複雑・ファジー小説
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- 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ
- 日時: 2019/01/09 13:52
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: DTf1FtK0)
こんにちは!マッシュりゅーむです。(正確にはおまさの中の人の友達です)「アイツに友達がいたのか!?」という疑問はさておき。
今回の作品は、リレー形式で進めていきたいと思います。リレーは初めてなので、皆様にご協力いただいて面白い物語になればいいと思っています。
ではでは、楽しんでいってくれたら幸いです!
注意:以下に注意してください。
・コメント等は差し控えてください。
…以上ッ!!
- Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.29 )
- 日時: 2019/02/06 18:06
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: DTf1FtK0)
——気づけば、場面はあのエンドロールへと移り変わっていった。
目の前にはあの、命を刈り取る刃のごとき悪魔の爪が、スローモーションで近づいてくるのが見えた。
そう、はっきりと、鮮明に————
——〈カゲノミコ〉でもよけきれなかった攻撃が。
瞬時に対応する。『死』への恐怖など、もうどうでもいい。
頭が高速で回転し、身を転がせ、回避をする。〈ゲファレナー〉も、私が回避できるとは思っていなかったらしく、勢いあまり壁に衝突した。その間、私はすぐ目の前で目を閉じているヘイズを見やった。
「すぐ、終わるから、待ってて。」
そして、激しい感情に頭を占領されながら、私は、敵へと向かっていった。
流石に相手も凄まじい速さで、起き上がってすぐにぶつかって来た。その鉄の塊でも豆腐の様に容易く切り裂く爪で、こちらへと攻め行く。普通の人であれば、今頃バラバラに解体されていただろう。しかし、時に激情は、人に力を与える。
「———ふっっっっ!!」
右、上、斜め、また上。高速の凶器を、伏せ、または〈カゲノギシュ〉で打ち払いながら躱す。
その間、たった1秒にも満たない。常人ならまずありえない反応速度で回避を繰り返す。しかも、少しずつ、ほんの少しずつ、目の前の怪物を押していっている。
相手も気づき始めた。自分の目の前に立っているニンゲンが、どんなモノなのか。
だが————
「っっっっ!」
流石に常人以上の力を常人が使うと、体は壊れる。もう、立っているのが奇跡なぐらいに、私の身体は悲鳴を上げていた。
それを見逃すはずがない。
「ぐふっっっっ!」
大きく薙ぎ払い、一閃。ギリギリ手を前にクロスさせることで耐えたが、今の攻撃をもろに食らっていたら、今頃は天の上にいるだろう。
しかし、耐えたとてこの衝撃で身体の気力が全部吸い取られていったみたいだ。膝が笑い、崩れ落ちる。
闘志も燃え尽きそうになった時、そうだ、と思い出した。
あの時、誓ったじゃないか。
皆を守ると。
ヘイズが倒れたとき、感じたじゃないか。
絶対に報いると。
諦めてどうする。
燃え尽きてどうする。
立て。抗え。
もう無理だと身体が動かなくとも、諦めろと脳がわめいても、
全てを否定し、乗越えて見せろ、佐藤レナ!
————それが、私の最後の記憶だった。
* * *
「……?」
反撃しようと体を低くし、低速ダッシュの体形を作って走りだそうとしたとき気付いた。目の前のニンゲンが——さっきまでは顔をしかめ、あたかも苦痛に耐えているように思える表情をしていたのに——平然と無表情にこちらを睥睨している。
——何を思っている?何を感じている?
ニンゲンの周りには、先ほどまでは確認できなかった帯びただしいどす黒いオーラが取り巻いている。
先の戦いで、このニンゲンの中に——自分にとって有害な——何かがあるとみていたが、急に動きが鈍くなり、容易に殺すことができると思ったのに、今度は何なんだ、と、一つの厄災は警戒し、動きをやめてしまう。
——それが、いけなかったのかもしれない。
瞬間、気づいたらソレは横にいた。
「!?」
あの、数えきれないほどのニンゲンを瞬殺してきた自分でも、目で追えなかった、気づけなかった。そして、ソレは呟く。
「——フォスキア」
目と鼻の先で、真っ赤に燃え上がる紅蓮の炎を目に宿しながら、その横に人型の〈カゲボウシ〉を召喚した。
動くことはかなわなかった。生まれて初めて『恐怖』というものを知った。それで体が言うことを聞かなくなることも知った。幾人ものニンゲン達のあのおびえた姿、泣き叫ぶ姿、許しを請う姿、ただただ茫然とこちらを見上げる姿。これまで殺してきたいろいろなニンゲンの表情、態度らが走馬灯のように駆け巡った。
「眠れ、裏切りの影神よ」
目の前が真っ赤に染まった。
- Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.30 )
- 日時: 2019/02/15 18:43
- 名前: おまさ (ID: rUpk0CSp)
視界が朱で塗られたその時、もうダメかと思った。
しかし、幸いなことに切り裂かれたのは額だった。・・・傷が浅いわけではないが。
だからこそなお赦せん。両手を見てそう思った。
今まで、数多の命を冥府に送ってきた手だ。
ーーーーーそれを、その手を今ここで失うのか。
それに影神は怒り、それと同時に目の前の人の形をしたものに対する意識を改める。
ーーーーーーーーーー これは、ただの人ではない。自分に対する厄災ーーー今まで自分に殺された魂たちの想いの象徴であるのだ、と。
憎しみをガソリンに変え、〈影神〉を黒炎がーー比喩表現無しでーー覆う。
炎の向こう、「厄災」はそれに驚きも慄きもせずにこちらを睥睨していた。
その表情に、狂笑を滲ませて。
あははははは。
奴が自分を嗤う。本当に、腹が立つ。五月蝿い。煩わしい。その表情、顔面を抉り取ってやる。砕けて、燃えて、焼け爛れて蹂躙されてーーーーーその命を弄んでやる。許しを請うても、その上で尻から腸を焼いてやる。
「死ね」
嗚呼、哀れな子羊よ、大人しくしてればいいものを、わざわざ暴れ狂うものだからだこれだからにんげんはお
ーーーーーーーーーぁーーーーーーーーーー。
瞬間、腑をレナの腕が貫通した。
「ーーーーーッ!」
〈影神〉は呻き、その表情のまま硬直する。まだ、倒れない。
「これだから、お前は」
裏切りの影神を目前に、レナーーーーー否、フォスキアは呟く。と、
腹を穿ったその左腕をそのまま上に振り上げて心の臓を掴む。琴線を指先だけで潰して本体を握りつぶす。奴の体の血管が刹那膨張したかと思うと左腕が真っ赤に染まった。
充満する血の匂いにフォスキアは陰惨な笑みを浮かべーーーーー顔面を右手で千切る。鮮血。
潰れた右眼がこちらを見ているのに気が付き、それを、抜いた左腕で穿つと同時に、その先にあった脳を掻き回し脊髄を引っこ抜いた。
そのまま、背中から靄を出した。靄はまるで獣のように口を開けると、フォスキアの左手ごとそれを咀嚼。しかしそれにフォスキアは頓着しない。次なる獲物を探す。
本体が死んだことで、操られていた二人は気絶して元に戻っている。それを横目で見ながらフォスキアは、
「・・・あんな凡骨に用はない」
と呟くと、飢えた目で正面を見据えた。
そこには、倒れた少女ーーーーーヘイズが横たわっていて。
ヘイズは、苦しげに目を開いた。
「・・・・ぅッ、れ、レナ・・・・・?」
ーーーーー見つけた。あれが獲物だ。フォスキアの紅蓮の双眸が真っ直ぐと「殺意」でヘイズの目を射抜いた。
思わず、ヘイズが微かな悲鳴を上げた瞬間、フォスキアの右脚が爆発的な威力で地を蹴り、ヘイズに向かう。
フォスキアの血染めの右腕が振り上げられ、それにヘイズが目を瞑る。
ーーーーーそして、ヘイズの白い肌が抉り取られるその瞬間だ。
「・・・・・ぐはッッッ・・・・・・」
呻き声と同時に、フォスキアの体が宙を舞った。その軌跡に、血の弧を残して。
出血で意識も朦朧とする中、ヘイズは視界に一人の人影を捉えた。
その人物は、フォスキアを〈カゲノツチ〉で殴り飛ばした後、ゆっくりとこちらを向いた。
「・・・ふぅ、とりあえずはこれでいいか。ま、『どのような選択をするか楽しみにしていますよ』・・・なーんて言われちゃえば、ボクも何か干渉したくはなるけどね」
涼しげな表情で呟いて、微笑みを向けた。
「ーーーーー久しぶりだね、“ヘイズ”」
そう、ファグはヘイズに告げた。
- Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.31 )
- 日時: 2019/02/28 10:19
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: HDdiVM53)
「ふ…ファグ……?」
突然現れた人物の名を呆然と呟いた。
「あぁ、そうだよヘイズ。それとも『ヘイザノート』の方がいいのかな?」
ニヤリと笑みを浮かべてこちらを見下ろしてくる彼女に、唐突に聞き捨てならない嫌味を言われ、一睨みして言った。
「『ヘイザノート』はやめい。普通にヘイズでええわ」
「ごめんごめん、久しぶりだからつい、ね」
そうやって眉を下げて謝ってきた。そして手を借り、起き上がって改めて目の前の仲間と思っている者に目をやる。
ファグは、自分と同じ〈カゲノミコ〉の四人のうち一人で、マイペースなのか——はたまた道化を演じているだけなのか——いつも部屋に閉じこもっていて何かをしている、らしい。なので——
「おぬしなぁ…前の〈カゲノアツマリ〉にも出ておらんかっただろう」
「あははは」
このようなやりとり、ついこないだもやったような気が……、と軽い既視感を覚えながら頭を抱えた。
「して……これはどういう風の吹き回しじゃ?」
そう、前方で先程の一撃で完全にノックアウトし、今も尚のびている己が助けた人間に目をやった。
「あぁ、ちょっとね。まぁそれは追々話すとして、でもキミも危なかっただろう?」
それに異論はない。ついさっき、自分は死の淵を彷徨っていたのだ。瀕死の状態で助けてもらったのは事実だ。しかし、一つ疑問がある。それは——
「先程のレナ様子は……」
自分に渾身の一撃を加える時に感じた、あの気迫は、空気は、表情は。
今は嘘のように静かに目を閉じている彼女を静かに見つめた。
(これは儂の時と同じ………)
と、そこまで回想した時、徐にファグが動いた。
「…帰るのか。」
「ん、そろそろね。お暇しようかな」
そう、半壊したドアに向かって足を向けた。
「ありがとうな、ファグ。いろいろと」
「いやいや、どういたしまして」
ヘイズは笑みを浮かべ、感謝を述べる。ファグもそれにこたえる。
「面白いのも観れたからね」
そう、小さく呟かれたその言葉は。
誰の耳にも届くことはなかった。
ああ、
「楽しいなぁ」
- お知らせ ( No.32 )
- 日時: 2019/03/01 18:12
- 名前: おまさ (ID: rUpk0CSp)
やあどうも、おまさです。
すみません、今回は本編の内容とはもの凄くずれますが、お知らせをさせて頂きます。
この度、小説イラスト掲示板にレナの設定資料を投稿させて頂きました。
そのうちヘイズのイラストとか、はたまた小説に関係ないイラストをイラスト掲示板に投稿していきますので、皆、見てくれよな!!
追伸:たそタナ、そろそろ再開します。
- Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.33 )
- 日時: 2019/03/13 19:21
- 名前: おまさ (ID: qWu1bQD1)
「ーーーーわッ!?」
目が覚めた。意識が覚醒し、ぼぅっとなっていた脳が再起動を始める。
そうして、目を数回瞬かせた後に私は今自分に起きている状況を認識した。
ーーーーーこれは、檻だろうか、鉄格子が見える。
首は動かせるようだ。牢のなかを見渡す。薄汚れた便座、壊れかけのテーブル。その上に置かれた、読めない字で書かれた数冊の本。必要最低限だ。
「ーーーーッ!?」
その時、気付きたくないことに気が付いてしまった。
ーーーーーーーー両腕を、切り落とされた!?
だが、それは幸いにも間違いだった。腕を縛られているのだ。左腕は金具で固定されていて、右腕の〈ギシュ〉は消えて無くなっていた。恐らく、術式が凍結されたのだろう。
首にも何かがはまっているようだが、よく見えない。
一体何があったんだ。
「フォスキア」
自分の〈カゲボウシ〉に呼び掛ける。が、反応がない。これもダメか。
気付いたら両手縛られて監禁され、おまけに自分の相棒も答えない。異世界トリップとしてはワースト一位だろう。
「お、ようやく目ぇ覚めたか。どうだ、ゆっくり眠れたか」
「・・・それはもう。厚いご歓迎、感謝しますよ」
突然の声、それに私は苦しげな皮肉で応じる。
その人物は私の皮肉に「ふん」と鼻を鳴らして応じる。私は彼に、幾つか質問をする事にした。
*
「まず、ここは何処なんですか」
「あ?あぁ、ここは見ての通り、全世界共通の言語で『牢屋』にあたるもんだ。・・・正確には、ジオノールっつー大監獄だわな。元は貴族の城だったらしいんだが、市民革命の後に改装されて・・・」
「その話はいいので」
煽る口調から急に歴史の授業みたいになった男の話を遮ると、男は不服そうな表情を浮かべた。
「・・・ったくよー、人がせっかくこの世界のアズカバンについて説明してるってのに」
ーーーーーーーーん?ちょっと待て。
「あなたは、もしかして・・・」
そう呟くと男は「ああ」と納得すると、
「ーーーーー俺は五年前、日本からこっちに召喚されたよ。あんたと同じ、日本人だ」
「ーーっ!?どこで知って、」
「いや待て違ぇよ?ちゃんとあのロリババアに聞いたって。ストーカーだとか思われてんなら、とんだ風評被害だな」
ふぅ、と安堵に吐息。その後私はすぐに表情を切り替えると、
「もうひとつお尋ねしますが、なぜ私は監禁されているんですか」
と問うた。
すると彼は、「はぁ」と息を吐いた。
「・・・・・それはねーんじゃねぇかよ、お客様」
「な、何がですか」
私が微かに動揺すると、男はその厳しい視線で私を射抜いた。
「何がですか、じゃねえよ。あんたはどうやら、自覚が足りねぇらしいな」
「ーーーーーー。」
「ーーー。じゃ、教えてやるよ。・・・あんたは、あのロリババアーーーー〈カゲノミコ〉様をどうやら殺そうとしたらしいじゃねぇか」
一瞬、言葉の意味が分からなかった。
「そんな呆けた顔しても無駄だぜ。あんな恐ろしい〈カゲボウシ〉引き連れてあんたは一体、何人殺そうとしてたんだ」
殺す?私が?冗談じゃない。嘘だ。この男は嘘を言っている。手に血がついているとでも言うのか。試しに左手の臭いを確かめてーーーーーー。
血の匂いだ。
絶望している私の鼓膜に飛び込んで来たのは、ゴーンゴーンという鐘の音だ。と、男が立ち上がる。
「お、時間だ」
そう言って鍵を開けると、私の拘束具を取り代わりに手錠を着けた。
「詳しいことは、法廷でな」
「法廷!?」
男の答えはない。代わりに目の前にあったのは扉だ。それを男が開けると、私の目に飛び込んで来たのはーーーーーー。
「ーーーーーーーーーーこれより、被告人サトウ・レナの裁判を開始する」
ーーーーージオノール大監獄の、大法廷だった。
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