二次創作小説(新・総合)
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- 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】完
- 日時: 2019/06/06 18:55
- 名前: 内倉水火 (ID: Re8SsDCb)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12396
『御尻川スウィーツ様及び御友人の皆様
この度皆様を、本日開業の音楽クラブ、ハウスオブ音羽に御招待致します。
ハウスオブ音羽 支配人』
「ねぇ皆、これ見てよ!」
そう言って招待状を差し出したのは、受け取った張本人であり、竜宮小7年C組の学級委員、御尻川スウィーツであった。
クラスメイトである松田名作、ウィンドウズノキオ、団栗林むすび、F・ボルト、そして今年入学したばかりの1年生、上井つる公が、スウィーツの手に握られたその仰々しい紙を見つめる。
「は、ハウスオブ音羽?」
「うん」
「めっちゃ高そうです…」
「大丈夫! この招待状が有ればタダで入れるんだよ!」
「「えぇ!?」」
スウィーツの爆弾発言に、残る5人の驚きの声が重なった。
「何故だ! 何故タダだ! 答えろ貴様!」
やたらと筋肉質な亀のボルトが、声を震わせる。
「何か脅迫してるみたいだぞ!?」
ツッコミ役の名作はボルトにツッコミを入れながら、内心こう思っていた。
_ディ○ニーに怒られる…!
- Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.43 )
- 日時: 2019/01/07 16:22
- 名前: 内倉水火 (ID: ShMn62up)
「そ、そう…すけ?」
ついさっきまで会話していた少年のスプレーアートを目の前に、その場に立ち尽くす歌苗。震えを抑える為か、手は固く握り締められていた。
名作や戦兎達も、突然の事に視線は釘付けになっていた。
他に被害に遭った人々に比べて弱々しい絵柄ではあったが、奏助は"魔王"によって絵にされたと考えた方が良いだろう。証拠に奏助は忽然と消えてしまったし、この絵もさっきまで存在しなかった。
「たった今被害が起こった。という事はつまり__」
戦兎が大急ぎで思考を巡らせ、全員に呼び掛けようとした時だ。
「ベートーヴェン先輩…私の事を其処まで想っていらしたのですね…でも」
背後から男の声が聞こえた。しかし、ノキオの声でも、スウィーツの声でも、つる公の声でも、万丈の声でも、モツでもショパンでも継義でも憂城でも長幸でも剛保でも、誰の声でもなかった。
名前を呼ばれたベトを始め、音楽家達と歌苗は直ぐ様振り向いた。聞いた覚えのある声らしい。名作達も、少し遅れて振り向く。
「貴方は…!」
フランツ・シューベルト。またの名を"魔王"。
相変わらずのスカジャン姿だが、真顔ではなく、悲しげに微笑んでいた。
彼は驚愕する名作には応じず、一度途切れさせた言葉を続けた。
「でも、もう遅いんだよ。残念ながらな。"俺達"が捨てられた事実は動かない」
俺達が捨てられた、というのが引っ掛かった名作だが、今は細かい事を気にしている場合ではない。新たなスプレーアートが生み出される前に、彼から逃げなければ__。
そう思った矢先、スウィーツが"魔王"の前に進み出て叫んだ。
「やい、お前! ボルトを返せ! 絵にされた皆を返せ!」
「ちょっ、スウィーツパイセン!?」
止めに掛かるつる公の声も、恐怖にひきつっていた。確かに自分達の大事な仲間であるボルトは取り戻したいが、相手はまだ攻撃的である。迂闊に手は出せないのだ。
しかし、彼は飛び掛かって来る事もなく、静かに答えた。
「無理だ。まだ俺の怒りは収まっちゃいない」
「じゃあどうしたら収まるんだ!?」
「いや、質問して答えるのかよ?」
万丈がやや呆れて口を挟んだが、一応彼は答えた。殆ど答えにはなっていないが。
「それはお前らが考えろ」
それを聞いた途端、名作達は後ろのステージへと吹き飛ばされた。"魔王"の仕業のようだ。
此処で怒りを収めれば、全て終わるのかも知れない。そんな事を考えながら、彼等は妙な嵐に運ばれて行く。
- Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.44 )
- 日時: 2019/01/15 18:58
- 名前: 内倉水火 (ID: HPUPQ/yK)
【間が空いてしまい、申し訳ありません】
吹き飛ばされた殆どは、ステージを通り越し会場の床に落ちた。尻や背中を打ち付けて、顔をしかめる一同。
「いたた…」
「もう! ちょっと位優しく下ろしてくれたって良いじゃん!」
「そんな要求通じる訳無いでしょ」
しかし、その痛みにいつまでも愚痴っている場合ではない。これから彼等は"魔王"と対峙し、勝たなければならないのだ。
名作達は何とか起き上がりながら、ステージを睨む。
ステージには、ボルトや奏助を絵に変えてしまった張本人である__"魔王"。
彼は無表情で此方を睨み返すと、片手をくいくい、と曲げて「来い」との合図を見せた。その目は異様に冷たく、後ろにいるむすびの口から悲鳴が漏れるのが聞こえた。
「ねぇ、あんた。ツナ義ーズの佐藤太郎だっけ?」
彼の表情を一瞥した後、継義が戦兎に向かって尋ねる。戦兎は不敵に笑って、それに答えた。
「残念ながら違うぞ。俺は、天才物理学者の桐生戦兎だ」
「"天才"の言い方、癖強すぎだろ。俺は墨野継義…んで、彼奴とどうやって戦うとか、作戦は有る訳?」
その質問に、名作ははっと気付いた。作戦もなく突っ込んで行けば、一網打尽にされるだけだ。
戦兎は少し考え込み、呟く。
「まず、戦うと言っても最低限だ。相手が攻撃を仕掛けた時の護身に留めて欲しい…彼奴を支配人の元に帰したい」
「そうか。でも、辰と巳のお兄さんとか、納得しないんだろうね。あの2人、血の気が余ってるから」
そう言って、会場の上を見上げる継義。見ると、いつの間に登ったのだろう、2階の席に長幸と剛保が凭れている。様子からして、やはり戦いに参加する気は無いらしい。
「まぁ良い。放っておけよ。それより、他の連中にあまり攻撃するなと伝えておいてくれ」
天才物理学者は、そう言うと改めて"魔王"を睨み、戦いを始める気合い十分な様子だった。
- Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.45 )
- 日時: 2019/01/23 17:48
- 名前: 内倉水火 (ID: FLOPlHzm)
「何をぺちゃくちゃ喋ってんのか知らねぇが、攻撃して来ねぇなら此方から行くぜ!」
痺れを切らした"魔王"は、苛立たしげに攻撃を仕掛けて来た。
手に持ったハンドマイクで弧を描いたかと思えば、橙の音波が会場中に響いた。まるで嵐が吹き荒れているようで、名作達小学生は、テーブルや柱に掴まっているので精一杯だった。
嵐が少し弱まって来ると、今度はモツが不敵に笑いかける。
「こんなの攻撃なんて言わないよ、シュー君! やっぱり僕達や子供相手に、本気になれないんじゃないの!?」
「いや、何で挑発してんの?」
名作は思わず叫んでしまった。確かに戦兎は「戦いは最低限に」と言っていたが…。
しかし、モツは構わず続けた。
「リッちゃんとルー君の話聞いちゃって、本気で攻撃出来なくなっちゃったんじゃないの!? 自分が他人に思われてるって知って、恥ずかしくなっちゃったんじゃないの!?」
「うるせぇ…誰が本気じゃねぇだと…うるせぇ、うるせぇ…!」
"魔王"は声を震わせ、より一層強い嵐を起こした。見境もなく、ハンドマイクを、両手を振り回している。
「あぁもう! やっぱり怒っちゃった!」
- Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.46 )
- 日時: 2019/01/26 13:55
- 名前: 内倉水火 (ID: Slxlk2Pz)
「落ち着け、名作。モツは只、どうやったら彼奴を説得出来るか探ってるだけだ」
「でもこれじゃ意味ないんじゃ…!」
慌てて柱に掴まる名作に、近くにいた万丈が宥めにかかる。名作は心配そうに、向こうを見つめていた。
一方、音波を撒き散らしながら喚き続ける"魔王"。今までより、強い怒りに満ちた声であった。
「うるせぇっ…! "俺達"は間違いなくお前等のせいで捨てられたんだ…。"俺達"に救われた筈の彼奴も! "俺達"を全否定した彼奴も! "俺達"を認めまいと拒絶したお前等も! 許せる訳ねぇんだよ…!!」
「"俺達"?」
舞台裏でも聞いたその言葉。今名作達と対峙しているのは"魔王"1人であるのに、何度もその言葉を連呼し続けている。音楽を2度否定されたのは、フランツ・シューベルト1人であるのに。
名作や継義が考え込んでいると、その間を縫って、"魔王"の元へ進んで行く男がいた。
シューベルトに先輩と崇められていた、ベートーヴェンその人だ。ベトの瞳には、強い確信と覚悟が宿っていた。固唾を飲んで、後ろ姿を見送る面々。
ベトは唇を真一文字に結んで、ステージの段差を挟み"魔王"と向き合った。"魔王"は彼の姿を一瞥すると、振り回していた両手をだらりと下げた。
一息吐くと、ベトは彼に尋ねた。静かに、そして威厳をもって。
「"魔王"よ。お前はシューベルトではなく__シューベルトに演奏されなくなった、ヒップホップそのもの__なのだな?」
「「えぇっ!?」」
"魔王"よりも早く、名作達が反応した。
「音楽が自我を持つ処か、演奏されなくなった事に対して怒った? 展開謎過ぎるだろ…」
「じゃあ何でレゲエは怒らないの? レゲエも演奏されてないんでしょ?」
「音楽家って凄いんだねぇ」
「誰か、説明してくれです!」
殆どが状況を理解出来ていなかったようだ。
今、"魔王"の口から、事の全てが説明される。
- Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.47 )
- 日時: 2019/01/30 16:17
- 名前: 内倉水火 (ID: Slxlk2Pz)
シューベルトが手を付けなくなったヒップホップ__それが"魔王"。
それを聞いた途端、一同に衝撃が走った。
「音楽が自我を持つ処か、演奏されなくなった事に対して怒った? 展開謎過ぎるだろ…」
「じゃあ何でレゲエは怒らないの? レゲエも演奏されてないんでしょ?」
「音楽家って凄いんだねぇ」
「誰か説明してくれです!」
「同じ内容をそっくりそのまま繰り返すな!」
序でに、久々の名作によるツッコミが飛んだ。本格的である。
気を取り直して、"魔王"に視線を向ける面々。
"魔王"はベトからの質問に、落ち着いた様子で答えた。しかし、相変わらず声には怒りが滲んでいる。
「…そうさ、その通りだよ"先輩"。俺はシューベルトに宿ったヒップホップそのものさ。全否定されても、一時捨てられても耐えてきたのは俺とレゲエなのさ…!」
ベトは間髪入れずに、新たに質問する。
「貴様が俺達の言葉により、酷く傷付いて来たのは分かった。だが、何故今なのだ? 今宵のこれが遊びではないのは、貴様も分かっていた筈。それでも暴れ回った切っ掛けは何だ?」
確かに、ハウスオブ音羽が開業するこのタイミングで、"魔王"は感情を爆発させた。彼さえ暴れなければ、今夜に多額の資金を賭けた音羽家や、ゲストとして招かれた継義達、観客として来場した戦兎達…そして、招待状を貰って来た名作達が此処まで被害を被る事はなかったのである。
彼は半ば怒鳴るように答えた。しかし、攻撃の構えはなかった。
「何故かって? 決まってるじゃねぇか…彼奴が、シューベルトの野郎が1曲たりともヒップホップとレゲエを演奏しなかったからだよ! 完全に俺達を捨てやがったんだ! たった1度否定された位でな!」
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