二次創作小説(新・総合)
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- Fate/Azure Sanctum
- 日時: 2025/02/10 13:57
- 名前: きのこ (ID: DnOynx61)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=14070
〜注意書き〜
・一応、二次創作です。
・コメント投稿等は一切お断りします。
・オリキャラが複数人登場します。
・不快にさせる表現がある可能性があります。
・原作と違う点があるかもしれません。
小説を書くことには慣れていない初心者です。
多めに甘くみてくださいお願いします。
- Re: Fate/Azure Sanctum ( No.3 )
- 日時: 2025/02/24 22:05
- 名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
四章
昨夜、フードを被った人物たちのことを考えながらも、私は静かな書庫で魔術書を広げていた。
時計塔の図書館、薄暗い光が本棚の隙間を照らし、静けさの中で落ち着いて勉強しているつもりだった。
しかし、心の中では昨晩の出来事が頭を離れない。
『……あれは一体、何だったのだろうか?』
私は気を散らさないようにと再びページをめくり、意識を本に集中させる。
しかし、どこかで気配を感じた。
ふと顔を上げると、書庫の入り口に誰かが立っていたのが目に入る。
その瞬間、警戒心が芽生え、背筋を伸ばし、意識を本に戻した。
だが、どうしても目の前に立っている人物
――その存在に気を取られてしまう。
「君が遠坂リセアさん?」
その声が私を引き寄せた。
言葉が耳に届くと、私はゆっくりと振り返った。
目の前には、見覚えのない少年が立っていた。
彼の目は冷徹に輝き、どこか危険を感じさせるものがあった。
言葉を発しながら、その少年は一歩一歩、私に近づいてきた。
「僕の名前は、アストリッド・エクレシア、アスト。よろしくね。」
彼が紹介した名前に、私はあまり反応しなかった。
心の中で警戒を強めながら、なぜ彼がここにいるのか、そしてなぜ私に興味を持っているのか、疑問が湧いてくる。
アストがゆっくりと私の背後に回り込むと、私はますます警戒を強めた。
その瞬間、何かが不穏に変わり始めた。
アストは突然、魔術を唱え始め、その動きに私は反応できなかった。
「…っ!」
そして、気づいた時には私は意識を失っていた。
――目を覚ましたとき、私は見知らぬ部屋に横たわっていた。
手足が拘束されていて、身動き一つできなかった。
心臓が早鐘のように打ち、恐怖が全身を駆け巡る。
『……ここは一体、どこ?』
突然、アストの声が耳に響いた。
「君が目を覚ますのを待っていたよ、リセア。」
その声に、私は顔を上げた。
そこに立っていたのは、先ほどのアストだった。
彼の目には深い執着と、冷徹な狂気が宿っている。
ゆっくりと私に近づきながら、彼は不敵に笑った。
彼は、無感情に告げた。「服を脱いでくれるかな?」
その言葉に、私は一瞬、体が凍りついた。
意識がまだ朦朧としていて、体が全く反応しない。
アストは無情にも私の服を引き剥がし、無理矢理私に触れてきた。
体のいろいろな部分に触れ、舐めてきた。
しかし、どうすることもできず、私はその場で身動き一つできなかった。
その時、突然、部屋に異常な気配が広がった。
足音が速く近づいてきて、振り返る暇もなく、背後から強い気配を感じた。
「…やめなさい、そんなこと!」声が部屋を包み込む。
振り返ると、そこに立っていたのは
――アサシンだった。
彼女は冷静に目の前のアストを見据え、無駄な動きを見せることなく、ナイフを抜いた。
「……カル――マスターの命令で。貴女を助けに来ました。」
その瞬間、私の体がようやく動くようになり、心の中でほっと息をついた。
アサシンの姿が、私にとっての希望となった。
アストは一歩後退し、驚きの表情を浮かべた。
「まさか――お前が……」
アサシンは静かに一歩踏み出すと、ナイフを握り締め、冷徹な眼差しでアストに向けて言った。
「もうやめなさい。あなたが何をしようとも、リセアさんに手出しは無用です。」
その言葉に、アストは一瞬ひるんだが、すぐに不敵に笑った。
「……ならば、君が私の邪魔をしないように――」
アストは結界魔術を展開し、私を動けないようにしようとした。
しかし、アサシンはその魔術を一切動じることなく斬り裂いていった。
「――ホントは殺してしまいたいけど、『殺すな』とマスターからのご命令ですので。」
「無駄ですよ。今この手であなたの人生を握り潰すことも可能ですからね。」
アサシンの冷徹な言葉に、私はただただその姿を見守ることしかできなかった。
アストとアサシンの戦いが激しく繰り広げられ、私はその間に少しずつ意識を取り戻し始めた。
しかし、まだ現実が信じられず、頭が痛むばかりだった。
どうしてカルが
――聖杯戦争に巻き込まれたのだろうか。
心の中で色々な思いが巡る中、アサシンの冷静な声が耳に届く。
「リセアさん、無事ですか?」
私はゆっくりと答えた。
「はい、ありがとうございます、シャルロットさん。」
その言葉が、私の胸に響いた。
そして、これからの戦いに巻き込まれていく運命に、少しだけ心が揺れるのを感じた。
五章
――薄暗い部屋の中、私はアサシンと向かい合っていた。
荒い息を整えながらも、彼女の冷たい視線を正面から受け止める。
「リセアさん、無事ですね?」
そう言う彼女の声はどこか優しさを含みながらも、一定の冷静さを保っている。
だが、その目は鋭く、何かを測るように私を見つめていた。
「……はい。アサシンさん、助けてくださりありがとうございました。」
私は自然と礼を述べたが、アサシンの眉が微かに動くのを見逃さなかった。
「……お聞きしたいのですが、リセアさん。」
彼女は一歩近づき、慎重に言葉を紡ぐ。
「何故、私の真名を知っているのですか?」
その問いに、私は一瞬言葉を失った。
どうして知っているのか――自分でも説明がつかない。
初めて彼女を見た瞬間から、心のどこかで「シャルロット・コルデー」という名前が浮かんでいた。
けれど、どうしてそう思ったのか、理由が全く分からないのだ。
「……正直に申し上げますと、私自身も分かりません。ただ、貴女を見た瞬間、そのお名前が頭に浮かんだだけで……」
私は困惑を隠せずに答えた。
アサシンは一瞬目を伏せたが、再び私に視線を向ける。
「それは――妙ですね。カル以外には、私の真名は知られていないはずです。」
彼女の言葉は真剣そのものだった。
まるで私の言葉の真意を探るようにじっと見つめられる。
「ですが、私がそれを知っていたのは事実です。それ以上のことは、私にも説明がつきません……」
私は言葉を探しながらも、正直な答えを返した。
アサシンは少し考えるように沈黙し、やがて小さく息をつく。
「……分かりました。ですが、それが偶然か、それとも何かしらの意図があるのか――それはまだ判断できませんね。」
彼女はそう言ってから少し柔らかな表情を見せたが、どこか警戒心を解かない様子だった。
その後、私たちは部屋を出て時計塔の外へ向かった。
足音が静かに廊下に響く中、私はアサシンの隣を歩いていた。
彼女は口数少なく、ただ周囲を警戒するように目を光らせている。
「……カルはどこにいすか?」
沈黙に耐えきれず、私はアサシンに尋ねた。
彼女は足を止め、少し振り返って私を見つめる。
「マスターは別の場所で貴女の安全を確保するための準備をしています。」
その答えに、私は胸の中で僅かに安堵した。
カルが私のために動いてくれていることを知ると、ほんの少しだけ心が軽くなる。
だが、アサシンの次の言葉が私の思考を引き戻した。
「ですが、リセアさん。これだけは覚えておいてください。私たちは戦いの中にいます。今夜のような危険は、これからも何度でも訪れるでしょう。」
彼女の声には冷たさと、どこか重い決意が込められていた。
「分かっています。ですが――私は、この戦いに使命を感じています。どのような危険があろうと、逃げるつもりはありません。」
自分でも驚くほどはっきりとした声で答えた。
その言葉に、アサシンは少し驚いたように目を細めた。
「貴女の覚悟は理解しました。でも――」
アサシンは少しだけ歩み寄り、私の顔を覗き込むようにして言葉を続けた。
「その覚悟が本物かどうかは、これから証明していただきます。」
彼女の言葉は冷たくも、どこか信頼の光を含んでいるように感じた。
私は静かに頷き、その視線をしっかりと受け止めた。
その頃、時計塔の別の場所――カルは一人で何かの準備をしていた。
書物や魔術具が乱雑に並ぶ部屋の中、彼は机の上に広げた地図に視線を落としている。
「リセア……無事だといいけど。」
カルの手が自然と拳を握り、目には不安と焦りの色が浮かんでいた。
リセアのことを思うと、どうしても冷静でいられない。
「彼女のためなら――どんなことでも。」
そう呟く彼の声には、深い執着と愛情が滲み出ていた。
彼の胸の中にあるリセアへの想い。
それが、聖杯戦争の中でどのような形に変わるのか
――まだ誰にも分からなかった。
- Re: Fate/Azure Sanctum ( No.4 )
- 日時: 2025/02/24 22:10
- 名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
六章
――時計塔を後にし、私たちはアサシンとともに歩き続けていた。
漠然とした不安を胸に、心は重く沈んでいた。
カルとの再会を果たし、無事に合流することができたが、それでも感じるのはまだ、どこか遠いものに置かれているような感覚だった。
聖杯戦争――その名を耳にするたび、胸の奥に湧き上がる使命感と同時に、不安な気持ちがよぎる。
「リセアさん、気をしっかり持って。」
アサシンが優しく声をかけてくれる。
その言葉に少しだけ力が入る。
「はい、ありがとうございます。ですが――」
言葉に詰まる。アサシンの助けを得ても、どうしても私の心の中にある「何か」が解消できないのだ。
それは、聖杯戦争に対する不安、そして自分自身が果たさなければならない役目への恐怖。
「――不安なら、凛さんの家で少し休みましょう。心が落ち着くまで。」
アサシンがそう言ったその瞬間、私たちの前にカルが現れた。
「リセア!無事だったか!?」
カルは、私を見るやいなや、安堵の表情を浮かべながら駆け寄ってきた。
その顔に見える深い憂いを、私は見逃さなかった。
「カル……」私は思わず、彼の名前を呼んだ。
彼の存在が、今は唯一の支えのように感じられる。
だが、その胸の奥にある熱い感情には気づいていない。無意識に近い形で、私はその手を求めていた。
カルは私の肩を軽く叩き、にっこりと笑った。
「じゃあ、凛の家に行こうか。」
その後、私たちは凛の家に向かって歩き始めた。
ロンドンの街並みを抜ける道中、カルは私の前に立ち、時折後ろを振り返りながら何度も確認をするように私を見ていた。
まるで私を守ろうとするかのように、少しでも私の様子が不安定だと感じればすぐに声をかける。
「リセア、無理しないくれ。疲れてるだろ?」
カルの声がやけに優しく、私の心に染みる。だが、私は首を振った。
自分の気持ちを整理しきれずにいたが、それでも何とか冷静を保とうとしていた。
「大丈夫です、カル。ただ……少しだけ、心の中が混乱しているだけです。」
その言葉にカルはやや眉をひそめ、心配そうな顔を浮かべる。
「それなら――凛の家に着けば、少し休んで落ち着ける。凛もリセアのこと、心配してたし。」
そう言って、カルは再び前を歩き出した。
その背中を追いながら、私は考えを巡らせる。
凛の家に到着すると、彼女は私たちを迎えてくれた。
普段は冷静で理知的な凛だが、今は明らかに私を気遣っている様子が見て取れた。
「リセア、よく無事だったわね。」
凛は私に微笑みかける。
その笑顔の裏にある、複雑な感情を私は感じ取っていた。
「すみません、お手を煩わせてしまって……」
私は頭を下げるが、凛は軽く手を振って見せた。
「気にしないで。今はリセアのことを最優先に考えましょう。」
そう言うと、凛は私をソファに座らせて、温かい紅茶を出してくれる。
その一杯を飲みながら、私たちはしばし静かに過ごした。
しばらくして、アサシンが声をかけた。
「リセアさん、あなたが聖杯戦争に参加する理由――そのことをしっかりと考えておく必要があると思います。」
アサシンの言葉に、私は少しだけ目を伏せる。
聖杯戦争に参加しなければならない
――その思いが私の中で強くなってきた。
しかし、なぜか、その思いの裏にはどうしても不安や疑問が消えなかった。
「リセア、あなたが参加することで、どうしても避けて通れないことがある。」
凛が静かに言った。
その言葉には重みがあり、私は自然と彼女を見つめた。
そして、一度深呼吸をしてから、続けた。
「アサシンの他にも、現界しているサーヴァントがいるのよ。ランサー、バーサーカー、そしてルーラー。」
その言葉を聞いて、私は目を見開いた。
「――それは、驚きです。」
アサシンの真名とともに、他のサーヴァントの存在が明かされることで、私の中に更なる不安が広がった。しかし、同時に気づいたこともあった。
それは――この戦いに参加するしかないという決意だった。
「私が聖杯戦争に参加し、サーヴァントを召喚するべきだと思います。」
その決意を胸に、私はしっかりと告げた。
その夜、私はひとり部屋にこもり、静かに思索を続けた。
聖杯戦争に参加する決意が固まったことで、次にすべきことが見えてきた。
自分のサーヴァント――そして、この戦いの中で果たすべき使命を。
私は深く息を吐き、心を落ち着けた。
そして、明日から始まる新たな戦いに、少しの不安とともに、確かな覚悟を決めた。
第七章
リセアは自宅の地下室に立っていた。
魔術の世界では聖域とも呼ばれるこの部屋は、遠坂家の代々の魔術師たちが培ってきた知識と力の結晶が集められている場所だった。
煌びやかに輝く魔術陣が床に描かれ、その中心には聖杯戦争のための召喚陣が完璧な形で描かれている。
リセアは緊張した面持ちでその陣の前に立ち、静かに息を整えた。
凛とカルが少し離れた場所から見守っている。
凛は腕を組みながらも、彼女の表情は真剣そのものだ。
一方のカルは、珍しくその軽口を控え、真剣なまなざしをリセアに向けていた。
リセアは静かに呟き始めた。
彼女の声は地下室に響き渡り、魔力が空間に満ちていくのを誰もが感じた。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」
魔術陣が淡い光を帯び始め、床から立ち上がるように魔力の波が渦巻く。
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する。」
声に力がこもるたび、魔術陣の輝きが増していく。リセアは冷静な表情を崩さず、続けた。
「―――――Anfang(セット)。」
「――――――告げる。」
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣。
聖杯の寄るべに従い、この意、理に従うならば応えよ。」
魔術陣が完全に発光し、眩い光が地下室全体を包み込む。
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
命運より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
その瞬間、魔術陣の中心から光柱が立ち上り、風が巻き起こった。
光の中から現れたのは、堂々たる佇まいの一人の騎士だった。
騎士は一歩前に進むと、リセアをじっと見つめた。その眼差しは鋭くも優しさを帯びている。
「――問おう。貴方が私のマスターか。」
凛が驚きの表情を見せる。
「まさか、貴方が来るなんて……!」
リセアは深呼吸をして、その問いに答えた。
「ええ、私が貴女のマスターです。ど、どうぞよろしくお願いいたします。」
セイバーは穏やかな微笑みを浮かべると、膝を少し折り頭を下げた。
「では、貴方の剣として共に戦いましょう。」
召喚されたセイバーの姿を見た凛は、微かに眉をひそめた。
彼女にとって、この英霊はただの「伝説の騎士」ではなかった。
第五次聖杯戦争で出会った記憶が蘇る。
『あの時と何も変わっていない……でも、彼女は覚えているのかしら?』
凛は自問したが、それを口にすることはなかった。
一方、リセアは新たな仲間となったセイバーに、心から信頼を寄せる決意を固めていた。
「凛さん、これで私たちも戦力が整いましたね。」
リセアの言葉に、凛は一瞬戸惑いながらも頷いた。
「ええ。でも、これからが本番よ。気を引き締めなさい。」
セイバーが小さく微笑みながら二人を見つめた。
その瞳には、これから始まる戦いへの決意と覚悟が宿っていた。
こうしてリセアたちの聖杯戦争は、新たな仲間を迎え、本格的に幕を開けたのだった。
- Re: Fate/Azure Sanctum ( No.5 )
- 日時: 2025/02/24 22:14
- 名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
第八章
リセアの手にかかる魔術の力が、静かに地下室を包み込んでいった。
目の前で起きた現象に、セイバーは一瞬、驚きを隠しきれない。
その召喚の仕方、無機質な響きを持つ詠唱が示す異質な力に、一度でわかる
──このマスターはただ者ではない。
「これは...どういう事ですか?」
セイバーは、リセアの姿を見つめながら静かに尋ねる。
リセアが目を伏せて、重く答える。
「私は、聖杯戦争の真実を知りたくて。何もかも、解明するために──」
その瞬間、地下室の空気が一変した。
リセアの言葉に隠された深い思いが、セイバーの心を打ったからだ。
あの戦争の背後には、思いもよらぬ複雑な事実が隠されている。
それが、彼女をここまで引き寄せている理由だということは、セイバーにはわかっていた。
リセアは、じっとセイバーを見つめ、そして静かに言った。
「…私はただ...この戦争で何が起こるのか、知りたいだけなんです」
その言葉に、セイバーは一度、首をかしげた。
そして、彼女は口を開く。
「それが聖杯戦争の目的というものです。だが、ただの戦いではない。それは、命を懸けた選択を迫られるものです。マスターがそれを望むなら、私はついていきますが...」
「...信じてください。私は、戦いそのものに興味はありません。ただ、真実が知りたいだけです」
リセアの目に強い決意を込め、セイバーは深く頷いた。
彼女が真摯に語る言葉の中に、ただの戦いではない、深遠なものを求める意志が感じられたからだ。
その後、リセアとセイバーは、地下室から一歩外へ踏み出し、計画を練り始めた。
まだ他のサーヴァントがどこにいるのか、その正体は何かも分からぬままだ。
しかし、リセアは確信していた。
聖杯戦争の目的は、単に最後の一人が聖杯を手に入れることではない。
その背後には、もっと大きな真実が隠されているはずだ。
そして、その時、リセアに訪れたのは予想外の訪問者だった。
「リセア、ちょっといいか?」声が響いた。
振り向いた先に立っていたのは、カル、アサシンのマスターだった。
彼の目には、鋭い光が宿っており、その姿からはただならぬ気配が漂っていた。
「...カル?どうしたんですか?」
リセアは少し戸惑いながらも、カルの方を見つめる。
「実は、君に知らせたいことがあるんだ」
カルは言葉を切り、リセアに近づく。
その後ろに立っているアサシンの姿が不気味に浮かび上がる。
「聖杯戦争のこと、君も気づいているんだろう?この戦争の裏にある本当の目的、そして...」
その言葉に、リセアの瞳が鋭く光った。
彼女は無意識に、セイバーの方をちらりと見た後、再びカルに向き直った。
「それについて、何か知っているんですか?」
カルは静かに頷く。
「実は、この戦争には、予想以上に複雑な要素が絡んでいるぽいんだ。聖杯そのものも、我々の予想とは大きく異なる存在――」
リセアは思わず息を呑んだ。
聖杯の謎について、これまで何も知らなかったが、カルの言葉がそれを変えようとしていることは理解できた。
「君は...聖杯を手に入れた者が、何を成すと思う?」
カルが問いかける。リセアは少し考えてから答える。
「それは...願望を叶えるために使われるはず、ですが...」
「その通りだ。でも、その『願望』には大きな代償がある。もし、聖杯が本来の力を発揮すれば、ただの『願い』を叶えるだけでは済まない。目を背けることができるような、恐ろしい力が、眠っているんだよ」
カルの言葉がリセアの胸に深く突き刺さった。
聖杯を巡る戦いが、ただの願い事を叶えるためだけに行われるわけではないという事実に、彼女はようやく気づき始めていた。
「その力を...手に入れるために、私たちは戦わなければならないのですか?」
リセアはセイバーを見つめながら、そう問うた。
セイバーは言葉を慎重に選びながら、答えた。
「それは...どうしても避けられない運命のように思えます。しかし、リセアには私がついています。どんな試練にも耐え、君と共に戦うつもりです。」
カルは少し冷ややかな視線を向け、言葉を続けた。
「まあ、君がそういうなら...協力関係を結ぶのも悪くはない。お互いにとって有益な選択だ」
リセアは静かに頷き、心の中で何かが決まったのを感じた。
この聖杯戦争、そしてその裏に潜む真実に迫るためには、他者の力が必要だ。
そして今、カルという存在と、協力することで、少しでもその謎に近づくことができるだろう。
そして、すべてのサーヴァントが揃ったことを、リセアは感じ取っていた。
それぞれのサーヴァントが、どこかで待っている。
その存在が何を意味するのか、その全ての謎を解くために、彼女はもう一度、心を決める。
リセア、セイバー、カル、そしてアサシン
──聖杯戦争の幕は、今、静かに上がり始めるのだった。
第九章
リセアはロンドンの時計塔にある広大な書庫の一角で膝をつき、膝上に広げた魔術書に真剣な目を向けていた。
その蒼い瞳には冷静さとともに直感的な閃きが宿っており、ページをめくる手には迷いがない。
隣に立つカルは、彼女の動向を見守るように静かにその場に佇んでいた。
少し離れた位置ではアサシンが周囲を警戒しており、凛もまた、リセアの進捗に合わせて必要な資料を机に並べながら思考を巡らせている。
「これだわ、リセア。あなたの使命の手がかりがここにあるわ。」
凛が手元の一冊の古びた巻物をリセアに差し出した。
巻物には聖杯戦争に関する詳細な情報が記されており、複雑な魔術陣や各地の聖杯にまつわる事件が解説されている。
リセアはそれを慎重に受け取り、深く頷いた。
「ありがとうございます。これが私が感じていた使命の一端なのでしょうか?」
その言葉に凛は小さく笑みを浮かべたが、直後、部屋の空気が僅かに変化したことに気づく。
カルが鋭い眼差しを書庫の入口へ向ける。
「気配を感じる。」彼の低い声が響くと同時に、ドアの隙間から何かが覗き込んできた。
それはキャスターの使い魔だった。
黒い影がほとんど音もなく忍び寄り、彼らの動向を伺っている。
「まさか、もうこちらの動きに気づいていたのでしょうか…?」
アサシンが小さな声で問いかける。
その優しい口調には微かに警戒が滲んでいた。リ
セアは使い魔を冷静に見据えながら立ち上がる。
「もし私たちの計画が知られたのであれば、早急に対処する必要があります。」
凛が鋭い視線を使い魔に向けながら口を開く。
「まずは、こちらの動向を悟られないようにするのが先決ね。この使い魔を引き離す手段を考えましょう。」
カルはアサシンを一瞥し、静かに立ち上がる。
「アサシン、頼んだ。」
「了解です。」
アサシンは即座にその場を離れ、影のように使い魔に近づく準備を始めた。
その動きは無駄がなく、一瞬のうちに空間に溶け込む。
リセアはカルに視線を向けた。
「大丈夫でしょうか?」
カルは自信ありげに微笑みながら答えた。
「ああ、アサシンなら必ずやってくれるさ。」
一方その頃、キャスターとアストはリセアたちの計画が露見したことを知り、次の行動を練っていた。
キャスターは冷静に状況を分析し、最も効率的にリセアを追い詰める手段を模索する。
アストは歪んだ愛情に突き動かされるように考えを巡らせていた。
「リセアを手に入れるためには、どんな手段でも構わない…」
アストは自分の手元に置かれた地図を見下ろしながら呟く。
その横でキャスターが冷ややかに笑みを浮かべ、冷静に作戦を練っていた。
「焦る必要はないわ。この使い魔で得た情報が十分なら、彼らを一網打尽にするタイミングを見計らうだけ。」
そう語るキャスターの声には、確かな自信が込められていた。
アサシンは使い魔の背後を捉えると、静かに短剣を構えた。
その瞬間、使い魔が感知したのか、動きを変える。
「やっぱり簡単にはいきませんかー。」
アサシンはため息をつきながらも、その手際は流れるようだった。
短剣が鋭く閃き、使い魔を斬り裂く。黒い影が消え去り、空気が静けさを取り戻す。
アサシンがその場に戻ると、リセアが感謝の言葉を伝える。
「ありがとうございます。おかげで私たちはまだ動けます。」
カルが軽く頷きながら言葉を添える。
「けど、これで奴らが完全にこちらの意図に気づいただろうな。」
凛が新たな魔術書を手に取り、冷静に状況を整理する。
「この場でできる限り準備を整えましょう。それから、行動を開始するわ。」
その言葉に全員が頷き、それぞれの役割に戻った。
戦いの火種は消えるどころか、ますます激しさを増していく気配を見せていた。
- Re: Fate/Azure Sanctum ( No.6 )
- 日時: 2025/02/24 23:05
- 名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
第十章
書庫で過ごす昼下がり、リセアはカル、アサシン、そして凛とともに聖杯戦争の進行状況について話し合っていた。
書棚に並ぶ魔術書の香りが漂う中、リセアの心には妙な違和感があった。
「……すみません、お手洗いに行ってきます。」
リセアは席を立ち、軽く頭を下げて部屋を出た。
廊下は静かで、外の冷たい風が窓を通してわずかに吹き込んでくる。
廊下を進むリセアの耳に、ふと足音が混ざった。
「……誰か、いますか?」振り返るも誰もいない。
しかし、背後から確かに気配が迫ってくる。
緊張を覚えたリセアは歩みを早めたが、その瞬間、空間が歪むような感覚に囚われた。
「……っ!」
リセアの背後に現れたのはキャスターだった。
その目は冷徹で、リセアを狙い定めている。
「ここで捕まえておけば、余計な手間は省けるわ。」
キャスターの手から放たれる魔術光がリセアを包み込む。
だが、リセアもすぐに対応し、自身の虚数魔術を発動。
しかし、キャスターの魔術には弾かれてしまう。
「虚数魔術が使えるとはね……でもー、それだけじゃ足りないなー。」
追い詰められるリセア。彼女は右手を見つめた。
四画しか残されていない令呪。
それでも、ここで使うしかないと判断した。
「セイバー……来てください!」
令呪が発動し、赤い輝きがリセアの腕から放たれる。
そして次の瞬間、彼女の目の前に青い騎士が現れた。
「リセア、間に合いましたか。」
セイバーは微笑みを浮かべ、リセアの前に立ちはだかった。
「……私を守ってください、セイバー!」
「承知しました。」
キャスターの冷笑に構うことなく、セイバーは剣を構える。
その姿はまさに騎士そのものであり、リセアの心を強くするものだった。
十一章
深い霧に包まれた荒野。
かつては鮮やかな緑で覆われていた場所も、聖杯戦争の闇が広がるにつれて枯れ果てていた。
その中で、リセアとセイバーは敵陣を切り崩しながら進んでいた。
「セイバー、大丈夫ですか? 無理はしないでください。」
リセアの声には焦りが混じっていた。
先の戦いで魔力を大量に消費したセイバーは、その動きに精彩を欠いていた。
「ご心配ありがとうございます、リセア。ですが、私は…ま、まだ戦えます。」
セイバーはそう言いながらも、剣を構える手にわずかな震えが見えた。
彼女の魔力は限界に近づいており、通常ならば引くべき状況だった。
しかし、この場を引けば、敵の追撃から逃れることは難しい。
リセアとセイバーは薄暗い森の中を進み、敵から身を隠しながら進軍していた。
突然、背後から刃が閃いた。「リセア、危ない!」
セイバーは全力で剣を振り上げ、敵の攻撃を防いだ。
しかし、その反動で膝をつき、その場に倒れ込んでしまう。
「セイバー!」
リセアが駆け寄るも、次の瞬間、霧の中から現れた黒装束の敵が彼女を捕えた。
リセアは必死に抵抗するが、虚数魔術も使う暇も与えられないまま、その場から引き離される。
「セイバー、私を気にしないでください! 凛さんたちを信――」
リセアの叫びが霧の中にかき消され、彼女の姿は見えなくなった。
セイバーが倒れている場所に、遠坂凛、カル、そしてアサシンが駆けつけた。
「セイバー、大丈夫!?」
凛の声が響く。彼女はすぐに宝石を取り出し、セイバーの体に触れた。
魔力を注ぎ込むと、セイバーの呼吸がわずかに落ち着いた。
「...リセアはどうしたんだ?」
カルが焦りを隠せずに問いかける。
「さらわれた......私が、不甲斐ないばかりに......」
セイバーは悔しさを滲ませながら答えた。
彼女の青い瞳には、明らかな怒りと後悔が宿っていた。
「そうか、リセアを見捨てるわけにはいかない。」
カルは焦りや不安を押し殺しながらアサシンを見やる。
「頼むぞ、アサシン。」
「はい、マスター。」
アサシンは落ち着いた声で答え、周囲の気配を探り始めた。
「大丈夫よ。リセアは必ず見つけるわ。」
凛が言葉を添えると、宝石をしまい、前を向いた。
「でも、その前に、この状況をどう打破するか考えないと。」
カルと凛は、セイバーを支えながら立ち上がらせ、次の手を練り始めた。
彼らの中には、それぞれの決意が静かに燃えていた。
「行こう。リセアを取り戻す。」
その言葉を合図に、四人は霧の中へと歩みを進めた。
- Re: Fate/Azure Sanctum ( No.7 )
- 日時: 2025/02/24 23:07
- 名前: きのこ (ID: eoqryhKH)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
第十二章
リセアの周囲は緊迫した空気に包まれていた。
アサシン、セイバー、凛、カルの一行は、リセアが再び拉致されたことを受け、事態を分析していた。
リセアがさらわれたのはキャスターのサーヴァントと、そのマスターであるアストであると推測されていた。
アストはリセアへの執着心から時計塔を追放された過去があり、彼の動機は明白だった。
そしてキャスターの魔術による支援を受けているため、今回の誘拐が実現した。
「みんな、覚えてるか?」カルが静かに口を開く。
「…リセアが彼に狙われたのはこれで二度目だ。」
凛が鋭い視線を彼に向けた。
「忘れるワケないじゃないあんなの…でもそうね。アストは前回の失敗から何かを学んだ。彼の執念深さは常軌を逸しているわ。」
「でも、どうやって彼らの居場所を突き止めるんですか?」セイバーが問いかける。
アサシンが微笑を浮かべ、冷静に応じた。
「私がやります。気配を探り、彼らの隠れ家を見つけ出します。」
一方その頃、リセアは薄暗い地下室のような空間で目を覚ました。
魔術による拘束具が彼女の手首と足首を縛り、身動きが取れない状態だった。
「やっと目が覚めたね、リセア。」
アストの声が静寂を破る。
彼は彼女の前に立ち、微笑を浮かべていた。
その笑みはどこか歪み、狂気をはらんでいる。
「アストさん……」
リセアの声は震えていたが、瞳には怯えの色はなかった。
「...いい加減やめませんか?これは、もう二度目ですよね。」
「これが……あなたの望むことですか?」
アストは少し驚いたように眉を上げ、次いで哀しげな微笑を浮かべた。
「望むこと?そうだよ、リセア。君が僕だけを見てくれるなら、僕はそれでいいんだ。」
彼は手を伸ばし、彼女の頬に触れようとした。
リセアはその手を鋭い目で見据え、冷たい声で言った。
「あなたの歪んだ愛が、他人を傷つける道具であるならば、それを愛とは呼びません。」
アストは一瞬たじろぐも、すぐに感情を取り戻し笑った。
「君がわからなくてもいいさ。でも、君を手に入れるのが僕の使命だ。」
一方その頃
カルが拳を握り締めた。
「奴を許さない。リセアは絶対に取り戻す。」
「でも、焦りは禁物よ。」凛が冷静に言った。
「まずはアサシンが場所を見つけてから。それまでは準備に徹しましょう。」
「セイバー、準備はできてるか?」カルが問いかける。
セイバーは力強くうなずいた。「はい、いつでも戦えます。」
「リセアさん、待っていてくださいね。」
アサシンが小さくつぶやき、気配遮断スキルを発動させる。
第十三章
リセアは手足を強引に拘束され、目の前の状況に必死に抗おうとしていた。
しかし、アストの力は予想以上に強く、彼女の抵抗は無意味だった。
何より、彼の目に宿る狂気と執着が、リセアの心をさらに追い詰める。
「や、やめてください……アストさん……」震える声で懇願するリセア。
しかし、アストはその声を聞き流し、ただ優しく微笑みながら、彼女の髪を撫でた。
「君は僕のものだ、リセア。僕が君を幸せにする。だから、もう諦めてしまえばいいんだ。」
そう言いながら、彼はリセアの衣服を一枚ずつ剥ぎ取っていく。
彼女の美しい肌が露わになり、リセアは羞恥と恐怖で目を閉じた。
アストの手は執拗に彼女の身体を撫で、彼女を完全に自分のものにしようとする。
「お願いです……やめてください……!」
涙を浮かべながら叫ぶリセア。
その声に一瞬ためらいの色を見せたアストだったが、すぐにその表情は固い決意に変わった。
「君が僕を愛するまで、僕は何度でも君に教えてあげるよ。」
そう言い放つと、アストはキャスターが用意したという小瓶を取り出した。
それは濃い紫色の液体で、見ただけで不吉な気配を放っている。
「これを飲めば、もっと楽になれるわよ。」
リセアは首を振り、拒絶の意思を示した。
しかし、アストはその反応を楽しむかのように笑い、無理矢理彼女の口元に液体を流し込んだ。
強烈な甘さと苦味が口の中に広がり、リセアの意識は次第にぼやけていく。
一方その頃、アサシンは建物の外からアストとキャスターの気配を探っていた。
しかし、彼女の特技である「気配遮断」は、この場所では効果を発揮しないことに気づく。
強力な魔術の結界が張り巡らされており、その影響で彼女の存在を完全に隠すことができない。
「……やっぱり厄介ですね。」
アサシンは小さく呟き、大型ナイフを握りしめた。
『マスターが心配しますが、ここで動かないわけにはいきません。』
彼女は静かに屋敷の中に足を踏み入れる決意を固めた。
その瞳には、何としてでもリセアを救うという強い意志が宿っていた。
屋敷の中では、リセアが意識を朦朧とさせながらも必死に抗う姿があった。
彼女の心は絶望と恐怖で満ちていたが、それでも諦めることはできなかった。
自分を信じてくれた人たち、そしてセイバーの顔が脳裏に浮かび、何とか立ち上がろうとする。
『こんなところで……負けるわけにはいきません……!』
この言葉がどこまで届くかは分からない。しかし、リセアの目にはかすかな希望の光が宿っていた。
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