二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【完結】フレッシュプリキュア!〜新たなる刺客〜
- 日時: 2016/08/11 18:59
- 名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)
初めましてか何度目まして!春太郎です!
小説サイトでは凜太郎という名前でやってましたが、映像二次の方は初なので、折角なので、雑談で使っている春太郎に改名させていただきました!
凜太郎で馴染んでる方も、雑談の方で春太郎で馴染んでる方も、どちらも知らねえよ!というお初さんも大歓迎です!
さて、「!」を多用したところで今回から書く物の紹介ですね
今回からは、最近久しぶりに見たフレッシュプリキュアの二次小説です
大好き×100なキュアパインちゃんとの恋愛小説、ですが、色々な事情により、「新たなる刺客」というサブタイトルになりました
どんな話になるのか!皆さん、是非見て下さい!
それでは、よろしくお願いします
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- Re: フレッシュプリキュア!〜新たなる刺客〜 ( No.55 )
- 日時: 2016/08/07 14:44
- 名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)
どれくらい、時間が経ったのだろうか。
どこからか聴こえた赤ちゃんの泣き声に、私は我に返った。
声の方向に走ると、ドーナツカフェのテーブルにラブちゃん、美希ちゃん、せつなちゃん、タルトちゃん、シフォンちゃんが座っていた。
そして、シフォンちゃんがひたすら泣き叫んでいた。
「あっ、ブッキー!龍也君、許してくれたの?」
ラブちゃんの言葉に、私は言葉を詰まらせた。
龍也君がシーザーだったことを、言うべきなのだろうか、と。
でも、言わなくちゃ。これは、私だけの問題ではないのだから。
「龍也君ね……シーザー、だったんだって」
自分の声が気持ちに反して明るいことに、私は驚いてしまった。
無理に明るく振舞おうとしてしまったのかもしれない。本当は、悲しくて仕方がないのに。
「そっか……」
「それより、どうしたの?シフォンちゃん、泣いてるみたいだけど……」
その話はそれ以上したくなかったので、私は話題を変えるためにも、聞いてみた。
というか、ここまで泣いてるのは、なんだか異常な気がする。
だって、こんなに泣いたのって、インフィニティに目覚める時くらいで……。
そこまで考えた時、突如シフォンちゃんは泣き止み、目から光が消えた。
「シフォンちゃ……ッ!?」
「我が名はインフィニティ。無限のメモリーなり」
無機質な声に、私の背筋が凍る。
しかし、すぐにタルトちゃんがクローバーボックスを取り出し。オルゴールを鳴らし始める。
これで大丈夫だと安心したのもほんの一瞬の出来事。
シフォンちゃんは全く戻ることなく、むしろ邪悪な感覚は増しているように感じた。
「なんで……」
「今回溜めたFUKOが、前にウエスターやサウラーが溜めたものより、多く、濃厚なものだからだよ」
背後から聴こえた声に振り返ると、そこには、ニヤニヤと笑うスプリンガーが立っていた。
「スプリンガー……ッ!」
「さぁ、さっさとそのインフィニティを渡してもらおうか」
スプリンガーの言葉に、私は咄嗟にシフォンちゃんを抱きしめ、反対方向に向かって走った。
他の3人もそれに気づいたのか、私の方に来させないように立ちはだかってくれる。
ひとまずシフォンちゃんを安全な所に持って行かないと、と思っていた時、目の前に別の影が現れる。
それは寄りにもよって……シーザーだった。
「シーザー……ッ!」
「インフィニティを渡してもらうぞ。キュアパイン」
そう言って手を伸ばしてくる。
私はその手をかわし、数歩後ずさった。
「おいおいシーザー。お前、来ないんじゃなかったのかよ」
「お前一人で彼女等からインフィニティが奪えるとは思えなかったからな。手助けだよ」
シーザーはそう言うと私を見て、優しい笑顔を浮かべた。
「山吹さん。そのぬいぐるみを、渡してもらえないかな?」
「そ、そんな手が通じるわけないでしょ?」
私はそう言いつつ後ずさる。
すると、シーザーは冷たい笑みを浮かべて「……だよね」と言った。
その時、目の前から彼が消える。
どこに行ったのかと思い辺りを見渡した時、後ろから首の辺りを腕で拘束され、首筋に指を当てられる。
「……ッ!?」
「インフィニティを渡せ。変身前の君じゃ、僕に抗うことはできない」
足が震えて、私の歯はカチカチと音を立てた。
死ぬのが怖かった。でも、シフォンちゃんを渡してしまったら、世界が……。
そう悩んでいた時、突然体を離され、私はその場にへたり込んでしまう。
顔を上げると、彼の手元にはシフォンちゃんがいた。
「なんで……ッ!?」
「なんだ。意外と簡単だったなぁ」
手元にあるシフォンちゃんを見て、シーザーはニヤリと笑う。
まさか、奪われた?そんな、ちゃんと抱いていたハズなのに……ッ!
シーザーはスプリンガーと共に去って行ってしまった。
「もう……君は帰ってこないんだね……龍也君……」
無意識に零れた呟きと共に、私の頬を何かが伝った。
- Re: フレッシュプリキュア!〜新たなる刺客〜 ( No.56 )
- 日時: 2016/08/07 20:16
- 名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)
「我が名はインフィニティ。無限のメモリーなり」
「しかし、無限のメモリーって肩書の割には可愛らしい見た目してるよなぁ」
ラビリンスの本拠地の中を歩きながら、スプリンガーはそう言ってインフィニティをつつく。
もちろん、インフィニティは反応なんてしない。
「無駄口を叩いている暇があったら、もっと早く歩くんだ」
「へいへい。わぁったよ」
スプリンガーの気怠そうな返事に、僕は少しイライラしつつ、とある部屋に入る。
そこには、いかにもと言いたげな、巨大な機械が置かれていた。
僕はスプリンガーからインフィニティを受け取ると、機会に繋げた。
そして別のコンピューターをいじってみれば、インフィニティの中からメビウス様のデータが発見される。
「しかし、メビウス様のデータが見つかったところで、どうすればメビウス様を復活させられるんだ?」
「まず、メビウス様のデータを一人の人間に移す。そうすれば、その人間にはメビウス様の人格が宿り、その人間の人格は消え去る。それで、後はメビウス様がインフィニティを通して、全世界の全人類のデータを管理する」
「人格が消え去るって……死ぬのと同じじゃねぇか」
スプリンガーの言葉に、僕は頷く。
「大丈夫。その役は僕がするから、君たちは安心してよ」
「なん……ッ!?」
「僕は一度、裏切ってる。だから、そのペナルティということになるかな」
「なんでシーザー様がそんなことをしなければならないのですか!?」
その時、ずっと黙っていたファルーラがそう言って僕につかみかかってくる。
僕は笑って彼女の体を離すと、頭を撫でてあげた。
「結局は、誰かがやらなくちゃいけないことだ。だから、心配しないで」
僕の言葉を聞いたファルーラは、泣きそうな目で「でも……」と言った。
それを聞かずに、僕はコンピュータの操作を続ける。
その時、床からコードのようなものが出てきて、僕の体に絡みつく。
それと同時に、頭の中に様々なデータが流れ込んでくるのが分かった。
−−−
夜。私は、ベッドの上で、枕を抱いたまま考えていた。
シーザーがシフォンちゃんを奪った理由は、恐らくメビウスの復活だろう。
一体どういう事をするのかは分からないが、多分、このままだとこの世界が管理されてしまう。
そう思い、私は起き上がる。やっぱり、このままじっとしているわけにはいかない!
そう思っていた時、突然ティンクルンの着信音が鳴り響いた。美希ちゃんからだった。
「もしもし。美希ちゃん?」
『ブッキー?良かった。まだ起きてたんだ』
「寝られるわけないじゃない。美希ちゃんだって、そうでしょ?」
『……そうね』
美希ちゃんはそう言うと、クスッと笑う。
電話をしながら、私はパジャマを脱いで、私服に着替える。
「それで、電話した用はなに?」
『あっ、そうだった。えっとね、さっきラブと話して、ラビリンスに行こうって。シーザーを止めるために』
シーザーという言葉に、私の胸は微かにざわついた。
さっきまで、たしかにシフォンちゃんのことも考えていた。
でも、それよりも……龍也君のことを、深く考えていた。
なんで騙していたのかとか、なんで優しくしてきたのかとか。
だって、やっぱり好きだった人だから。
はいそうですか敵ですかと、すぐに諦めることなんてできるわけない。
「じゃあ、いつもみたいに公園に集合?」
『えぇ。じゃあ、また後で』
「分かった」
私は頷きながら、ひとまずメモ書きだけ置いといて、家を出た。
- Re: フレッシュプリキュア!〜新たなる刺客〜 ( No.57 )
- 日時: 2016/08/08 16:13
- 名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)
公園でラブちゃん達と合流し、ラビリンスに着くと、そこは禍々しい空気に包まれていた。
メビウスの管理から逃れ、自由に暮らしていた人たちも、突如変わった国の雰囲気に、混乱している様子だった。
「ここが、ラビリンス……」
ラブちゃんはそう言って息をつく。
私たちは、念のため建物などで姿を隠しながら、少しずつタワーに近づく。
しかし、特に何事も無くタワーにたどり着くことが出来た。
私たちは、念のため入ってすぐの場所で変身し、さらに、キュアエンジェルなる。
そのまま中を飛んで移動し、少しずつ昇っていく。
その時、どこからか闇の波動が飛んでくる。
慌ててかわしつつ顔を上げると、そこにはスプリンガーとファルーラが立っていた。
「貴方たちは!」
「俺たちの邪魔はさせない」
「ここで死んでいただきますわ」
突如、スプリンガーは飛んでくると、ベリーを吹き飛ばした。
彼女が凄まじい速度で吹き飛ぶのを目視で確認するより先に、ファルーラが私に向かって突っ込んでくる。
しかし、それをパッションが受け止める。
「ピーチ!パイン!先に行って!」
「でっ、でもっ!そんなことしたら……」
「大丈夫!それに、シーザーさえどうにかすれば、こっちも止まるだろうから!」
パッションの言葉に、私とピーチは頷くと、また上に昇っていく。
しばらく上ると、突然コードのような機械が、蛇のように襲い掛かる。
それを、私より前を飛んでいたピーチが受け止める。
コードが絡みつき、彼女の動きを止めてしまう。
「ピーチ!」
「先に行ってパイン!私なら大丈夫だから!」
そう言うと、腕に絡みついたコードを引きちぎり、他のコードに立ち向かう。
私はピーチに頭を下げつつ、さらに上へと上り詰める。
そして、どれくらい上ったのだろうか。目の前には、幾何学的な模様が描かれた扉が建っていた。
「ここ……かな……?」
私は静かに、扉を開けた。
−−−
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
部屋は、床全体をコードが埋め尽くし、その中で僕は、身動きもとれないまま、呼吸を繰り返していた。
頭の中は、すでに膨大な情報で埋め尽くされ、徐々に自分の記憶が剥がれ落ちていくことに気付いた。
もう、自分の名前すらも、覚えていない。なのに、なんでかな……。
「キュア……パイン……」
一度、自分が愛した少女の顔、名前、声、思い出。それだけは、覚えているんだ。
あぁ、そうだ。僕の名前はシーザーであり、四季龍也で、ラビリンスの最高幹部なんだった。
そんな朦朧とした意識の中、部屋の扉が開けられるのを感じた。
誰だろうか、と顔を上げた僕の目は、カッと見開かれる。
「なんで……お前が……」
「あっ……えっと……」
キュアパインは、僕を見ると、目を逸らす。
なんで彼女が?いや、メビウス様を復活させれば、彼女たちの世界も支配されるんだ。
それなら、彼女がここにいるのも不思議ではない、か。
というか、この状況はまずいんじゃないか?
僕は今、身動きが取れない状態。ここで彼女が機械を停止させてしまったら、僕たちの作戦は失敗だ。
「や、めろ……来るな……ッ!」
渾身の力を込めて、声を振り絞る。
外から微かに聴こえてくる戦いの音にもかき消されそうな声量だったが、彼女の耳には届いたようだ。
僕の言葉を聴いた彼女は、最初目を見開くと、すぐにキッと僕を睨み、距離を詰めてくる。
何をされるのかという不安の中、僕は彼女を見つめ続けた。
彼女は僕の前に立つと、僕の体を縛るように絡みついたコードを外し始める。
「何を、するんだ……ッ!やめて、くれ……ッ!」
「そんなわけにはいかないよ。だって、龍也君が今、苦しんでいるから」
キュアパインは、そう言うと悲しそうに笑った。
龍也……?僕は、シーザーだぞ?龍也は、あくまで偽りの姿。
コイツはそれが、分かっているのか?
僕の表情で、僕が言いたいことが分かったのか、彼女は優しく笑う。
「確かに、シーザーは、ウサギさんや、町の皆や、他にも、私の大好きな人たちを傷つけたよ」
「じゃあ……ッ!」
「でも……龍也君はその分、優しくしてくれたし、励ましてくれた」
だからそれは演技だというのに。
その時、頬に手が添えられる。見ると、キュアパインが僕の目を見つめていた。
「何を……?」
「罪は、無かったことにはできないかもしれない。でも、償うことはできる……」
だから、と。彼女は僕の目を見たまま、微笑んだ。
「一緒に帰って、償っていこう?」
「ぁ……」
一瞬だけ、僕の中で何かが壊れかけた。
でも、すぐに首を振り、その手を顔から離れさせる。
「ダメだッ!僕は、メビウス様を復活させるために……生贄にならなくちゃ……」
「貴方は……死にたいの?」
キュアパインの問いに、僕は首を傾げた。
死にたいか、だと……?
「死ななくちゃっていう、義務じゃなくて、シーザーは……どうしたいの?」
「僕は……」
喉の奥で、言葉が詰まる。頬を何かが伝い、僕の中でついに、何かが壊れた。
「僕は……生きたいッ!生きて、また、君や、皆と笑い合いたいよッ!」
「だったら、帰ろうよ」
キュアパインはそう言って、僕に手を差し出した。
僕は右腕に絡みついたコードをなんとか振りほどき、彼女の手を握ろうとした……ところで、突如心臓がドクンッと音を立てた。
そこで、僕の視界は暗転し、意識はそこで途絶えた。
- Re: フレッシュプリキュア!〜新たなる刺客〜 ( No.58 )
- 日時: 2016/08/09 16:59
- 名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)
「ゲホッ!」
スプリンガーに殴り飛ばされ、キュアベリーは壁に背中を打ち付けた。
しかし、苦しんでいる暇はない。顔を上げれば、そこにはスプリンガーの拳が迫ってきているのだから。
「はぁあッ!」
咄嗟にその拳を受け止め、体ごと捻ってスプリンガーの体を吹き飛ばす。
しかし、スプリンガーは受け身を取ってなんとか一度ハンドスプリングの要領で立ち上がると、キュアベリーの首元に蹴りを入れる。
しかし、キュアベリーはそれを身を捩ってかわし、手を構えた。
「希望よ届け!プリキュア!エスポワリング・トゥルー……」
「甘いわ!」
技を放とうとしたキュアベリーに、スプリンガーが蹴りを入れる。
しかし、それを紙一重の距離でかわし、キュアベリーはほとんど零の距離で技を放った。
「ハートッ!」
その技でふっとばされたスプリンガーの粉塵に、キュアパッションの視界は奪われる。
キュアパッションはそれに顔をしかめ、咄嗟に上に跳んで粉塵を抜け出す。
そこに、ファルーラが跳び、キュアパッションにパンチを喰らわせた。
強烈な連続パンチが降り注ぐが、パッションはそれをかわし、手をファルーラの顔まで近づける。
「幸せよ届け!プリキュア、ハピネス・トゥルー・ハートッ!」
パッションの技は、ファルーラを吹き飛ばした。
それとほぼ同時刻。その場所よりも上の階層にて、キュアピーチは蠢くコードに対面しつつ拳を構える。
そこに、凄まじい速度で飛んでくるコード。それを、殴り蹴りで距離を取る。
しかし、背後から別のコードが飛んでくる。
キュアピーチは咄嗟に天井スレスレまで飛び上がり、自分が対面していたコードと背後から来たコードとをぶつけ合わせ、火花を散らさせる。
「このままじゃらちが明かない……ッ!」
キュアピーチはそう呟くと手を構え、技を放つ。
「想いよ届け!プリキュア!ラビング・トゥルー・ハートッ!」
爆散するコードを見て、キュアピーチは息をつく。
その時、足をコードで絡めとられた。
「……ッ!次から次へと!」
キュアピーチは悔しそうに歯ぎしりをすると、また手を構える。
−−−
下層から響く轟音と震動に、倒れるシーザーの体は揺れた。
体に絡みついていたコードは離れ、彼の体はピクリとも動かない。
私は太いコードで埋め尽くされた床を少しずつ歩き、シーザーの元に歩く。
「シーザー……?」
「……」
「龍也……君……?」
声が震える。私は倒れる少年の体に近づき、手を伸ばした。その手は、強く弾き飛ばされた。
え?と思うのとほとんど同時に、私の体は強く突き飛ばされる。
「ふぅ……久しぶりに目覚めたな」
龍也君の時の優しい声でもなく、シーザーの時の冷たい感じの声でもない。
おじいさんの声を、機械で通したような、奇妙な声が彼の口から漏れ出してくる。
そしてその声は、どこかで聴いたことがあった。
「メビウス……?」
「ほう。お前はプリキュアのキュアパインか」
メビウスは、そう言うとニヤリと笑った。
- Re: フレッシュプリキュア!〜新たなる刺客〜 ( No.59 )
- 日時: 2016/08/10 14:40
- 名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)
「メビウス……ッ!」
「おやおや。たかがプリキュアの分際で呼び捨てかい?」
「なんであなたがシーザーの体に!?」
私が言うと、メビウスはククッと喉を鳴らすように笑い、自身の胸に手を当てた。
「元々インフィニティには、私のバックアップのデータも残っていたんだよ。ただ、それを使うには、インフィニティをFUKOエネルギーで復活させ、一人の人間の体にデータを移し替える必要があったがな」
「だからって、なんでシーザーを!?」
カッとなってしまい、つい私は声を張り上げてしまった。
メビウスは煩わしそうに耳を塞ぎながら、一言言った。
「私は何も命令なんかしていないさ。生贄となることを選んだのは、彼だ」
「え……?」
私はつい、聞き返してしまう。
選んだのは、シーザー……?元々彼が、自分から望んでやったことなの……?
「あぁ、そうだ。私からすれば、スプリンガーでも、ファルーラでも、何だったらキュアパイン。貴様でも良かった」
まるで私の考えを読むように、メビウスは返事をしながら私に近づいてくる。
私は、咄嗟に後ずさりをしたが、太いコードに躓き、尻餅をついてしまう。
そんな私を、嘲るように見下ろすメビウスは、やがて私の顔の先に手を差し出す。
「とはいえ、この少年の力を手に入れられたのは大きいだろう。元々、私が与えた力だがな」
「……ッ!」
私は咄嗟に手を構えようとしたが、それをメビウスは弾き飛ばし、私の腹を蹴りぬく。
口から息が漏れ、私の体は2,3度転がった後で静止する。
「ケホッ……」
「愛した者に傷つけられる気分はどうだ?世界一、愛していたのだろう?シーザーのことを」
「な、なんでそれを!?」
つい、私は反応してしまった。
慌てて口に手を当てるが、もう後の祭り。
メビウスはしばらく高笑いをすると、私を見る。
「彼の人格は消えても、記憶は残っているようでなぁ。プリキュアと言っても、所詮はちょっと優しくされれば惚れる……まだ子供だったわけだ」
「そ、れは……ッ!」
「子供だったのは、この少年も同じだがな……」
ボソッとメビウスは呟いた。その言葉に、私は首を傾げた。
子供だった……?シーザーが?
メビウスの言う子供とは、さっき私に言った言葉から考察するに、少しのことで人を好きになるような人のことだろう。
ということは、シーザーにも、好きな人が……?
そこまで考えた所で、顔面に衝撃を感じた。
蹴られたのだと気付くのに、数秒かかった。その時には、すでに遠くまで蹴り飛ばされ、仰向けに倒れていた時だった。
「考える暇があるなら、少しくらい動いたらどうだ?」
「ッ……」
なんとか対抗しようと立ち上がったところで、闇の波動のようなものを飛ばされ、壁まで吹き飛ぶ。
意識が朦朧として、立つのもやっとだ。
顔を上げると、メビウスがゆっくりとこちらに向かって歩いてきていた。
「お前一人じゃ何もできないんじゃないか?」
「ぐ……」
「まぁ、仕方がないか。スプリンガーやファルーラもいるのだからな。それじゃあ、冥土の土産にでも教えてやろう。この、シーザーが恋をした人間の名前をな」
あぁ、やっぱり、好きな人いたんだ……と、私は考えてしまう。
シーザーだとしても、私はまだ、彼のことが好きだった。
それでも、彼にも好きな人がいたんだ……。
彼は口角を上げ「それは……」とまで言った時だった。
『これ以上、彼女には手出しはさせない』
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