メリットとデメリットを天秤に置くことすら出来ないのか家の愚妹は。
 そんなことを当時は思っていたが今考えるとトモバの美少女、美少年大好きセンサーが反応したからかもしれない。推測の域からでないが……

「……」

 レイナはチラッとトモバの方を見るとすぐ目線を窓の外に向けた。無視されてると思ったのかトモバはみるみるうちに真っ青になっていき半泣きになり俺の後ろにくっつき始めた。

「あ、あぁ! コイツシャイなだけなんだよ! だから、仲良くやってくれ……」

 ヒュウは苦笑いしながらレイナの頭をがしがしとかく。それをジト目でヒュウをみつめる。何考えてるのかほんっとうにわからない。それ故に怖い。しかしトモバはヒュウの言葉を真に受けて明らかに顔が明るくなる。
そんなんで統治家のご令嬢が務まるのかよ……
俺は単純に不安だった。

ーーーーーーーーーー

レイナ達と出会って数か月。俺とレイナは関係は知り合い以上、友達未満のような微妙な関係だった。ヒュウは不良のようであった俺に対して差別などして遠巻きにせず、逆にいつも1人の俺を心配してくれた。俺もヒュウには心を開いていきいつの間にか俺の寮に誘ってゲームする仲になっていた。
 トモバはレイナとは友達にはなっていないものの、レイナにちょこちょこと着いていくようになった。俺から離れて独り立ちできたのはありがたいが相手が悪い。俺はいつも口酸っぱく『レイナには近づくな』と言っていた。トモバは静かにコクリと頷くも、すぐレイナの元へ向かった。馬の耳に念仏である。

ーーーーーーーーーーー
《トモバ》

「へぇ、意外だな。今回の旅メンバーも幼馴染4人組と俺、ミツキ、ムスカリー中心で構成される程仲がいいのに。昔はそんなんだったのか。」

 微かなランプの明かりの元私ことトモバと、シアン、マツリ、サツキは恋バナに花を咲かせていたのだが、私の恋バナをするうちにレイナとの出会いの話になったのだ。
 シアンは驚きながら私を見つめ、そう言う。他の皆もそうだった。

「最初から皆仲良しだと思ってた!」

「私も……けど、レイナは昔から変わらないんですね……」

  マツリが思ったことをそのまま口に出す。サツキはレイナの親戚だからなのか、レイナの話題に敏感である。

「無い無い! 確かに話してたら変わらないように聞こえるけど、当時のレイナ本っ当に怖かったんだからね?! 」

 私は全力で否定した。6歳児であんな雰囲気やオーラを出せるのは権力を持っている凄い大人を見てきた私でも初めての事だった。

「怖い?! 俺はそう思ったことは無いんだがなぁ」

「目の奥を見ると私も奥底まで引っ張られそうで……それ以外は完璧美少女なんどけど、雰囲気とかオーラがどす黒くて怖かったの! 」

 シアンがうーんと唸ると私は全力でレイナがいかに怖かったかを説明した。今でも覚えている。何も映らない、何も見えないくすみ切った原石のような瞳、何を言っても喋らなく、顔は整ってるため日本人形のような不気味さがあった。

「あー、分かるかも。私も昔……4年前に会った時ね、凄く怖かったの! なんというか雰囲気が、ぶぁぁぁっ! て! 」

「私も、親戚の集まりで毎年会うのですが4年前は本当に怖くて近づけませんでした。」

 1度レイナと会ったことがあるマツリと、親戚のサツキが深々と私に同情する。

「じゃあ、なんでトモバはレイナにベッタリ張り付いてたんだ?」

 シアンが私に質問する。そんなの答えは一つに決まっている。


「あぁ〜んな1万年に1人の美少女が物憂げに居たら危険を承知で近づきあわよくばペロペロさせてもらうのが世の摂理でしょうがいっ!」

「いつかハニートラップとかにかかるなよ……」

 私は立ち上がり熱弁すると3人が呆れたように私を見た。そしてシアンには釘を刺された。

「大丈夫大丈夫私レズビアンだから美少年も好きだけどかかったりはしないよ」

「そういう問題じゃねぇんだけどなぁ」

 私が自慢げにそう言うとシアンは更に呆れて額に手を添えた。私はそろそろ寝袋に入る。

「それでそれで?どうしてトモバ達は今みたいに仲良くなったの?」

 マツリがワクワクしながら聞いてくる。私は最近のようで、古い。懐かしい思い出を振り返る。
 
「それはね……」

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.121 )
日時: 2022/07/01 16:52
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: .HplywZJ)

入学して3ヶ月たった頃、校外学習があった。タチワキコンビナートを見学する行事で、皆バスに乗って見学にしに行き、草むらの横に作られた道路を通りバスは走る予定だった。
 バスの席は組ごとにわかれており、レイナと同じ組だった私は、レイナの隣へ座ろうとすると、ヒュウもレイナの隣へ座ろうとしており、私とヒュウは立ち止まった。

「ごめんな。レイナは俺が着いていないとダメなんだ。だから隣に座らせてくれ」

ヒュウがアハハと言いながらサラッとレイナの隣に座ろうとするが私はレイナの隣の席に片手を置き、ヒュウが座れないようにする。大体、レイナは6歳とは思えないほど大人びている。そのためヒュウがいる必要性が分からなかった私は一生懸命ヒュウを睨みつける。
 当時は自分の鋭い目はコンプレックスで、シアンメトリーで隠していたが今回ばかりは自分のこの悪い目付きに感謝している。

「私……レイナの隣にすわる。」

 が、私は当時……というか今もか。背が高く圧が凄かったヒュウにそれぐらいしか言えなかった。レイナは気にすることも無くずっと外を見ている。その様子を見て先生がやってきた。ショートヘアの40代位の女性の先生である。

「ねぇ何でこんなことで喧嘩してるの? 特に統治さん? 貴方将来の自覚あるのかしら? そして赤白さんも転入出来たからって調子に乗っては行けませんよ。そして霊さん。貴方の話なのに何故無視してるのかしら? 」

 この先生は嫌いだ。嫌味と皮肉をか弱い幼稚園児に吐いてくる。その通りのため反論は出来ないが不快感が半端ではない。今では他の学校に行ってるため何も思うまい。
 ……え?どこに行ったって? 昔の私も子供でね。権力が暴れちゃったのよ。

「すみません。では責任をとってわたくしが霊さんの隣に座らせて頂きますわ」

 私はこれを好機と思いすぐさまレイナの隣に座った。この先生は嫌いだけど今回ばかりはナイスです。そんなことを思いながら自慢げに私はレイナの隣へ座った。ヒュウは不満そうであったが、権力的に私より下で、先生もいたため、反対側の窓側の席へ座った。すかさずそこへマオが座る。
 あぁ、マオとヒュウは仲良かったわね。これで忌々しいヒュウをレイナから話すことが出来たわ!
 私の心は天に昇る程嬉しかったが、冷静に考えると何を喋ろうか分からなかった。いつもちょこちょこレイナに着いて行くだけで喋ることなどしなかった。
 どうしよう、どうしよう。コミュ力はかなりある方だと思うが好きな人の前になると何を言おうか分からなくなってしまう。
 レイナは特に何も思っていないようでずーっと外を見ている。
 バスが発進した。私とレイナの間には沈黙が続く。対して向かい側の席のヒュウとマオは最近のゲームで盛り上がっている。私も何か話さなければ、女の子が好きな話……ファッション? アイドル? いや、違うだろうな。そうだ、レイナが膝に乗せているイーブイに話を降ったらどうだろうか。大体の人は相棒ポケモン等持っていないし、持っていたとしても学校にいる時はボールの中にいるためレイナは珍しい部類である。

「レイナは何でイーブイをいつも出してるのかしら? 」

 私は勇気を出してレイナに話しかける。レイナはその言葉で私の方を見る。ぷっくりとした頬にクリクリっとした大きなお目目、長いまつ毛に赤く染まったほお。深くまで引き込まれそうな瞳はあれど美少女大好き人間の私はその顔に見とれてしまったのである。
 多分私が女の子が好きなのはレイナの影響なのかもしれない。
 レイナは目を閉じてイーブイの頭を撫でる。イーブイは何も反応せずジト目で私のことをずっと見てる。

「……色々あったから、外の世界に出してあげたいの。極力。」

 レイナはそう表情を変えることなくイーブイを撫で続けた。その様子が美しいし可愛い! 話なんて頭に入ってこなかったわ! 高嶺の花と言うよりは自分のペットのようで可愛い見た目! その裏腹で性格は高嶺の花のようなクールで冷徹。このギャップが堪らないのよ……!
 そう私は1人で悶えていたら、バスが大きく揺れた。揺れたというか、急ブレーキをかけた。周りがザワザワし始め私も何があったのか前を見ようとするも背が低いため前が見えない。
 するとドアが開く音がして、色んな人が乗り込んでくる音が聞こえる。

「えー。皆さん。初めまして、今回はVIPの皆様を人質にさせていただきます。」

「オラァ!今すぐ進路変更しろやぁ!」

 何人居るかは分からないし見えないし、見たくもない。極力目立ってこの人達に目をつけられたくない。
 この時が初めて犯罪に巻き込まれた時だったため、疑問よりも恐怖の方が勝っていて、涙目になっていた。

「何なんですか貴方た……ち……」

 先生の威勢が無くなってく。もう何が起こってるのか分からない。チラッと好奇心でジャンプして前を見ると、先生にキリキザンが刃物を突きつけていた。
 思ったより不味い状態だ。
 私は今更そう思った。どうすれば良いのだろうか?電子機器で助けを求めるか?いや、電子機器は先生達に貴重品として預けている。
 そうだ、ボディーガードの人達は? その人たちはこのバスの中に乗っていない。どうしよう、どうしよう。そうガクガクしているとバスジャック犯の1人が私の席にやってくる。そして、私とマオを見る。

「お前らが統治家の人間だな。着いてきてもらうぜ。」

 最初に進路変更を要求した荒々しい人が私とマオの襟を掴み、最前席に座らせる。キリキザンにはジロっと見られ、まるで「いつでも殺せる」と言われてるようで怖い。怖すぎて何も出来ないし、何も言えない。
 ここで動き出したバカは…

「お前ら!いい加減にしろよッ!」

 正義バカのヒュウである。ヒュウは相棒のポカブを繰り出してキリキザンとポケモンバトルをしようとするが…

「おぼっちゃん。ここはバス内ですよ? ここでポケモンバトルをしたら他のVIPも怪我する恐れがあります。」

「あぁ、お前らの娘息子は預かった! 今すぐ5億用意しろ! 」

 冷静な人をが丁寧な口調でヒュウに言う。その横でもう1人は私達の親に身代金の用意を促していた。どうやら金目当てのバスジャックのようである。

「……クソッ!」

 ヒュウは為す術なくそこでドンッと片足を地面に叩きつけ歯ぎしりをしていた。
 私がここでできる最大の事。今までそれをずっと考えていたがようやく踏ん切りが着いた。私は無断で立ち、バスジャック犯達に聞こえるように堂々としたつもりで言った。

わたくし統治トウチ 共羽トモバ。統治グループの一人娘にして統治トウチ 陽炎カゲロウが溺愛する立派な人質です! 統治グループの大きさはご存知でしょう! ですから、私だけを人質にして、他の方は逃がしてください! 」

 その時人生で初めて自分の意見を言った気がした。私は確かにお父様に溺愛されてる統治家の一人娘にして立派な人質である。何も嘘はついてない。ただ、私は時期会長になるほどの立場には無いし、統治家では弱い立場に居ることを言っていないだけである。
 どうせ私に価値なんてないのだから、ここで犠牲になるのが得策でしょう。
 マオが隣で何か講義をしていますが今は関係ありません。
 当時はそんなことを考えてたっけ。我ながら素晴らしいと思ったけどさ、その後、人生を変えるようなことを言われたのよね。本当に、美しかった。

ーーーーーーーーーーー
《レイナ》

 ふと昔の事を思い出してた。トモバとマオが豹変した事件、バスジャック事件についてだ。
 私はモモンの実の缶詰を食べながらフワフワと思い出していた。

 たしかトモバが人質として名乗りを上げたんだっけ。それまでのトモバは私の後ろを黙ってちょこちょこ着いてきてウザったらしくて鬱陶しかったんだけど、その時は少し見直したのよね。
 それと同時に、トモバの心情も分かってしまっていた。私は勘が鋭い方のため分かってしまった。
 トモバは自分に価値等ないと思っている。
 実際統治家の人間だから価値はあるんだけど、この学校の前では霞む、統治家内では価値なんてない。政治利用されるだけと思っていたと思う。まあ、この憶測というか勘は外れてはないでしょうね。外れてたら今は無いもの。
 そして、当時私が思っていたことは……
『気持ちは分かる。けど、それは愚かな事だ。』
 昔の自分と照らし合わせていた。共感してしまっていた。私もトモバの立場ならそうしていたと思う。だけど、だからこそ、自己犠牲は必ずしも誰かを救えることでは無いということも分かっていた。
 極力目立たず、ヒュウ以外関わろうとしなかった私はその時初めて統治トウチ 共羽トモバと関わりたい。そう思った。
 興味があった、というよりは昔の自分を見ているようでいても立っても居られなかったのだ。

「イブイッ! 」

 イーブイが私に鋭い事を言う。私はイーブイを見るが、無視した。『ダメッ!』そんな事言われても、私のからだは勝手に動いていたのだ。これでも昔と比べたら無感情な方だったのに、お人好しなのは変わらなくて今でも反吐が出る。

「……っ! 」

 私は軽い身のこなしと特有の小柄な体型で座席の上を走り、まずキリキザンの首筋を指で突いた。するとキリキザンは糸が切れた操り人形のようにガクッと倒れた。そしてあとは適当にジャック犯達も捌いた。
 一時的にその場はシーンとしたが、我に返った運転手がジュンサーさんに連絡し始める。先生も幼児達のケアをし始めた。

「レッ……レイナ? 」

 すると横の1人用の座席からトモバが私の顔を覗く。私は、言いたいことが沢山ありすぎて何を言おうか悩んだ。1歩間違えればトモバは道を踏み外すかもしれないと不安があった。

「貴方は素晴らしい人間よ。」

 最初に出た言葉はこれだった。そう言うとトモバは苦笑いをしながら私を見つめた。聞き慣れてるのだろうか、それとも……

「えぇ、私は"家柄だけ"は素晴らしい人間ですわ。」

 やはりそう捉えられるか。言葉というものは難しいものである。私は前へ踏み込みトモバの横に両手を付ける。

「違う。統治トウチ 共羽トモバというものに価値がある。人と必死に仲良くなろうとして、本当は美少女、美少年が大好きで、人に不快になって貰わないよう必死で気遣って。それだけで素晴らしい人間何じゃないかしら。」

 トモバは私にちょこちょこといつも張り付いて剥がれなかった。言葉もどこか1歩引いてるようであった。そして、人のことをよく見ている。イーブイの事を話された時もだ。
 それだけ価値のある人間が、こんなことを言っていては洒落にならない。
 
 トモバは私の方を見てただ唖然として、口をパクパクしている。何を言ったらいいのか分からないのだろうか。それでも私は言葉を続ける。

統治トウチ 共羽トモバ。もっと自信を持ちなさい。統治家の1人としても、トモバという1人の人間としても。」

ーーーーーーーーーーー
《トモバ》

 私は長女だが、マオのほうが先に生まれており、男だった。そのため私は産まれてこの方誰にも期待されたことなど無かったのだ。何故なら、時期会長は、マオであったから。統治家の人間として最低限振る舞えるようにするだけの教育を施されてきた。マオ以外、私に近づくのは私の権力かマオの権力目当てで、使用人達にも舐められていた。
 ─あぁ、私に価値なんてなかったんだな─
 その時ようやく私は気づいた。気づいた瞬間。泣き崩れてしまった。少しでも期待されてるとでも思っていたのだろうか。少しでも"トモバ"を見てくれる人が居たと思っていたのだろうか。
 そう思うと自分が滑稽で滑稽で仕方なかった。

 そんな中、レイナに壁ドンをされて、目を見て言われた。『私に価値はあると。』
 私が統治家の名誉を汚さないために隠していた趣味も私に価値が無いと思っていたことも、何もかもレイナにはお見通しで、それを踏まえた上で『私には価値がある。』と言われた。
 嘘だろうか? 統治グループに媚びを売るためのお世辞だろうか?
 そんなことは思ったが、レイナの目を見るとそうでも無いことが分かった。レイナの霞んだ目が、少しだけ輝いていたのだ。霞が少し取れて、"トモバ"に喋ってると目で訴えてくれて。
 ─1人でも私に価値があると言ってくれて─

 私はそこで泣いてしまった。泣き崩れてしまった。
 バスジャック犯達から助かった安心感に自分を肯定してくれる言葉。統治トウチ 共羽トモバでなく、"トモバ"として見てくれた。
 嬉しくて安心して温められて、泪が止まらなかった。それをレイナはそっと私を抱きしめる。

「だから、自己犠牲なんて辞めて……」

 そう言われた。美少女にこんなこと言われたら、従うしかないじゃない……!
 私はそんなことを思いながらずっと泣いていた。鼻水をだらしなくだして、がなり声をバス中に響かせて。

 それこらかな。自分の素で行動し始めたのは。まず髪を切って、お洒落したくてウェーブボブの髪型にして、カチューシャを付けて。人に気を使いながらもフレンドリーで誰でも引っ掻き回すような今のようになったのは。
 そこまで自分の素をだすのは中々難しいとは私も思う。けど、レイナが守ってくれるから大丈夫。っていう根拠もない理由で私ははしゃぎまくった。楽しかった。今も凄く楽しい。
 本当に、レイナには感謝しか無かった。

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.122 )
日時: 2022/07/03 13:32
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: iXLvOGMO)

《マオ》

 バスジャック事件からトモバが明らかに変わった。髪を切ってウェーズをかけて、朗らかになりクラスの中心人物になった。俺が守るまでもない……いや、俺が守れるような隙など無かった。ただ変わってないのはずっとレイナにベッタリということだ。
 トモバが変わったのは嬉しい事だが何とかしてトモバからレイナを離したい。しかしそう簡単に行くはずもなく、俺はクラスの隅っこにいるような存在になってしまった。唯一話してくれるのはヒュウだけとなった。
 秋になり運動会の季節になった。幼等部にも運動会はあり、小規模だが行われるのだ。俺らの学年は二人三脚をすることになっていた。相手はクジで決まる。
 その頃からコミュ障になりかけていた俺は震えながらクジを引いた。すると、相手は……

「……統治トウチ 真緒マオ……」

 レイナが俺の事を見る。相手はレイ 麗菜レイナであった。
 その時初めて学校でひたすらに暴れてやりたいと思った。朝まで家に帰らなかったり、プラズマ団のバイトをしたりそこら辺の不良のような事をしてる俺でも流石に名門校であるこの学校を汚そうとはしなかったが。今回ばかりは暴れても許されるのでは無いだろうか等ふざけたことを考えて現実逃避をしていた。
 まあ、別に二人三脚で一緒になっただけで、最低限の会話だけしとけばいい。
 そう思い練習に励むことになったのだが……

「だぁぁぁっ! お前マジで遅せぇな! 」

 運動の時間。俺たちは一応二人三脚の練習をしていたのだが、レイナが異常に遅い。俺たちの体格は同じぐらいのはずなのに歩幅が合わなければタイミングも合わない。そして足遅いくせにレイナは転ばない。大体俺がひっかかって転ける。
 さっきから膝に切り傷が増え続け我慢の限界だった。

「……」

 レイナは何も言わず俺の事を見る。薄気味悪い。何を思ってるのかも分からない。怖い。
 そんな思考もあったがレイナの無反応は俺の怒りを余計高ぶらせた。なんでコイツは何も言わない? お前のせいでこっちは怪我をしてるんだぞ?

「なぁ、分かってんのかよ! 」

 俺が怒鳴ると他にも二人三脚の練習をしていた子達が黙り始めた。中には俺の怒鳴り声で泣き出す子も出てきて、先生は俺より泣いてる子の対応をする。
 俺はレイナとくっつけていた足を解き、しゃがんでいるレイナを高圧的に見下げた。
 これでもレイナは何も言わないし表情にも出さない。
 それで俺は頭が真っ白になり、いつの間にか拳を振り上げていた。そして勢いよくレイナの頬へぶつけた。

『ドンッ』

 と苦い音と、レイナの顎骨の感触を確かめ腕を振りさげた。レイナは素直に俺の力に任され倒れた。
 周りがザワザワと騒ぎ出すが、先生は俺が殴った現場を見ていなかったのか何があったのかアワアワしている。
 レイナは殴られた方向に顔を向けていたが、その顔を俺の方へ向けてくる。その淀んだ、霞んだ瞳に『なにか』底へ引っ張られそうな気がして、恐ろしくて、イラついて。
 衝動的な色んな感情に任せてもう1発殴ろうとした時、その手を誰かに止められた。

「マオ、辞めろよッ! 」

「レイナ大丈夫?! ほらハンカチ」

 ヒュウとトモバである。
 ヒュウは俺に鋭い目付きで鋭く言った。これはふざけて怒っている時の声と目でない。ガチだ。
 トモバもそっとレイナにハンカチを差し出し、レイナも素直に受け取る。
 先生も状況をようやく理解したようで俺らの間に割って入る。
 主に俺に、『暴力はいけない』だの『レイナの話もちゃんと聞け』だの。レイナが何も話さないのに何を聞いたらいいんだよ。俺の気も知らないくせにコイツは綺麗事ばかり吐きやがる。
 今こそちゃんと文として頭の中で整理出来ているが、当時はそういう概念が頭の中でぐるぐると回って何も言えなかった。ただ言うならば、ずっと先生を睨みつけていた。

ーーーーーーーーーーー

 帰り道で……つっても俺は寮で、ヒュウはヒウオギシティが家のため一緒に帰る時間なんてそんなに無いため、近くの小さな公園のブランコに2人で座っていた。
 いつもは今日あったことを面白交じりに話すのだが、今回は違った。
 俺の怒りは収まっておらず、いつも仲良くしてるのにレイナを庇ったヒュウにも怒りの矛先を向けていた。

「なんでレイナの味方なんかした。」

「いやっ、違う、誤解してるんだマオは! 」

「何が誤解だよ。自分の意見言わずに人の足引っ張って、挙句の果てには俺を悪役に仕立てあげて。」

「それは、違ッ……」

 ヒュウが何を言おうかと、片手で前髪をクシャッとさせて俯く。その様子が余計レイナの味方をしているようで癪に触った。

「もういい。今後とも俺に近づくな。」

 俺はそう言い放ちブランコから降りた。ヒュウは口をパクパクさせているが重要な声を出せていない。
 トモバもヒュウもあんな不気味でいけ好かないレイナにお熱ならもうそれでいいよ。せいぜいレイナをチヤホヤして満足してろ。
 そんな悪態を心の中でつきながら、カバンを手に取った。すると、ヒュウが俺の手を掴む。

「レイナは……口下手なんだ! 」

 何を言うかと思えば大したことじゃなかった。口下手……引っ込み思案。教室の中に数人は必ずいる迷惑女じゃねぇか。余計レイナへの好感度が下がる。

「今度俺がレイナの気持ちを代弁してやるから! だから、もう一度話そう! 」

「は? 無理。」

 俺の決意は硬かった。というかレイナともう一度話すなど考えられなかった。今度二人三脚で無理にでも一緒に居なければならないのなら、また殴ってやろうとも考えていた。
 俺はそのままヒュウに背を向け、唯一の友を失った。

ーーーーーーーーーーー
 《マオ》

「え……え?! ちょっと待って整理させて」

 シイナが上を見て片手で額を抑えている。リンドウは『意外だー』と言いながら素直に驚いている。ミツキさんはニヤニヤしていた。

「不良で……レイナに手を挙げて……ヒユウと亀裂入って……え、これ誰の話?」

「俺の話だよ。」

 シイナがもう頭がパンク状態だとでも言うように頭をガシガシとかいていた。一応お前美少年なんだからきちんとしろよ。つってもここには男しか居ないけど。
 だから、昔の話をするのはあまり好かない。いや、絶対話したくないという訳でもないのだが、話すと大体こういう反応をされるのは分かっているため話すのを躊躇う。

「昔はレイナ嫌いだったんだぁ。てっきりレイナの周りの人達は全員洗脳でもされてレイナ絶対否定させないマンみたいな害悪になると思ったよぉ」

「待ってくれ、今回はお前それ絶対悪意あるだろ」

「さぁー? 」

 リンドウがのんびりとしと口調で俺に言うと、俺はすぐさま切り返した。しかし、リンドウは曖昧な答えで濁す。本当に悪意ない時は無いってハッキリ言うから、濁した今回は悪意ありそうだな。
 というかレイナに洗脳か……確かにレイナの周りにはレイナ否定させないボーイとガールが集まってるよな。代表的なのだとヒュウとトモバ。あとカシワもそうだし、セブンも刺々しい言葉だがレイナにはなんか甘い気がする。
 レイナに冷たいのは俺の親父カゲロウとおクーフぐらいかもしれない。何でだろ。なんか庇護欲をそそられるんだよなレイナを見ていると。一見何考えてるか分からない不気味な奴だけど、関われば関わるほど欠点というか、意外な所が出てきてギャップ萌え的な……あと単純に容姿がいいのもあるかもしれない。学校では容姿が良いのが災いして『呪いの子』とか呼ばれてたけどな。
 意外な所……ポケモンには優しい所とか、人のことちゃんと見てる所とか、何だかんだ人を助ける所とか、あと、潔癖症だからか分からないが食べ物は缶詰しかほぼ食べない所、幽霊は苦手な所とか。
 こう見るとレイナってちゃんと10歳してるんだなと思う。いや、10歳なんだけど、普段のオーラや仕草が10歳らしくないんだよな。
 まあ、それは置いといてだ、続きを話すか。

ーーーーーーーーーーー

 帰り道、俺は走って寮へ戻ろうとしていた。戻る前に幼等部の運動場を通るのだが、底に夕日をバックに二人三脚の練習をしているレイナとトモバが居た。
 何でペアでもない2人が練習してるんだ。レイナと練習してもトモバには何の得も無いのに。
 そんなことを思いながら素通りしようとした時。

「キャーーッ!」

 トモバの甲高い叫び声が聞こえた。俺は流石にそれは見過ごせなかったため振り返ると、レイナが転んでいるだけであった。けど転けて膝から血が出ている。
 ざまぁないぜ。
 俺はその様子を見るのが面白く、少しだけ様子を見ることにした。すると、レイナの傷がみるみる消えてゆく。当時はそれが不思議で仕方なかった。その後PWTでレイナの体質の事を知ることになるが、当時の俺にとってはかなり先の話になる。

「ねぇ、やっぱり辞めようよ! 練習なんて! 」

 トモバがそう言うとレイナは立ち上がりもう1回トモバの肩に手を回す。トモバはレイナのその熱意に負けたのか、また走り出す。そしてレイナが転けてトモバが叫んで……その繰り返しである。
 今思えばレイナと合法的にくっつけるからトモバは何回もレイナと二人三脚をしていたんだろう。まあ、そんなことはどうでもいい。トモバの変態さなんて周知の事実であるのだから。
 そこで、俺は気づいてしまった。レイナが転ける理由、遅い理由。分かってしまった。昔から観察力が鋭い上余計。

「……んだよ。意外とまともじゃねぇか。」

 俺はそんなことを呟き寮へ帰った。
 翌日、運動の時間。その時またレイナと二人三脚の練習をすることになった。今回は先生も俺らのことを重点的に監視している。
 レイナは黙って俺の方に来ると俺の足と自分の足を紐で括り始め、走ろうとする。それを俺が止めた。

「おい。レイ 麗菜レイナ

 俺がそう言うとまた俺達の……運動場の空気がピリついた。先生が完全に俺らをロックオンしてるのと、ヒュウとトモバをこちらを見ているのが分かった。レイナは黙って俺の方を見ている。
 恐ろしい、怖い。昨日までそんなことを思っていたのだが、今は愛おしく思えてしまう。

「あぁぁっ! もう! 」

 俺は自分の手のひらの回転の速さに呆れ頭をかいて自分自身を誤魔化した。そして、俺はレイナに敵意がないことを周りに知らしめた。

「まずお前。俺を怪我させないようにしてんだろ。」

 まあ裏目に出て俺めっちゃ転けてるけどな。なんて事は心の中に収めてレイナの方を指さす。レイナはその時初めて瞳を揺るがせ、下を向く。
 人が下を向く心理は『緊張』『恥ずかしさ』『警戒』『恐怖心』まあ大体ここら辺だ。徐々にレイナという人物像が見えて気がした。

「お前、俺と30m走勝負しろ。」

 俺はそう言うと勝手にレイナを引き連れて線が書かれてる場所に連れてきた。レイナは俺の方を向かず瞬きの回数が多くなる。いつもの俺なら瞳が濁ってて気持ち悪いとか思うんだろうな。
 そんな中、線にお互い立った。俺がよーいドンと呟くとお互い走り始めた。
 思った通り、レイナの方が明らかに俺より早い。しかも走り方がガタガタのためかなり手を抜いてる。自分が俺より早いことをバレないように必死で逆に笑えてきた。

「……」

 走り終えた後、レイナは下をずっと向いていた。はたから見たら不良が2歳年下のか弱い女の子に高圧的に絡んでるように見えるのだろうが、先生は何も言ってこなかった。優秀なのかポンコツなのか……

「まあ、こういうことだ。お前は俺の数倍走るのが早い。それ故俺と息を合わせる事が難しかった。それだけだったら良かったのにお前は俺を転ばせない為に必死で俺の足と合わせようとした。結果走り方がガタガタになって俺が怪我することになった。だろ? 」

 まあ、真相はさっき言った通りだ。しかし当時は昨日までレイナの事を親の仇ぐらい嫌っていたのにそれを許している今の自分とのギャップに困惑して最後の方皮肉のような形になってしまったが悪気は無かった。レイナは何も言わずただた、たじたじとしている。
 こういう時こそしっかりと物を言うべきだろうに。まあ、態度から俺が言ったことはあながちハズレではないことが分かった。
 多分ヒュウやトモバはレイナと直接言葉を交わすのでなく、レイナの態度から色々察して行動を取ってるんだろうな。こりゃ友達できねぇわ。と、当時友達0人の俺が思っていた。

「俺も女だからって遠慮してた部分とあるし、本気で走るから。お前に合わせるから。」

 俺がそう言いながら線が引いてある場所から元の練習場所に戻ろうとするとレイナが目をまん丸くして俺の方を見る。

「早く練習するぞっつってんだよ! 」

 俺はレイナが立ち止まってるため振り返ってそう言った。レイナは顔を上げて俺の事を見る。その様子は『ぱぁっ』と効果音を付けてもいいほどの変わりようだった。昨日まで怖いやつだったのに、たった一日でこんなにも変わるものなのか……
 俺は自身の認識のギャップに戸惑いながらもレイナとの練習が始まった。

ーーーーーーーーーーー
《マオ》

 「ひゅーっ」

 そこでミツキさんが口笛を吹いた。なんかからかわれているようで恥ずかしくなる。それが態度に出たのか、俺は髪をクシャッと握ると横を向いた。

「ツンデレだねぇ」

「今はデレデレだけどね」

「お前らうるせぇ! 」

 リンドウが面白そうに言うとシイナは俺をからかう、俺はどうもすることが出来ずその場で叫んでしまった。一応夜のため、ミツキさんに『しーっ』と注意されてしまった。

「じゃあ、マオはそれがきっかけでレイナが好きになったの?」

「いや、好きではないが……あっ、いや、嫌いでもなくて、逆に好きというか……」

 俺はシイナの質問に答えられずドギマギしているとミツキさんがそれを見て更にニヤニヤしている。リンドウはずっとニコニコしているが……

「マオのレイナへの感情はlikeって分かってるから早くしてくれないかなぁ? 」

 なんか凄くピリついた言葉を俺にぶつけられた。俺はそこで正気に変える。
 論点がズレてる上にそれでドギマギしてるだなんてすっごく恥ずかしかった。そしてリンドウをイラつかせたことも分かった。俺はしおらしくなると真面目に話すことにした。

「そうだな……レイナって人物を認識し始めたのはそれがきっかけだ。まあそれから4年間徐々に慣れて言ったって感じだから、あくまできっかけだけどな。」

 あともう1つレイナとの大イベントがあったが……別に話さなくても良さそうだな。俺ばかり話すのもアレだし。リンドウとシイナとミツキさんは俺の過去話で盛り上がっていた。

「え、じゃあマオは結局レイナの事どう思ってるの?Love?like?」

「like。なんというかまあ、妹みたいな。トモバより妹してるぞ」

 俺はシイナの質問に即答した。レイナには確かに特別な感情はあるがそれは恋愛とかじゃなく、親愛とかに近いものだと思う。そして今や変態と化したトモバと比べると俺より妹してる事に自分で言ってて気がついた。

「いいですね幼馴染、私もそんな人が居たらな……と考えますよ」

 ミツキさんが背伸びしながらそう言った。その後、俺らは俺の過去話で盛り上がった。

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.123 )
日時: 2022/07/09 13:47
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: exZtdiuL)

《レイナ》

 何故急にトモバと出会った日のことを急に思い出していたかと言うと、単純に走馬灯が、流れてきたからである。ヒュウとの出会い……は何回も思い出していたため走馬灯には映らなかったがマオとの出会いが頭の中を駆け巡った。
 ここはソウリュウシティ。アララギ博士曰く、ここのジムリーダーシャガさんはイッシュの伝説ポケモンに詳しいため聞きに行く途中だったのだが……

「レイナ……ちゃん?」

 目の前には赤髪を三つ編みツインテールにしている30代ぐらいの女性。大量の食料を持って帰ろうとしていた所だろうか。容姿は明らかに変わっていたが私は雰囲気ですぐ分かってしまった。

「……アカネ先生?」

「え、知り合い?! 」

 ソウリュウシティにて、ポケセンに向かって街を歩いていた私達はアカネ先生と対面してしまった。人生で会いたくないトップ20ぐらいに入る人である。私何人の恨み買ってるんだろ……
 いや、今はそんな場合じゃない。このままでは喧嘩が発生してしまう。私とセブンが日常的にやり合うチクチク会話でなくアクション付きのガチの喧嘩が。

「レイナちゃん大きくなったわねぇ~」

「えっ?」

 私は予想外のアカネ先生の言葉に驚きを隠せなかった。いや、いつも通りである。いつも通り変わってなかった。だが、アカネ先生を見ていると背筋を舌で舐められてる感覚を覚える。
 相手の眼光が鋭かったり、言葉が刺々しくなったり、体の構え方が変わる。それから相手の敵意を感じ取り本能的に背筋が凍る。これは所謂"殺気"というものだと久々に感じ取られた。

「どういう関係?」

「レイナちゃんの孤児院時代の先生ですぅ」

ムスカリーが私に聞くが、私は答えたくなかったため何も言わないと、アカネ先生が勝手に答えた。カシワとセブンとムスカリーは数秒沈黙している。

「えぇ?!」

 反応が遅いのである。孤児院時代。私が5歳の時の事である。孤児院にいた時間は1年も無いが、その分濃い日常を送ってきた。それが、今の私の人格形成にトドメを指した。
 要するにトラウマの場所である。

「そうだっ! よかったら孤児院……ソウリュウ子供支援センターに来ない? 昔と1つも変わらないし、レイナちゃんの事も聞きたいし! 」

「おぉ! 良いな! レイナも故郷に帰りたいんじゃないか?」

 カシワが悪びれもなく私に話を振る。帰りたい所かトラウマの場所でさえある。ここでアカネ先生を無視してポケセンに行くことは可能であるが、その後の3人からの質問攻めがあると考えると孤児院に行った方が良いかもしれない。
 それに、これは然るべき罰である。

「はい。行きましょう」

 私はそう言った。

ーーーーーーーーーーー

「お兄ちゃん達誰ー!」
「遊ぼー!」
「アカネせんせー! ご飯まだー!」

 孤児院に行くと部屋で遊んでいた子供達がわっと押し寄せてくる。相変わらず数が多い……し、1部不衛生そうな子もいる。別に孤児院側も悪意があるわけでもなく、単純に資金と物資が足りないのだ。
 こういうのを見ると胸をあし掴みにされた感覚を覚える。

「ご飯は別の先生が今から作ってくれるからね。お兄ちゃん達は遊びに来たのよぉ」

アカネ先生がそう言って厨房へ荷物を運び始めると、ムスカリーはそれを手伝う。カシワはすぐ子供達に馴染みおんぶをしてあげたりして早速お守りを始めている。原則、孤児院は旅が出れるようになる10歳まで保護するものなため、私達と同年代の子はいても年上は居ない。
 私はそんなことを思いながらその様子を見ている。セブンは子供が苦手なのか、戯れるのが好きじゃないのか、私と同じくその様子を見ている。
 子供達は私に近寄ってこない。昔から私は子供に好かれない。好かれようとも思わないがそれで良いと思っている。

「ごめんなさい皆さん! 応接間へご案内しますぅ。」

「お忙しい時に訪問してすみません」

「私が好きでさそったんですからぁ。」

 ムスカリーは申し訳なさそうな顔をするとアカネ先生は微笑みながらそう言った。応接間は先生の仕事場の隣の部屋にあり、アルバムやら、各児童の様子が書いてある。ここの先生達は物資はなくとも熱意はあるので児童一人一人の事をよく見てくれていた。今は分からないが……

「そうだ。レイナちゃんはモフモフちゃんのお墓参りに行ってきたらぁ? 」

「故郷に帰って応接間だとつまらないしな! 俺様もそれがいいと思うぜ!」

 アカネ先生が提案するとカシワもそれに乗った。モフモフちゃん。昔飼っていたバッフロンの墓である。
 間違いない。アカネ先生は私に確実に悪意がある。カシワ達から話を聞いてどうするつもりなのだろうか。失望でもさせるつもりなのだろうか。
 それでも良い。元々勝手に作られたグループなのだから勝手に失望された方が得策である。
 そう自分に言い聞かせる。しかし、それでも胸は早鐘を鳴らすのを辞めない。なら、いつもの言葉で収めてやろう。
 私は然るべき罰を受けている。
 そう思った瞬間、鼓動の音は聞こえなくなった。

「そうさせてもらいます。」

 私はそう一言言って裏庭に向かってゆっくりと歩いた。

ーーーーーーーーーーー
 ー応接間ー

「あらぁ、レイナちゃんが旅を?! 大きくなったわぁ。こんなに男連れ回して罪な女ねっ!」

 アカネはムスカリーやセブン、カシワからレイナの話をした。学校に行っていたこと、旅に出たこと、そこで紆余曲折あったこと等等。特にカシワは同じ学校であったため、レイナとのエピソードが底を尽きない。

「そんなんじゃないですよ。確かにこのチーム分けは悪意を案じるとは思いますが……」

「このメンバーでレイナをそんな目で見てるやつは居ないからな!」

 ムスカリーが言葉を濁すとそんなのお構い無しな年頃のカシワは堂々とそう言った。何故堂々なのかはカシワ含め誰も分からなかったが、アカネは『あらあら』と言い、本棚からアルバムを取り出した。

「レイナちゃんの昔のアルバムよ。写ってる部分は少ないけどね」

 アカネが広げたアルバムには、様々な知らない子供がいたが、ちょこちょこレイナの姿を見かける。
 今のような長髪ではなく、肩までのボサボサした髪に頭には今も使ってる赤黒いタオルを巻いている。隣には相変わらずジト目のイーブイに、水色がかった髪をした少女が必ず写っていた。

「この子は……」

「あぁ、この子はミズキっていう子で、レイナの妹よ。」

「妹?! 」

 カシワが水髪の子を指していうとアカネ先生はサラッと衝撃の事実を口にする。するとカシワとムスカリーが声を合わせる。今までの出来事に何も口を出していない、俺ことセブンはその様子を見ながらアカネと言う人物がみるみる不気味に見えていた。
 さっきからレイナへのアカネの態度がどこか刺々しく感じるのだ。それに、妹なら一緒に新たな親に引き取られるものでは無いのか? 少なくともカシワの反応から霊家にはこのミズキという人物は居ないことになる。勘違いかもしれないが、俺はその様子を黙って見つめていた。

「レイナちゃん達はね、虐待から逃げて来たのよ。父親が悪い人でね。2人の女の人を妊娠させたの。だから正しくは腹違いの姉妹になるのだけれど、2人は姉妹のように仲が良かったの。」

「虐待……って」

「当時は珍しい話ではなかったの。ここは特に無法地帯だったからね。そこから逃げてきた姉妹を私達が保護したのよ。」

 おもむろにアカネはレイナの過去話を始めるとカシワもこんな話になるとは思ってなかったのか言葉を詰まらせる。
 この人はわざとやってるのか? レイナの過去を本人の許可無く話し始める。ただデレカシーが無いだけか? 謎は深まるばかりである。

「でも、親権は残っているはずですよね。正式な法に裁かれレイナ達は孤児院に来たのですか?」

「正式な法は裁かれなかった。正しくは捌けなかったかしら。当時……5年前かしら。急に世界中の治安が悪くなったのは知ってる? 」

「えぇ。勿論」

 5年前と言うと俺とカシワは6歳。小学生でもない年で当時のことなど聞いてるだけで知らないため17歳のムスカリーとアカネとの会話になる。

「治安が悪くなってから孤児も犯罪も激増してね。国からも直接は言われなかったけど、『法など良いから1人でも多くの孤児を預かって欲しい』とのお達しだったから園長はやってきた孤児は片っ端から預かっていたの。」

「でもレイナ達には親が居たんですよね。孤児とは言えないのでは?」

さっきから俺とカシワは空いた口が塞がらなく会話に一向に参加出来ておらず、レイナの繊細な過去話を聞かされてばかりである。
 虐待を受けていた。それがどんな内容かは聞きたくもない。しかし、虐待を受けて感情の起伏が無くなったら、レイナのようになるのかもしれない。
 1人で納得している部分があったのだが、なら何故ミズキの瞳はレイナほど濁っていないのだろうか。ミズキも普通の子供とは思えないほど瞳が濁っているが、レイナと比べるとレベルが違う。この頃のレイナは瞳が濁っていると言うより、目が死んでいた。

「それがね……事情を聞いた時、2人は口を揃えてこう言ったのよ。『親を殺してきた』って」

「「「?!」」」

 流石の俺でもポーカーフェイスが保てなくなってしまった。親を、殺してきた? 犯罪じゃないか。いや、当時の状況を聞いていれば裁判にかける事も出来なかったのだろう。多分、レイナみたいな子が溢れかえっていたんだろうな。

「まあ、実際はどうかは分からないわ。結局戸籍不明だったレイナとミズキは私達で預かるしかなくてね。親を殺してきたのも嘘だと思ってたんだけど、1つ、私達の関係を大きく変えた事件が起こったの。」

 途中からアカネの口調がフワフワっとした優しい先生から、棘を隠さなくなった低い言葉を発するようになった。これは不味いでは無いのだろうか? これからレイナが知られて欲しく無い過去を知ることになるかもしれない。止めるべきだろう。そう思い俺は口を開きかけたがムスカリーに止められた。

「続けてください」

 ムスカリーがそう言うと、アカネの口元が三日月のようにニヤけた。聞いてはいけない。聞いたらダメだ。俺の過去を……母親のことを他者に勝手に話されるような物だろう。
 そう思って止めたいのだが、好奇心が勝ってしまった。あの、10歳とは思えないレイナという人物を、知りたくなってしまった。

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.124 )
日時: 2022/07/25 17:47
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: HTIJ/iaZ)

レイナとミズキ含め、基本的に孤児には名前が無い。職員が名付けたり友達同士で名付け合ったりするが、基本的に孤児から出る際に自分自身で名前を決めることになっている。
 当時のレイナとミズキには名前がなく、レイナは0235番、ミズキは0236番と呼ばれていた。ややこしいかも知れないからここではレイナとミズキって呼ぶわね。
 当時の私達はフワフワちゃんと言うバッフロンを飼っていたの。皆フワフワちゃんが大好きでよく遊んでいたわ。元々私……アカネが拾ったポケモンだったんだけど、家では飼えなくて、教育の一環として孤児院で飼うことにしたの。

 けど、事件は起こった。5年前は原因不明の災害が起きたり、政治が唐突に回らなくなり治安が悪くなったから、孤児院には物資が急に届かなくなったの。今まではこんなこと無くて、1000人近くの孤児を集めていても養えるほどの物資や食料があったのに、5年前から唐突に給料も少なくなり、不衛生な子も増えてきた。今でもイッシュの治安は悪い方で、5年前からは改善されてるけど、5年以上前と比べたら明らかに治安は悪い。
 まあ、そんな話は置いといて、物資もだけど、食料も届かなくって、水はポケモンで何とかしたけれど食料だけはどうしようもなかった。
 幼い赤子を優先に食料を回していたら6日間一切食料を貰えない子が出てきてね。毎日泣いてた。中には庭の木の根っこを食べようとした子まで出てきて、てんやわんやだった。
 次の日の朝、先生各自家から食料を持ってきたのだけれど、流石に足らなかった。すると、職員室の外から子供の声がする。その時の時間は4時。子供が起きてる時間じゃなかった。外に出てみるとそこにはレイナちゃんがいた。
 それだけなら良かった。問題はその先。
 血まみれで身体中ベトベトだった。最初はレイナちゃんが怪我したのかと思って慌てて駆け寄ったら違うことにすぐ気づいた。レイナちゃんは片方の腕で何かを引きずっていた。
 その先には……

◇◇◇

「変わり果てたフワフワちゃんの亡骸があったわ」

 俺こと、カシワはその話を黙って聞いてきた。
 アカネさんは落ち着いた様子で淡々と喋っているが、言葉の節々に棘のような物がある。やはりこの話は聞くべきではなかったかもしれない。数分前に好奇心に負けた自分を恨みたい。

「その後、食糧難はどうなったんですか?」

「モフモフちゃん……バッフロンは体が大きくてね。死者はかなり抑えられたのよ」

 ムスカリーが聞いた後、アカネさんの瞳から光が消えた。ぱっちりとした緋色の目が鋭く俺らを刺すような視線になった。
 
「そのバッフロンは……」

「皆に愛されていたわ。私はこの孤児院出身でね。今も家がポケモンを飼える程裕福じゃなかったの。だから実質モフモフちゃんは私の初めてのポケモンだったの」

 俺とセブンは何も言えない。しかし、ムスカリーが淡々と質問をアカネさんに投げかけていく。俺からの角度だとムスカリーがシアンメトリーで顔が見えない。だからどんな表情をしてるかも分からないため余計怖い。

「でも、それで助かった命もあったんですよね」

「えぇ。勿論。けれど、貴方達の相棒ポケモンも同じ状況だったら、今と同じことを言えるのかしら?」

 そこでムスカリーさんは黙ってしまった。昔から学校の道徳の授業……命の授業等は苦手であった。先生が求める回答は分かっていたため、それを答えるだけで良かったが、俺は腑に落ちない部分もあった。
 実際にこの問題に対面してみると本当にキツイ。何を言ったらいいのか分からない。
 他人の俺から見たら『数人の孤児が助かった』と言えるが、自分の相棒ポケモンがモフモフちゃんと同じ立場であったら、それを殺したレイナを許せないだろう。

「分かる? レイナという人物はそういう人なの。人を殺して、ポケモンも無慈悲に殺す。そして、子供だけで大人と大型ポケモンを殺す力を持っている。犯罪者予備軍と言っても過言でないわ」

 アカネさんは真面目な顔で俺たちに言った。普通なら今まで自分が見てきた方を信じるが、レイナは何考えてるか分からないため自分の見てきたレイナの全てを信じられない。
 今まで遊んできた友達だ。殺したとしてもそれは昔の話で、今は違うし、今のレイナを俺は知っている。
 しかし、今の話を踏まえレイナの事を考えると不気味で不気味で仕方がないのだ。
 学校でレイナが『呪いの子』と呼ばれる理由が今初めて分かった。

「俺が絡む人物は俺が決める。けど、アカネの言うことを肝に命じとく」

「それで殺されてからじゃ遅いのよ! 貴方達は犯罪者予備軍と共に旅をして巻き込まれたらどうするの?!」

 セブンが重い口を開くとアカネさんが低く早口で言った。何故そんなにレイナと俺らを離したがるのだろうか。私怨もあるだろうが、言ってることも本心なのかもしれない。
 俺も今、心が揺れている。

「では、俺の昔話をしましょうか」

 唐突にムスカリーが口を開いた。俺とセブンは驚いた顔でムスカリーの方を見る。

「あら、唐突にどうされたのですか?」

「まあ、聞いてくださいよ」

 アカネさんは話を逸らされたことにイラッとしながらも無理やり話を戻そうとはしない。俺らも話がかなり脱線したことに驚きを隠せない。そして、今まで自分のことを話さなかったムスカリーが今話そうとしていることに動揺が隠せない。

「俺はカロス地方の今はもうない小さな村で暮らしていました」

 ムスカリーが腕を組んで顎に乗せる。いつものように明るい声で喋るムスカリー。しかし、ムスカリーが話していることはとても明るそうに思えなかった。

「生まれた時から相棒のリオルと、両親と、友達と、貧しいながらも楽しく暮らしていました。その中には将来旅をする誓いをした親友もいました」

「あら、素敵ですね。孤児院で暮らし、娯楽もポケモンも友達も親も居なかった私とは正反対」

 アカネさんはニコニコ笑いながら両手を組んで頬に添える。そしてサラッと不幸マウントを取っていく。しかし、アカネさん含む孤児院出身はあまり良い過去を持っていないのだろう。

「はい。夢のような日々でした。とてもとても楽しかったです」

 ムスカリーはアカネさんの言葉を諸共せず笑いながら語る。その対応にアカネさんが眉をピクッとさせる。

「ある夜、俺はたまたま近くの森にある秘密基地で寝ていましたが、リオルが慌てて俺を起こしたんです。どうしたんだろうと思い村に戻りました」

 ムスカリーは朗らかな声で語っていく。その朗らかさがどんどん不気味に聞こえる。

「村は真っ赤な炎で覆われていました」

 その瞬間。ムスカリーの声が地の底から響くような声で言った。
 俺ら3人はその言葉に背筋がゾッとした。ムスカリーの故郷が火事になっていたのもあるが、ムスカリーさんのガチトーンさに驚いた。
 アカネさんも嫌悪感を顕にした顔だったものの、ムスカリーの一言でサッと顔が青くなった。

「火事でしょうか。もしかしたら山火事があったのかも。それにしては、土が赤かったのです。木々が真っ赤だったのです。炎の赤さでなく、液体でした」

 ムスカリーは明るい声を維持しようとしてるのか、地を這うような不気味な声が余計怖く思えた。
 火事で血が流れていた? 何があったのだろうか。野生の大型ポケモンにでも襲われたのだろうか。
 なら何故家事が?

「そして、これを引き起こしたのは、1人と一匹でした。赤茶黒いフードを被った男に、翼が赤くなっているリザードン。親も友達もご近所さんも、全て壊したのはその人物でした」

 ムスカリーは腕を下ろした。ムスカリーの声が明るい声に戻る。しかし、話の内容が内容のためその声はとても明るく聞こえない。

「俺はそれからずっと旅をしています。俺の大切な人を全部壊した男を探し出すために。復讐のために」

 ここで初めてムスカリーの旅の目的を知った。ムスカリーがいつから旅をしているかは分からない。しかし、ムスカリーの強さと、統治グループとの繋がらりがある点、リオルがルカリオに進化してる所から、かなり長い時間旅をしているのだろう。

「俺は復讐のために旅をして、コネを最大限に利用し、利用され生きてきました。それに対してレイナは特に旅の目的など決まっていません。俺とレイナを比べたらどちらが危ないのか、汚いのかは見る人によるでしょう」

 ムスカリーの過去話が今レイナに繋がった。
 レイナもムスカリーもとても綺麗とは思えない。しかし、それでも俺はどちらも危ない、悪い奴とは思えない。
 俺はこの旅メンに対しての思いが決まった。いや、元々決まっていたのかもしれない。

「セブン、カシワ。この話を踏まえて、俺とレイナと旅をしたくないと思うかい?」

「思わない。短い期間でも俺はレイナとムスカリーの人柄の良さを理解してるつもりだ」

 俺はニカッと笑いながら言った。ムスカリーは『そう言ってくれると思った』と言いながら俺の方をみた。
 ムスカリーの目は濁っても無ければ鋭くも無かった。それに俺は安心感を覚えた。

「セブンは?」

「愚問だろ。そんなことで旅を抜けるなら俺はとっくの昔に抜けている」

 ムスカリーが聞くとセブンは冷たく言った。こんな重い話を『そんなこと』で済ましてしまうセブンの肝の座り具合に脱帽する。

「……そうなんですか」

 アカネさんは最初に会った時の顔に戻りそう言った。このままヒステリックになって喚き散らすと思っていたが、アカネさんもそれぐらいの常識は持ち合わせていたようである。
 でも、俺がアカネさんなら同じような対応をしていたと思う。寧ろアカネさんより酷かったかもしれない。
 そう思うとアカネさんの対応は幾分大人なのかもしれない。

「お邪魔してしまいました。俺らはここら辺でお暇させていただきます」

 ムスカリーは笑顔で席を立つ。俺らも慌ててムスカリーに続いた。応接間の横扉を引くとすぐ横にレイナが居た。

「あぁ、いたんだレイナ」

 俺はビクッと驚くがムスカリーはニコッと笑って流す。レイナは相変わらず何考えてるか分からないが俯いている。足元にいるイーブイはジト目で俺らを見ている。
 どちらも何考えてるか分からない。

「レイナ。挨拶は済ましたか。行くぞ」

 セブンはいつものように冷たく言い放つが、どこかしら温かみを感じる。レイナは瞼を数秒閉じた後、前を向く。

「聞いてたか?俺らの話」

「私のアルバムを見るところから」

 俺が聞くとレイナが素っ気なく答えた。かなり序盤から聞いていたようである。別に恥ずかしい事は言ってない筈だか何か小っ恥ずかしくなった。
 するとレイナは応接間の前に立ち、俯いているアカネさんの方を向く。

「アカネ先生。悪いことをしました」

 レイナのその言葉にアカネさんはギロッとレイナを睨みつける。レイナは動じてはいないが圧をかけてるようにも思えない。

「ええ。これまでもこれからも忘れることはないわ」

 アカネさんは否定せず暗い声で呻くようにレイナに言った。

「けど、私は私の選択を間違えたとは思いません。アカネ先生。さようなら」

 レイナは一礼すると扉をピシャッと閉めた。
 確かに、アカネ先生が溺愛していたバッフロンを殺して食糧にしたのは褒められる事じゃないが、それにより孤児院を助けたことは悪いことでもない。
 どちらを選択しても正解はない。強いて言うなら結果論である。
 言い方が少し悪いかもしれないが、それでいいと思う。

「モフモフちゃん……」

 アカネさんのその声は俺らに届くことは無かった。

 ◇◇◇

「そろそろ動き出しましょうか」

 ひんやりとした金属で覆われた近未来的な建物。そこにはよく見るプラズマ団は勿論、見たことない幹部に派遣された者、様々な人が揃っていた。

「こちら問題はありません」

 俺はそう言った。雇い主は特に声色を変えることなく他の幹部の報告を聞く。
 もう動き始める。もう終わり始める。
 死を覚悟して行動するのはこれで2回目である。元々死に損ないである。ここで消えられるのなら本望である。
 強いて言うなら、誰かのために死ぬのでなくて、派手な自殺ショーとして様々な人を巻き込む事、レイとユウとリョク、他にもシュウやミソウなど、置いてってしまう心残りはあるし。
 俺が死んだら俺の代わりの人柱が生まれること、シュウの脱走に関与出来ないことを考えると心のそこから抉られる気持ちになる。
 しかし、俺は2代目レイではない。ドクである。人間である。寧ろ人間でここまで生き残れた方が奇跡である。
 それを考えるとやることは全てやったと思う。思いたい。
 死んだら2代目も、ダミも、スイも、アーボも待っているだろうか。笑いながら『何やってんだ』と頭をグリグリされるのだろうか。

「それでは、始めましょう!」

 雇い主の言葉に俺は現実逃避を辞め、ポリゴンZを連れて配置に着いた。

 1歩先へ踏み出すために ~完~


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