二次創作小説(新・総合)

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Fate/Azure Sanctum
日時: 2025/02/10 13:57
名前: きのこ (ID: DnOynx61)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=14070


〜注意書き〜
・一応、二次創作です。
・コメント投稿等は一切お断りします。
・オリキャラが複数人登場します。
・不快にさせる表現がある可能性があります。
・原作と違う点があるかもしれません。

小説を書くことには慣れていない初心者です。
多めに甘くみてくださいお願いします。

Re: Fate/Azure Sanctum ( No.1 )
日時: 2025/02/24 21:55
名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

プロローグ

ロンドンの冷たい夜風が吹く中、遠坂凛は急ぎ足で歩いていた。

まだ暗い街並みの中、彼女の目には異様な光景が映っている。

道端に倒れ伏す少女

――その姿は、まるで生きているのか死んでいるのか分からないほどに無防備に横たわっていた。

「……え?」

凛は立ち止まり、目を凝らしてその少女を見つめた。

倒れている、黒髪の少女。その髪は濡れているわけでもなく、ただ静かに風に揺れているだけだ。

蒼い目を持つその少女は、顔色が悪く、まるで命の光を失ってしまったかのような無表情で、目を閉じている。

「こんなところに……一体、どうして?」

凛は周囲に人影がないことを確認した後、慌てて駆け寄った。

少女の体温を確かめると、冷たくなりかけている。

その手を握りしめ、震える体を抱き起こした。

「しっかりして!」

凛は必死に呼びかけながら、少女を抱え上げた。

思ったより軽いその体は、まるで人形のように重さを感じさせない。

「なんで……どうしてこんな……?」

しかし、答えは返ってこない。

凛はただ、少女を背負いながら必死に考えることしかできなかった。

目の前のこの状況に、言葉では言い表せない不安と恐れがこみ上げてくる。

「ううっ……!」

凛は少女を必死に抱きしめた。

家に戻る途中で倒れていたのだろうか、それとも別の理由があるのか。

とにかく、このままでは命を落としてしまう。

彼女の住む家にたどり着いた頃、少女はようやく意識を取り戻した。

「……あ、あなたは……」

目を開けた少女は、混乱したように周りを見回しながら言葉を発した。

まだ薄れゆく意識の中で、少女の瞳は凛に焦点を合わせようとしている。

「大丈夫よ、無理しないで。ここは私の家。しばらく休んでいて。」

凛は優しく微笑んだ。

しかし少女は一瞬、困惑したような表情を浮かべ、次に言葉をつむぎ出す。

「私は……?」

その問いに、凛は一瞬驚いた。記憶喪失という可能性が頭をよぎる。

「あなた、記憶を失っているの?」

「記憶……?」

少女の声に含まれる不安げな響きに、凛は心が痛んだ。

少女の名前すら分からない、この未知の存在。

だが、それを考える暇もなく、凛は静かに答えた。

「……じゃあ、私はあなたをリセアって呼ぶことにするわ。」

その一言に、少女は再び目を見開いた。

そして、少しだけ困惑した表情を浮かべた。

「リセア……?」

「うん。私があなたの名前を決めたから。これからはリセアね。」

そう言って凛は微笑み、少女の頭を軽く撫でた。

その行動に、リセアは一瞬困惑したように見えたが、すぐに静かにうなずいた。

「リセア……。」

その名前を呟くように言ったリセアの瞳は、次第に穏やかさを取り戻していった。

「これからは私が面倒を見るわ。安心して。」

こうして、リセアという少女の新しい生活が始まった。

「さて、リセア。」

数ヶ月後。リセアは凛の元で過ごす日々の中で、少しずつ記憶を取り戻していくかと思われたが、未だにそれは叶わなかった。

しかし、リセアは凛とともに生活する中で、次第に不安を取り払っていく。

「……凛さん、これをお渡しします。」

「ありがとう。ところで、これ、時計塔からの依頼書よね?」

リセアは魔術の勉強に熱心に取り組み、その結果、凛から時計塔での勉強を提案されることになる。

凛の側近として、彼女の魔術的才能を鍛え上げるための新たな舞台が用意されたのだ。

「頑張りましょう、リセア。」

凛の言葉に、リセアは少し驚いたような表情を浮かべるものの、次第にその意味を理解した。

「はい、頑張ります。」


第一章

時計塔の教室で新たな一日が始まると、リセアはいつものように座席に着くと同時に、周囲からの視線を感じた。

「リセアさん、凛さんと同じ家に住んでいるんですか?」

突然、後ろから声をかけられ、リセアは驚いて振り返る。

そこには、まだ見覚えのない青年が立っていた。

彼の顔立ちは整っており、どこか鋭さを感じさせる。

「ええ、はい。凛さんと一緒に暮らしていますが…?」

リセアが答えると、青年はにっこりと笑った。

その笑顔には、少しだけ意地悪さが含まれているような気がしたが、リセアはそれに気付かないふりをした。

「僕はカル」

『カル……?』

「リセアさん、よろしく。リセアって呼んでもいい?」

カルの目は、どこか興味深げで、少しだけ深く見つめるような視線を感じた。

その視線に、リセアは不安を覚える。

しかし、彼はただの同級生に過ぎないはずだ、と自分に言い聞かせる。

講義が始まると、カルはリセアの隣に座ったまま、無言で聞いていた。

リセアは集中して講義に取り組んでいたが、時折、カルがこちらをチラリと見ているような気がして気が散る。

放課後、教室が静まりかけたころ、リセアは自分の机の前に立っていたカルに呼び止められた。

「リセア。」その呼びかけに、リセアは振り返る。

カルは少し間をおいて、口を開いた。

「君、凛さんと一緒に暮らしているなら、僕たちもまた何かしらの縁があるかもしれない。僕は……君に興味がある。」

その言葉には、ただの好奇心だけでなく、もう少し深い意味が込められているような気がして、リセアは不安そうにその視線を受け止めた。

「興味、ですか……?」

「うん。君のこと、もっと知りたくなった。どうしても。」

カルの言葉に、リセアは少し戸惑う。

しかし、それ以上に、その目がどこかしら熱を帯びていることに気づき、胸の奥がひどくざわついた。

「私には……特に何もないかもしれません。」

リセアは冷静に答えながらも、その目をそらす。カルの目はそのまま、彼女の表情を見つめていた。

「そうかもしれない。でも、君の中には何かがある。俺にはそれが感じられるんだ。」

カルのその言葉には、なんとも言えない強い力が宿っていた。

それは、リセアが今まで経験したことのないような強い執着を感じさせるものだった。

リセアは一瞬だけその視線に引き寄せられるような気がして、心の中で警戒心を高めた。

「それにしても、君は凛に似ている。強さが、ね。」

カルは再び静かに言った。リセアはその言葉に驚いた。

確かに、凛には誰にも負けないような強さがある。しかし、それが自分にも――

「似ている……?」リセアは思わずつぶやく。

「うん。君の瞳、まるで凛のようだ。」

その言葉に、リセアは微かに戸惑いを覚えた。

凛と自分が似ている?それがどういう意味なのか、すぐには理解できなかった。

「でも、俺には君がどんな人間か、少しずつ知りたいと思う。もっと深く……君のことを。」

カルの言葉には、まだ引き寄せられるような何かが含まれていた。

しかし、リセアはそれを無視して、静かに首を振った。

「それは……どうでしょう。私は、凛さんと共に学び、成長することが最も大切だと思っていますから。」

カルはその言葉に少しだけ驚いた様子を見せるが、すぐに笑みを浮かべて言った。

「そうだね。でも、いつか君の答えを知りたいと思っている。覚えておいてくれ。」

その後、リセアは早々に教室を後にした。

カルの目がどうしても心に引っかかり、歩きながらも彼の言葉が頭をよぎっていた。

「リセア……君の中に、何か大切なものが眠っている。」

リセアはその言葉が何を意味しているのか、まだ答えが出せずにいた。

しかし、何かを感じ取るように、彼女はその日、再び凛と過ごす時間が楽しみだという気持ちが湧いてきた。

――だが、カルの目の奥に潜む熱を、彼女はまだ知らなかった。

Re: Fate/Azure Sanctum ( No.2 )
日時: 2025/02/24 21:59
名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


第二章

リセアと凛が時計塔の廊下を歩いていると、隣の部屋から声が漏れ聞こえてきた。

その声は、時計塔の名だたる教員たちが集まり、何か重要な会議をしている様子を伝えていた。

リセアは無意識に足を止め、視線を凛に向ける。

「凛さん……あれは?」

「さぁね。何かしらの会議だろうけど……気になるわね。」

凛の興味をそそるような眼差しに、リセアは小さく頷いた。

二人はそっと会議室の扉に近づき、漏れ聞こえる声に耳を澄ませた。

「ロンドンで聖杯戦争が起こる、だと?」

静寂を打ち破るような低い声が響いた。

その声の主は、マリスビリー・アニムスフィア。

天体科の第一人者であり、冷静で厳格な性格で知られる彼の発言には重みがあった。

「そうだ。ただし、冬木のものとは性質が異なる模様だ。」

答えたのは、呪詛科の教授であるジグマリエ。

彼の声にはどこか不吉な響きが含まれている。

「異なる? 詳しく説明してもらおうか。」

バルトメロイ・ローレライが切り込む。

法政科の彼女は、時計塔内で最大の権力を持つ人物であり、その鋭い口調は誰もが恐れるものだった。

「今回の聖杯戦争には、通常のマスターとサーヴァントの召喚に加え、特殊な『媒介』が必要となるようだ。その媒介の詳細はまだ不明だが、いくつかの候補が挙がっており、その中に……」

ジグマリエの言葉が途切れると、緊張した空気が流れる。

「その中に、遠坂凛の側近が含まれている、ということですか?」

アステアが静かに言葉を繋ぐ。

リセアはその言葉に息を呑んだ。

「わ、私が……?」

声を漏らしそうになったところを、凛が手を伸ばして口を塞いだ。

「静かに。」

凛の表情は険しく、普段の落ち着きが消え去っている。

会議の中ではさらに議論が続いていた。

「リセアという名前の少女だな。虚数魔術の異質な才能を持つ。だが、彼女の正体は未だ謎のままだ。」

ユリフィスが資料をめくりながら口にした。

「彼女が聖杯戦争におけるキーとなる可能性は高い。しかし、彼女がそれを受け入れるかどうかは別問題だろう。」

今度は、イノライ・バリュエレータが冷静に分析するように言った。

「そんなことは関係ないわ。」

ローレライが即座に切り捨てる。

「必要ならば利用する。それが時計塔のやり方だ。」

その言葉に、凛は顔を険しくしながらリセアを振り返った。

「リセア、ここから離れるわよ。」

「でも、凛さん……」

「いいから。」

凛はリセアの手を掴み、足早にその場を離れた。

時計塔の廊下を進む二人の背後から、まだ会議の声が微かに聞こえていた。

二人は自宅に戻ると、静かなリビングで顔を合わせた。

リセアの蒼い瞳は揺れており、その動揺は隠しきれなかった。

「私が……聖杯戦争の関係者だなんて……どういうことなんですか、凛さん?」

リセアの声には不安が滲んでいた。

凛はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。

「正直、私にも全部は分からない。でも……あなたが特別な存在であることだけは確かよ。」

「特別な存在……?」

リセアは自分の胸に手を当て、疑問を抱え込んだ。

「聖杯戦争っていうのは、マスターとサーヴァントが戦い合って最後の一組になるまで続く戦いよ。でも今回のは、ロンドンで行われる特別なものみたい。」

凛はいつになく真剣な表情で話を続けた。

「そしてあなたには、その聖杯戦争に参加する使命があるのかもしれない。」

「どうして……?」リセアは声を震わせた。

「それが分かるのは、もう少し先の話ね。」

凛は微笑もうとしたが、その笑顔には苦悩が滲んでいた。

その夜、リセアは部屋でひとり静かに考え込んでいた。

自分が聖杯戦争にどう関わるのか、そしてこの身に宿る「異質な魔術」が何を意味しているのか。

遠くで鳴る鐘の音が、彼女に新たな運命の訪れを告げるようだった――。


第三章

時計塔の重厚な空気の中、リセアは凛の背中を追いかけていた。

会議の内容が頭から離れない。

自分が聖杯戦争の重要な関係者だと聞かされた瞬間から、心臓が強く脈打ち、体が冷たくなるのを感じていた。

「凛さん、本当に私は関係者なんですか?」震える声で問いかけるリセア。

しかし、凛は振り返らないまま歩き続けた。

「確かめる必要があるわ。でも、それを知るのはあなただけじゃない。」

「え?」

「今度の聖杯戦争は、ただの魔術師の戦いじゃない。全てのルールが変わる可能性がある。」

凛は険しい表情でそう言った。

翌日、リセアは凛の指示で個人訓練に集中していた。虚数魔術の特訓だ。

異質な才能を持つ彼女の魔術回路は、凛の目から見ても異常だった。

「虚数空間を開きなさい。」凛が冷静な口調で指示する。

リセアは両手を静かに上げ、集中を深めた。彼女の蒼い瞳が輝きを増し、次第に空間が揺らぎ始める。

空気が冷たくなり、まるで別次元が現れるようだった。

だが、その瞬間――。

「っ!」

リセアの体から魔力が急激に暴走した。周囲の空間がひび割れ、虚数の力が暴れ出す。

「リセア、落ち着いて!」

凛が即座に魔力を流し込むと、暴走が鎮まった。

汗を流すリセアに、凛は手を差し伸べる。

「無理しすぎよ。あなたの力は、普通の魔術とは根本的に違う。扱いを間違えたら、命を落とすことだってある。」

「でも……私にはこれしかないんです。」

リセアは凛の手を握り返し、瞳を真っ直ぐ向けた。

その日の夜、凛とリセアは時計塔から帰る途中だった。

二人が人通りの少ない路地を歩いていると、不意に空気が変わった。

「気をつけて。」

凛が警戒の声を上げる。闇の中から、複数の気配が二人を取り囲む。

「貴様らが、遠坂凛とリセアか?」

低く響く声が路地に反響する。

その声の主は黒いフードを被った男で、周囲にも同じようなフードの者が数名いる。

「何のつもりよ?」

凛は冷静に問いかけながらも、即座に魔力を高めた。

「命が惜しければ、聖杯戦争に関わるのをやめるんだな。それが我々の警告だ。」

男はそう言い放つと、手を上げた。

その瞬間、魔術が発動し、凛とリセアに向けて無数の光弾が放たれる。

「リセア、伏せて!」

凛がとっさに宝石を取り出し、強力な魔術を発動させた。

光弾は次々と宝石のバリアに吸い込まれ、辺りが眩しい閃光に包まれる。

「さすがは遠坂凛……だが、次はどうかな?」

男は笑みを浮かべながら次の魔術を放とうとした。

その時、リセアが立ち上がった。彼女の瞳が虚数の光を宿し、蒼く輝いている。

「やめてください……!」

その声と同時に、周囲の空間が揺らぎ始めた。

虚数空間が彼女の手から広がり、敵を飲み込むようにねじれていく。

「何だ、この力は……!」

男たちは恐怖に顔を歪め、次々と姿を消していった。

戦いが終わり、凛はリセアを見つめていた。

「リセア、あれがあなたの力……?」

リセアは小さく頷いた。

「……怖いです。この力が、自分で制御できないんです。」

「でも、その力があなたを特別にしているのよ。これから一緒に鍛えましょう。それが、聖杯戦争を生き抜く鍵になるわ。」

凛は力強く言い切った。

「私に……できるでしょうか?」

リセアの不安げな声に、凛は優しく微笑んだ。

「大丈夫。あなたには私がいるわ。」

その言葉に背中を押され、リセアは小さく笑みを浮かべた。

そして、彼女の中で新たな決意が芽生えた。

「私は……この力で、誰かを守りたいです。」

その夜、ロンドンの空には一筋の星が輝いていた。

それは、リセアの未来を照らす希望の光のようだった――。


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