二次創作小説(新・総合)

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Fate/Azure Sanctum
日時: 2025/02/10 13:57
名前: きのこ (ID: DnOynx61)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=14070


〜注意書き〜
・一応、二次創作です。
・コメント投稿等は一切お断りします。
・オリキャラが複数人登場します。
・不快にさせる表現がある可能性があります。
・原作と違う点があるかもしれません。

小説を書くことには慣れていない初心者です。
多めに甘くみてくださいお願いします。

Re: Fate/Azure Sanctum ( No.8 )
日時: 2025/02/24 23:09
名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


第十四章

リセアの瞳は怯えと苦痛に揺れながらも、抵抗の炎を消してはいなかった。

アストの手が再び伸び、彼女の身体を縛るように触れたとき、その表情にはどこか歪んだ満足感が浮かんでいた。

彼の視線は、リセアの苦悩とその奥底にある強い意志を見つめながらも、それを打ち砕こうとする執着心で満ちていた。

「君がどれだけ抗おうと、僕の元から逃れることはできないよ。」

彼は冷たい微笑みを浮かべながら、キャスターが手渡した二本目の媚薬の小瓶を手に取った。

その液体は不気味に揺れ、紫の輝きを放っていた。

「…っ、ごほっ、ごほっ…やめ…っ!」

「ハァ――もう、飲みたくないです……!」

リセアは声を振り絞り、必死に首を振った。

その言葉には抗う意志が込められていたが、アストは微笑を崩さず、優しげな声で彼女を諭すように囁いた。

「これは君のためなんだ、リセア。僕を好きになれれば、きっと幸せになれる。」

アストの声には歪んだ愛情と狂気が混じっており、リセアはその音に背筋が凍る思いを覚えた。

それでも、彼女の瞳は微かに光りを宿し、完全に折れたわけではなかった。

キャスターが控えめに口を開く。

「彼女が抵抗するたび、効果が弱まるわよ。」

「分かってるさ。」

アストは満足そうに頷き、リセアの顎を優しく掴んで顔を上げさせた。

リセアの身体は震え、視線がアストを拒絶していることをはっきりと示していた。

「さあ、口を開けて。」

彼女は最後の力を振り絞り、アストの手を払いのけようとしたが、力の差は歴然としていた。

アストは容赦なく彼女に媚薬を飲ませた。

その瞬間、リセアの身体が一瞬痙攣し、異様な熱が全身を駆け巡った。

「いや……いやです……!」

リセアの声は震えながらもかすかに響いたが、アストは彼女の頭を撫でながら優しく囁いた。

「君がどう感じても、僕は君を手放さない。どんな手を使ってでも、君を僕のものにする。」

リセアの意識は朦朧とし、頭の中が霞むような感覚に襲われた。

それでも、彼女の内心では必死に抗おうとする声が響いていた。

彼女は自分自身を鼓舞しながら、どうにかしてこの状況を打破する方法を探ろうとしていた。

だが、身体はますます重く、媚薬の効果がゆっくりと浸透していくのを感じる。

アストの執拗な愛情とキャスターの媚薬に苦しむ中で、リセアは自分を取り戻すための微かな希望にしがみついていただが、彼らの手に墜ちてしまった。

そして、その希望が彼女をどこへ導くのかは、まだ誰にも分からない。


第十五章

リセアは、アストの手の中で囚われていた。

動きを封じられた彼女の前には、アストが冷笑を浮かべて立っている。

その視線は異常なほど執着に満ち、彼の動作一つ一つが周到で計算されたものに感じられた。

「どうしたんだい、リセア?君はもっと強いと思っていたよ。さあ、もっと僕に見せてくれ。」

アストの声は甘く囁くようでありながら、その底には支配欲が滲んでいた。

彼女は抵抗しようと試みるが、媚薬の影響で身体が思うように動かず、ただ震える声で言葉を紡ぐしかなかった。

「......アストさん――あなたは、なぜこんなことを......やめてください。」

アストはその言葉に耳を傾ける素振りもなく、彼女を見下ろした。

「キャスター、君は外で監視をしていてくれ。」

「マスター、よくってよ!」

彼にとってリセアは、単なる人形ではなく、彼の中で欠けている何かを埋める存在だった。

一方その頃、仲間たちの動向

アサシン、カル、セイバー、凛は、リセアの居場所を突き止めようと必死になっていた。

だが、アストが巧妙に仕掛けた結界と罠によって、その気配を完全に遮断されていた。

アサシンは、眉をひそめて呟いた。

「気配遮断を上回る何かが使われています。これほどまでの隠密行動......おそらくアストが準備したものに違いありません。」

カルは焦燥感を隠せず、机を叩いた。

「リセアが......危険な目に遭っている。僕がもっと注意していれば!」

「焦らないで、カル。感情的になったら見落とすわよ。」凛が鋭い声で彼を制した。

「ここで冷静にならないと、余計に時間を無駄にすることになる。」

セイバーは鋭い目で周囲を見回しながら、提案を持ちかけた。

「何か痕跡を残しているはずです。アサシン、探索をお願いします。」

「承知しました。」

アサシンは冷静に頷き、大型ナイフを手にしながら物音一つ立てずに部屋を出て行った。

凛は即座に魔術を発動し、周囲の魔力の流れを検知しようと試みる。

膨大な魔力を使う彼女の姿に、カルは再びその優秀さを痛感した。

「すごい......これほど繊細な術式を編むなんて。」

「まだよ。」凛は短く答えた。

「どこかに隙があるはず。あいつが完璧な計画を立てられるとは思えないわ。」

その時、セイバーが声を上げた。

「この方向......微弱な魔力の痕跡を感じます。凛、どう思いますか?」

凛は頷きながら、周囲の空気に魔力を漂わせる。

「確かに、この先ね。カル、アサシンを呼び戻して。」

「わかった。」

カルは魔術を使い、アサシンに指示を送る。

Re: Fate/Azure Sanctum ( No.9 )
日時: 2025/02/24 23:12
名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


第十六章

数時間後、カルと凛はリセアを助けるべく行動を開始した。

しかし、セイバーとアサシンが警戒を怠らず先行していたにもかかわらず、待ち伏せを仕掛けたキャスターによってその行く手を阻まれる。

月明かりが薄く差し込む街の外れ。廃墟と化した建物が立ち並ぶ中、セイバーとアサシンがキャスターと対峙していた。

キャスターは嘲笑を浮かべながら、手にした杖を振る。

周囲に無数の魔術陣が展開され、青白い光が一瞬にして廃墟を照らし出した。

「あなた達、ここで終わりよ。」

キャスターの声が冷たく響き渡る。

その瞬間、魔術陣から無数の幻影が生み出され、セイバーとアサシンに襲いかかる。

「アサシン、左を頼みます。」

「了解しましたー!」

セイバーの指示に従い、アサシンは軽快な動きで敵の攻撃をかわしつつ、大型ナイフを振り回し幻影を一掃していく。

その間にセイバーはキャスターへと一直線に迫る。

しかし、キャスターは余裕の表情を崩さず、さらなる魔術を発動する。

「残念だけど、私には触れられないわよ。」

キャスターが再び杖を振ると、空間に歪みが生じ、セイバーの剣は寸前で弾かれる。

苛立ちを隠しながらも冷静さを失わないセイバーは、次の手を模索する。

一方、キャスターに注意を引きつけられている間に、カルと凛はリセアがいると思われる屋敷にたどり着いた。

入り口から漂う異臭に眉をひそめながら、凛がつぶやく。

「この匂い...魔術によるものかもしれないわね。」

「リセアが無事であるといいけど...行こう。」

カルは躊躇わずに屋敷の扉を押し開ける。

内部は薄暗く、ほとんど明かりがない。

床には奇妙な文様が描かれ、壁には不気味な装飾が施されていた。

凛が手元の宝石を使い、微弱な光を放つ魔術を発動する。

「慎重に進むわよ。」

二人は足音を立てないように進みながら、リセアを探す。

しかし、屋敷の奥に進むにつれて異臭はますます強くなり、空気が重くのしかかるようだった。

「リセアどこにいるんだ...!」カルが声を張り上げるも、返事はない。

凛が警戒しながら耳を澄ませると、微かに何かの音が聞こえてきた。

「何かがいる...でも、リセアじゃないわ。」

「確認するしかないな。」

二人は音のする方向へ慎重に歩を進める。

やがて、薄暗い部屋の中に奇妙な影が見える。

それは人の形をしているが、どこか異様な雰囲気をまとっていた。

「リセアじゃない...何かの召喚獣か。」

カルが呟くと同時に、その影が動き出す。

突然の襲撃に、凛が咄嗟に防御魔術を展開する。

「....ここで足止めされるわけにはいかない」

リセアはまだ見つからない。

屋敷の奥深くにいるのか、それとも別の場所へ移動させられたのか。

時間だけが無情に過ぎていく。

焦燥感に駆られながら、カルと凛は慎重に進むしかなかった。

「お願いだ、無事でいてくれ。」

カルの祈りにも似た言葉が、暗闇の中に吸い込まれていった。


第十七章

カルと凛は不気味に静まり返った屋敷の中を進んでいた。

そこかしこに古びた家具が並び、薄暗い廊下には陰湿な空気が漂っている。

突然、廊下の奥から低い唸り声が響き渡り、召喚獣が姿を現した。

それは身体中に黒い棘が生えた狼のような形状をしており、目は赤く輝いている。

「来たか...!」

カルが一歩前に出たが、凛がその肩を軽く叩いて止める。

「ここは任せなさい。」

凛は冷静に宝石を手に取り、即座に魔力を込めた。

凛の放った一撃は召喚獣の眉間を正確に貫き、瞬時にその動きを止めた。

黒い煙を残して召喚獣は消滅する。

「さすが、凛。」カルが感心した様子で笑う。

「油断しないで。これが最後とは思えないわ。」

凛は慎重な表情を崩さず、リセアのいるはずの地下室へと足を速めた。

地下室に続く階段は冷たく湿っており、空気がさらに重く感じられる。

凛とカルが扉を開けると、中は薄暗く、荒れ果てていた。家具が散乱、紙類が床を覆っている。

「リセア!」凛が声を張り上げた。

一方、背後で鋭い音が響き、次の瞬間、セイバーとアサシンの姿が現れる。

「キャスターを追い詰めた。ここで決着をつけましょう。」セイバーが静かに告げた。

アサシンも冷静に頷きながら大型ナイフを構える。

屋敷の別室では、キャスターが逃げ場を失い追い詰められていた。

セイバーの鋭い剣技とアサシンの奇襲が的確にキャスターを攻め立てる。

「これが終わりだ、キャスター!」

セイバーが風王結界を解放し、キャスターに一撃を加えようとした瞬間、強力な魔力が炸裂し、室内が揺れる。

「やっぱり簡単には終わらないですか...」

アサシンが大型ナイフを構え、次の一手を待つ。

一方、凛とカルはさらに地下深く進み、ついにリセアの居場所を突き止めた。

しかし、扉を開けた瞬間、凛はその場で動きを止めた。

「何...これ...?」

部屋は荒れ果て、リセアの衣類が部屋に散乱し、壁や床には異様な痕跡が残されている。

凛はその光景に恐怖と怒りを覚え、咄嗟に背後を振り返る。

「カル、ここを守って。私はリセアを救う。」

カルは深刻そうな表情で頷き、魔術の準備に入る。

一方で、凛はリセアのもとに駆け寄り、彼女を抱き起こした。

リセアの体には数カ所痣があり、体も汗ばんでいた。

「リセア、大丈夫、もう安全よ...」

感情を押し殺しながら優しく声をかけると、リセアの蒼い瞳がかすかに動き、か細い声で答えた。

「凛...さ――」

突然、カルの前にアストが姿を現した。

彼の表情は異常なまでに狂気じみており、低い声でつぶやく。

「リセアは僕のものだ。誰にも渡さない。」

「...リセアはお前の所有物なんかじゃない!」

「アスト...お前、ここで何をした?」

カルが問い詰めるも、アストは笑みを浮かべるだけだった。

「さあ、見せてもらおうか、君の力を。」

アストは手をかざし、魔術を発動する。

カルも応戦し、二人の間で激しい魔術戦が繰り広げられる。

凛はその隙を突いて、リセアを連れて部屋を脱出しようとする。

Re: Fate/Azure Sanctum ( No.10 )
日時: 2025/02/24 23:14
名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


第十八章

屋敷の地下リセアの救出を目指してアストと激突していた。

「…ここで終わってもらう」

カルは冷静な声で告げると、空間に魔術回路を刻むような仕草を見せる。

アストが笑みを浮かべた。

「僕に勝てるつもり? リセアを返す気はないよ、彼女は僕のものだからね!」

アストの叫びに応じて、彼が周囲の空間を歪ませる。

結界魔術の発動だ。

屋敷全体を覆う防御がさらに強固な檻となり、カルを締めつけ始める。

「.....すぐに終わらせる!」カルは小さく笑うと、指先に魔力を集中させた。

彼の特技である風魔術が地脈を揺るがし、屋敷内の結界を崩壊させる。

青白い光が柱となって天井を突き破るように伸び、アストの防御を打ち砕いた。

「なっ…僕が…!」

崩れ落ちるアストを見下ろしながら、カルはその手を止めた。

「もう終わりだ、リセアを取り返す。君には手を引いてもらうよ」

屋敷の外セイバーとアサシンの戦闘により、庭園は荒れ果てていた。

キャスターは攻撃を受け流しつつ、隙を見て撤退の準備を整える。

「仕方ない、ここは引くべきね」

キャスターはアストを回収するため、魔力を最大限に高めた。

瞬間的に発生した閃光とともに、二人の姿は消え去った。

救出リセアを拘束していた魔術具を破壊し、凛は眠る彼女を優しく抱きかかえる。

彼女の身体は冷たく、衰弱している。

布でくるんだリセアを見つめながら、凛は静かに言葉を紡いだ。

「......こんな状態になるまで…本当にごめんなさい、リセア」

屋敷の外で待機していたセイバーは、凛がリセアを抱えながら出てきた瞬間、目を見開いた。

「…リセア、マスターは…無事ですか?」

「命は助かったわ。早く帰って治療しないと...」

凛の決然とした声に、セイバーはただ頷くしかなかった。

数時間後、自宅リセアが目を覚ましたのは、自室の柔らかなベッドの上だった。

窓の外から差し込む月明かりが、静かな夜の訪れを告げている。

「ここは…私の部屋…?」

ぼんやりとした意識の中で、リセアは自分が無事であることに安堵した。

しかし同時に、彼女の胸には奇妙な不安が広がっていく。


十九章

リセアは部屋の隅で膝を抱えていた。

窓から差し込む曇天の光は、彼女の心の陰りを照らすにはあまりにも弱々しかった。

アストの執着と行動によって受けた心の傷は、彼女の中で深いトラウマとなりつつあった。

「......どうして、こんなことに。」

呟きながら、彼女は震える手で自分を抱きしめる。

頭の中で何度もあの場面が蘇る。

逃げたいのに逃げられない、まるで自分が檻の中にいるかのような錯覚に陥っていた。

その日の午後、カルが部屋を訪れた。

ノックの音にリセアは反応しなかったが、カルは慎重に扉を開け、そっと中に入った。

「リセア、入ってもいいかな。」

その優しい声に、リセアはようやく顔を上げた。

目元には涙の跡が残り、その表情には疲労と痛みが滲んでいた。

カルは静かに彼女の隣に腰を下ろし、距離を保ちながらも視線を合わせた。

「無理に話さなくてもいい。ただ、君のそばにいたいんだ。」

その言葉にリセアの胸が少しだけ暖かくなった気がした。

カルの存在は、彼女にとっての安らぎの一端だった。

しばらく沈黙が続いた後、リセアは口を開いた。

「怖いんです。アストさんのことを思い出すたびに、どうしていいか分からなくなる。」

彼女の声は震えていたが、その中には確かに自身の感情を伝えようとする意志があった。

カルは彼女の言葉をしっかりと受け止め、静かに頷いた。

「大丈夫だよ、リセア。君は一人じゃない僕がいる。そして、セイバーや凛だって、君の味方だ。」

リセアの目に再び涙が浮かんだが、今度は違った感情が混じっているようだった。

彼女は小さく頷き、カルの言葉を胸に刻み込む。

その夜、リセアは久しぶりに少しだけ深い眠りにつくことができた。

翌朝、カルはリセアを公園へと誘った。

冬の寒さが頬を刺すが、二人の間には少しだけ穏やかな空気が流れていた。

カルはリセアに微笑みかける。

「寒いけど、空気が澄んでいて気持ちがいいね。」

リセアもわずかに微笑みを返した。

その表情はまだ完全には晴れやかではないが、確かに以前よりも柔らかくなっていた。

「ありがとうございます、カル。昨日、話を聞いてくれて。」

「気にしなくていい。それより、また君の笑顔が見られるようになれば嬉しい。」

その言葉に、リセアの頬が薄っすらと赤く染まった。

一方、カルもどこか照れくさそうに視線を逸らす。

しばらくして、二人はベンチに腰掛けた。

そこで、リセアはぽつりと口を開いた。

「カルって、不思議な人ですね。こうして一緒にいると、心が軽くなる気がします。」

「そう思ってくれるなら、僕としても嬉しい。」

その会話の中で、二人は互いの存在が特別なものになりつつあることに気づき始めていた。

しかし、それが恋愛感情であることにはまだ気づいていなかった。

ただ、互いの距離が少しずつ縮まっていることだけは確かだった。

一方、その頃、アサシンとセイバーは近くの茂みの陰から二人の様子を伺っていた。

「どうやら上手くいっているようですね。」

アサシンが微笑みながら呟くと、セイバーは頷きつつもどこか不満げだった。

「マスター同士が親密になるのはいいことですが、何か釈然としません。」

「それは、セイバーさんがリセアさんのことを気にかけているからですよ。」

「......ふん。そんなことは…あります。」

セイバーの表情がわずかに赤くなり、アサシンはそれを見て微笑みを深めた。

二人の物語は、まだ始まったばかりだった。

互いに支え合いながら成長していく姿が、これからどのような未来を描いていくのか。

その答えは、彼ら自身の手の中にあった。

Re: Fate/Azure Sanctum ( No.11 )
日時: 2025/02/24 23:17
名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


第二十章

リセアは肩越しに振り返りながら、半ば強引に連れられていくカルの姿に小さく笑みを浮かべた。

凛の視線を感じてその笑みを引き締めると、敬意を込めた言葉で問いかけた。

「凛さん、本当にカルもご一緒でよろしいのですか?」

凛は軽くため息をつきながら、振り返ることなく答える。

「当然でしょ。カルだってたまには人付き合いを学ばなきゃいけないわ。それに……アサシンもきっと退屈してるはずよ。」

その言葉にアサシンがぱっと表情を明るくする。

「まぁ!お買い物だなんて、夢のようです!どんな服がいいでしょうか?」

「い、いつもより元気ですね」とセイバーは驚きながらアサシンに言った。

リセアは、普段戦闘や作戦について冷静に語るアサシンの少女らしい一面に驚きつつも微笑んだ。

数時間後、一行はロンドン郊外のショッピングモールに到着した。

広大な施設の入り口に立った瞬間、アサシンは目を輝かせ、大きく息を吸い込む。

「素晴らしいです!これが『ショッピングモール』なのですか!リセアさん、どこから見て回ればいいのでしょう!」

彼女の興奮ぶりにリセアもつられて口元を緩ませるが、冷静に言葉を選んだ。

「まだ具体的に決めていませんが、まずは全体を見て回るのが良いかと思います。アサシンさんも、欲しいものが見つかるかもしれませんし。」

凛は腕を組み、少し後ろから全体を見渡している。

セイバーとカルもまた、遠慮がちに一歩引いて周囲を観察していた。

「それにしても、賑やかね。」

凛がぽつりとつぶやく。

「人が多いところはあまり得意じゃないけど……まぁ、せっかく来たんだ、何かいいものを探そう。」

カルは苦笑いを浮かべながら呟く。

「君が人を多く引き連れて歩いてる姿は珍しいね。」

「黙ってなさい。」

凛が素早く言い返すと、彼はすっと背筋を伸ばして口を閉じた。

入口近くの広場では、アサシンが店頭のディスプレイに目を奪われていた。

美しいドレスやカラフルな小物が並ぶショーウィンドウを見つめ、息を呑む彼女の姿は、少女そのものだった。

「...先ほどから興奮しすぎでわないでしょうか?」セイバーが呟いた。

「アサシンさん、気になるものがありましたか?」

リセアが尋ねると、彼女は振り返り、にこりと笑う。

「とてもたくさん……!でも、まだ全部は見ていませんから、まずは全体を回ります!」

彼女の提案に全員が頷き、一行はゆっくりとモール内を進み始めた。


第二十一章 

ロンドン郊外にあるショッピングモールは、冬の冷気から逃れるように多くの人々で賑わっていた。

モールの外観は近代的なガラス張りのデザインで、エントランスには大きなクリスマスツリーが飾られている。

中に入ると、吹き抜けの広場には華やかなイルミネーションが輝き、各フロアを結ぶエスカレーターの周りには多くの人々が行き交っていた。

アパレルショップのウィンドウには華やかなディスプレイが並び、店内からは軽快な音楽が流れてくる。

「ここね。リセア、カル、セイバー、アサシンさあ、行きましょ!」

凛が先頭に立ち、店内へと足を踏み入れる。

その後ろには、少し緊張した面持ちのリセア、楽しげに辺りを見回すアサシン、そして無表情ながらもどこか期待を感じさせるセイバーが続く。

カルはリセアの少し後ろを歩き、静かに彼女の様子を窺っていた。

「わあ…。こんなにたくさんの服があるなんて。」

アサシンが目を輝かせながらラックに掛けられた服を手に取る。

彼女の小さな歓声を聞いて、リセアは微笑を浮かべた。

「アサシンさんは、おしゃれが好きなんですか?」

「はい! 生前はこんなに自由に服を選ぶことなんてありませんでしたから、とても新鮮です。」

彼女の朗らかな返答にリセアは頷き、少し奥に進んで行く。

すると、凛がふと振り返り、にやりと笑みを浮かべた。

「それじゃあ、セイバーとリセアに色々試着してもらいましょうか。」

「え…? 私ですか?」

リセアは驚いたように目を丸くするが、凛の勢いに押され、仕方なく試着室へと入ることに。

「…凛さすがにそれは――」

セイバーもまた、戸惑いながらも凛とアサシンに背中を押されるようにして服を手渡される。

数分後。

「うーん、セイバーはやっぱりこういうシンプルな感じが似合うわね。」

凛は満足げに腕を組み、セイバーが試着したシックな青いドレス姿を評価する。

一方で、リセアは膝丈のスカートに淡いパステルカラーのカーディガンを合わせた姿で出てきた。

「リセアさん、それすごく似合ってます!」

アサシンが感激したように拍手をする中、カルはその場で硬直していた。

彼の視線はリセアに釘付けになり、言葉が喉に詰まる。

『やっぱり…彼女は…綺麗だ。』

内心でそう呟きながらも、彼はリセアの目に入らないようそっと視線を逸らした。

しかし、その動揺は隠し切れず、頬が赤く染まっている。

「リセア、また胸が成長してるわね。」

突然の凛の一言に、その場の空気が一変する。

リセアは「えっ」と驚き、次の瞬間、顔を真っ赤にして慌てて胸元を押さえた。

その瞬間、彼女の頭には様々な感情が渦巻いていた。

『…また言われるなんて。でも、きっと悪気はないですよね…。』

そう自分に言い聞かせながらも、羞恥心で胸がいっぱいになり、次にどんな反応をすれば良いのか分からず、戸惑いの色を隠せなかった。

カルもまた、一瞬で耳まで赤く染まり、視線を宙にさまよわせる。

その胸の内では、リセアの美しい姿が鮮烈に焼き付いて離れなかった。

『自分なんかが彼女を見ていいのか?』という思いと、『もっと彼女を見ていたい』という衝動がせめぎ合い、戸惑いと焦燥が入り混じる複雑な感情に揺れていた。

「凛さん、それは…その、少し言い過ぎでは…?」

リセアが困ったように言葉を紡ぐと、凛は軽く肩をすくめた。

「別にいいじゃない。成長してる証拠だもの。」

その軽口に、リセアはため息をつきつつも笑みを浮かべる。

周囲の視線を気にしながらも、彼女は静かに服を整えた。

最終的に、セイバーはシンプルながらも気品を感じさせるネイビーのタートルネックとストレートパンツを選び、リセアは淡いピンクのブラウスと白いフレアスカートという柔らかい印象のコーディネートを選んだ。

買い物を終えた後、アサシンは新しい帽子を嬉しそうに手にし、凛も自分用に幾つかアクセサリーを購入した。

「なんだか、良い気分転換になりましたね。」

ショッピングモールを出る頃には、リセアの表情はすっかり柔らかくなっていた。

その隣を歩くカルは小さく頷き、彼女に視線を向ける。

「うん、リセアが楽しそうで何よりだよ。」

その言葉にリセアは少し驚いたように目を見開き、やがて微笑んだ。

「ありがとうございます、カル。」

彼の心が少し跳ねたのを感じつつも、彼女のその笑顔に魅了されるのだった。

Re: Fate/Azure Sanctum ( No.12 )
日時: 2025/02/24 23:19
名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


二十二章

ショッピングモールから帰った後――

遠坂凛の家のリビングには、リセア、凛、カル、セイバー、そしてアサシンが集まっていた。

これまでの経緯や協力関係を確認しつつ、今後の方針について話し合っていたのだ。

「では、改めてよろしく、カル。アサシンも、一時的だけどここを拠点として使ってちょうだい。」

凛がそう言うと、カルは礼儀正しく頭を下げた。

「ありがとう、凛。お世話になる」

「気にしないで、必要なら何でも言って。ね、リセア?」

「ええ、私もできる限り協力します。」

リセアは微笑みながら答えたが、カルと目が合うと、どこかぎこちない表情になった。

カルもまた少し視線をそらす。

深夜、リセアは風呂に入る準備を整えていた。

冷たい夜を浴室の暖かさで忘れられるのが嬉しかった。

衣類を全て脱ぎ、湯気の立ち込めるバスルームの扉を開けた瞬間、

そこに意外な人物がいた。

「……!?」

リセアは咄嗟に声を上げ、慌てて体をタオルで隠した。

『……こ、これは夢ですね…!? きっと夢です…!』

一方で、浴室にいたのはカルだった。

彼も驚き、目を丸くして振り返った。

「リセア……ご、ごめん!そんなつもりじゃなくて!」

カルは手で視界を遮ろうとしながら、必死に弁解する。

だが、その顔は赤く染まっていた。

「なっ、なんでここに……」

リセアも混乱しながら声を震わせた。

カルが説明する前に、気まずい沈黙が流れる。

「と、とにかく外に出てください!」

リセアが強めの口調で促すと、カルは「わかった!」と答え、そそくさと浴室を出て行った。

扉が閉まった後、リセアは深いため息をついた。

翌朝、ダイニングには微妙な空気が漂っていた。

リセアとカルは向かい合って座り、朝食を取っていたが、どちらも会話を切り出せずにいる。

「……昨夜のことは、本当にごめん。」

カルがようやく口を開く。

「いえ、私の方こそ確認不足でした……。」

リセアは少し視線を落としながら答える。

二人の間に漂うぎこちなさを感じながらも、セイバーとアサシンが視線を交わしていた。

「ふふ、なんだか面白いですね。」

アサシンが小さく笑みを浮かべ、セイバーも軽く微笑んだ。

「まあ、若い者同士、こういうこともあるでしょう。」

一方、凛はコーヒーを飲みながら冷静に様子を見ていたが、内心では微妙に苛立っていた。

「まったく、何やってるのよ。二人とも。」

呟いた声は誰にも届かず、静かな朝はそのまま続いていった。


第二十三章

昼の時計塔にて――

時計塔の廊下は昼間でも静かだった。

薄暗いレンガ造りの廊下を歩くリセアの耳に、カツカツと靴音が響く。

黒い服に身を包んだリセアの背後には、穏やかな笑みを浮かべるアサシンの姿があった。

「リセアさん、凛さんがお待ちですよ」

「分かっています。…でも、あまり穏やかじゃない顔をしていたので少し心配です。」

アサシンは控えめに頷きながら言葉を続ける。

「そうですね。凛さんが、不機嫌になるのは珍しいことではありませんが…今日はいつもと違う様子に見えました。」

リセアは軽くため息をつきながら扉をノックする。

中から「入っていいわよ」と凛の声が聞こえた。

「ようやく来たわね、リセア。」

部屋の中で書類を広げたままの凛は、眼鏡越しにリセアを見る。

その表情には警戒心と不安が入り混じっていた。

「凛さん、私に話があると伺いましたが…」

「ええ。実は最近、妙な噂を耳にしたの。」

凛は数枚の書類をリセアに手渡す。

その中には時計塔に在籍する魔術師たちの情報が細かく記されていた。

「この中にエリュシア・サンクティスという子がいるわよね。」

「はい、あまり目立たない方ですが、成績が優秀で…確か二重属性の魔術師ですよね。」

凛は冷たい目で書類を睨みつけた。

「そう、でもそのエリュ…ちょっと怪しいのよ。彼女の周囲に何か妙な気配を感じるわ。」

リセアは少し眉をひそめた。

「妙な気配、ですか?それは具体的にどういったものですか?」

「分からないわ。だけど、彼女はマスターとして優れた戦力を持っている。その力がどこに向けられるのか、気をつけておく必要があるわ。」

部屋を出たリセアは、心の中でエリュに対する疑問が渦巻いていた。

彼女が怪しいとされる理由は分からない。それでも、何かが気にかかるのは間違いなかった。

廊下の曲がり角で、リセアはふいに立ち止まる。向こうからエリュが歩いてくるのが見えた。

茶色の髪を揺らしながら、彼女は目を伏せている。

「エリュさん…?」

リセアが声をかけると、エリュは一瞬だけ驚いたように目を見開いたが、すぐに無表情に戻った。

「何か…ご用でしょうか。」

その声には冷静さが保たれていたが、彼女の目尻には小さな涙の跡が見えた。

「いえ、大丈夫ですか?少し疲れているように見えますが…」

エリュは何かを言いかけたが、すぐにかぶりを振った。

「大丈夫です。それでは…失礼します。」

その場を去るエリュを見送ったリセアは、小さく息を吐いた。

「彼女が…?」

その直後、カルとアサシンが合流し、リセアは凛に伝えるべき情報を考え始めるのだった。


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