複雑・ファジー小説
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- 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ
- 日時: 2019/01/09 13:52
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: DTf1FtK0)
こんにちは!マッシュりゅーむです。(正確にはおまさの中の人の友達です)「アイツに友達がいたのか!?」という疑問はさておき。
今回の作品は、リレー形式で進めていきたいと思います。リレーは初めてなので、皆様にご協力いただいて面白い物語になればいいと思っています。
ではでは、楽しんでいってくれたら幸いです!
注意:以下に注意してください。
・コメント等は差し控えてください。
…以上ッ!!
- 十九話;マイ・ライ ( No.19 )
- 日時: 2019/01/30 17:19
- 名前: おまさ (ID: DTf1FtK0)
何故だ、と誰もが問うた。
だがその答えは、もうかなり遠くに置き去りにしてしまった様だ。
彼の時のことを思い出したのは、もう500年以来かもしれない。
——————だが今日、昏い闇の中で何かが余の記憶の糸を揺り動かした。
余と同じ境遇の人物がここで—————今。
—————フルド・ヘイザノート・コルネフォロス「陰霊記」より
********************************************
私は、訓練の後、憔悴しきっていた。
シャワーを浴びた後、倒れるように用意されていた自分の部屋のベッドに倒れこむ。
「‥‥はぁ———疲れた」
元々運動不足気味なのに、異世界召喚初日からいきなり動いたもんだから、全身筋肉痛の嵐に襲われていた。しかも骨も軋む。
ベッドにうつ伏せのまましばらくぼぅっとしていた。・・・当然のことながら、睡魔がやってきた。それは異世界にいようと全世界共通の理らしい、目の前がだんだん暗く——————。
———————と思っていたが、無意識に私は眼を開けていた。
何故だろう、こんなに自分は使命感に駆られているのか。
そんなことを思う暇もなく、私はメモ帳をめくり始めた。持ってきたポーチの中から愛用の0,3ミリシャーペンを引っ張り出し————メモ帳に何かを書いている。
微妙に眠い眼を擦り、意識を覚醒させて脳内に充満する使命感を分析し————答えが出る。
「これは・・・・最高のネタになるかもしれない・・・!」
思わず声に出してしまったが、私のようなにわかでも、小説家なら誰もがそうするだろう。
————————異世界召喚なんて、そう簡単に起こるわけではない。
ならばそれをネタにして小説を書かないほかにない。
ヘイズに付けられた右腕の〈カゲノギシュ〉を総動員してものすごい勢いでメモ帳にネタを刻む、刻む、刻む。
何気にこの〈ギシュ〉、筋肉では無いから書いていて疲れるなんてことがないので中々便利である。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ————————・・・・・・・・・・z」
———私が気付いた時には、いつの間にか朝になっていた。
「・・・・はッ!?」
思わず変な声を上げてしまったが、頬に少し涎が付いているあたり、どうやら私は途中で眠ってしまったらしい。
袖でそれを拭い、まだ少し肌寒い朝の空気に向かって背伸び。
————そこで、昨日のことを思い出した。
ヘイズや他の皆に手伝ってもらい、〈カゲボウシ〉の使い手として特訓を積んだ昨日。〈カゲボウシ〉を使える人が稀なのは何となく解ったが、なおさら違和感があった。
———————何故ヘイズは、あそこまで〈カゲボウシ〉について詳しいのだろうか。
普通だったら章や嵩のように、その存在を知っている程度だ。なのに、あそこまで確信を以て私に説明し、何より——「喰われる段階」の話まで知っているのだろうか。
しかも、あの態度も謎だ。
————練習中、あそこまで私を追い込んで必死になって指導したのだろうか。
追い込んでくれた事には感謝している。だが、尚更闇は深まるばかりだ。
それに、「喰われる段階」の話をしているとき、彼女の紅蓮の瞳には、傷みを堪える様な、自嘲する様な波が過った。
—————もはやこれに私は、彼女が「喰われた」ことを経験した、もしくは「喰われる」ところを目撃した、という可能性しか思い浮かばない。
後者の方は、かなり稀なことだが、それを目撃するチャンスが無い、とは一概に言い難い。
—————しかし前者の場合、その事実の説得力は後者の何倍にも匹敵する。
となると、ヘイズの正体は———もしかして————————————。
「・・・おぅ、起きたかレナ」
結論に至る前に声が掛かる。
「・・おはようございます、章さん」
と、この〈ホーム〉でやけに出会う機会の多い人物に挨拶すると、
「おいおい、敬語じゃなくていいって」
章は苦笑したらしかった。
私は章に曖昧に笑みを返すと、今度は章が水を向けた。
「もうすぐ、ヘイズさんも起きてくる頃合いだろう。昨日はお疲れさん」
「———。」
「・・・どした・・?」
私は思わず、その言葉の響きに頬を固くしていた。
そんな私に章は怪訝な顔をするが、
「・・・・なんでもない、です」
私は、彼に嘘をついた。
- Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.20 )
- 日時: 2019/01/15 18:03
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: DTf1FtK0)
「おはよ〜、レナ」
「あ、おはよう智美」
「……おはよう」
「おはよう、嵩」
「Zzz、Zz…」
「…寝てる!?」
皆が続々と起きてきて(若干一名寝ていたが)〈ホーム〉のリビングが騒がしくなる。そして——
「——おはよう、レナ」
と、ヘイズが寝室のある二階から————ではなく玄関の外からドアを開けて入って来た。ん?
「な、なにやってたのヘイズ、というか起きてたんだ」
私は今日の朝に疑問に思ったことを思い出し、少し警戒しながら聞いた。
「ん?ああ、ちょいと朝の日課をな。儂はもう年寄りだからの、こまめに運動せんと身が持たん」
いや、だからどう見てもロ……もういいや、ツッコむのも疲れた、と、いつもの妄想独り言を行いつつ、同時にああ、なるほど、と思った。
「その≪年寄りだから≫、起きるのも早いんだね」
「なんか嫌味に聞こえた気がするがそうじゃ」
納得いかないが、本当の本当にこいつはババアらしい。納得いかないが。
「そうじゃ、忘れておった」
と、何かを思い出したらしく、ヘイズがこちらを向いて微笑んだ。
「レナ、これから一緒に街に行くぞ」
「え?何をしに行くんですか?」
全くこれから何をするか想像がつかない。すると、すぐに前から答えが飛んできた。
「〈カゲボウシ〉の術者の登録じゃよ」
- Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.21 )
- 日時: 2019/01/16 17:47
- 名前: marukun (ID: DTf1FtK0)
- 参照: http://marukun0325@gmail.com
そんなことで私はヘイズと一緒に街に出た。
街は賑わっており、昭和時代の中期程にまで文明が発展しており、子供たちが公園で遊んでいるのを見て少し頬が緩んだ。
そういえば、この街にも他に私と同じ様な境遇の人はいるのだろうか…などと思っていると、
「ついたぞ、ここが術者登録するところじゃな。」
つまり、私の世界でいう『市役所』ということか。そう思っているとヘイズがバーの様な店の前で止まる。
「ここで術者登録するのか…」
私は中の様子を見ながら思う。
「無理…」
その中にはたくさんの人で混んでおり、コミュ障の私には無理な場所だ。
そんなこともお構いなしにヘイズは、
「なにをぼさっとしておる。早く行くぞ」
と私の手を引き…私を引きずりながら店に入る。
「いや、無理無理無理無理」
と抵抗するが、ロリババアは私を見て、
「今の方が目立っとるぞ。」
と言われ、素直に自分で歩き始める…が…
「あ、あの〜…手いつまで握ってるの?」
そう、一番気になっていたことを口にする。
「レナだと話した瞬間逃げそうだからな。」
と言われた。
「いや、逃げないからそろそろ離して?周りの目がきついんだけど…」
と私の様子を伺ってから、「仕方ないのぅ…」と言い、離してくれた。
- Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.22 )
- 日時: 2019/01/16 18:36
- 名前: マッシュりゅーむ (ID: DTf1FtK0)
「うっ、これは……」
思わず顔をしかめた。こんなに人がいるなんて…。
「ほれほれ、早く行くぞ。大丈夫じゃ、そう時間はかからん。」
「お願いしますできるだけ早く出てこれるように本当に頼みます」
早口で言い、本当に嫌そうな顔をして頭を高速で上下に振っている私を見て、ヘイズがため息をつく。
「はあ、全く、いったいどんな生活をしてきたのか気になるの」
……聞かないでほしい。
そうこうしているうちに列に並んだ。前には屈強そうな男が二人で話している。会話はあまり聞き取れなかった。目をその二人からは離し、ヘイズに聞いた。
「ここって全員が全員〈カゲボウシ〉の登録に来たわけじゃないよね」
「ああ、もちろんそうじゃ」
「他の人たちって何をしにここに来てるの?」
そう言いながら、周りを(怖々)見渡した。さっきの男たちや、他にも子供と一緒にいる母親らしき人、ボロボロの服を着たモノ(それが何故だか人には思えなかった)などがいる。すると、カウンターの方を見ていたヘイズがこちらを向き、こう言った。
「うんとな、例えばじゃが————」
はっ、とヘイズはすごい速さで後ろを向き、一瞬後、叫んだ。
「逃げろ!!!!!レナ!!!!!!!」
瞬間、
「何も……見えない………?」
————————————— 一瞬にして辺りが、『黒』に包まれた。
- 二十三話;ワタシ ( No.23 )
- 日時: 2019/01/30 17:16
- 名前: おまさ (ID: DTf1FtK0)
——————————何も、見えない。感じない。まるで魂が、自分の身体から出てしまった様な感覚に苛まれながら私は、「私」という存在が「別の何か」と混ざっていくような気がした。
「タニン」という境界線を越え、「ヒトツニ」なっていく。それが怖くもあったし、嬉しくもあった。
—————何か、音がする。
声ではない。
でもそれは、まるで人の声のように、自然に私の中に入ってくる。
『・・・・・は、誰だ』
あなたは、誰。
返事は無い。
『汝は、誰だ』
「—————。」
『・・・我は、誰だ』
私は、誰。
『我は』
私は。
『我』
私。
我。私。我私我私我私ワレワタシワレワタシワレワタシワレワタシワワワワワワワワワワワワワワワワわわわ—————————————————。
ヒトツニ、ナッテイク。
「—————。」
「・・・余は、同類なり」
第三者の声が聞こえた。
気付けば、瓦解しかけていた「サトウ・レナ」という存在はヒトツニなっていた。
あなたは、誰。
「余は、フルド・ヘイザノート・コルネフォロス」
目の前に、光が見えた。
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