社会問題小説・評論板
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- ——いつかきっと、受け止めて
- 日時: 2014/04/01 20:34
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)
※タイトル変更のお知らせ(H25.12.28)
「【壊れた教室】そこに居たのは、」→「——いつかきっと、受け止めて」に変更しました。
*ご挨拶
初めまして、もしくはお久しぶりです。私は杏香(きょうか)と申します。
元の名前は千咲(その前は空花)です。
以前ここで小説を書いていたのですが、その時は挫折ばっかりでした。今思い返すと、本当に恥ずかしいです。(迷惑かけてすみませんでした……!)
今回の小説はどんなに時間がかかっても完結させますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです。
*注意書きや説明
・私はまだまだ小説初心者です。
・更新は不定期です。(現在スランプと遅筆が重なっている状況の為、更新はかなり遅くなります)
・誤字、脱字等があるかもしれません。(見つけたら指摘して下さって構いません)
・荒らしは禁止です。
・一部、作中のセリフとして暴言が含まれます。
上記の内容を踏まえたうえで、この小説で不快になる可能性がある方は戻る事をお勧めします。
コメントを頂けると嬉しいです。
*目次
登場人物 >>1 プロローグ >>2
第一章「正反対」
>>3 >>4 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9 >>10 >>11
第二章「仲間外れ」
>>12 >>13 >>16 >>17 >>18 >>21 >>22 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34 >>37 >>38 >>39 >>40 >>41 >>44 >>45 >>46
第三章「2人の私」
>>47 >>50 >>71 >>76 >>80 >>81 >>85 >>87 >>88 >>89 >>92 >>96 >>97
番外編(モノローグ)
「とある少女の話」>>29 「とある少女の話Ⅵ」>>73
「とある少女の話Ⅱ」>>51 「とある少女の話Ⅶ」>>93
「とある少女の話Ⅲ」>>61
「とある少女の話Ⅳ」 >>65
「とある少女の話Ⅴ」>>70
*お客様
・アルさん ・姫桜さん ・Qさん ・VF-25 APさん ・アゲハさん ・狸猴子さん ・ミムさん
・華世さん ・美里娃さん ・恵美さん ・みーみさん ・アズリさん
このスレを見て下さり、本当にありがとうございます。
コメントは本当に励みになります。これからも宜しくお願いします(*´∀`*)
- Re: そこに居たのは、 ( No.3 )
- 日時: 2014/02/15 21:43
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)
第一章「正反対」
このクラスには、私を含めて36人の生徒が居る。
当たり前の事だけれど、その1人1人が違う顔と性格を持っていて。私みたいに地味で目立たない子から、反対に明るくて活発的な子まで、実に多種多様の"個性"があった。
その中でも一際輝く紗希ちゃんは、私とは違い明るくて人気者。彼女は私にとって、ずっと憧れの存在だった。
……紗希ちゃんと私は、本当に正反対で。だから私が憧れたのも、もしかしたら必然だったのかもしれない。
「ねえ紗希! 佐々木先輩に告られたって本当なの!?」
——まだ来ている人が少なく、静かな朝の教室に響き渡る元気な声。それと同時に、閉ざされていた教室の扉が勢いよく開け放たれる。
さっきの声は、紗希ちゃんと仲が良い清水さんの声だった。白いマフラーを巻いていた清水さんは、扉を開けると直ぐに紗希ちゃんの席へと向かった。
すると紗希ちゃんが席を立ち、「こっちで話そう」と教室の隅っこを指差す。恐らく、周りに配慮しての事なのだろう。
その指示に清水さんは、黙って頷く。
そして2人が移動している間にも、待ちきれないという感じで清水さんが言った。
「ねえ、本当なの!? 佐々木先輩に告られたって!」
紗希ちゃんはそれに対して、短く「本当だよ」とだけ答える。
2人がそんなやり取りをしている間に、2人はとっくに教室の隅っこにたどり着いていた。けれども声が大きいのか教室が静かすぎるのか、その話は席が一番前の私にも聞こえてきた。
「えーマジで!? それで付き合ったの!?」
「付き合ってない。振ったよ」
新しいおもちゃを与えられた子供のように、清水さんはワクワクした様子だ。後ろを振り返らなくても、その事が声から分かる。
それに対して、紗希ちゃんは相変わらずバッサリとした受け答えだ。
「佐々木先輩格好良いしモテるじゃん! もったいないなぁ……!」
紗希ちゃんの口から真実を聞いて、何とも羨ましそうに清水さんが言う。そういえば、清水さんって噂話、特に恋愛関係の話が大好きだっけ……。
「確かにそうだけどさ、私はタイプじゃないんだよねー」
「もう、本当に紗希ってばモテモテなんだから! 羨ましいよ!」
本音を言うと、私も紗希ちゃんが羨ましかった。だって佐々木先輩は本当に格好良い人だし、それに何より私は告白された事がない。
ラブレターでも何でも良いから、私も紗希ちゃんみたいに告白されてみたかった。
——でも、私にはきっと無理だろうな。だって私は紗希ちゃんみたいに可愛くないし、明るくもない。
地味でブスな私が、モテるはずないよね……。私はそう自分に言い聞かせ、いつもの様に本を開いた。
- Re: そこに居たのは、 ( No.4 )
- 日時: 2014/02/09 20:35
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)
私が本に夢中になっていると、突然声をかけられた。
「今日も早いね」
私は本を開いたまま、慌てて声がした方を見る。するとそこには、笑顔で挨拶をする凛ちゃんの姿があった。
「おはよー、詩織! もしかして邪魔しちゃったかな?」
凛ちゃんは、私の唯一の親友だ。
しかも凛ちゃんは、いつも笑顔で誰にでも優しい。仲良くなったきっかけも、2年生になったばかりの頃、1人ぼっちだった私に話しかけてくれた事だった。
そんな凛ちゃんに、私も笑顔でこう返す。
「おはよう、凛ちゃん。全然邪魔してないよー!」
「そっか、それなら良かった。そういえば今日、1時間目から体育だねー……憂鬱だな」
凛ちゃんはわざとらしく腕を組み、物思いに耽るように溜息をついた。
「そうだね……私も嫌だよ」
体育がある日は、いつも気持ちが沈む。本当なら何か理由をつけて、体育がある日は全て休みたかった。
そう思ってしまうのは全て、私が極度の運動音痴なせいである。
「まぁ、頑張るしかないよね……仕方ないよ」
そう言いながら凛ちゃんは、またもや大きな溜息をつく。
凛ちゃんは運動が苦手だと話していたが、全然そんな事はないと思う。実際に体育の実技テストでは、いつも凛ちゃんの番になると自然と拍手が沸き起こる。
逆に私の番になると、拍手どころか様々な人から冷たい視線を送られる。誰も笑ってすらくれないのが余計に虚しく、体育の授業は私にとってとても苦痛な時間となっていた。
「……休みたいなぁ」
私はボソっと呟きながら、開いたままの本にしおりを挟んで閉じる。俯いたままの姿勢でいると、いきなり担任の先生が入ってきた。
「ほらほら、もう朝読書の時間だよ! 皆早く座りなさい!」
担任の先生は30代の女性で、少し口うるさい。その上に、怒らせるととてつもなく怖いのだ。
好きで先生に怒られたい人なんて、きっとこのクラスには居ないのだろう。だから先生の言葉は、まるで魔法の呪文だった。
皆が魔法をかけられたかのように、一斉に席へ着き始めている。凛ちゃんも「じゃあ詩織、また後でね!」と言って自分の席に着いてしまった。
ああ、また学校での一日が始まってしまうのか……。私は大きく溜息をつきたい気持ちをこらえ、挟んでいたしおりを抜いてまた本を開く。
- Re: そこに居たのは、 ( No.5 )
- 日時: 2014/02/17 14:40
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)
15分設けられた朝読書の時間は、あっという間に終わってしまった。
チャイムが朝の会の開始を促し、それに従って皆が一斉に本をしまう。本当はもっと本を読んでいたかったが、先生に怒られたくはない。私も皆と同じように本をしまい、前を向いた。
それから2秒も経たない内に、先生が「起立!」と教室全体に響き渡る声で言った。もちろん私を含めてクラスの全員が、先生の指示に従う。
全員が起立したのを確認して、先生が次の指示を出す。
「礼!」
その言葉に気圧されるようにして、私は礼をする。私達が顔を上げると、先生は満足そうな笑みを少しだけ浮かべて、「着席」と言った。きっとその時先生は、"自分の力は絶対だ"などと思っていたのだろう。
口に出す事なんて出来ないが、私は先生があまり好きではない。でも先生に反抗して怒られたり成績が下がったりすることは御免だ、と思う。
だから私は、指示されるがままに席に座った。
その後に副議長の谷さんが、教卓の近くへ静かに歩み出る。このクラスでは、朝の会は副議長が行うと決まっていた。
谷さんは教卓の隣にある机にそっと手を伸ばし、ラミネートされている一枚の紙を手に取った。これは先生お手製のもので、朝の会と帰りの会の流れが全て示されている。
その紙に目を通しながら、谷さんが「これから朝の会を始めます」と淡々とした口調で話す。
私はそれに続けて、「始めます」とオウム返しのように言った。当然だが、他の皆も同じ事を言っている。
何故そうする必要があるのか。その理由はとても簡単だった。それが決まり事だから、ただそれだけだ。
そうして何事もなく朝の会は終わり、朝の会終了のチャイムが鳴った。チャイムが鳴り終わったあと、すぐに先生は授業の道具を持って教室を出て行った。
先生が出て行くのを皆が見届けると、教室が一気にざわつき始める。立ち上がって友達と体育館に行く人、呑気におしゃべりしている人……色々な人が教室に溢れていた。
私は机に肘をついて、そんな光景をぼうっと眺めていた。今はただ現実逃避していたい。そんな気分だ。
私はしばらくしてからようやく、誰かが顔の前で手を振っている事に気が付いた。わざわざ私にそんな事をするのは、きっと1人しか居ない。
「おーい? 詩織ー?」
その声にはっとしたように、私は声がした方を見る。
やっぱり、凛ちゃんだった。凛ちゃんはいつもと変わらず笑顔で、その笑顔を見ていると少し気持ちが和んだ。
「1時間目の体育、体育館だよ。一緒に行こう?」
私の顔を心配そうに覗き込み、凛ちゃんが言う。
その言葉に対する返答の代わりに、私は席を立って静かに微笑んだ。
体育館に着くまでの道のりは、あまりにも短すぎる。
多分こんな事を思っているのは私だけだと思うが、本当にそう思うのだ。私にとって体育の時間は地獄のようなものだし、それになによりもっと凛ちゃんと話していたかった。
話題は何でも良い。先生に対する愚痴でも、同級生の噂話でも良かった。
凛ちゃんと話す時間は、友達の少ない私にとって至福の時間なのだ。少し、大げさな表現なのかもしれないけれど。
- Re: そこに居たのは、 ( No.6 )
- 日時: 2014/02/09 21:10
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)
今日も、その至福の時間はすぐに終わってしまった。
私達が体育館に入ると、いつも凛ちゃんだけが呼ばれて他の友達の所に行ってしまう。しかもその友達というのは、私が苦手なタイプの人達なのだ。現に運動音痴な私の姿を、いつも影でバカにして笑っている。
だからその人達と凛ちゃんが仲良くしているのを見ると、少し胸が痛くなる。私も運動音痴でなかったらあの楽しそうな輪に加われたのだと思うと、何だか無性に悲しくなった。
私は凛ちゃんと一緒に居ない間、1人ぼっちにはなりたくなかった。1人になれば余計、悲しくなってしまうから。
だから私も別の友達の所へ行き、談笑した。これもいつもの事だ。
私には友達が1人も居ない、という事はない。少ないながらも、ちゃんとした友達が居る。
話の内容は、大抵が体育の悪口だった。私達は運動音痴仲間で、お互いに傷を舐め合っている。今だってそう。
「体育はいらないと思う人ー!」
グループの1人がそんな事を言えば、全員が一斉に手を挙げる。そして皆、顔を見合わせて笑うのだ。
でも、そんな楽しい時間ももうすぐ終わる。
楽しい時間というのは、いつもあっという間に過ぎてしまう。なのに辛かったり苦しい時間は、とてつもなく長いのだ。
そんな事を考えた瞬間、授業開始のチャイムが鳴って体育の先生が入ってきた。
「もう授業始まるぞー! 早く並べ」
体育の先生はそう呼びかけながら、体育館の中心まで歩いていく。その事に気づいた私達は、「じゃあまた後で!」というような事を口々に言った。
そして、遅れないように急いで整列する。他の人達も、おしゃべりを止めて並び始めていた。
——授業の始めの挨拶はすぐに終わり、適当な準備体操も終わった。
「今日はバスケットだ。男子が反対側で跳び箱をやっているから、当たらないように注意しろよ。それから……」
今は、先生が今日の授業の内容を説明している。私はその間ずっと、朝以上に気分が沈んでいた。もちろん、今も。
体育の度に思い出すのは、私をバカにして笑うあの声。思い出したくないのに、思い出してしまう。
気にしなければいいだけだと、自分でも分かってはいる。それでもやっぱり、私の気持ちは沈むばかりだった。
「じゃあ5分間シュート練習の時間を設けるから、頑張って練習するんだぞ」
体育の先生の声が、どこか遠く聞こえた。
- Re: そこに居たのは、 ( No.7 )
- 日時: 2014/02/17 13:38
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU (ID: HmBv7EUE)
「どうしたの? 早くボール取りに行こうよ」
突然上から降ってきた声に、はっと我に返る。慌てて声の主を確認すると、凛ちゃんが私を心配そうに見つめていた。
どうやら、私はまたぼうっとしていたみたいだった。
「ご、ごめん! 本当にごめん!」
私は必死で凛ちゃんに謝るが、なぜか声が上擦ってしまう。それを誤魔化すように、私はわざとらしく視線をそらした。
だけど凛ちゃんは、そんな私にも笑顔でこう言ってくれる。
「そんなに謝らなくていいよ! 気にしてないし。それより、早く行かないと!」
凛ちゃんにとっては、何気ない一言かもしれない。でも今の私には、笑って許してくれる事が何よりも嬉しくて。こちらまで、自然と笑顔になってしまう。
「ありがとう、凛ちゃん」
私は短く返答すると、凛ちゃんと一緒にボールを取りに行った。
「あーっ、また入んなかった!」
そんな声が、あちらこちらから聞こえてくる。
今はシュート練習の時間。ゴールめがけて、ボールがあらゆる方向から飛び交っていた。
並んで1人1人シュートする、なんて面倒くさい事は誰もしない。いつでも遠慮なく、ゴールめがけてボールをぶつけていいのだ。
そうするようさっき先生が指示していたし、実際に皆やっている。でも私は、未だに躊躇ってボールを投げずにいた。
タイミングがよく分からない、というのもある。でも一番の原因は、この状況が怖いからだった。だってボールには当たりたくないし、他の人に当てたら大変だし……。それに何より、私はシュートが入らない。
今までシュートを入れた回数は、片手で数えられる程。それでも、躊躇っているうちに時間はどんどん過ぎていく。
このままではダメだ。練習しなければ上手くならない。下手くそだから笑われるんだよ!
頭の中にそんな言葉が次々と浮かんでくる。私は必死の思いで、ゴールめがけてボールを投げた。
でも私が投げたボールは、他の人が投げたボールよりもだいぶ低い位置で落ちた。
……予想通り、私はシュートを決められなかったのだ。その事を理解してすぐ、心の中で溜息をつく。
私は人とボールを避けながら、ボールを取りに行った。だけど落ちているボールはたくさんありすぎて、どれが私の物か全く分からない。なので多分これだろう、という物を直感的に選ぶ。そして、私はまた練習場所に戻った。
相変わらずシュートは決められなかったが、さっきよりはボールが高く上がるようになったみたいだ。下手くそなりにちょっと成長したんだな、と思うとやっぱり嬉しい。
それでも上手い人達から見れば、下手くそだと思うんだろうな……。
寒い廊下を、凛ちゃんと一緒に歩いていく。私はようやく地獄から解放され、安堵していた。
それでも、今日はマシな方だったと思う。あのシュート練習の後は全て、試合の時間に使ったからだ。
試合では何度も紗希ちゃんと清水さんがシュートを決めていて、本当にすごいと思った。私もあんな風に活躍してみたい、とも思う。
その感情を認める度、私の中にある紗希ちゃんへの憧れ——それがどんどん深まっていくのが分かった。
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