二次創作小説(紙ほか)
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- ポケモン二次創作 裏の陰謀
- 日時: 2022/09/29 16:23
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 5VUvCs/q)
- プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12800
ここはは地球。
この星の不思議な不思議な生き物、ポケットモンスター
ちぢめて「ポケモン」
彼らは、海に大地に空に森に、至るところに生息している。
この世界には『表』『裏』があり、どちらを潰しても作っても、必ず表裏は現れてしまう。5年前それを無くそうとした哀れな小さき人は、結局世界に絶望し、失望し、仲間だけを助けようとしたが、仲間も、自分自身も失い、体を溶かした。これは、そんな世界で旅を始めた4人の少年少女達が『裏』に巻き込まれ、時には巻き込み牙を向け向かれる。そんな誰かを救おうとする哀れな人の物語。
※注意
〇これはポケモン二次創作です。原作とはなんの関係もございません。
〇微グロ注意です。
〇二次創作キャラもいます。殆どがオリキャラ、リクキャラです。
〇こんなのポケモンじゃねぇ!という方は閉じていただいて…
〇総合リクにて連載されているsidestory『最期の足掻き』も見てもらえれば更に楽しめると思います。
【目次】
〇第1部 ~イッシュ編~
始まりの始まり。いや、もう本当は始まっていた。その始まりを活発化させるレイナ、ヒュウ、トモバ、マオが四苦八苦しながら自分に向き合い、自分なりの答えを探す旅。
「登場人物紹介」
ホドモエシティ※ネタバレ注意
(トモバ~私~)時点の紹介 >>86
《プロローグ》 >>1-8
【第一章】レイナ
〜旅に出る〜 >>10-21
【第二章】ヒュウ
〜ジム戦と成し遂げないといけないこと〜 >>24-28
【第三章】トモバ
〜逃げる責任感〜 >>29-34
【第四章】マオ
~目的~ >>35-42
【第五章】レイナ
~信じる~ >>43-51
《第5.5章》レイナ
~進歩~ >>52
【第六章】ヒュウ
〜強さ〜 >>57-73
《6.6章》ヒュウ
〜俺のち俺〜 >>74
【第七章】トモバ
〜私〜 >>75-90
【第八章】マオ
〜PWT〜 >>92-102
【第九章】レイナ
〜過去と仲間と霊 麗菜〜 >>104-111
【第十章】ヒュウ
~海だ!春だ!夏じゃねぇのかよッ!〜 >>112-118
【第十一章】トモバ マオ
〜1歩先へ踏み出すために〜 >>120-124
【第十二章】〜終わりの始まり〜
>>125-
ーーーーーーーーーー
【短編集】
イッシュ編
マオとレイナのバレンタインデー >>96
- Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.122 )
- 日時: 2022/07/03 13:32
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: iXLvOGMO)
《マオ》
バスジャック事件からトモバが明らかに変わった。髪を切ってウェーズをかけて、朗らかになりクラスの中心人物になった。俺が守るまでもない……いや、俺が守れるような隙など無かった。ただ変わってないのはずっとレイナにベッタリということだ。
トモバが変わったのは嬉しい事だが何とかしてトモバからレイナを離したい。しかしそう簡単に行くはずもなく、俺はクラスの隅っこにいるような存在になってしまった。唯一話してくれるのはヒュウだけとなった。
秋になり運動会の季節になった。幼等部にも運動会はあり、小規模だが行われるのだ。俺らの学年は二人三脚をすることになっていた。相手はクジで決まる。
その頃からコミュ障になりかけていた俺は震えながらクジを引いた。すると、相手は……
「……統治 真緒……」
レイナが俺の事を見る。相手は霊 麗菜であった。
その時初めて学校でひたすらに暴れてやりたいと思った。朝まで家に帰らなかったり、プラズマ団のバイトをしたりそこら辺の不良のような事をしてる俺でも流石に名門校であるこの学校を汚そうとはしなかったが。今回ばかりは暴れても許されるのでは無いだろうか等ふざけたことを考えて現実逃避をしていた。
まあ、別に二人三脚で一緒になっただけで、最低限の会話だけしとけばいい。
そう思い練習に励むことになったのだが……
「だぁぁぁっ! お前マジで遅せぇな! 」
運動の時間。俺たちは一応二人三脚の練習をしていたのだが、レイナが異常に遅い。俺たちの体格は同じぐらいのはずなのに歩幅が合わなければタイミングも合わない。そして足遅いくせにレイナは転ばない。大体俺がひっかかって転ける。
さっきから膝に切り傷が増え続け我慢の限界だった。
「……」
レイナは何も言わず俺の事を見る。薄気味悪い。何を思ってるのかも分からない。怖い。
そんな思考もあったがレイナの無反応は俺の怒りを余計高ぶらせた。なんでコイツは何も言わない? お前のせいでこっちは怪我をしてるんだぞ?
「なぁ、分かってんのかよ! 」
俺が怒鳴ると他にも二人三脚の練習をしていた子達が黙り始めた。中には俺の怒鳴り声で泣き出す子も出てきて、先生は俺より泣いてる子の対応をする。
俺はレイナとくっつけていた足を解き、しゃがんでいるレイナを高圧的に見下げた。
これでもレイナは何も言わないし表情にも出さない。
それで俺は頭が真っ白になり、いつの間にか拳を振り上げていた。そして勢いよくレイナの頬へぶつけた。
『ドンッ』
と苦い音と、レイナの顎骨の感触を確かめ腕を振りさげた。レイナは素直に俺の力に任され倒れた。
周りがザワザワと騒ぎ出すが、先生は俺が殴った現場を見ていなかったのか何があったのかアワアワしている。
レイナは殴られた方向に顔を向けていたが、その顔を俺の方へ向けてくる。その淀んだ、霞んだ瞳に『なにか』底へ引っ張られそうな気がして、恐ろしくて、イラついて。
衝動的な色んな感情に任せてもう1発殴ろうとした時、その手を誰かに止められた。
「マオ、辞めろよッ! 」
「レイナ大丈夫?! ほらハンカチ」
ヒュウとトモバである。
ヒュウは俺に鋭い目付きで鋭く言った。これはふざけて怒っている時の声と目でない。ガチだ。
トモバもそっとレイナにハンカチを差し出し、レイナも素直に受け取る。
先生も状況をようやく理解したようで俺らの間に割って入る。
主に俺に、『暴力はいけない』だの『レイナの話もちゃんと聞け』だの。レイナが何も話さないのに何を聞いたらいいんだよ。俺の気も知らないくせにコイツは綺麗事ばかり吐きやがる。
今こそちゃんと文として頭の中で整理出来ているが、当時はそういう概念が頭の中でぐるぐると回って何も言えなかった。ただ言うならば、ずっと先生を睨みつけていた。
ーーーーーーーーーーー
帰り道で……つっても俺は寮で、ヒュウはヒウオギシティが家のため一緒に帰る時間なんてそんなに無いため、近くの小さな公園のブランコに2人で座っていた。
いつもは今日あったことを面白交じりに話すのだが、今回は違った。
俺の怒りは収まっておらず、いつも仲良くしてるのにレイナを庇ったヒュウにも怒りの矛先を向けていた。
「なんでレイナの味方なんかした。」
「いやっ、違う、誤解してるんだマオは! 」
「何が誤解だよ。自分の意見言わずに人の足引っ張って、挙句の果てには俺を悪役に仕立てあげて。」
「それは、違ッ……」
ヒュウが何を言おうかと、片手で前髪をクシャッとさせて俯く。その様子が余計レイナの味方をしているようで癪に触った。
「もういい。今後とも俺に近づくな。」
俺はそう言い放ちブランコから降りた。ヒュウは口をパクパクさせているが重要な声を出せていない。
トモバもヒュウもあんな不気味でいけ好かないレイナにお熱ならもうそれでいいよ。せいぜいレイナをチヤホヤして満足してろ。
そんな悪態を心の中でつきながら、カバンを手に取った。すると、ヒュウが俺の手を掴む。
「レイナは……口下手なんだ! 」
何を言うかと思えば大したことじゃなかった。口下手……引っ込み思案。教室の中に数人は必ずいる迷惑女じゃねぇか。余計レイナへの好感度が下がる。
「今度俺がレイナの気持ちを代弁してやるから! だから、もう一度話そう! 」
「は? 無理。」
俺の決意は硬かった。というかレイナともう一度話すなど考えられなかった。今度二人三脚で無理にでも一緒に居なければならないのなら、また殴ってやろうとも考えていた。
俺はそのままヒュウに背を向け、唯一の友を失った。
ーーーーーーーーーーー
《マオ》
「え……え?! ちょっと待って整理させて」
シイナが上を見て片手で額を抑えている。リンドウは『意外だー』と言いながら素直に驚いている。ミツキさんはニヤニヤしていた。
「不良で……レイナに手を挙げて……ヒユウと亀裂入って……え、これ誰の話?」
「俺の話だよ。」
シイナがもう頭がパンク状態だとでも言うように頭をガシガシとかいていた。一応お前美少年なんだからきちんとしろよ。つってもここには男しか居ないけど。
だから、昔の話をするのはあまり好かない。いや、絶対話したくないという訳でもないのだが、話すと大体こういう反応をされるのは分かっているため話すのを躊躇う。
「昔はレイナ嫌いだったんだぁ。てっきりレイナの周りの人達は全員洗脳でもされてレイナ絶対否定させないマンみたいな害悪になると思ったよぉ」
「待ってくれ、今回はお前それ絶対悪意あるだろ」
「さぁー? 」
リンドウがのんびりとしと口調で俺に言うと、俺はすぐさま切り返した。しかし、リンドウは曖昧な答えで濁す。本当に悪意ない時は無いってハッキリ言うから、濁した今回は悪意ありそうだな。
というかレイナに洗脳か……確かにレイナの周りにはレイナ否定させないボーイとガールが集まってるよな。代表的なのだとヒュウとトモバ。あとカシワもそうだし、セブンも刺々しい言葉だがレイナにはなんか甘い気がする。
レイナに冷たいのは俺の親父とお袋ぐらいかもしれない。何でだろ。なんか庇護欲をそそられるんだよなレイナを見ていると。一見何考えてるか分からない不気味な奴だけど、関われば関わるほど欠点というか、意外な所が出てきてギャップ萌え的な……あと単純に容姿がいいのもあるかもしれない。学校では容姿が良いのが災いして『呪いの子』とか呼ばれてたけどな。
意外な所……ポケモンには優しい所とか、人のことちゃんと見てる所とか、何だかんだ人を助ける所とか、あと、潔癖症だからか分からないが食べ物は缶詰しかほぼ食べない所、幽霊は苦手な所とか。
こう見るとレイナってちゃんと10歳してるんだなと思う。いや、10歳なんだけど、普段のオーラや仕草が10歳らしくないんだよな。
まあ、それは置いといてだ、続きを話すか。
ーーーーーーーーーーー
帰り道、俺は走って寮へ戻ろうとしていた。戻る前に幼等部の運動場を通るのだが、底に夕日をバックに二人三脚の練習をしているレイナとトモバが居た。
何でペアでもない2人が練習してるんだ。レイナと練習してもトモバには何の得も無いのに。
そんなことを思いながら素通りしようとした時。
「キャーーッ!」
トモバの甲高い叫び声が聞こえた。俺は流石にそれは見過ごせなかったため振り返ると、レイナが転んでいるだけであった。けど転けて膝から血が出ている。
ざまぁないぜ。
俺はその様子を見るのが面白く、少しだけ様子を見ることにした。すると、レイナの傷がみるみる消えてゆく。当時はそれが不思議で仕方なかった。その後PWTでレイナの体質の事を知ることになるが、当時の俺にとってはかなり先の話になる。
「ねぇ、やっぱり辞めようよ! 練習なんて! 」
トモバがそう言うとレイナは立ち上がりもう1回トモバの肩に手を回す。トモバはレイナのその熱意に負けたのか、また走り出す。そしてレイナが転けてトモバが叫んで……その繰り返しである。
今思えばレイナと合法的にくっつけるからトモバは何回もレイナと二人三脚をしていたんだろう。まあ、そんなことはどうでもいい。トモバの変態さなんて周知の事実であるのだから。
そこで、俺は気づいてしまった。レイナが転ける理由、遅い理由。分かってしまった。昔から観察力が鋭い上余計。
「……んだよ。意外とまともじゃねぇか。」
俺はそんなことを呟き寮へ帰った。
翌日、運動の時間。その時またレイナと二人三脚の練習をすることになった。今回は先生も俺らのことを重点的に監視している。
レイナは黙って俺の方に来ると俺の足と自分の足を紐で括り始め、走ろうとする。それを俺が止めた。
「おい。霊 麗菜」
俺がそう言うとまた俺達の……運動場の空気がピリついた。先生が完全に俺らをロックオンしてるのと、ヒュウとトモバをこちらを見ているのが分かった。レイナは黙って俺の方を見ている。
恐ろしい、怖い。昨日までそんなことを思っていたのだが、今は愛おしく思えてしまう。
「あぁぁっ! もう! 」
俺は自分の手のひらの回転の速さに呆れ頭をかいて自分自身を誤魔化した。そして、俺はレイナに敵意がないことを周りに知らしめた。
「まずお前。俺を怪我させないようにしてんだろ。」
まあ裏目に出て俺めっちゃ転けてるけどな。なんて事は心の中に収めてレイナの方を指さす。レイナはその時初めて瞳を揺るがせ、下を向く。
人が下を向く心理は『緊張』『恥ずかしさ』『警戒』『恐怖心』まあ大体ここら辺だ。徐々にレイナという人物像が見えて気がした。
「お前、俺と30m走勝負しろ。」
俺はそう言うと勝手にレイナを引き連れて線が書かれてる場所に連れてきた。レイナは俺の方を向かず瞬きの回数が多くなる。いつもの俺なら瞳が濁ってて気持ち悪いとか思うんだろうな。
そんな中、線にお互い立った。俺がよーいドンと呟くとお互い走り始めた。
思った通り、レイナの方が明らかに俺より早い。しかも走り方がガタガタのためかなり手を抜いてる。自分が俺より早いことをバレないように必死で逆に笑えてきた。
「……」
走り終えた後、レイナは下をずっと向いていた。はたから見たら不良が2歳年下のか弱い女の子に高圧的に絡んでるように見えるのだろうが、先生は何も言ってこなかった。優秀なのかポンコツなのか……
「まあ、こういうことだ。お前は俺の数倍走るのが早い。それ故俺と息を合わせる事が難しかった。それだけだったら良かったのにお前は俺を転ばせない為に必死で俺の足と合わせようとした。結果走り方がガタガタになって俺が怪我することになった。だろ? 」
まあ、真相はさっき言った通りだ。しかし当時は昨日までレイナの事を親の仇ぐらい嫌っていたのにそれを許している今の自分とのギャップに困惑して最後の方皮肉のような形になってしまったが悪気は無かった。レイナは何も言わずただた、たじたじとしている。
こういう時こそしっかりと物を言うべきだろうに。まあ、態度から俺が言ったことはあながちハズレではないことが分かった。
多分ヒュウやトモバはレイナと直接言葉を交わすのでなく、レイナの態度から色々察して行動を取ってるんだろうな。こりゃ友達できねぇわ。と、当時友達0人の俺が思っていた。
「俺も女だからって遠慮してた部分とあるし、本気で走るから。お前に合わせるから。」
俺がそう言いながら線が引いてある場所から元の練習場所に戻ろうとするとレイナが目をまん丸くして俺の方を見る。
「早く練習するぞっつってんだよ! 」
俺はレイナが立ち止まってるため振り返ってそう言った。レイナは顔を上げて俺の事を見る。その様子は『ぱぁっ』と効果音を付けてもいいほどの変わりようだった。昨日まで怖いやつだったのに、たった一日でこんなにも変わるものなのか……
俺は自身の認識のギャップに戸惑いながらもレイナとの練習が始まった。
ーーーーーーーーーーー
《マオ》
「ひゅーっ」
そこでミツキさんが口笛を吹いた。なんかからかわれているようで恥ずかしくなる。それが態度に出たのか、俺は髪をクシャッと握ると横を向いた。
「ツンデレだねぇ」
「今はデレデレだけどね」
「お前らうるせぇ! 」
リンドウが面白そうに言うとシイナは俺をからかう、俺はどうもすることが出来ずその場で叫んでしまった。一応夜のため、ミツキさんに『しーっ』と注意されてしまった。
「じゃあ、マオはそれがきっかけでレイナが好きになったの?」
「いや、好きではないが……あっ、いや、嫌いでもなくて、逆に好きというか……」
俺はシイナの質問に答えられずドギマギしているとミツキさんがそれを見て更にニヤニヤしている。リンドウはずっとニコニコしているが……
「マオのレイナへの感情はlikeって分かってるから早くしてくれないかなぁ? 」
なんか凄くピリついた言葉を俺にぶつけられた。俺はそこで正気に変える。
論点がズレてる上にそれでドギマギしてるだなんてすっごく恥ずかしかった。そしてリンドウをイラつかせたことも分かった。俺はしおらしくなると真面目に話すことにした。
「そうだな……レイナって人物を認識し始めたのはそれがきっかけだ。まあそれから4年間徐々に慣れて言ったって感じだから、あくまできっかけだけどな。」
あともう1つレイナとの大イベントがあったが……別に話さなくても良さそうだな。俺ばかり話すのもアレだし。リンドウとシイナとミツキさんは俺の過去話で盛り上がっていた。
「え、じゃあマオは結局レイナの事どう思ってるの?Love?like?」
「like。なんというかまあ、妹みたいな。トモバより妹してるぞ」
俺はシイナの質問に即答した。レイナには確かに特別な感情はあるがそれは恋愛とかじゃなく、親愛とかに近いものだと思う。そして今や変態と化したトモバと比べると俺より妹してる事に自分で言ってて気がついた。
「いいですね幼馴染、私もそんな人が居たらな……と考えますよ」
ミツキさんが背伸びしながらそう言った。その後、俺らは俺の過去話で盛り上がった。
- Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.123 )
- 日時: 2022/07/09 13:47
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: exZtdiuL)
《レイナ》
何故急にトモバと出会った日のことを急に思い出していたかと言うと、単純に走馬灯が、流れてきたからである。ヒュウとの出会い……は何回も思い出していたため走馬灯には映らなかったがマオとの出会いが頭の中を駆け巡った。
ここはソウリュウシティ。アララギ博士曰く、ここのジムリーダーシャガさんはイッシュの伝説ポケモンに詳しいため聞きに行く途中だったのだが……
「レイナ……ちゃん?」
目の前には赤髪を三つ編みツインテールにしている30代ぐらいの女性。大量の食料を持って帰ろうとしていた所だろうか。容姿は明らかに変わっていたが私は雰囲気ですぐ分かってしまった。
「……アカネ先生?」
「え、知り合い?! 」
ソウリュウシティにて、ポケセンに向かって街を歩いていた私達はアカネ先生と対面してしまった。人生で会いたくないトップ20ぐらいに入る人である。私何人の恨み買ってるんだろ……
いや、今はそんな場合じゃない。このままでは喧嘩が発生してしまう。私とセブンが日常的にやり合うチクチク会話でなくアクション付きのガチの喧嘩が。
「レイナちゃん大きくなったわねぇ~」
「えっ?」
私は予想外のアカネ先生の言葉に驚きを隠せなかった。いや、いつも通りである。いつも通り変わってなかった。だが、アカネ先生を見ていると背筋を舌で舐められてる感覚を覚える。
相手の眼光が鋭かったり、言葉が刺々しくなったり、体の構え方が変わる。それから相手の敵意を感じ取り本能的に背筋が凍る。これは所謂"殺気"というものだと久々に感じ取られた。
「どういう関係?」
「レイナちゃんの孤児院時代の先生ですぅ」
ムスカリーが私に聞くが、私は答えたくなかったため何も言わないと、アカネ先生が勝手に答えた。カシワとセブンとムスカリーは数秒沈黙している。
「えぇ?!」
反応が遅いのである。孤児院時代。私が5歳の時の事である。孤児院にいた時間は1年も無いが、その分濃い日常を送ってきた。それが、今の私の人格形成にトドメを指した。
要するにトラウマの場所である。
「そうだっ! よかったら孤児院……ソウリュウ子供支援センターに来ない? 昔と1つも変わらないし、レイナちゃんの事も聞きたいし! 」
「おぉ! 良いな! レイナも故郷に帰りたいんじゃないか?」
カシワが悪びれもなく私に話を振る。帰りたい所かトラウマの場所でさえある。ここでアカネ先生を無視してポケセンに行くことは可能であるが、その後の3人からの質問攻めがあると考えると孤児院に行った方が良いかもしれない。
それに、これは然るべき罰である。
「はい。行きましょう」
私はそう言った。
ーーーーーーーーーーー
「お兄ちゃん達誰ー!」
「遊ぼー!」
「アカネせんせー! ご飯まだー!」
孤児院に行くと部屋で遊んでいた子供達がわっと押し寄せてくる。相変わらず数が多い……し、1部不衛生そうな子もいる。別に孤児院側も悪意があるわけでもなく、単純に資金と物資が足りないのだ。
こういうのを見ると胸をあし掴みにされた感覚を覚える。
「ご飯は別の先生が今から作ってくれるからね。お兄ちゃん達は遊びに来たのよぉ」
アカネ先生がそう言って厨房へ荷物を運び始めると、ムスカリーはそれを手伝う。カシワはすぐ子供達に馴染みおんぶをしてあげたりして早速お守りを始めている。原則、孤児院は旅が出れるようになる10歳まで保護するものなため、私達と同年代の子はいても年上は居ない。
私はそんなことを思いながらその様子を見ている。セブンは子供が苦手なのか、戯れるのが好きじゃないのか、私と同じくその様子を見ている。
子供達は私に近寄ってこない。昔から私は子供に好かれない。好かれようとも思わないがそれで良いと思っている。
「ごめんなさい皆さん! 応接間へご案内しますぅ。」
「お忙しい時に訪問してすみません」
「私が好きでさそったんですからぁ。」
ムスカリーは申し訳なさそうな顔をするとアカネ先生は微笑みながらそう言った。応接間は先生の仕事場の隣の部屋にあり、アルバムやら、各児童の様子が書いてある。ここの先生達は物資はなくとも熱意はあるので児童一人一人の事をよく見てくれていた。今は分からないが……
「そうだ。レイナちゃんはモフモフちゃんのお墓参りに行ってきたらぁ? 」
「故郷に帰って応接間だとつまらないしな! 俺様もそれがいいと思うぜ!」
アカネ先生が提案するとカシワもそれに乗った。モフモフちゃん。昔飼っていたバッフロンの墓である。
間違いない。アカネ先生は私に確実に悪意がある。カシワ達から話を聞いてどうするつもりなのだろうか。失望でもさせるつもりなのだろうか。
それでも良い。元々勝手に作られたグループなのだから勝手に失望された方が得策である。
そう自分に言い聞かせる。しかし、それでも胸は早鐘を鳴らすのを辞めない。なら、いつもの言葉で収めてやろう。
私は然るべき罰を受けている。
そう思った瞬間、鼓動の音は聞こえなくなった。
「そうさせてもらいます。」
私はそう一言言って裏庭に向かってゆっくりと歩いた。
ーーーーーーーーーーー
ー応接間ー
「あらぁ、レイナちゃんが旅を?! 大きくなったわぁ。こんなに男連れ回して罪な女ねっ!」
アカネはムスカリーやセブン、カシワからレイナの話をした。学校に行っていたこと、旅に出たこと、そこで紆余曲折あったこと等等。特にカシワは同じ学校であったため、レイナとのエピソードが底を尽きない。
「そんなんじゃないですよ。確かにこのチーム分けは悪意を案じるとは思いますが……」
「このメンバーでレイナをそんな目で見てるやつは居ないからな!」
ムスカリーが言葉を濁すとそんなのお構い無しな年頃のカシワは堂々とそう言った。何故堂々なのかはカシワ含め誰も分からなかったが、アカネは『あらあら』と言い、本棚からアルバムを取り出した。
「レイナちゃんの昔のアルバムよ。写ってる部分は少ないけどね」
アカネが広げたアルバムには、様々な知らない子供がいたが、ちょこちょこレイナの姿を見かける。
今のような長髪ではなく、肩までのボサボサした髪に頭には今も使ってる赤黒いタオルを巻いている。隣には相変わらずジト目のイーブイに、水色がかった髪をした少女が必ず写っていた。
「この子は……」
「あぁ、この子はミズキっていう子で、レイナの妹よ。」
「妹?! 」
カシワが水髪の子を指していうとアカネ先生はサラッと衝撃の事実を口にする。するとカシワとムスカリーが声を合わせる。今までの出来事に何も口を出していない、俺ことセブンはその様子を見ながらアカネと言う人物がみるみる不気味に見えていた。
さっきからレイナへのアカネの態度がどこか刺々しく感じるのだ。それに、妹なら一緒に新たな親に引き取られるものでは無いのか? 少なくともカシワの反応から霊家にはこのミズキという人物は居ないことになる。勘違いかもしれないが、俺はその様子を黙って見つめていた。
「レイナちゃん達はね、虐待から逃げて来たのよ。父親が悪い人でね。2人の女の人を妊娠させたの。だから正しくは腹違いの姉妹になるのだけれど、2人は姉妹のように仲が良かったの。」
「虐待……って」
「当時は珍しい話ではなかったの。ここは特に無法地帯だったからね。そこから逃げてきた姉妹を私達が保護したのよ。」
おもむろにアカネはレイナの過去話を始めるとカシワもこんな話になるとは思ってなかったのか言葉を詰まらせる。
この人はわざとやってるのか? レイナの過去を本人の許可無く話し始める。ただデレカシーが無いだけか? 謎は深まるばかりである。
「でも、親権は残っているはずですよね。正式な法に裁かれレイナ達は孤児院に来たのですか?」
「正式な法は裁かれなかった。正しくは捌けなかったかしら。当時……5年前かしら。急に世界中の治安が悪くなったのは知ってる? 」
「えぇ。勿論」
5年前と言うと俺とカシワは6歳。小学生でもない年で当時のことなど聞いてるだけで知らないため17歳のムスカリーとアカネとの会話になる。
「治安が悪くなってから孤児も犯罪も激増してね。国からも直接は言われなかったけど、『法など良いから1人でも多くの孤児を預かって欲しい』とのお達しだったから園長はやってきた孤児は片っ端から預かっていたの。」
「でもレイナ達には親が居たんですよね。孤児とは言えないのでは?」
さっきから俺とカシワは空いた口が塞がらなく会話に一向に参加出来ておらず、レイナの繊細な過去話を聞かされてばかりである。
虐待を受けていた。それがどんな内容かは聞きたくもない。しかし、虐待を受けて感情の起伏が無くなったら、レイナのようになるのかもしれない。
1人で納得している部分があったのだが、なら何故ミズキの瞳はレイナほど濁っていないのだろうか。ミズキも普通の子供とは思えないほど瞳が濁っているが、レイナと比べるとレベルが違う。この頃のレイナは瞳が濁っていると言うより、目が死んでいた。
「それがね……事情を聞いた時、2人は口を揃えてこう言ったのよ。『親を殺してきた』って」
「「「?!」」」
流石の俺でもポーカーフェイスが保てなくなってしまった。親を、殺してきた? 犯罪じゃないか。いや、当時の状況を聞いていれば裁判にかける事も出来なかったのだろう。多分、レイナみたいな子が溢れかえっていたんだろうな。
「まあ、実際はどうかは分からないわ。結局戸籍不明だったレイナとミズキは私達で預かるしかなくてね。親を殺してきたのも嘘だと思ってたんだけど、1つ、私達の関係を大きく変えた事件が起こったの。」
途中からアカネの口調がフワフワっとした優しい先生から、棘を隠さなくなった低い言葉を発するようになった。これは不味いでは無いのだろうか? これからレイナが知られて欲しく無い過去を知ることになるかもしれない。止めるべきだろう。そう思い俺は口を開きかけたがムスカリーに止められた。
「続けてください」
ムスカリーがそう言うと、アカネの口元が三日月のようにニヤけた。聞いてはいけない。聞いたらダメだ。俺の過去を……母親のことを他者に勝手に話されるような物だろう。
そう思って止めたいのだが、好奇心が勝ってしまった。あの、10歳とは思えないレイナという人物を、知りたくなってしまった。
- Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.124 )
- 日時: 2022/07/25 17:47
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: HTIJ/iaZ)
レイナとミズキ含め、基本的に孤児には名前が無い。職員が名付けたり友達同士で名付け合ったりするが、基本的に孤児から出る際に自分自身で名前を決めることになっている。
当時のレイナとミズキには名前がなく、レイナは0235番、ミズキは0236番と呼ばれていた。ややこしいかも知れないからここではレイナとミズキって呼ぶわね。
当時の私達はフワフワちゃんと言うバッフロンを飼っていたの。皆フワフワちゃんが大好きでよく遊んでいたわ。元々私……アカネが拾ったポケモンだったんだけど、家では飼えなくて、教育の一環として孤児院で飼うことにしたの。
けど、事件は起こった。5年前は原因不明の災害が起きたり、政治が唐突に回らなくなり治安が悪くなったから、孤児院には物資が急に届かなくなったの。今まではこんなこと無くて、1000人近くの孤児を集めていても養えるほどの物資や食料があったのに、5年前から唐突に給料も少なくなり、不衛生な子も増えてきた。今でもイッシュの治安は悪い方で、5年前からは改善されてるけど、5年以上前と比べたら明らかに治安は悪い。
まあ、そんな話は置いといて、物資もだけど、食料も届かなくって、水はポケモンで何とかしたけれど食料だけはどうしようもなかった。
幼い赤子を優先に食料を回していたら6日間一切食料を貰えない子が出てきてね。毎日泣いてた。中には庭の木の根っこを食べようとした子まで出てきて、てんやわんやだった。
次の日の朝、先生各自家から食料を持ってきたのだけれど、流石に足らなかった。すると、職員室の外から子供の声がする。その時の時間は4時。子供が起きてる時間じゃなかった。外に出てみるとそこにはレイナちゃんがいた。
それだけなら良かった。問題はその先。
血まみれで身体中ベトベトだった。最初はレイナちゃんが怪我したのかと思って慌てて駆け寄ったら違うことにすぐ気づいた。レイナちゃんは片方の腕で何かを引きずっていた。
その先には……
◇◇◇
「変わり果てたフワフワちゃんの亡骸があったわ」
俺こと、カシワはその話を黙って聞いてきた。
アカネさんは落ち着いた様子で淡々と喋っているが、言葉の節々に棘のような物がある。やはりこの話は聞くべきではなかったかもしれない。数分前に好奇心に負けた自分を恨みたい。
「その後、食糧難はどうなったんですか?」
「モフモフちゃん……バッフロンは体が大きくてね。死者はかなり抑えられたのよ」
ムスカリーが聞いた後、アカネさんの瞳から光が消えた。ぱっちりとした緋色の目が鋭く俺らを刺すような視線になった。
「そのバッフロンは……」
「皆に愛されていたわ。私はこの孤児院出身でね。今も家がポケモンを飼える程裕福じゃなかったの。だから実質モフモフちゃんは私の初めてのポケモンだったの」
俺とセブンは何も言えない。しかし、ムスカリーが淡々と質問をアカネさんに投げかけていく。俺からの角度だとムスカリーがシアンメトリーで顔が見えない。だからどんな表情をしてるかも分からないため余計怖い。
「でも、それで助かった命もあったんですよね」
「えぇ。勿論。けれど、貴方達の相棒ポケモンも同じ状況だったら、今と同じことを言えるのかしら?」
そこでムスカリーさんは黙ってしまった。昔から学校の道徳の授業……命の授業等は苦手であった。先生が求める回答は分かっていたため、それを答えるだけで良かったが、俺は腑に落ちない部分もあった。
実際にこの問題に対面してみると本当にキツイ。何を言ったらいいのか分からない。
他人の俺から見たら『数人の孤児が助かった』と言えるが、自分の相棒ポケモンがモフモフちゃんと同じ立場であったら、それを殺したレイナを許せないだろう。
「分かる? レイナという人物はそういう人なの。人を殺して、ポケモンも無慈悲に殺す。そして、子供だけで大人と大型ポケモンを殺す力を持っている。犯罪者予備軍と言っても過言でないわ」
アカネさんは真面目な顔で俺たちに言った。普通なら今まで自分が見てきた方を信じるが、レイナは何考えてるか分からないため自分の見てきたレイナの全てを信じられない。
今まで遊んできた友達だ。殺したとしてもそれは昔の話で、今は違うし、今のレイナを俺は知っている。
しかし、今の話を踏まえレイナの事を考えると不気味で不気味で仕方がないのだ。
学校でレイナが『呪いの子』と呼ばれる理由が今初めて分かった。
「俺が絡む人物は俺が決める。けど、アカネの言うことを肝に命じとく」
「それで殺されてからじゃ遅いのよ! 貴方達は犯罪者予備軍と共に旅をして巻き込まれたらどうするの?!」
セブンが重い口を開くとアカネさんが低く早口で言った。何故そんなにレイナと俺らを離したがるのだろうか。私怨もあるだろうが、言ってることも本心なのかもしれない。
俺も今、心が揺れている。
「では、俺の昔話をしましょうか」
唐突にムスカリーが口を開いた。俺とセブンは驚いた顔でムスカリーの方を見る。
「あら、唐突にどうされたのですか?」
「まあ、聞いてくださいよ」
アカネさんは話を逸らされたことにイラッとしながらも無理やり話を戻そうとはしない。俺らも話がかなり脱線したことに驚きを隠せない。そして、今まで自分のことを話さなかったムスカリーが今話そうとしていることに動揺が隠せない。
「俺はカロス地方の今はもうない小さな村で暮らしていました」
ムスカリーが腕を組んで顎に乗せる。いつものように明るい声で喋るムスカリー。しかし、ムスカリーが話していることはとても明るそうに思えなかった。
「生まれた時から相棒のリオルと、両親と、友達と、貧しいながらも楽しく暮らしていました。その中には将来旅をする誓いをした親友もいました」
「あら、素敵ですね。孤児院で暮らし、娯楽もポケモンも友達も親も居なかった私とは正反対」
アカネさんはニコニコ笑いながら両手を組んで頬に添える。そしてサラッと不幸マウントを取っていく。しかし、アカネさん含む孤児院出身はあまり良い過去を持っていないのだろう。
「はい。夢のような日々でした。とてもとても楽しかったです」
ムスカリーはアカネさんの言葉を諸共せず笑いながら語る。その対応にアカネさんが眉をピクッとさせる。
「ある夜、俺はたまたま近くの森にある秘密基地で寝ていましたが、リオルが慌てて俺を起こしたんです。どうしたんだろうと思い村に戻りました」
ムスカリーは朗らかな声で語っていく。その朗らかさがどんどん不気味に聞こえる。
「村は真っ赤な炎で覆われていました」
その瞬間。ムスカリーの声が地の底から響くような声で言った。
俺ら3人はその言葉に背筋がゾッとした。ムスカリーの故郷が火事になっていたのもあるが、ムスカリーさんのガチトーンさに驚いた。
アカネさんも嫌悪感を顕にした顔だったものの、ムスカリーの一言でサッと顔が青くなった。
「火事でしょうか。もしかしたら山火事があったのかも。それにしては、土が赤かったのです。木々が真っ赤だったのです。炎の赤さでなく、液体でした」
ムスカリーは明るい声を維持しようとしてるのか、地を這うような不気味な声が余計怖く思えた。
火事で血が流れていた? 何があったのだろうか。野生の大型ポケモンにでも襲われたのだろうか。
なら何故家事が?
「そして、これを引き起こしたのは、1人と一匹でした。赤茶黒いフードを被った男に、翼が赤くなっているリザードン。親も友達もご近所さんも、全て壊したのはその人物でした」
ムスカリーは腕を下ろした。ムスカリーの声が明るい声に戻る。しかし、話の内容が内容のためその声はとても明るく聞こえない。
「俺はそれからずっと旅をしています。俺の大切な人を全部壊した男を探し出すために。復讐のために」
ここで初めてムスカリーの旅の目的を知った。ムスカリーがいつから旅をしているかは分からない。しかし、ムスカリーの強さと、統治グループとの繋がらりがある点、リオルがルカリオに進化してる所から、かなり長い時間旅をしているのだろう。
「俺は復讐のために旅をして、コネを最大限に利用し、利用され生きてきました。それに対してレイナは特に旅の目的など決まっていません。俺とレイナを比べたらどちらが危ないのか、汚いのかは見る人によるでしょう」
ムスカリーの過去話が今レイナに繋がった。
レイナもムスカリーもとても綺麗とは思えない。しかし、それでも俺はどちらも危ない、悪い奴とは思えない。
俺はこの旅メンに対しての思いが決まった。いや、元々決まっていたのかもしれない。
「セブン、カシワ。この話を踏まえて、俺とレイナと旅をしたくないと思うかい?」
「思わない。短い期間でも俺はレイナとムスカリーの人柄の良さを理解してるつもりだ」
俺はニカッと笑いながら言った。ムスカリーは『そう言ってくれると思った』と言いながら俺の方をみた。
ムスカリーの目は濁っても無ければ鋭くも無かった。それに俺は安心感を覚えた。
「セブンは?」
「愚問だろ。そんなことで旅を抜けるなら俺はとっくの昔に抜けている」
ムスカリーが聞くとセブンは冷たく言った。こんな重い話を『そんなこと』で済ましてしまうセブンの肝の座り具合に脱帽する。
「……そうなんですか」
アカネさんは最初に会った時の顔に戻りそう言った。このままヒステリックになって喚き散らすと思っていたが、アカネさんもそれぐらいの常識は持ち合わせていたようである。
でも、俺がアカネさんなら同じような対応をしていたと思う。寧ろアカネさんより酷かったかもしれない。
そう思うとアカネさんの対応は幾分大人なのかもしれない。
「お邪魔してしまいました。俺らはここら辺でお暇させていただきます」
ムスカリーは笑顔で席を立つ。俺らも慌ててムスカリーに続いた。応接間の横扉を引くとすぐ横にレイナが居た。
「あぁ、いたんだレイナ」
俺はビクッと驚くがムスカリーはニコッと笑って流す。レイナは相変わらず何考えてるか分からないが俯いている。足元にいるイーブイはジト目で俺らを見ている。
どちらも何考えてるか分からない。
「レイナ。挨拶は済ましたか。行くぞ」
セブンはいつものように冷たく言い放つが、どこかしら温かみを感じる。レイナは瞼を数秒閉じた後、前を向く。
「聞いてたか?俺らの話」
「私のアルバムを見るところから」
俺が聞くとレイナが素っ気なく答えた。かなり序盤から聞いていたようである。別に恥ずかしい事は言ってない筈だか何か小っ恥ずかしくなった。
するとレイナは応接間の前に立ち、俯いているアカネさんの方を向く。
「アカネ先生。悪いことをしました」
レイナのその言葉にアカネさんはギロッとレイナを睨みつける。レイナは動じてはいないが圧をかけてるようにも思えない。
「ええ。これまでもこれからも忘れることはないわ」
アカネさんは否定せず暗い声で呻くようにレイナに言った。
「けど、私は私の選択を間違えたとは思いません。アカネ先生。さようなら」
レイナは一礼すると扉をピシャッと閉めた。
確かに、アカネ先生が溺愛していたバッフロンを殺して食糧にしたのは褒められる事じゃないが、それにより孤児院を助けたことは悪いことでもない。
どちらを選択しても正解はない。強いて言うなら結果論である。
言い方が少し悪いかもしれないが、それでいいと思う。
「モフモフちゃん……」
アカネさんのその声は俺らに届くことは無かった。
◇◇◇
「そろそろ動き出しましょうか」
ひんやりとした金属で覆われた近未来的な建物。そこにはよく見るプラズマ団は勿論、見たことない幹部に派遣された者、様々な人が揃っていた。
「こちら問題はありません」
俺はそう言った。雇い主は特に声色を変えることなく他の幹部の報告を聞く。
もう動き始める。もう終わり始める。
死を覚悟して行動するのはこれで2回目である。元々死に損ないである。ここで消えられるのなら本望である。
強いて言うなら、誰かのために死ぬのでなくて、派手な自殺ショーとして様々な人を巻き込む事、レイとユウとリョク、他にもシュウやミソウなど、置いてってしまう心残りはあるし。
俺が死んだら俺の代わりの人柱が生まれること、シュウの脱走に関与出来ないことを考えると心のそこから抉られる気持ちになる。
しかし、俺は2代目レイではない。ドクである。人間である。寧ろ人間でここまで生き残れた方が奇跡である。
それを考えるとやることは全てやったと思う。思いたい。
死んだら2代目も、ダミも、スイも、アーボも待っているだろうか。笑いながら『何やってんだ』と頭をグリグリされるのだろうか。
「それでは、始めましょう!」
雇い主の言葉に俺は現実逃避を辞め、ポリゴンZを連れて配置に着いた。
1歩先へ踏み出すために ~完~
- Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.125 )
- 日時: 2022/09/29 16:09
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 5VUvCs/q)
第十二章 〜終わりの始まり〜
暗い暗い暗闇の中。でも、絵の具のような綺麗な黒じゃなくて、3色の絵の具で素人が作ったような、様々な色が溶け合った不格好な黒。それが一面に流れていて、距離感も風も何も掴めない。
「あっ、久しぶりー! 元気にしてた?」
目の前には、黒髪を腰まで伸ばしパッチリとした目に大きなアホ毛をした幼女がいた。一挙一動が美しく鍛えられていると分かる。笑顔がとても眩しくて浄化されてしまいそうである。
「……ぼちぼち」
「あいっかわらずの無表情! 私それ嫌い!」
彼女はプクッと薄黄色で所々赤黒く汚れたぶかぶかなシャツを翻した。
私はひとつ、ふたつ呼吸をして彼女の前に立った。彼女は首を傾げて私を見上げる。しかし、それだけで腰が抜けそうなほどの恐怖が襲ってきた。
「貴方が居るってことは……」
「うん! レイナちゃんの感情がとても動かされてるってこと!」
幼女はとても嬉しそうに暗闇をくるくると回る。彼女が私の前に現れる時は、現実でなにか感情が動かされた時だ。嬉しさ、悲しさ、苦しみ……ストレスの時もあるが、今回は違うだろう。多分。
「早く夢から覚めたい……」
「えーなんでー! 私の事嫌い?」
私は困ったようにため息を履いてそういうと、彼女は悲しそうに、そして大袈裟にそう言った。
「貴方……自分で何したか分かってるの?」
「……」
私が彼女に言うと、今までキラキラした目であった彼女のハイライトが消え、一気に瞳が絶望色に染まる。その様子を見て、ただ私は怯えるしか無かった。
「ねぇ。レイナ。あの時私はどうすれば良かったのかなぁ?」
視点が定まらない不気味で美しい瞳を私に向けながらゆらゆらと彼女が近づいてくる。私も下がろうとしようとするが体が思い通りに動かない。
落ち着け、これは夢だ。目の前の彼女は『ホンモノ』じゃない……私の夢だから。覚めたら、覚めたら
「どうすれば? どうするば? ねぇ。なぇねぇねぇ……教えてよッ!」
どんどん声ボリュームが大きくなってついには私より体が大きくなって私の肩を掴んでいる。最後の声は彼女……『2代目レイ』の声じゃなかった。男の人や女の人の声も混ざってて……
「ねぇ教えてよ……私は……」
「貴方は……もう死んでるのよ」
私は何故か動いた両腕でレイの両肩を掴む。そして、力を全力で入れる。
「ねぇ?」
「ねえ?」
「ねえ?」
「ねぇ?」
『どうすれば良かったの?』
私たちの声は誰に問いかけるつもりもなくただ、自分自身に問いかけていたような、答えのない答えを無意味に求めていた。
お互いの顔がどんどんぼやけて言って、何も分からない。分からない。分からない。
ーごめんなさい
◇◇◇
《サツキ》
私は今、カゴメタウンとソウリュウシティの間にあるビレッジブレッジを渡っていた。
「ここめっちゃ綺麗っ! およぎたぁい!」
一緒に旅をしているトモバが橋の上から川を見渡し目を輝かせる。
ここは巨大な橋の上に民家が立っており、橋の下は綺麗な水として、有名である。絶滅危惧種のラプラスも生息してるとかしてないとか……
「ソウリュウシティまでもうすぐだねっ! ワクワクするよ!」
茶髪ツインテールのマツリが両手を振りながらワクワクの度合いを示している。相当楽しみなのだろう。ソウリュウシティは歴史ある街ということは知っている。そして、7つめのジムがある場所だ。ここのメンバーはポケモンリーグを目指しているため、皆バッジを集めている。
シアンがふとスマホのメッセージを見る。そしてしかめた顔をして、立ち止まり考える仕草を始めた。私達は何事かと立ち止まった。
「どうしたの? シアン」
「いや、ちょっとムスカリーとミツキから連絡があってな……」
トモバが聞くとシアンが口篭りながらそう言った。レイナ、セブン、カシワと一緒にいるムスカリー。マオ、リンドウ、シイナと一緒にいるミツキとシアンは仲が良いようで度々連絡を取り合っている。
たまに真面目な顔になるのが気になるが、私達には関係が無いのだろう。
ピロピロピ-
自分の腕首から振動を感じる。反射的に腕首を見ると、ライブキャスターが鳴っていた。相手は霊 結香さん。レイナのお母さんだ。
もうそんな時間なのかと驚く。
「ごめん……電話」
「あ、またレイナのお母さん?」
「……うん 」
私が一言いうと、トモバが聞き返してくる。その質問に肯定すると、トモバは『いってらっしゃい』と、手を振ってくれた。
私が声を出しても皆が聞こえないだろう場所に移動し始めた。
逃げたい。今すぐこのライブキャスターを切って、霊家から、小野寺家から逃げたい。
トモバに言ったら匿ってくれるかもしれない。それでも、私は、小野寺 皐月は同じ境遇であるレイナを放って置くことなど出来なかった。
◇◇◇
私こと霊 麗菜はPWTから一緒に旅をしているムスカリー、カシワ、セブンとソリュウシティに来ていた。
ソリュウシティでジムバッジを手に入れるためなのもあるが、伝説のポケモンについて詳しいシャガさんに話を聞くためでもあった。
プラズマ団の目的。イッシュ地方の支配。それが伝説のポケモンと関連があるというのがアララギ博士の考察である。
そして、私達はついにソリュウジムに来ることが出来たのだが……
「伝説のポケモン……ワタシに勝ってから勝ち取るのだ」
ソリュウジムの前。高い迫力のある塔がジムのようで、入口の前に仁王立ちしている髭の生えたダンディなおじさんが立っている。
「なら、俺がバトルを……」
「うむ。お前さんは若いが他の3人の方がよっぽど若い。その3人でないと認められないな」
この中で1番強いムスカリーが手を挙げるがシャガさんに一喝される。ムスカリーは頭をかきながら私たちの方を見る。
どうせソリュウジムに挑むのだから誰が挑もうが変わらないと思うが……
私もカシワとセブンを見る。カシワとセブンも私含めお互いのことを見つめあっている。
しかし見つめあってるだけでお互い何も言わない。けれど何となく、3人ともバトルはしたいが譲り合っている感じがする。
「なら、俺様がいく!」
カシワが大声で勢いよく手を挙げた。シャガさんはニヤリと笑いながらカシワを見る。
「勢いがある若者はワタシは好きだ。ついてきなさい」
そう言うと、シャガさんは私達に背中を向けてジムの中に入っていった。カシワはその背中をステップしながら追いかける。
私達も歩きながら2人について行った。
私が一番最初にバトルしたかったんだけどなぁ……
カシワの行動力は相変わらず高い。
◇◇◇
バトルフィールドは薄黄色のサラサラな土で作られていて、ポケモンセンターや学校でよく使われるバトルフィールドと同じだった。
私、ムスカリー、セブンは伽藍堂な観客席で、バトルが見えやすい中央に座った。
バトルフィールドにカシワとシャガさんが立ち、バトルフィールドの中央に審判が立った。
いつものジム戦の光景である。
「カシワのバトルが終わったあと、私たちはどうするの?」
「俺もバトルしたいんだが」
私とセブンがムスカリーに尋ねる。この旅では自然と最年長のムスカリーが仕切っているため、ムスカリーは少し考えた。
「プラズマ団がいつ何をするか分からないからね。
2人のバトルは置いといて、シャガさんから話を聞いた方がいいかもしれない」
その言葉を聞いた後、セブンは明らかに不快な顔をした。
私も嫌ではあるが、ムスカリーの言う通りで、プラズマ団が今でも行動を起こしそうな時のため、少しでも早く情報は集めといた方がいい。
「これより、チャレンジャー・カシワ対ジムリーダー・シャガのジムバトルを開始します。ポケモンの交代はチャレンジャー認められます。バトルは3対3どちらかのポケモンが戦闘不能になったらバトル終了です。」
審判がいつもの決まり文句を言い始める。このセリフを聞くと、今ジムにいるということを実感できる。
カシワがポケットからモンスターボールを取り出し、大きくする。
シャガさんは元々持っていたボールを持ち、構える。
「それでは……初めっ!」
◇◇◇
《シアン》
『やあ。お疲れ様2人とも……ムスカリーは?』
ライブキャスターの向こうから飄々とした低い声が聞こえる。赤髪に袴を着ている男性と、黒髪に赤メッシュの男性が居た。
カゲロウさんとミツキである。
「急に呼び出して何の用だカゲロウさん」
『ちょっと緊急なんだけど……ムスカリーが来ないなぁ』
カゲロウさんは『困ったなぁ』と頭の後ろをかく。そんな余裕そうな様子で言われても緊急味がわかねぇぜカゲロウさん……
『なら、私からムスカリーに伝えておくので内容を教えて頂けますか?』
『……ミツキがそう言うなら』
ミツキは国際警察官だ。こういう時の頼りがいは半端ない。俺だってトレーナーとしての実力なら負けてないつもりだけどな。
『多分。今日プラズマ団が動くと思う』
「またかよぉ、どこでですか?」
俺は呆れたようにそう言った。だってさぁ、PWTの件とか、ライモンの件はあったけどよ、一向にその『イッシュの支配』なんてする動き見えねぇんだもん。
アイツらそんな動く気ねぇんじゃねぇか?
『ソリュウシティだね。今回は今までの物よりかなり重要だ』
『……というと?』
『今回プラズマ団はソリュウシティで保管されている"遺伝子の楔"を奪うつもりだ』
「そりゃまた強引な。アイツら脳筋なのか?」
電気の時も資金の時も詐欺とかじゃなくて実力行使なんだよなプラズマ団。あんまし頭良くねぇのかな?
『シアンがそれを言うのか……』
「それどういう意味だミツキぃ」
『別に、なんでもありませんよ』
俺はたっぷりと含んだ声で画面越しにミツキを睨みつけるが、ミツキは『ハハハ』と爽やかな笑顔で俺の言葉を流した。
『んー、いつもならここで俺もふざけ始めるんだけど、本当に緊急だからすまないが話を進めるよ』
「ふざけてねーよっ!」
俺は叫んで訂正するが、シアンとカゲロウさんが思いの外真面目な顔をするので、俺も表情筋を固めた。
『遺伝子の楔に手を出し始めるということは……ここからイッシュ支配が始まる』
「その、遺伝子の楔ってなんだ?」
『あ、それ私も思ってました』
俺が質問をすると、ミツキも同じことを思っていたようだ。遺伝子ってあれだよな。なんかぐにゃぐにゃした変な形の奴。の、楔? 全く想像がつかねぇ
『楔の見た目をした物でね、レシラムとゼクロムに関係した……めちゃくちゃ凄いものだ』
「めっ、めちゃくちゃ……凄いもの……」
なんか、すげぇ凄そうだ! これはプラズマ団に取られたら不味い! 絶対に阻止しなきゃいけねぇ!
『抽象的過ぎますカゲロウさん。凄いってどのぐらいだとか……レシラムとゼクロムがどう……』
『話すと長くなる!』
「なら仕方ねぇな!」
ミツキは呆れたような、少しイラついてるような表情を浮かべる。しかし、こっちは大真面目だ。すげぇもんなら奪われたらダメだし、話すと長くなるなら話に時間をさくより行動した方がいい!
『カゲロウさん。少しはこちらにも情報を下さい』
『まあ、それがプラズマ団の手に渡ったらイッシュ支配されると思っていいよ』
『……比喩ですよね?』
『残念ながらガチの話』
比喩じゃなくてイッシュ支配されるって……どんだけ力を秘めた道具なんだ。というか、プラズマ団はどうやってイッシュを支配するんだ?
まぁ……
「とにかくソリュウシティの楔を守れば良いんだな!」
『あくまで君達の第一目的はトモバ達を守ることだ。それを忘れないように』
「分かってるぜカゲロウさん」
俺達が雇われている理由は若手トレーナー達を守ることだ。金払われてるから意地でもやり遂げるが……何故カゲロウさんはそんなことを指示したんだ?
愛娘と愛息子がいるからっていうなら腑に落ちるが、関係ないトレーナーも庇護下に置いてるし、まず毎年のように駆け出しトレーナーをベテラントレーナーが守るように仕向けてんだよなこの人。
イマイチカゲロウさんの考えてることが分かんねぇ。
『カゲロウさん。今回の相手の戦力とか分かります?』
『ピラミッドは確実に一人来るだろうね。多分ガエリオ。後は幹部が数名』
「んぁ、トゥエルブス来ねぇの? 楽勝じゃん」
『……それだけ、本気と言うことだよ』
カゲロウさんが声のトーンを落としてそう言った。本気……? トゥエルブスのようなイカれた野郎を出さないのに本気……?
あー! 難しいことは考えられねぇ! いや、考えようも思ったらできるけどめんどくさいからやりたくねぇ!
「トユーカ。毎回思うんだがカゲロウさんのその情報のソースってどこなんですか?」
『ですよね。毎回予想も当たってますし……一体何を?』
俺とミツキがカゲロウに問う。プラズマ団の情報ならともかく、ピラミッドの情報までたまに抜き取ってるからなカゲロウさん。
統治グループの会長だから……って理由な訳が無いんだよな。何故なら国際警察でさえ最近ピラミッドの存在を掴めたんだから。
『目には目を歯には歯を……だよ』
『……どういうことですか?』
カゲロウさんはさっきのふざけた飄々とした表情ではなく、氷のように表情を固めて言う。しかし、意味が分からなかったのかミツキが聞いた。
けど、俺は何となく分かった。目には目を歯には歯を……
「ピラミッドには、ピラミッド……」
『なっ、カゲロウ……さん?』
俺が言うとミツキが目をまん丸にさせて途切れた声でカゲロウさんに問いかけた。カゲロウさんは氷った笑みを浮かべる。
『悪いことはやってないよ?』
『貴方は……どこまで知ってるんですか? ピラミッドも……"レイ"のことも』
『そぉんなことよりもプラズマ団の事だよ』
するとカゲロウさんの表情が溶けて先程の飄々とした態度に戻った。『レイ』裏のヤツらが良く口に出してるが、何者なんだ?
『君達、今どこにいる?』
「ビレッジブレッジを渡ってる所だ。そろそろソリュウシティに着く」
『私はソリュウシティに着いたところで、ポケモンセンターに居ます』
『ということは、ムスカリーチームはジム戦かな? 通りでライブキャスターに出ないはずだ』
ミツキとムスカリーに進度数で負けているのは悔しいが、これは俺がトモバ達を丁寧に強くさせてるからだ。うん、仕方ねぇ!
それより、皆ソリュウシティに着きそうならプラズマ団の阻止には間に合いそうだな。
「ヒユウチームはどーしたんだ?」
『あー、あの子達ならセイガイハイシティに居るだろうね』
「随分ジム巡りが早えな。ヒユウって奴もかなり強くなってるし……」
『はい。私達程に強くなってるかも知れません。彼も戦力に入れれば良いのに……毎回頑なにヒユウをプラズマ団に関わらせようとしませんよね、カゲロウさん』
ミツキが確信を迫るようにカゲロウさんに聞く。カゲロウさんは表情一つ変えない。
『赤白 陽佑を裏に近づかせてはいけないよ』
「そ、それってどーゆ……」
『あと、今まで通り"イッシュ支配"の件はトレーナー達に知らせてはいけない。分かってるね?』
『分かっていますが、ムスカリーチームは……』
『あそこはアララギが話しちゃったからなぁ。まあ"アイツ"がいるから大丈夫大丈夫』
カゲロウさんはさっきから俺らの言葉をスラスラと返しているが、カゲロウさんしか分からないことだらけで俺らには何も伝わらない。
これはカゲロウさんが会話が下手な訳ではなく、意図的に俺らに伝えようとしていない。
俺らじゃ役不足ってか? 俺は悔しさと怒りがフツフツと湧き上がっていた。けど、こういう時のカゲロウさんは絶対話さない。だから悔しいがここで引き下がるしかない。
『私達がカゲロウさんが知ることを、知れる日は来ますか?』
『そんな日が来るのは、きっと世界が滅びる時だろうね』
「ああぁぁ! カゲロウさんばかりなんでも知りやがって!」
『シアン君。知らぬが仏という言葉もあるのだよ。とゆーわけで頼むよ、皆』
ブツッ
そこでカゲロウさんは勝手に切ってしまった。
なぁにが頼むよ皆だ。結局人任せじゃねーか!
と、先程のイラつきをぶつけた。
『シアン。君はどう思います?』
「あぁー? 何が」
『何が……いや、まぁ疑問点は大量にあるのですが』
「そーなんだよなぁ。カゲロウさんは意味不明な事しか言わねぇしよぉ」
『まあ、それはまた問い詰めることにしましょう。今回はプラズマ団に集中です』
「あぁ。ソリュウシティで会おうぜ」
俺はそう言うと、ライブキャスターを切った。遺伝子の楔……なんかすげぇ道具……これだけ聞いたらふざけてるようにしか聞こえねぇけど、あのカゲロウさんの圧は、マジでヤベェやつかもしんねぇ。
プラズマ団の手に渡ったらイッシュが支配される……
とりあえずソリュウシティに行かなきゃ話になんねー!
俺は顔を上げてトモバ達の元へ戻ろうとするのだが、視界の端に見慣れた人物が一人。
「……サツキ?」
「あっ...ごめんなさい。聞いちゃってた」
「すーっ……何時からだ?」
「『やあお疲れ様2人とも……』からです」
「初めから聞いてたのかよ……」
俺は口の端をピクピクとさせながら苦笑いをした。これ、カゲロウさんにバレたら殺されかねねぇ……どうしたものか
「大丈夫。誰にも……言わない」
「助かるぜサツキ!」
俺は首の皮1枚繋がったと言わんばかりにサツキに飛びつき頭をガシガシと撫でながらトモバ達の元へと戻った。
それより、サツキに違和感を感じる。なんか、他の人がサツキに手を出すと怯え出したり、体を異様に見せたがらないし頭を触る時はたんこぶのように膨らんでたり、凹んでたりする。
まさか……な?
それよりまずはプラズマ団だ。
俺は今日一真面目な顔でサツキと一歩づつ前に踏み出し始めた。
- Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.126 )
- 日時: 2022/11/02 21:09
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: M0NJoEak)
《レイナ》
ソウリュウジムにカシワが挑んだ。結果は見事勝利し、私たちはドラゴンポケモンの話を聞くためにシャガさんのお宅へお邪魔していた。
「負けかけてたな」
「か、勝ったからいーだろ!」
セブンが鼻で笑うとカシワは綺麗な顔を歪ませて言った。ムスカリーがそれをなだめ、私は微笑みながら見ていた。
「オッホン」
するとシャガさんがわざとらしく大きな咳をする。私たちは黙ってシャガさんの方に視線を移した。
「では話そう。心して聞いて欲しい」
シャガさんの真面目な顔に思わず息を飲む。声色から事の深刻さが伺えて私は右手を握りしめた。
「二年前の事だ。ドラゴンポケモンが二匹目覚めた。真実を求め新たなる善の世界へ導く白きドラゴンポケモン『レシラム』
理想を求め新たなる希望の世界へ導く黒きドラゴンポケモン『ゼクロム』」
二年前……と言うと私は八歳である。
今まであまり新聞もテレビも見なかったためそんな大事があったなんて驚きだ。
「レシラムとゼクロムは元々一匹のポケモンだった。なぜ分かれたか?
ドラゴンポケモンは二人の英雄を助けイッシュに新しい国を造ったが双子の英雄はそれぞれ真実と理想を追い求め、どちらが正しいか決めるべく国を二つにして争い始めた……」
昔話か作り話? いや、その二匹のドラゴンポケモンが二年前に目覚めているのなら本当の話なのかもしれない。けど、私達が確かめる術はない。今はこの話は本当という前提で聞くことにしましょう。
「この時だドラゴンポケモンが白と黒の二匹にわかれた!
真実と理想は必ずしも対立するものではないのに……」
「真実と理想……」
するとムスカリーがボソッと呟いた。ムスカリーが何を思ったから分からない。けど何か考えさせられるものがあった。
けど、今は関係ないわね……
こんな所で難しい考えはしたくない。
「実はこのときもう一匹のドラゴンポケモンドラゴンポケモン『キュレム』が生まれたのでは?と推測している。
その証拠となるのが代々我らが一族に伝わる遺伝子の楔という宝だアララギ博士の調べではリュウラセンの塔と同じ時代の成分が計測出来たらしい。」
「その、遺伝子の楔はどこにっ?」
私は少し嫌な予感がして焦り気味にシャガさんに聞くが、動じずシャガさんは答えた。
「ああ、遺伝子の楔は大切に保管している。
道具としてどのような力を秘めているか分からぬのでな」
私を含め四人はホッとした雰囲気に包まれる。なら取られることはそうそう無いわよね。けど、プラズマ団の事だから何かしらの方法で奪いに来そう……
「ただし…………
もう一匹のドラゴンポケモンがいるのか?
キュレムが本当にいるとしてもどんなポケモンかは不明だ。
そもそもあれほど強大な二匹のポケモンに分かれたのだ。いたとしても抜け殻ではないか? そんな風にも考えたりする…………」
キュレムは居る。その時何故か私は確信していた気がする。
ただの勘なのだけれど、外れることは少ないためそれが私の不安を煽る。
……ぶぅん!
すると、外から地響きのような大きな音が鳴った。
「うおっ、なんだ?!」
「大丈夫だ。取り敢えず落ち着こう」
カシワが体をビクッとさせて驚くが、ムスカリーがカシワの肩に手を当てて落ち着かせる。
この話の流れだと……
「嫌な予感しかしないな」
セブンが呟いた。私も同意見である。
「はて……なんの音だ?」
シャガさんも同じことを思っていたようで顔のシワを増やして走って家の外へ出てしまった。
私達も様子を見るために外へ出る。
いつの間にか夜になっており月光と街灯で辺りが照らされている。夏間近でジメジメとした暖かい気候だったのに何故か今は肌寒い。
「なにごとだ……?」
シャガさんが周りをキョロキョロと見ながら呟いた。街の景色に特に変わった所はない。なら先程の音はどこで……?
ふと私は上をむく。
「あっ……あれ」
そして、思わず呟いた。他の皆も私の視線の先に注目する。
「あれは……!」
シャガさんが震えた声でいった。
巨大な『何か』が空を泳いでいる。飛行機でも無ければヘリコプターでもない。巨大なゆりかごのような物に帆が着いている。
私は自分の目を疑って一度目を擦り、もう一度空を見た。
飛んでいる。ちゃんと空に飛んでいたのだ。
ーー海賊船が
「船……が飛んでる?」
セブンも信じられなかったようで口に出す。
すると船首が開き、そこから大きな銃口のような物が伸びてくる。
何をするかは分からない。けれど確実に悪いことが起こることは分かった。
「伏せろっ!」
ムスカリーの叫びと共に銃口から何か白い物が私達の目の前に落ちてくる。そこから『ビキビキ』という音とともにビル二階程の高さの氷柱が生まれる。
一体何が……
そんなことを考える暇は無く、次々と船首の銃口から白い玉が街中に落ちていく。水分が氷に変化する音とともに町中が氷に包まれていく。
「何がっ……!」
「落ち着こう。まずは攻撃がなり止むまで待つんだ」
鳴り止まない氷の音に痺れを切らしたカシワは怒りと恐怖を混ぜた言葉を発するが、落ち着いているシャガさんは私達を諭すように言った。
シャガさんの言う通りに私達は船からの攻撃がなり止むまでその場でしゃがみ待っていた。
音がなり止んだ後、シャガさんはゆっくりと立ち上がる。
「この氷の世界は…… オノノクス!」
するとシャガさんは相棒であるオノノクスをモンスターボールから繰り出した。
出てきたオノノクスが吐く息は白く生暖かさが私の方まで伝わってくる。
「ドラゴンテール!」
「グワゥッ!」
シャガさんが張った声で言うとオノノクスが勢いよく回り氷を尾で叩く。
ドシン! という音が聞こえるが、氷は傷一つついていなかった。オノノクスのドラゴンテールは見てるだけでも強いことが分かる。なのに傷一つついていないなんて、氷の強度は並大抵出ないことが分かる。
「……よくやったオノノクス」
シャガさんは氷の強度を確認してオノノクスをボールに戻した。
「それにしても壊れないどころか傷一つつかないとは……?」
「氷だよなこれ」
シャガさんが口元に手を当てて考える仕草をし、カシワは訝しげに氷の柱を見つめる。この大きな柱が町中に立っており、地面も氷っている。
寒い。とても寒い。夏間近のこともあり私は半袖半ズボンで余計寒かった。
「そうでしょうとも」
すると老人の声がした。口ぶりからしてこの氷を作った犯人であろう。
すると目の前の大きな氷柱の後ろから四人ほどの人物がやってきた。一人はホドモエシティで会ったロットさんと色違いの紫の服を着た老人。
他三人はプラズマ団の服を来ている。その内の一人は、私の従兄弟アラシである。
「お前らはプラズマ団の……」
「プラズマ団大幹部七賢人の一人。ヴィオだ」
シャガさんはこの老人を知っているようで睨みつける。老人の名前はヴィオという名前出そうでプラズマ団の大幹部…… 確実にこの人物が今回の犯人で、遺伝子の楔を奪いに来たのだと容易に分かる。
「それにしても寒い。ワタシは震えている。苦しいが生きておる」
「お前がやったんだろ! 自業自得じゃねぇか!」
「ぶふっ……」
ヴィオが白い息を吐き、震えながらも嬉しそうに言ったのだが悪気は無いであろうカシワのツッコミに私とセブンとムスカリーは笑ってしまった。
声に出さないように三人とも堪えていたつもりだが吹き出してしまった。
「それこそが生命の実感!
それこそが存在の証明!」
ヴィオは自分の世界にのめり込んでいるのか私達の事を無視して熱く話し始める。
「さて、これらはプラズマ団の技術で生み出した特殊な氷!
アイツを捕えている限り溶けたり砕けたりしないのだ!」
「アイツ……まさかさっきの」
セブンが信じられないと言った顔をする。さっき話してもらったばかりの『キュレム』
もしかしてプラズマ団は既にキュレムの存在を知り、コントロールしている? 思っている以上に自体は深刻なのかもしれない。
「要件を伝えよう!
シャガ殿遺伝子の楔とやらをよこせ。このソリュウは過去と未来が絡み合う街。分かれたポケモンを繋げる楔があるに相応しい場所」
分かれたポケモンを繋ぐ? 『楔』ってそういう意味だったの?
それにやはりプラズマ団は楔を奪いに来た。しかも『キュレム』を捕らえ圧倒的な力を持った状態で。
「ずっと昔からプラズマ団の悪行を知っている人間が素直に渡すと考えるのか?」
それはここに楔があると認めることになってしまいますシャガさん!
プラズマ団側はニヤニヤしながらシャガさんを見ているがバレてるなら隠す必要は無いとシャガさんは堂々としている。
「ふむ、想像通り。本来であればもう一度氷を打ち込むと脅したいが……」
「なんだって?」
ムスカリーが怒りをあらわにするがヴィオはそれを嘲笑う。
とても不愉快だこのヴィオという老人。私は音を立てずにバレないようにボールを取り出す。
「残念だ。あれはしばらく使えぬのだ。
寒い中煩わしいが探すとするのだ……!」
ヴィオはそう言うと足早に去っていく。そんなことさせるわけがなく、私は追いかけようとするがアラシが立ちはだかる。
「そこをどきなさい」
「させると思うか? 余所者」
私が怒りながら言うがアラシは全く動じず嘲笑うようにこちらを見下す。
「おい! お前……レイナの従兄弟なんだろ? なんでプラズマ団に居るんだよ!」
カシワが言う。というか何故アラシと私が従兄弟である事を皆が知っているのだ。トモバが広めたな……
「お前は知らないのか霊家を、鷲山家を、小野寺家を。あの虐待一家をーー」
「アラシ!」
アラシが思わぬことを口にしたため私は声を張ってその続きを言わせなかった。アラシはこちらを睨みつけるが鋭すぎて私はとても見つめ返せなかった。
「お前はいいよな。余所者だからネグレクトだけで済んで」
「うるさいっ」
私はアラシを突き飛ばした。その手が震えている。それでもアラシの目が冷たい。
ただ、アラシがプラズマ団に入る理由は分からなくも無かったのだ。
「まあいい。どちらにしろ遺伝子の楔は我々プラズマ団が貰う。カイリュー!」
アラシが持っていたボールを投げてカイリューを繰り出す。
私も持っていたボールを投げる。私が繰り出したのはケンホロウだ。タイプ相性は微妙だが元々の強さはかけ離れておりこちらが不利である。
「カイリュー十万ボルト!」
「ッ!」
カシワがカイリューに指示をする。ケンホロウはひこうタイプ。電気技の十万ボルトは効果抜群だ。
「チルタリス! コットンガード!」
すると聞きなれた少女の声がして、ケンホロウの盾になるようにチルタリスが現れた。
チルタリスは体の綿をもくもくと増やして防御耐性に入る。
「そしてワンダールームっ!」
その声と十万ボルトが放たれたのはほぼ同時だった。
チルタリスはほぼダメージ無しでカイリューの十万ボルトを受けきった。
「おいお前ら大丈夫か!」
「……シアン?!」
高い声で男口調。声がする方向を見るとトモバ、マツリ、サツキ、シアンが走ってきていた。
ムスカリーは驚いて声を上げる。
「レイナ大丈夫?! チルタリス、ワイルドブレイカー!」
するとトモバが私の前に立ってチルタリスに指示をした。このチルタリスはトモバのポケモンのようだ。
シアンは鬼の形相でムスカリーにタックルして両肩を掴みブンブンと振っている。
「おいムスカリー! カゲロウさんから連絡あったろ! なんで出ない!」
「えっ、マジで? ほんとだ、ジム戦だったねその時は……」
「バッカ! 遺伝子の楔はどうなった!」
「なんで遺伝子の楔をーー」
「話は後だど・こ・だ!」
「まだ奪われてないけど、プラズマ団がソウリュウシティに散らばって探し始めてる」
「ちょっと遅かったか……」
トモバがアラシと交戦している間にムスカリーとシアンの会話が聞こえる。カゲロウというトモバとマオの父親の名前が出て私とトモバは反応するが、とても詳しい話を聞ける状況じゃなかった。
「クッ……すまないがトレーナー諸君。街中にいるプラズマ団からこの街を一緒に守ってくれないか?」
「当たり前よ!」
「おいマツリ……」
シャガさんが苦い顔で私たちに頼み事をし、マツリが元気よく返事をする。しかしシアンは焦ったようにマツリを止めた。
「いやシアン。ここは人数が多い方がいい。ミツキチームも来るんだろ?」
「ムスカリーあのなぁ ーーイッシュ支配の件はトモバ達に知られちゃいけねぇ」
「……マジ?」
シアンが耳打ちして周りに聞こえないような小声で言ったが、私は耳が良いため聞き取れた。
私達に知られては行けない? それならもう手遅れで私達のチームは全員イッシュ支配について知っている。
そのためムスカリーはギョッとした顔で声を出した。
「けど、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろう!
シャガさんご協力します。セブン! カシワ! レイナ! あのヴィオってやつを探せ!」
私たちはもうイッシュ支配のことについて知ってしまってるし、シャガさんから話も聞いてしまった。これはどうしようもないと思ったのかムスカリーが私達に指示を出す。
「命令するなよ……」
「当たり前だろっ!」
「分かった」
セブン、カシワはそう言うと巨大な氷柱の横を通って走って行った。しかし、私はトモバが心配のため返事をするだけでその場に留まっていた。
「おいムスカリー何を考えてんだよ!」
「話しは後だ……けど、プラズマ団を倒すぐらいならいいんじゃないかな? シャガさん行きましょう」
シアンが焦っているがムスカリーは動じずにシャガさんと走り去ってしまった。
「クソ……しゃーねぇ。サツキ、マツリ。行けるか?」
シアンさんは頭をかきながら二人に声をかけた。サツキもマツリも強く頷いて走り去ってしまった。シアンもそれに続く。
「トモバ! お前はソイツを頼めるか!」
「大丈夫! こんなん蹴散らしてやるわ!」
「いい顔になったな」
シアンはトモバの威勢のいい返事に笑って去ってしまった。そのトモバの態度がいつもの頼りない、芯のないような物でなく、堂々と自信に溢れかえったような……
カゲロウさんみたいだ。
「レイナも、ここは任せて!」
「でもトモバ……」
「いーからっさ!」
トモバは私の背中を押して笑った。今のトモバは頼もしく任せても大丈夫な気がして、私は走った。
「あの弱虫お嬢様が俺に勝てるとでも?」
「舐めないでよねっ!」
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