複雑・ファジー小説
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- Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】
- 日時: 2015/05/10 19:19
- 名前: わふもふ (ID: nWEjYf1F)
平穏な1日が過ぎ去ろうとしていた、とある真夏日のこと。
完全に日没しきったその日の夜に、何でもない夜空が突然紅く染まった。
この日以降の3年間に亘る日付を、人々は未来永劫"デッドデイズ"と呼ぶようになった。
◇ ◇ ◇
※キャラ投稿者様各位へ重要なお知らせ※
一部のキャラの苗字、或いは名前を一時的に変更して登場させてあります。
これは一時的、そして伏線による故意ですので、誠にご勝手ではありますが何卒ご了承をお願いいたします。
現状、下記の通りです。後程追加される可能性があります。
星空真澄→星野真澄
水久洋介→水久良介
古田綾香→古田彩香
〜目次〜
キャラ紹介>>16
プロローグ〜存在しなかった時間〜>>1
一章〜レッドナイト現象と異能者〜
>>2 >>3 >>4 >>5 >>6
二章〜デッドデイズの始まり〜
>>18 >>19 >>20 >>21 >>27 >>29 >>36 >>37 >>38
三章〜忌子の末〜
- Re: Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】 ( No.50 )
- 日時: 2015/05/16 11:08
- 名前: わふもふ (ID: nWEjYf1F)
モンブラン博士様>>
本物登場させてみました。波乱はまだまだ続く予感です。
では引き続き、執筆してまいります。
- Re: Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】 ( No.51 )
- 日時: 2015/05/16 12:35
- 名前: わふもふ (ID: nWEjYf1F)
先輩は走りながら小瓶の蓋を開け、星野の口へとそれを突っ込んだ。
小瓶の中には、粉末状になった何かが溶けた謎の液体が入っているらしい。
それを強引に飲ませるや否や、先輩はすぐさま星野を足払いで転ばせ、鼻と口を無理矢理塞ぎ込む——すると。
「っ……」
苦し紛れに星野は暴れていたが、急に大人しくなって瞳を閉じ——動かなくなった。
「——砒素だね」
「あ?」
その様子を傍観していた優希が言う。
「多分だけど、水に粉末状にした砒素を入れて、星野という名の偽者を殺したんだよ。そうすれば生き物である以上、自ずと命を落とす——毒を盛って殺す典型的な例だね」
「やることが一々大仰というか——素直に銃で撃てばいいものを……」
砒素は猛毒だ。
その昔、どこかの祭りで砒素入りのカレーが振舞われ、数多の命が奪われたという話がある。
取り扱い自体はそんなに気をつける必要はないが、体内に入らないよう、そこだけは注意を払わなくてはいけない。
「——半分正解、かしらね」
動かなくなった星野を蹴り飛ばし、先輩が優希に視線を寄越す。
心なしか敵意が向いている。それは先輩だけでなく、優希も先輩に敵意を向けているようだ。
睨み合う両者の間に、火花が散っているような気がする。
「あれは第二塩化鉄よ。そうでなければ、死ぬのに時間がかかってしまうわ」
第二塩化鉄と聞いて、俺はサッと血の気が引いた。
基板作りで銅箔をはがす、エッチングという作業で使用される液体なのだが、こいつもまた人体に害を及ぼす危険な代物に違いはない。何が厄介かというと、第二塩化鉄というは体内に染み込んでいく性質があるのだ。
もし触ってしまったなら、即座に洗い流さないといけない。
「勿論砒素も入っているわ。何せ相手はゾンビだもの、第二塩化鉄程度では動きを止めるくらいにしかならないでしょう」
「——アンタも知ってるんだ? あれがただのドッペルちゃんじゃないってこと」
「おーい、俺を置いて話を進めるなー」
——って言ったところで、聞く耳を持つわけでもなく。
一触即発というべきか——そんな2人の空気に、何となく俺は無意識に、徐々に後退していた。
「?」
とん、と。何かが背中に当たる。
——成瀬の腹だった。
「——とんだ災難だな。新崎」
「全くだ」
——ん? 何故俺の名前を知っている?
まあ、そんなことはどうでもいい。現状を整理してみよう。
異空間とかいうよく分からないここにいるのは、俺、成瀬、千秋先輩、睦彦先輩、星空、優希の6人。
ドッペルゲンガーである、星野という危険因子は——千秋先輩の手により死亡、と。
突如現れた星空を睦彦先輩が宥め、俺と成瀬は千秋先輩と優希の喧嘩を仲良く見守っている——
——うん。つまり、俺はどうすればいいんだ?
並々ならぬ覇気——何時ぞや感じた冷気と、何時ぞや見た右目の眼光を放つ千秋先輩と。
普通じゃない狂気——俺を殺したくて堪らないと言い張る優希による、一触即発状態の2人が目の前にいるというのに。
当人達は俺らの事など忘れ去ったように、完全に自分達の世界へ入り浸っている。
——そもそも、昼なのに空が赤いこの空間は何だ。
優希が言うには、ここは異空間という場所らしい。そしてゲームやラノベによくあるストーリーのパターン上、ここではきっとドッペルゲンガーたちがうようよ蔓延っているのかもしれない。
そうなるとここは途轍もなく危険な空間になるのだが——まあ、所詮は現実と空想だ。そんなことあるわけ——
「……」
——あった。
- Re: Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】 ( No.52 )
- 日時: 2015/05/17 10:20
- 名前: わふもふ (ID: nWEjYf1F)
「生きている人間の数だけ、ゾンビはいるんだよ。最も、どっちがゾンビかは分かったもんじゃないけどな」
話しながら、成瀬が睨む先——数十メートルだった。
死んだ魚の目をした、人間に見えるゾンビたちが。生きている実感さえ湧いてないであろうドッペルゲンガーたちが。
ゆっくりと、俺達の方へと向かってきている。
「白鷹の言うとおり、ゾンビってのは居て良いもんじゃねぇ。だったらどうするか? 殺すまでだ」
「おい待てよ。さっきの星空みたいに、本物がいるかも知れねぇだろ? 殺しはなるべく止そうぜ」
「甘いな」
甘いと言ってきたのは、右手に拳銃を携えた睦彦先輩だった。
「あいつらの目をよく見るんだ。それだけで全て分かる」
「目だぁ?」
こんな遠距離からどうやって——と思ったが、案外特徴は分かりやすかった。
少し離れたところで息絶えた星野のように、ゾンビたちには"白目"の部分が存在していない。
更に凝視してみれば、瞳孔が開ききっていることも分かった。いわば死人の目だ。
相手の目を見て話を聞け——この言葉の重要さが増した気がする。
「ゾンビが敵意を向けたとき、瞳孔の中心が赤く光る。そこにも気をつけて」
「あ、あぁ」
——何なんだ、この人たちの冷静さは。
おまけに千秋先輩をはじめ、皆は知識も豊富だ。俺がまるで無垢な子供みたいに見えてくる。
星空に至ってはゾンビたちを見て硬直しているので、こっちはまあ置いとくとしよう。
——どうも納得がいかない。俺は一度仕舞ったナイフを再び取り出した。
「何でみんなばっかり"そういうこと"を知ってるのか不服だが、とりあえずあいつらの目、光ってるぜ」
輝きを失った黒い瞳の、開ききった瞳孔からは——赤い点が2つ光り、こちらに向いている。
「——やるか」
「油断するなよ、晃君」
「言われなくても!」
——と、その前に。千秋先輩と優希はどうすればいいのだろうか。
あの2人は未だ口喧嘩の真っ只中であり、迫り来るゾンビたちなど微塵も気にしていない。
全く、呉越同舟という四字熟語を知らないのかアンタらは!
こうなりゃ仕方ない。俺はスタスタと2人に歩み寄り——
「おい!」
「っ!」
「痛っ!」
素早く、無防備な脳天にチョップをかました。
「痛ったぁ……もう、何するのよ!」
「う〜、ひどいよ晃君……」
「喧嘩してる場合か! ゾンビが来てんだよ!」
「——あぁ、それなら心配しなくてもいいよ」
「は?」
優希は一体何を言ってるんだ。
「元々、私が無理矢理異空間への扉をこじ開けたんだからさ。ここから脱出すればいいだけの話なんだよ」
「あー、まあお前がここを異空間とか、中二クセェ事言い出しやがったからな……」
からかった次の瞬間には、また視界が渦を巻いていた。
- Re: Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】 ( No.53 )
- 日時: 2015/05/17 11:30
- 名前: わふもふ (ID: nWEjYf1F)
気付けば空は青く元通り。
星野の死体だけ消えて、俺らは全員現実世界に戻ってこれたようだ。
「——私の異能はね、実は2つあるの」
「あ?」
「1つは知っての通り、意図的に声で相手の眠気を誘うこと。もう1つは今のこれなの」
「へー異能が2つもあるのかーそりゃ便利だろうなー」
棒読みで返す俺だが、由希は特別気にしていない様子。
「——今回は見逃すけど、次は絶対殺すから」
そして、そんな悪役が去り際に言う定番の台詞を吐き、優希は颯爽とその場を後にした。
千秋先輩も、じゃあねと一言だけ俺に告げて——ちゃっかり俺の頬を突っついてから、甘い匂いを残して去っていった。
「——」
やがて成瀬や睦彦先輩も、それぞれ無言で立ち去った後。
この場に残されたのは、俺と星野——ではなく星空の2人だけ。
「……」
「……」
何となく目が合う。
容姿は星野と似ているが、星空の方が——なんというか、良い意味で目が光っていた。
ハートの異名に違わぬ容姿である。
「……大丈夫か? 帰れるか?」
「あ……はい。大丈夫です。ありがとうございます」
にっこりと、屈託のない笑みを浮かべる星空。
それに頷きで返し、俺も帰るべくこの場を後にした。
◇ ◇ ◇
「あ」
「あ」
帰宅の道すがら、俺は見覚えのある顔を見て思わず声を漏らした。
あの屋上で空から舞い降りてきた、恋本もなみである。
しかし彼女の隣には、どっかで見たことあるような、それでいて見たことないような水色ツインテールの女子がいる。
もなみより若干年上っぽいが——心なしか、精神年齢はもなみより幼そうに見える。
「お、お久し振りです……」
「久し振りーって、この間会ったばっかじゃねぇか」
「あ、えっと、そ、そうでしたね……! す、すみません」
毎度毎度思うんだが、何故謝るんだコイツは——
「もなみん、知り合い?」
「うん。ちょっとした縁があってね」
「へー」
すると、もなみの隣にいた女子が近付いてきて、ソイツはなにやら俺の全身を凝視し始めた。
「——な、何か?」
「んー」
——しかし何というか、色っぽい奴だ。
千秋先輩とはまた違った色気を持っていて、こっちは何というかエロティシズムを感じる。
惜しげもなく露出された肌が、特に。
そんな少なすぎる布を纏っただけで、恥ずかしくないのだろうか。
「——君、異能者でしょ? でもって新崎晃でしょ?」
「ふぁい?」
かと思えば——何だ突然。
確かにその通りだが、だからどうしたと。
「やっぱりね〜。千秋先輩と不審な行動を取ってるって聞いてさ、あたし君の動向探ってたんだよ」
「勝手に人をストーキングするのかオメーは!」
「ストーキングじゃないよ! 君達を調査してたのっ!」
「どっちも一緒だ……で、オメー誰だ」
「あ、あたしはねー……誰だか分かる?」
「しらん」
——とりあえず、ゾンビだということは分かる。
開ききった瞳孔が、何よりそう告げているのだ。
「あたしは古田彩香! よろしくねーっ」
「あぁ……」
——間違いない。紛うこと無きゾンビだ。
コイツは古田彩香と名乗ったが、俺の知る限りでは、コイツの名は古田綾香だ。
古田綾香といえば学校でも指折りの問題児、且つ良き相談役という謎スペックの人だ。
その手の話はそれとなく学校内で噂されていて、俺もその噂は風程度には聞いたことがある。
しかし、噂されている当人の名は古田綾香であって、古田彩香(さいか)ではない。
「……ありゃ? どしたの?」
「いや……」
こんな風に、身近なところでゾンビがウロウロしているかと思うと——かなり気分が悪くなった。
きっと今掻いている汗は、夏の日差しの所為だけではないだろう。
「あの、大丈夫ですか……?」
「具合悪いならどっかで休む?」
「いや、大丈夫だ。多分日射にやられただけだと思う」
「それはダメだよ晃君! ホラ、水分水分!」
「いやいい、持ってるから」
自分の水筒を差し出してくる古田の手を押し退け、俺は鞄の中に収めたペットボトルを取り出す。
カラカラと蓋を開け、中に入っているスポーツ飲料を一気に喉へ流し込むが——中身はすっかりぬるくなっていた。
- Re: Dead Days【キャラ投稿者様各位へ】 ( No.54 )
- 日時: 2015/05/22 16:07
- 名前: わふもふ (ID: nWEjYf1F)
「——今後暫く、優希さんの行動には注意する。それだけよ」
月曜日を迎えた放課後。
俺は旧生徒会室まで、千秋先輩を訪ねていた。
「何だよ、やけに冷たいな」
"あんな"事件に巻き込まれた以上、最早他人事には出来ない。
やるべきこととか、出来ることはないか——そう訊くよりも早く、先輩は素っ気無く返事を返してきた。
「貴方は今何が起きているのか、それを分かってて訊いてるのかしら?」
「あたりまえだ」
レッドナイト現象。異能者。ドッペルゲンガー基ゾンビ。
きっとそれらは全て繋がっていて、必ずどこかに結果の終着地点がある。
俺は元々千秋先輩から、優希の能力が暴走した際の保健として雇われていたようなものだ。
だが実際の優希には明らかな悪意があって、しかし彼女の目的や行動は読みきれない。
俺を殺すつもりでいるのは確かだが——何故俺を殺すのか、理解できない。
もしかしたら俺の知らないところで、たくさん彼女を傷つけていたのかもしれないが。
——だからこそ、もう"この件"に関しては無関係ではいられないのだ。
「貴方はただの保健よ。ただ優希さんに寝首を掻かれないよう、注意すればいいだけの話」
「ここまで関わらせといて、今更無関係なんて言い張れねぇだろ。教えてくれ、俺はどうすればいいんだよ」
「だったらその前に、私の質問に答えてくれるかしら?」
「え……べ、別にいいけど」
一体何を聞くつもりだ——と思っていたら。
「——どうして私なの?」
けっこう愚問だった。
「貴方、もう分かるでしょう? 私たち以外にも異能者は沢山いること。それに、誰が異能者なのかも」
——図星である。
誰が異能者で誰が一般人なのか——宛ら簡単な足し算をするかの如く、俺は既に判別できるようになっていた。
まるで死人と関わる仕事を勤める人が、死人がいるかいないかを雰囲気で察することが出来るように。
「貴方の知り合いにも異能者は沢山いて——更に私より"この件"に関して、よっぽど詳しい人もいる。それこそ山のように、ね。だったら私なんかより、その人たちを頼るべきよ。違うかしら?」
——聞いてて思ったこと。
それは、たった2文字で表すことができた。
「——馬鹿」
「えっ?」
「馬鹿だなって言ってんだよ」
そう、本当に馬鹿だ。たとえ相手が目上の人間だろうが、そんなこと関係ない。
俺は胸を張って言える。張って言っちゃダメなのかも知れないが——先輩は馬鹿だ。
「あのなぁ……俺は、千秋先輩という存在が必要だから、こうして頼ってるんだよ。それじゃダメなのかよ?」
「——」
何故か顔を真っ赤にする先輩。
なんだ、何かマズイことでも言ったか——
「——ふふっ、何よそれ。まるで求婚してるみたいじゃない……」
「あ」
言われて、初めて気付いた。
俺今めっちゃ恥ずかしく、且つめっちゃクサイ台詞言ってなかったか?
——うん、言ってたな。
うわー……こりゃ引かれたな——と思っていたのだが。
「でも、十分よ」
先輩は、いつもの魔女みたいな笑みではなく——柔らかい日差しのような微笑を浮かべて。
「——ごめんなさい、少しこのままで——」
ほんの少し涙を流して、俺の胸へと倒れこんできた。
慌ててその身体を支える——
「……」
「……」
瞳を閉じて静かに、嗚咽もなく俺の腕の中で泣く先輩。
いつも強がってばかりに思えたが——この時ばかりは、とても小さな存在に見えた。
しかし、これまた見事に華奢な身体つきだ。
外見上ではスタイルは良いほうだと思っていたが、いざこうして抱きしめてみると、印象は全然違う。
それは何もスタイルだけでなく、雰囲気も全く違っている。
いつもの先輩は、人形のような美しさを持っている。しかし、今はとても生気に満ち溢れていて——暖かくて、儚い。
——いつもとは違う先輩の姿を見れたような気がして、俺は少し嬉しくなった。
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