複雑・ファジー小説
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- 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ
- 日時: 2019/01/09 13:52
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: DTf1FtK0)
こんにちは!マッシュりゅーむです。(正確にはおまさの中の人の友達です)「アイツに友達がいたのか!?」という疑問はさておき。
今回の作品は、リレー形式で進めていきたいと思います。リレーは初めてなので、皆様にご協力いただいて面白い物語になればいいと思っています。
ではでは、楽しんでいってくれたら幸いです!
注意:以下に注意してください。
・コメント等は差し控えてください。
…以上ッ!!
- Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.24 )
- 日時: 2019/01/24 10:24
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: J/gUjzFh)
—— 一方。
「ん?」
不快な空気を感じたある者が、今まで行っていた作業をやめ、窓の外を見やった。この感じは。
——〈ルール〉を破り、この世界の禁忌に触れたか。
疲れ気味の身体を振るい立たせ、椅子から腰を浮かせもっとよく外を見ようとする。街の外側は、まだちらほら歩いている人などが見えるのだが、中心付近は影の住民でさえも肉眼では見えない——否、住民
達だからこそ分かり得ない、理解しがたいものがそこにはあった。それは————
「ん、光…か……?」
目を細め、慣れない、一生慣れることのないだろうその物に、顔をしかめた。光——古より、〈表〉の世界に存在し、こっちの世界——影の世界には本来無いものとされているはず。あり得ない。しかし、だったらこれは————
「——光、輝きで合っていますよ」
突如、右斜め後方から聞こえてきたのは、笑い声にも似ていた。
「はあ、勝手にボクの仕事部屋に入って来ないでくれるかな」
初めから気配は感じ取っていたので、落ち着いて対応する。すると、『彼』は言った。
「ご安心ください。私が興味があるのはあなたじゃありません」
そうして、『彼』は窓の外、広がりつつある光を慈しむように見た。
「もしかして、〈五百年前の出来事〉とこれ、似てるけど、前回もキミは現場にいたの?」
「さあ、どうでしょうね」
そう言って、『彼』は影の中に消えようとした。と——
「ああ、そうそう」
何かを思い出したらしく、こちらを向いた。
「別にあなたが彼女たちを救いに行っても構いません。私はいつまでも『傍観者』を貫き通すだけです。あなたがどのような選択をするか楽しみにしていますよ、〈カゲノミコ〉様」
そうしてまた一人となった部屋の中、〈カゲノミコ〉——ファグは、肩をすくめた。
- 二十五話;妹の戯言 ( No.25 )
- 日時: 2019/01/29 18:39
- 名前: おまさ (ID: DTf1FtK0)
—————状況は、私が光を見た一幕に戻る。
騒ぎ声と混沌の中で目を覚ました私は、直後に自分が昏倒していたのだなと自覚した。昨日たっぷりと〈カゲボウシ〉の特訓で倒れまくっていたので、全身が軋む感覚や頭が重い感覚には慣れ切っていたし、覚えもあった。
「・・・昏い」
先程黒煙に包まれた役場はなお昏く、外からは騒ぎ立てる声や悪戯だと勘違いした怒号、それに悲鳴や、何かを懇願する涙に濡れた掠れ声など、色々な〈声〉が飛び交っていた。
「———————?」
それにしても、この違和感は何だ。〈声〉の筈なのに、〈声〉ではない感覚だ。瞑目してしばし考え、私は違和感の正体に辿り着いた。
——————鼓膜を震えさせる一種の「音」としての〈声〉とは、何もかもが根本的に違う気がする。
その証拠に、両耳を手で塞いでみても「それ」は聞こえてくるのだ。恐らくは。
「脳に、直接届いてる・・・?」
・・・という結論を立てたが、あながち間違いではないだろうと予想する。
では何故この様な状況になったのか、それを一から整理しよう。
まず、私とヘイズが話していると突然ヘイズが「逃げろ」と叫び、その直後昏倒。そして—————
「・・・・あれは、何だったんだろう」
途中で見た、不思議な夢。あれを「夢」と定義していいかどうかは私にもわからないが、ボキャ貧の私には「夢」としか言えなかった。
ともあれ、あれは一体。
「なんか、他人と意識を共有していたような・・・」
突飛な発想だが、この世界ではそれもありうる。
『汝は、誰だ』
覚えのないはずの声を思い出し、背中を悪寒が駆け上った。
『余は、フルド・ヘイザノート・コルネフォロス』
この名前にも、心当たりはない。無いのだが、どこかで聞いた様な声・・・
『——————————ようやく気付いたか』
「っ!?」
私の思考に、第三者の声が混じる。それに驚いて、声のする方を見れば、幾度も目にした黒い靄。直感的に、それが私の〈カゲボウシ〉であることに気が付いた。
『先に名乗るとしよう。——————我の名は、フォスキア・コルネフォロス。先まで姉、ヘイザノートの声が聞こえたのは、あの術の影響ぞ』
「・・・あの術?」
身に覚えがないというように怪訝な顔をすると、フォスキアは呆れを声音に滲ませた。
『・・・先程の、靄—————〈カゲノイシ〉は他人との感覚・感情共有の術だ』
「はぁ・・・」
気の抜けた相槌を打つ。と
『・・・ところで、汝は何と申す?我のみに名乗らせるつもりか、召喚者よ』
「あ、すみません。私はサトウ・レナです。・・・・さっき召喚者って、」
『無論、汝のことに決まっておろう。レナ、と申したな。汝、姓はサトウでよろしいか』
「あ、ハイ」
質問を即座に返されて、何も言うことがない。
とここで、もう一つ疑問に思ったことがあった。
「少し話題を変えますが、ここは一体・・・」
変だな、とは思っていた。なにせ、本来自我のない〈カゲボウシ〉と話ができていることだけでもおかしいのに、〈声〉まで「感じる」。
どう考えても変だ。
その疑問に、フォスキアは声音に複雑な感情を宿して言った。
『まだここは、〈カゲノイシ〉の中だ。あのような高等術式、簡単に破れるわけがあるまい』
「え!?じゃあ、さっきの夢は!?」
呆気にとられる。
『その答えは妹の我には解りかねる。姉であればそれを知っておろう。——————————————しかし、ヘイザノートか。その名を耳にしたのはいつ以来だろうか』
意味深な呟きに私は再び怪訝な視線を向けた。すると、
『——————————。何でもない』
と誤魔化され、それ以上の追求を諦めた。
『先程、なぜ我が自我を持っているのか疑問に思っていたらしいが、それは汝———レナの脳が我の自我環境を補完しているに過ぎぬ』
「え、」
フォスキアの靄が薄くなっていく。『さて』とフォスキアは続ける。
『この闇の帳は我の手で消し去る』
仮初の世界は終焉を迎え、光の輪郭がひび割れていく。
『それを、我が宿主が望むというのなら猶更のこと。—————————そうであろう、宿主、サトウ・レナ』
いまにもフォスキアは消えようとしている。その僅かな猶予に、私は叫んだ。
「待ってください!何がどうなっているのかさっぱり解りません!!一体何が、」
そこまで言いかけて口を噤んだ。フォスキアがその靄の向こうで刹那驚いたのち、笑んだからだ。表情は見えないが、なぜかそうだと確信できた。
『——————もしかすると、汝が〈エインヘリヤルの鍵〉なのかもしれん』
何のことだ。
『すまぬ、最後に一つ頼みがある』
懇願するような声音でフォスキアは言った。
『——————————————————————我が姉、ヘイザノートに宜しくと伝えてくれ。・・・・いづれまた会おう、我が宿主よ』
「フォスキア——————!!!」
叫んでも届かない、とはこのことか。私の声は虚無の空間となったそこに虚しく響いた。
—————私が「幻想」から逃れ、目を覚ましたのはそれから十数秒後のことだった。
- Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.26 )
- 日時: 2019/01/30 17:16
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: DTf1FtK0)
—————意識がまた、開花する。
「……はッ!」
がばっ、と急いで体を起こす。先ほどまでの出来事は——大丈夫だ、覚えている。どうやら夢のように簡単に記憶は忘れてしまうわけではないらしい。
最近気を失ってばかりだな、と一人苦笑しながら、少し落ち着いて周りを見渡す。ここに来たばかりの時に比べ、壁はボロボロになってしまい、床や、天井までも炭…なのかどうか知らないが、黒く汚れていた。もともと黒かったからいいか、と——
——ちゅどーーーーーん!!!!!!
「って、えええええええええええええええ!?」
「おお、帰ってきたかレナ!」
耳がようやく慣れてき始めたかな、と思っていたら、急に爆風に巻き込まれた。言い方を変えよう。寝起きに、黒い煙に苛まれ、吹っ飛んだ!
(意味がわからん意味が分からん意味が分からん)
理解が及ばない。この独特の金属音からして、今は戦いの真っ最中ということなのだろうか。
煙が晴れていくにつれて、全貌が明らかになってきた。予想通り、ヘイズは列に並んでいたときに前にいた、あの男たち二人の攻撃を片手だけでさばいていた。ん?
「黒幕お前らだったのかよ!!!」
前のスレッドとかめちゃくちゃこれからの戦闘シーンの為に盛り上がりを見せていたのに…。
「いや、そうではないぞ」
「え?」
首を横に振り、よどみなく前を向いてヘイズは言った。
「いったい…?」
そうしてつられて前を向いたとき、思わずはっ、と息をのんだ。
そこには——
「え………こど…も……?」
——ボロボロのフードを被った、『コドモ』がいた。
しかし、ただの子供ではないと、何故か自分の第六感が叫んでいた。
——こいつはヤバい、見た目にとらわれるな、と。なぜだかわからないが、異質なナニカであると。
「ヘイズ、この子は…?」
私は、ゆっくりと目の前にいるヘイズに問う。突然水分を奪われたかのように、のどの中はカラカラだ。
そして、二人の男——操られていたのだろうか——を押さえつけて、ヘイズは、まるで幼児が難問を突き付けられて困っているかのように、顔をしかめて、言った。
「〈ゲファレナー〉。〈裏切りの影神〉…じゃよ」
フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフFUフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフふフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフふふフフフフフフfu
カラスは、今宵も哀れな子羊に向かって、嘲嗤う。
- Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.27 )
- 日時: 2019/01/31 18:24
- 名前: rupan (ID: DTf1FtK0)
や、やばい。
そう思っていても、体がうまく動かない。今の状況を目前にし、うまく思考が回らない。
私は初めて恐怖で動けなるというのを感じていた。
どうする?この場での最善の方法は?動け脳。考えるんだ。また、誰かを救えないなんて嫌だ!!!
世界は、そんなレナの気持ちも知らず、日々という歯車が今もなお動いている。
遠巻きにこちらを見るもの。親子で手をつなぎ心配そうにしているもの。食べ物を口に運びながらどうでもいいとばかりに目をむけてくるもの。
———みんな同じ<ニンゲン>なんだ。救わない理由なんて無い。
私がそう思い、己のエンジンをかける——と、同時に<ゲファレナー>が動き出した。
「………………………………………………………ぁ…………………」
気づいた時には遅かった。目の前には彼の五本の指がレナの命を刈り取らんとばかりにその勢いを増して迫っていた。
ほんの数秒の出来事だったかもしれないが、私にはその何倍もの時間に感じられた。
——ザシュ
肉をえぐる音。否、命を刈り取る音がした。
—————しかし、どんなに待っても想像していた痛みはやってこない。
私は恐る恐る恐怖でこわばった目を開けた。
目の前には、小柄な女性——否、黒衣に身を包んだ少女の姿がその小さな腹を真っ赤にして横たわっていた。
悲しみ、驚き、二つの感情が混ざり合って、ぐっちゃぐちゃになって私は、思わず叫んでいた。
「ヘイズーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
- 28話:泡沫の夢 ( No.28 )
- 日時: 2019/04/29 13:59
- 名前: おまさ (ID: caCkurzS)
目の前が朱色に染まる。腸を抉られた少女は一寸たりとも動かず、床というキャンバスには雛罌粟が花咲く。
目前の烏羽色の靄は大きく唸り、こちらを睥睨す。
そして奥の狂人は、「殺意」という光で彩られた双眸をこちらに向けた。それはまるで、獲物を前にした飢狼が見せる嘲笑か、同情の様だった。
其の葡萄色の眼に射貫かれ、私は背中に冷たいもの———悪寒が猛虎のごとく駆け上がるのを感じる。
きっと次は私だ。
もうどうでもいい。
嗤え。
こんな私を嗤ってくれ。
嗚呼、
誓いを立て、それを今この瞬間、刹那後悔したこの私を。
もう既に———否、この世界に招かれた時から私の運命は確定していたのだ。
—————いや、死ぬる人間が、空っぽの只人が、怠惰なる愚者が、過ちを犯した大罪人が、今更泣いて詫びて、慟哭して、懇願して、感傷に浸ることなど赦されてはならない。それこそが、この世の禁忌に値する。
『いずれまた会おう、我が宿主、サトウ・レナ』
最も身近な己の分身———ドッペルゲンガーである、彼の〈カゲボウシ〉の妹、其の言葉が脳裏に鮮明にフラッシュバックする。
しかし、
その声に応えることの選択肢すらも、ひび割れていく私の「世界」には存在しない。
————唯、エンドロールを待つ。
この美しい世界が、大気がカウントを唇で紡ぎだし、冥府はそんな私を歓迎す。
伍、
肆、
参、
弐、
壱。
「--------?」
来ない。冥府の河の張の風景が、悪魔の羽を持つ死神が。
死が、サトウ・レナの存在を拒絶し、其の証明すらも放棄する。
何があったのかと、瞑目したまま私は周囲に意識を向ける。自分の第六感に近い感覚を呼び覚まし、外の様子が輪郭を帯び、色彩がーーーーーーーーー。
ーーーーーー気付けば、私は駅のプラットホームにいた。影の世界のものではない、日本のーーーー私にとってはこの不可解な出来事の始まりとなった場所だ。
その、プラットホームの向こう側を見るともう一人の<ワタシ>が立っている。
それは今の私の容姿と寸分変わりない。
ーーーーーその紅蓮の双眸以外は。
彼女が問う。
ここで、終わりか。
私は応える。
もう、立ち上がる力も残っていない。
どうせ何をしても何も変えられない。
再び彼女は口を開く。
己が禁忌を犯した者であるからか。
私はそれを肯定する。
また、口を開く。
『ーーーーならばその大罪、償おうとは思わないのか』
私を支配していた無力感が僅かに薄れる。
そうだ、ここからだ。
私は、いろんな人にたくさんのものを貰った。
ーーーーーーでもまだ、それに報いていないじゃないか。
それに気付き、私は神に懇願するように。
ーーーーーーーせめてもう少しだけ、足掻かせて下さい。
私に、贖罪の機会を下さい。
どくん、と真紅の心の臓が鼓動する。それは恐怖にか。怯えにか。
ーーーーーー否、違う。
今私の中にあるのは、冴えた闘志、決意。そして神の悪戯によって生かされたサトウ・レナの魂、唯それだけ。
そうして、この残酷な世界に宣戦布告を。
「ーーーーー私が、皆を」
絶対に、守るから。
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