複雑・ファジー小説
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- 勇者で罪人の逃避行!【】
- 日時: 2012/09/25 17:52
- 名前: ジェヴ ◆hRE1afB20E (ID: jP/CIWxs)
参照1000突破ァァァァァ!! 感謝しきれません!
こんな拙い小説を見てくださっている方、毎回コメントをくださっている常連様、本当にありがとうございます。
まだ10章近くまである中、1章も完結していない状況ですが、全話完結に向け頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします(^^*)
どうもジェヴです(・ω・)
題名は変更しました、仮題なので今度も変更するかもです。
主人公+α以外ほぼオリキャラを目指して。
一時流行ったRPG系の小説ですが、それでよければゆっくり見てってくださいませ(*´ω`*)
【注意】
・更新不定期です、放置多し
・急展開なんて日常茶飯事さ!(蹴
・gdgdなRPG風小説
・オリキャラ様によってこの小説は支えられています
以上です!
【目次】
プロローグ『旅人の逃避行』>>005
登場人物>>118
第一章『砂塵に紛れる支配者と』
01 >>013 02 >>015 03 >>023 04 >>026 05 >>032
06 >>037 07 >>041 08 >>043 09 >>050 10 >>061
11 >>077 12 >>078 13 >>086 14 >>100 15 >>112
16 >>117 17 >>121 18 >>127
@ふざけ過ぎた結果→>>038
【番外編1】
1『武器商人と用心棒と案内人と』>>051
2『四面楚歌!食糧を狙う敵』>>074
3『前途多難、そして追撃』>>081
4『限界に見えた一つの希望!』>>096
5『』>>131
【ものおき場】
イラスト ※私情により簡潔にまとめました。
〆ジェヴより
・表紙らしき何か>>093
・カイン>>045
・番外編組>>094 >>106
・【SI-VAさん】より カイン>>101
〆優勇さんより!
・タイトル>>098
・カイン>>059
・レイラ>>090
・ジョン>>114
〆かのこさんより!
・カイン>>087
〆三月兎さんより!
・レイラ&ゼン>>104
〆グレイさん!
・クナギ>>110
素敵なイラストありがとうございました!
オリキャラ随時募集です。
【オリキャラ投稿の際の注意と留意点】
・オリキャラが敵としてか味方としてか、またどの立場で登場するかなどは私が決めさせていただきます。何とぞ
・1度きりのキャラもいれば、ずっと登場するキャラもいます。ご了承のほどを
・設定(過去話)などは大雑把に。魔法も難しいもので無く説明が簡単なものをお願いします
(容姿や魔法、設定被りの防止です)
・【】の右に書いてある文章は消してください
以上です!
【オリキャラ容姿】
名前【】カタカナで
性別/年齢【/】
種族【】人間、エルフ、竜など
職業【】人間系種族のみ。竜などで職業・魔王城の番人などはおkです
容姿【】できるだけ詳しく
性格【】
魔法属性【】炎、闇、風、ノーマルなど。無しでもおk!魔術師系は複数可能
魔法技【】どういう感じで魔法を使うか
武器【】
技【】どういう技を使うか
備考【】
過去【】
何かあれば【】
サンボイ「」「」「」6つまで
以上です
- Re: 勇者で罪人の逃避行!【番外編1−2完全更新:8/9】 ( No.77 )
- 日時: 2012/09/22 18:44
- 名前: ジェヴ ◆hRE1afB20E (ID: jP/CIWxs)
耳に響く高い金属音が、辺りに響いた。今度は小賢しく相手の攻撃を避ける事も、フェイントをかけたりすることも無く、お互いが真正面から斬りかかる。そしてそれを双方が相手の刃を自分の刃で受け止めていた。つまり、鍔迫り合いの状態だ。
大剣と槍、鍔迫り合いで『剣士』の方が圧倒的に有利である。しかし、それでもなおレオンはそと同等に張り合うだけでなく——
「っ……くそ、ッ………!」
『剣士』を圧倒していた。『剣士』は苦しそうな声を上げ、また息を切らし始めていた。相手を押しているとみたレオンはここが勝負の決まり目だと察し、一気に刃を相手の方に押し切った! 同時に、火焔も大きくなり始め、ついに完全に『剣士』を押し切ったのである。『剣士』は後ろに吹き飛ばされ、背中から倒れ込んだ。彼が手にしていた『大剣』は、彼よりも後方にまではじけ飛ぶ。
「勝負あったな」
無論レオンは『剣士』に剣をとる隙を与えなかった、レオンは地面に倒れこんだ彼の胸辺りを、足の裏で全体重をかけて抑えつけた。『剣士』は苦しそうな声を上げる。
(ッ、クソがッ……!化け物かこいつは!)
『剣士』は自分を見下げるレオンを見て、苦しみながらそう思った。自分はこんなにも息切れを起こしているのにも関わらず、コイツ(レオン)はまるで澄まし顔だ。冗談じゃない、全力でかかってこの始末とは。
『剣士』が自嘲気味に笑みを浮かべると、レオンは怪訝そうな顔をして『剣士』の喉元に槍を突き立てた。
「余計な真似はするなよ、カイン。勝負はついた、大人しく来てもらうぞ」
「…………」
それに答えずにいると、レオンは何を思ったのか『剣士』の顔を覗きこんだまま視線を外さなくなった。しかし、そんな視線を向けられ居心地が悪いのは『剣士』の方だ。『剣士』は舌打ちすると、彼から顔を逸らした。すると少しの間、間が空いて——そしてふとした拍子に、上から声が降ってきた。
「なぜ、お前は魔法を使わなかった?」
それは、レオンからの問いだった。しかしそれは、「指揮官」としてではなく、「レオン」としての、純粋な問い。『剣士』はその問いに対して、再び自嘲気味な笑みを浮かべた。
「何だ、それは俺が魔法を使ったらお前に張り合えたかもしれねぇって意味か?」
アホか、誰がお前みたいな化け物に張り合えるものか。そう言いたげな視線をレオンに向けた。しかし、その言葉はレオンを不快にさせたのか、レオンはその時酷く表情を歪ませた。かと思えば徐にしゃがみ込み、『剣士』の首根っこを掴みあげる。レオンのそんな行動に、「痛いな、離せ」という表情をして『剣士』がレオンを睨み返すと、レオンは声を荒げた。
「カイン、俺はお前が誰よりも魔法に優れていたと知っている! そう——お前は剣もできて、それ以上に魔法のできる男だった! お前の実力はこんなものではない筈だ。なのに、なぜ」
「……、うるせーなァ。耳元で怒鳴んじゃねーよ」
『剣士』はレオンが言葉を鬱陶しいと言わんばかりに怪訝そうにそう言った。レオンは『剣士』の言葉を聞いて、どこか悲しそうな顔をしたが——ついに何か諦めたのか、彼の首根っこを掴む手を離した。そして地面に倒れている『剣士』を見据えて、問う。
「お前は本当に変わった。変わりすぎた。故に聞く、お前は——」
レオンはそこで言ったん言葉を区切り、そして再び口を開いた。
「お前は本当に、カイン・フォースなのか?」
——、
その問いに、レオンは答えてほしくなどなかった。かつてのカインは、こんな男ではない。こんな男であっていいはずが無い。『自分の憧れた男』が、こんな風になるはずが無い。なってほしくも無かった。無言のままでいい、レオンは”沈黙”と言う答えが欲しかった。
「だ、め……剣士さんは、その人は——!」
その問いに、真っ先に口を開いたのはレイラだった。レオンはそう言った彼女の方に向く。すると、フードを被った彼女は、どこか思いつめたような、どこか悲しげな表情を浮かべており……
「…………」
なぜかレオンは、そんな彼女から目はが離せなかった。なぜ、彼女が悲しそうな顔をするのか。彼女の表情は『仲間の事を想って』程度のものではなかった。まるで、自分にも非があるような表情だった。
「いいよ、レイラ。もういい」
と、そんな彼女の表情を見て、『剣士』は少し悲しそうに笑った。その『剣士』の言葉を聞いて、ふとレオンと彼女は『剣士』へと視線を向ける。『剣士』はまるで誤魔化す様子も、足掻く様子もなく、淡々とした口調で、こう宣言してみせた。
「そうだよ、俺がカイン・フォースだ。俺がまぎれも無い、1年前に世界を見捨てた大馬鹿野郎さ」
そう言った『剣士』……いや、カイン・フォースは、レオンの方に両手を差し出した。抵抗する気はまるで見受けられない、おそらく自分を連れて行けと言いたいのだろう。レオンは怒りにも悲しみにも、憐みにも似た表情を浮かべると、彼の手を掴もうと手を伸ばした。カインはそれを見守りながら、呟くようにレイラに言う。
「悪いな。後の事は任せたぞ」
カインはそう言うと、ゆっくりと瞳を閉じた。もう覚悟はできたと言いたいのだろうか。レイラはそんなカインを見て、絶望の表情を浮かべた。
「そん、な……!」
レイラはそう呟くと、ガクリとその場に力なく膝を付けた。
「そんな、剣士さん……駄目ですよ・駄目じゃないですか、そんな事したら貴方が……」
彼女はどこか、自分に言い聞かせるようにそう呟いていた。そして涙を浮かべ、自分の顔を手で覆う。
(…………)
レオンには、その光景が痛々しく目に映る。レオンは見ていられないと、その光景から視線を外した。
しかし、その時だった。
「あぁ、小賢しい……小賢しいぞ。逃げるのか、貴様は」
不気味で殺気だった声が、この広場に響いた。その声を聞いた者の全ての背筋は凍りつき、一瞬にして動きを封じてしまうほど——恐ろしい、声だった。カインは驚きに目を見開き、差し出そうとしていた手を地面につけて身を起こす。そして彼が目に映したのは、レベルⅢ以上の強力な束縛魔法の中で自分を縛っていた光を、ブチリブチリと千切り取る——
レイラの姿だった。
- Re: 勇者で罪人の逃避行!【番外編&1−11更新:8/9】 ( No.78 )
- 日時: 2012/09/22 18:49
- 名前: ジェヴ ◆hRE1afB20E (ID: jP/CIWxs)
(なんだ?)
目の前の少女を見て、レオンは思う。何かの糸が切れてしまったかのように声色の変わった少女——彼女から感じる恐怖を受けながらも彼は、その中に得体の知れぬ『懐かしさ』を覚えていた。
「貴様は”役目”を終えてはいないだろう……?」
と、そう言った『レイラだったソレ』は、無理矢理魔法を千切ったせいで血だらけになった自分の手を、どこか遠くのものを見るような視線で見つめていた。そしてゆっくりと視線をカインの方に向けると、口の端をつり上げる。
彼を見つめるその瞳を、真紅に染めて。
「っ……、…………!」
その瞳を見て、カインは恐怖に目を見開いていた。そんな彼を見据えて、レオンはただ事ではないと槍を構えた。しかし、目の前にいるソレの異常さはレオンにも十分すぎるほど分かっていた。唱兵士、それも彼女に魔法をかけていたのは5人。魔法のレベルはⅢ以上——それも、コレは素手で引きちぎったのだ。
規格外にも、程がある。
レオンは苦笑を浮かべるが、正直そこまでの心の余裕はなかった。しかし、それはその場にいる全員、彼女の仲間であるカインも同じ事だった。カインは目を見開いたまま、ただ呆然と彼女を見据えているだけである。
「あぁ、それともいいのか?」
皆の視線を受けるそんな彼女は両手を広げて、あちこちに術式を展開させ始めていた。複雑で歪な術式、見たこともない形をしたそれは、言い表し用の無い不気味な色に輝いている。
彼女はカインに向かってそう言うと、また口の端をつり上げた。カインはその言葉で我に帰り、とっさに叫ぶ。
「いいわけ無いだろ! あと二年待つって約束だろうが!」
それは、懇願のようにも聞こえる叫びだった。レオンには一体何の事を言っているのかさっぱりだったが、何か非常に危ない状況だというのはわかった。背後に構えている唱兵士に少し下がるよう促す。そして彼自身も少しだけ後ろに飛び、少女との間をとった。ただ、カインだけはその場を動こうとしない。少女はそんなカインの様子を見て少し何か考える素振りを見せた後、いい事を思いついたと言わんばかりに顔を上げ、こちらに歩み寄ってきた。
「そうか、そうだろうな。ではこうしよう、そこにいるそやつ等を皆殺しにしてしまおう」
そして、そう言ってカインの横をすり抜ける。カインは彼女が自分の横をすり抜けた瞬間、少し間を開けて振り返った。
また、彼女の言葉を聞いて、騎士団たちが身構えていた。
「そうすれば、何も問題は無かろう? 貴様が役目を果たしたいと言うのなら、力を貸してやるぞ」
彼女は背中で、彼にそう言った。彼はその言葉を聞いて、拳を激しく握る。その拳は、微かに震えていた。だが、次の瞬間——彼は、意を決して彼女の方に走り出した。
「「……!」」
その光景を見て驚いたのは、彼女の他に騎士団。そしてレオン。カインは背後からレイラだったソレに組み付くと、周りに言い放つようにこう言った。
「——ッ、ゼン! 今だ来い!!」
そう、彼が叫んだ瞬間だ。
教会の屋根の影から、何かが飛んだ。それは彼女に意識を削がれ、弱くなってしまった防壁魔法に、手にしていたハルバードの刃を突き立てた。風の魔法を表す光をその刃の先に集中させていたおかげで、その防壁魔法はまるでガラスのように、容易に打ち破られる!ガラスが割れたような音が辺りに広がり、光の壁が粉々となり宙に消えてゆく。その光の破片の中から、その防壁を破った影が降りてきて、レオンと二人の間に着地した。そこにいたのは、銀髪で碧眼の、一人の青年だった。
「っ!? もう一人仲間がいたのか!」
レオンは彼を見て、思わずそう叫んでいた。誤算だ、”奴”に聞いた時は、二人で行動していると聞いていたのだが——
しかも半円に展開していた防壁魔法の一番脆いと言われる真上を、迷いも無くこうもあっさりと!
(……、カインか!)
と、そこまで考えてレオンは気がついた。おそらくそれは、魔法の知識に精通していたカインの入れ知恵——防壁魔法の弱点など、この魔法を使っている者ですら知らないと言うのに。
カインめ、やはり抜け目は無い。
「レイラ! さっさと起きろ! 防壁魔法が破られた、やるなら今だ!」
と、そんなカインは——ゼンの支援を受け、組み付いていた彼女をゆすりながらそう怒鳴った。するとその瞬間、彼女に変化が訪れる。彼女の顔色がみるみる変わってゆき、ついにはあの元の調子に戻っていった。彼女はキョトンとした表情で、そしてまるで何があったのか分かっていないと言う風に、辺りを見渡していた。
「……、えぇと剣士さん? これは、一体?」
「話は後だ、また魔法張られる前にここンとこ爆破してくれ!」
(何!? 爆破だと?)
と、そんな二人の会話を耳にしようやく我に帰ったレオンは、そうはさせまいと槍を構える。しかし、その瞬間——
「させるか!」
その怒声と共に、ハルバードの一撃が彼を襲った!先ほと防壁魔法を破った、彼だ。
「退け! 貴様らが何を考えているか分からんが、見す見すその『爆破』とやらを見逃す訳にはいかん!」
レオンはそれを槍で受け止めると、彼と同じようにそれを怒声で返す。
しかし、一瞬——それは彼女の魔法を発動させるのには十分な時間だった。
「いきますッ……破壊魔法Ⅲ!」
ふと、彼女の声がしたと思えば、オレンジ色のまばゆい光が辺りを覆う。
(馬鹿な、こんな一瞬で詠唱、術式の展開が出来る筈が無い!)
レオンはしまったと表情を歪めるが、それはもう遅かった。既に完全に術式が展開されてあり、もうその魔法の発動を止める事は出来ない。
刹那、爆音と共に一気に視界が炎と煙に包まれていった。
----------------------------
魔法を使うには、
『 詠唱(どの魔法を使うのか選択) → 術式の展開(魔法範囲の選択) → 魔法の名前を叫び、発動(魔法効果をもたらす) 』
の段階をふむ必要があります(・ω・)
今回レイラは最後の段階しかふんでいません。何故でしょう?フフフ(蹴
最近手抜きですいません。致命的な程描写が少ない…(´・ω・)
- Re: 勇者で罪人の逃避行!【1−12更新:8/11】 ( No.79 )
- 日時: 2012/08/11 18:21
- 名前: 三月兎 (ID: .uCwXdh9)
お……おお?
うん?このお方はレイラちゃんなのかな?うん。
ほんとにどうしたんですかレイラちゃん!
カインでさえ驚く事態に突入してますね\(゜ロ\)
しかもレイラちゃん戻ったら記憶は飛んでるし、魔法の扱い方が違うし……!
もう気になりすぎます!更新頑張ってください(●^o^●)
あと、描写すごくお上手ですよ!
- Re: 勇者で罪人の逃避行!【1−12更新:8/11】 ( No.80 )
- 日時: 2012/08/12 11:24
- 名前: ジェヴ ◆hRE1afB20E (ID: DSoXLpvQ)
>>三月兎さん!
レイラ豹☆変(蹴
カインも驚きの展開です、まぁとりあえず爆破できてよかった(←!?)
レイラもカインも謎の多い人物、という事で書いているつもりだったりするw
そうなってますかね?(・ω・)
描写については何と言うか…自分ではここ2話は満足出来てないんですけど、
三月兎さんにそう言ってもらえると安心です!
ありがとうございます^^
コメントありでしたー!
次の更新は番外編1ー3になります!
- Re: 勇者で罪人の逃避行!【1−12更新:8/11】 ( No.81 )
- 日時: 2012/08/15 21:50
- 名前: ジェヴ ◆hRE1afB20E (ID: DSoXLpvQ)
「あああああああああああああああッ! ちっくしょうやられた!」
静寂した朝の岩山地帯に、そんな怒声が響き渡った。
【本編同時進行!番外編1−3:前途多難、そして追撃】
その声でようやく目を覚ましたのはクナギだった。彼が目をこすりながら声のした方を向くと、そこには自分よりも早く目を覚ましていた案内人とジョンの姿があった。案内人は膝を地面について、両手で頭を抱えていた。クナギが「何事だ?」と二人に尋ねると、仮面の下で苦笑を浮かべたジョンが言う。
「盗賊に食糧をやられたらしい」
ジョンはそう言って馬車の方に目をやった。すると、そこには中が荒らされた形跡のある馬車が一台。馬もいなくなっている。
「あちゃー、こりゃあヒデェな」
クナギは大きく欠伸をしながら、馬車の方に近づく。そして中を覗いてみると、何と意外な事に——
「お? 何だ食糧以外は大丈夫なのか」
運搬する物資の方はなんと、手をつけられていなかったのである。物資の入った木箱のいくつかは強引に開けられようとした形跡はあるものの、盗まれてはいなかった。それを不思議に思い、クナギは首をかしげていた。すると、そんなクナギの様子を見ていた背後の案内人が悔しそうに口を開く。
「くっそぉ……こんな事なら面倒臭がらず後積みした食い物の方にも『チェーン』かけとくんだった……」
そう言って心底残念そうに肩を落とす案内人。クナギは案内人の言う聞きなれない『チェーン』という言葉が気にかかり、それは何かと本人に聞こうとして——遮るように口を開いたジョンにそれを制された。
「『鍵』……? 聞きなれない魔法だな……オリジナルか?」
「ま、そー言うところだな。けど、俺達案内人……もとい運び屋の間じゃ結構ポピュラーな魔法だぜ?」
そう言ってため息をつきながら、重い腰を上げる彼。その言葉の後に、「ま、考案者は俺だったりするんだけどな」と、少し照れくさそうにそう言った。それを聞いて二人は目を丸くする。
「オリジナルの魔法!? はは、そりゃ凄いなお前……新しい魔法作るのって難しいって聞くぞ?」
クナギはどこからともなく取り出した煙草をふかしながら彼にそう言った。それは社交辞令でなく、正真正銘尊敬の念を込めた言葉だ。
そもそも魔法というのは、『詠唱』『展開』『発動』という順番を組んで初めて成り立つものだ。
詠唱で魔法を選択し、展開で魔法範囲を肯定し、そして発動で魔法効果を発揮する。
これは一般に『魔法の第三式』と呼ばれ、またその式で魔法を発動させる事を『三式理論』などと呼ぶ。一般的というか、魔法と呼ばれるものの殆どが、この式を使って発動されている。
……くどくなったが、『詠唱』『展開』『発動』——これらは、3つ揃って初めて完成される魔法にとって、一番重要な要素なのである。
そして、魔法を習得する上で一番難しいのが、『詠唱』。詠唱というのは、それぞれ個々の魔法に存在する”魔法コード”を全て暗記し、さらにそれを詠む事を指す。この言葉を説明するにあたって理解が必要となる『魔法コード』という言葉は、簡単にいえば、『魔法の種類を選んで決定する』という動作の名詞——そう考えるのが、詠唱という言葉を理解する一番の近道になるだろう。
とにかく、詠唱と言うのは、頭の中で魔法コードを詠むにせよ、声に出して魔法コード詠むにせよ、魔法を習得する上で一番苦労する。言い換えれば、詠唱さえできれば魔法を習得したと言っても過言ではないのだ。
また、魔法の詠唱を深く理解した人間であれば、その魔法コードに手を加えたり、また上級者になれば新たに魔法コードを作成することによって、オリジナルの魔法を生み出すことができるらしい。
しかし、『魔法コード』の理解なんて——とても人間のできる事ではない。魔法を使っている大半の人間は、詠唱によってもたらされる魔法効果くらいしか知らないはずだ。実際、クナギ自身もその類の人間に部類される。
クナギに言わせれば、魔法というのは偉大で、複雑で、そして歪なものだ。
”魔法というものは、宇宙に似ている。魔法を理解したという事は、宇宙を理解した事に同じで等しい”
……どこかの学者が言ったその言葉を思い出し、クナギは苦笑を浮かべた。
そして目の前にいる案内人という男が、自分が思ってたよりも凄い人物だという事を、今更になって実感し始めていた。しかし、「魔法を作る」程の凄い人物だというのに、そうに見えないのが不思議だ。そんな案内人は今、しょんぼりした様子で肩を落としていた。
「——そういえば、なぜ俺たちはあの時寝てしまったんだ?」
と、今まで静かに事の成り行きを見守っていたジョンが、ふとそんな事を言い出した。そういえば昨晩、自分たちは突然謎の睡魔に襲われて眠ってしまった。あれは——明らかに不可解なことだった、特に誰かの魔法を受けたような感じではなかった。ではあれは一体何だったのだろうか?
「んー、ありゃたぶんレイスの類だと思うぞー」
すると、しょんぼりしたままの案内人が、溜息をつきながら言った。その言葉を受け、ジョンは半信半疑の様子で言う。
「悪霊だと? そんなものが存在するはずがない」
ジョンは少し強い口調で述べる。
「幽霊などというものは存在自体が認められていないんだ、それに噂ではそのレイスとやらは墓地や寂れた廃墟に現れるそうだが……この辺りはその条件すらも満たしていない。つまり——」
「つまり、レイスの仕業はありえない、と?じゃあ兄ちゃんは、この不可解な現象をどう説明するってんだ?」
……ジョンに反論を述べた案内人の口調が、心なしか低く耳に響いた気がした。案内人はどこか虚空を見上げて言う。
「大体な、条件を満たしてねえって言うけどそうでもないんだ。で、レイスはな——人がたくさん死んだ場所に現れるんだ」
つまりは——言わなくても、もう分るだろう。と、案内人は黙り込んだ。そして彼の言葉の意味を理解した瞬間、クナギとジョンにゾクリとした、気味の悪い寒気が走った。
「……さってと、ここで道草食ってるわけにもいかねーから——村に引き返して食糧の調達してくるか!」
と、凍りついた雰囲気の中、声の調子を明るくして、案内人はようやくそう言って立ち上がった。落ち込みモードを振り払って、自分の頬を両手で軽く叩く。だが、この様子を把握したクナギには「馬もいない状況でどうやってこの荷物を運ぶんだ?」という疑問が浮かびあがってきて、もしや彼はその事を忘れてるんじゃないだろうかと一瞬心配になっていた。先ほどの話を聞いて、なおさら早くこの場を離れたいというのに。
——しかし、そんなクナギの心配も杞憂に終わったようで、クナギの心境を察した案内人はニカリと笑ってみせた。
「大丈夫だって! 今から知り合いの馬商人に、転移魔法で馬連れてきてもらえるように話つけるからよ!」
心配無用、と言いたげに胸をはって案内人はそう言うと、彼は落ちてある手頃な枝を手にして、ある詠唱を唱えた。そして少しの間を開け、今度は何やら独り言を言い始めた。
「あ、俺だ。久しぶりだなー! 元気してたか? ん、俺? 俺今超困ってんのよー、単刀直入に言うけど馬貸してくれないか? 2頭ほど。まぁまぁそう言うなって、昔のよしみだろー?」
……どうやら、何かの魔法で彼の言う『馬商人』と話をしているらしい。彼は木の枝を受話器と見立ててどうやら会話をしているらしかった。
(——しかし、待てよ?)
クナギはその案内人の様子を見て、ふと何か妙な違和感を覚えた。違和感というか、何かハラハラするというか。しかし、一体何故自分がそう感じるのか、原因は知れなかった。
「……クナギ」
すると、先ほどから案内人を見据えて沈黙していたジョンが、クナギの後ろから彼に問う。クナギが少し顔を上げると、案内人を見据え、仮面の下で苦笑を浮かべて彼女は言う。
「お前の知り合いは犯罪者なのか?」
「へ?」
その言葉を聞いて、クナギは何を言い出すのかと目を丸くしてジョンの方を見る。するとジョンは腕組みをしながら、案内人から視線を外すことなくこう言葉を紡ぐ。
「あの魔法は、主に黒魔法と呼ばれるものの一種に部類されていたはずだ」
黒魔法——それは、一般的に使用することが禁止されている魔法の事だ。また、その黒魔法と呼ばれる存在は、表には出回らない魔法の事も含まれる。また、位の高い者のみ黒魔法の使用が”公式的に”認められている。例えば、騎士団や貴族、城の者——それも位の高い大臣などが、それに当てはまる。
(……けど、どう考えてもコイツは後者は当てはまらないな)
クナギは案内人と知り合ってからかれこれ五年になる。しかし、彼にはそう思わせる素振りなどは一切見せなかった。むしろコソ泥と呼んだ方がお似合いな程だ。それに、商人という職業で世界を転々としているクナギには、どんなに隠されても位の高い者とそうでないも者の違いなどはすぐに分かるものだ。
という事は、ジョンの言う通り、ということになるか……?しかし、それはそれで妙な奴だ。魔法を作ることができ、位が高いわけでもないのに黒魔法も使用できる——
……本当に何者なんだ、この男は。
クナギはようやく話のついた様子の彼を見て、思わず苦笑をこぼしていた。そして間もなくして、案内人の目の前に魔法陣が現れ——そこから馬が二頭現れる。案内人はその馬を慣れた手つきで馬車につけると、剣呑な面持ちで二人を手招きしていた。クナギとジョンは顔を見合せた後に、馬車へと乗り込んでいった。
「さってと、じゃあ早速村に戻るか。降りだから半日もかからないはずだな」
「……だな。そろそろ腹も減ってきたことだし、早めに頼むぜ——」
と、クナギが言いかけた時だった。
背後から突然、凄まじい轟音が。
「ッ、なんだこりゃあ!?」
その瞬間、地面が揺れる。案内人は手綱を手に持ちながら、慌てた様子でそう叫ぶ。地震か、と思いクナギは馬車から身を乗り出すが——その瞬間、クナギは垣間見た。
巨大な
岩が
頭上から
降ってくるのを。
「う、うわあああああああッ!? 馬鹿お前っ……馬ァさっさと出せ! 潰されるぞッ!!」
クナギがそう叫ぶと、案内人はもたつきながらも即座に手綱を打った。そして大きく揺れながら、馬車は降ってくる巨大な岩の間を巧みに避け、谷に落ちそうになりつつその場を猛スピードで離れて行ったのであった。
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